在外被爆者代表の来日を前にして



 平成十六年度(04年度)予算が施行される時機に合わせて、四月中旬から下旬にかけて、在韓・在米・在ブラジルの各被爆者団体代表が来日、厚生労働省交渉を行なう。日本被団協も共同行動を予定している。
 国の今年度在外被爆者対策の目玉といえば、既報(会報37号)のように法外措置として初めて居住国での治療費支援(二億八千万円)を打ち出したことだ。
 遅過ぎたとはいえ、これまで長年放置されてきた海外在住の被爆者にとっては、郭貴勲裁判(大阪高裁)で切り拓いた居住国での「手当」継続支給に次ぐ、朗報である。
 これによって、海外への援護措置を頑なに拒んできた法の壁≠ノあいた風穴≠ヘ、一層拡がったことになる。
 しかし、そうはいっても、これまで国内の地域福祉を建前とした現行・被爆者援護法の実態と、医療制度の違う諸外国との間には、当然のことながら大きな隔たりがあるのも事実である。そのため、法外措置である新規事業開始を前に今年二月、国は北米・南米へ、本省の担当官二名を派遣した。
 一方、当の在外三団体は早くにそれぞれの実情を訴える「要望書」を国に提出しており、今回の中央交渉はその意味で言うと具体的な詰めを行なう大事な機会である。
 思えば97年以来、毎年のように繰り広げられてきた共同行動だったが、裁判を梃子に、ようやく居住国での治療援護の扉を開くまでに前進したことになる。

治療費支援の内実と問題点

 ここで今年度から実施される新規事業の主な内容を見てみたい。

@対 象 者
 被爆者健康手帳所持者に加えて「被爆確認証」の所持者を加えている。
(「確認証」とは「手帳」交付の条件を満たしているとして現地で発行される。)
 これまでは「手帳」を持っていなければ、一切被爆者≠ニ認められなかったことを考えると、確認証所持者にまで拡げたことは一歩前進である。とはいえ、「手帳」交付に来日を義務づけている現状では、折角の新規事業が新たな被爆者差別≠生む危険をはらんでいる。
 現在、「確認証」の発行は、三カ国合わせても、二桁の数に過ぎない。その枠を拡大しない限り、医療における内外格差=@は解消しない。

A医療費の助成方法等
 現行法は国内の健康保険法との併用が建前で、そのため、殆どの疾病が無料で治療が受けられる。渡日治療の場合は保険を問わないが、海外の治療費はどうなるか。
 北・南米では民間の保険に入ろうとすると高額な保険料を要するため、苦しんでいるのが現状である。在ブラジルの被爆者からは「医療費よりも先ず保険料の助成を」という声が、既に上がっている。
 また、韓国では日本からの治療支援基金(四十億円)をもとに、90年代から既に医療援護システムが作られている。
 その場合、新たに国が提示した助成金との整合性(一人当たりの上限額など)をはじめ、これまで協会員であれば「手帳」の有無を問わなかった対象者の問題など、まだまだ課題は山積しているのだ。

02年に国が渡日治療を中心とした新規事業を始めて以来、その窓口は広島・長崎両県市に委託されてきた。それが今回さらに、居住国での実施機関の設置が予定されている。
 その他にも、各国共通の課題と、国別にクリアしなければならない問題がある。
 支援する私達としては、在外被爆者代表が最大限の成果を上げられるよう、議員懇の方々と共に、尽力したいと思う。