書籍紹介

川崎哲

『核拡散―軍縮の風は起こせるか―』
を読んで


岩波書店

A2003年、岩波新書

定価(本体740年+税)

  著者の川崎哲氏は、学生時代に在韓被爆者市民会議の活動に参加していたことがある。それはもう六年ぐらい前のことである。その後、NPO法人「ピースデポ」の事務局長として活躍し、現在は国際交流NGO「ピースボート」のスタッフとして世界を駆けめぐっている。そのような若い著者が書いた『核拡散――軍縮の風は起こせるのか――』は、アメリカによる広島市・長崎市への原爆投下以後の核兵器の拡散状況を現在を中心に構造的に捉えている。本書の特徴をうまく表現している本書のカバーの紹介文を以下引用したい。

 「核開発疑惑が浮上する北朝鮮やイラン、相互に核弾頭を向け合うインド・パキスタンなど、いま世界では核拡散の危機が進行している。国際条約から距離を置き、新たな核戦略を掲げるアメリカ政府も危機に拍車をかけている。核廃絶を目指す中小国やNGOの動きも紹介しながら、問題の構造を深く分析し、軍縮と非核の構想を示す。」

 この紹介文に無い日本政府の対応についても、著者は批判的に論じている。その章のタイトルは「核兵器に依存する日本」(第五章)であり、アメリカによる広島・長崎への原爆攻撃を受けた国が、何故にその世界で最大の核兵器保有国の核兵器に依存しているのかを鋭くえぐり出している。著者は日本政府の核軍縮外交について、「CTBT発効要求だけはかろうじて堅持している日本政府であるが、それ以外の面では、核軍縮に反対するアメリカの政策に何の態度も示そうとしない」(一八二頁)と書く。このような日本を世界の多くの国は「アメリカの代弁者である」と見ているという見方も紹介している。これでは日本への信頼が醸成される訳がない。

 最後に著者の方法論を紹介したい。著者は「奇をてらった暴露記事ではなく、政府の公的文書や新聞報道など誰でも入手可能な基礎情報の分析を着実に積み重ねていくことで、自らが進むべき方向を展望したいと考えた」(二一八頁)と書いている。この方法論は私たち市民が学べる重要な方法論であると考える。問題はどのような視点を持つかということである。本書が多くの人々に読まれ、多くの議論が交わされることを期待したい。