昨年八月十五日に韓国内で放送されたKBSテレビの「鈴木賢士の『韓国のヒロシマ』」という番組を鑑賞しました。
鈴木賢士さんは東京都内在住のフォトジャーナリストで、七年間に渡って「韓国のヒロシマ」といわれる陝川に通い、被爆者たちの姿を撮り続けてきました。
鈴木さんの写真集「韓国のヒロシマ」を見たKBS釜山支局から取材の申し込みがあり、陝川、釜山、そして日本国内まで鈴木さんの姿を追って制作した一時間の番組です。
広島の被爆者が集中する山間の町、陝川で、被爆者が亡くなった後、住む人のいなくなった廃屋、被爆者たちが入所している原爆被害者福祉会館、七七〇柱の位牌が並ぶ8・6慰霊祭の祭壇、そして、年老いた被爆者たちが気遣う子どもたち、被爆二世の姿も登場しています。
上映後、鈴木さんから、この問題に関わり始めた経緯や、取材にまつわるお話を伺ったあと、約三〇名の参加者で感想を話し合いました。
会場の発言者の中から三名の方に感想を寄せていただきました。
韓国KBS特集『韓国のヒロシマ』をみて
増田 康雄
韓国の放送人に拍手を送ります。とても優れた番組内容に感動しました。韓国の市民が未だに原爆の被害で苦しんでいる姿、そして被害者の半数しか日本の援護手当を受け取っていない現実に衝撃を受けました。
五八年が経過した現在も世界の核の廃絶は実現していません。むしろ小型核兵器の開発をアメリカは実行しようとしています。
こういう時代だからこそ、韓国KBSの放送には光を放つメッセージを感じました。
植民地政策で朝鮮半島を侵略し、日本の文化を押しつけ、人々を労働力として徴集した日本軍国主義にこそ根源があるのに、未だに日本政府は謝罪と補償に十分な責任を果たしていない。そこに問題があると思います。
鈴木賢士さんは日本人が犯した責任を日本人が知ってほしいとの思いから韓国のヒロシマを取材していると語ります。その視点に共感します。そして韓国KBSの制作に敬意を表します。日本の多くの人々がこの番組を見て、この番組のメッセージをくみ取り、核の廃絶に寄与することを願わずにはいられません。七年間こつこつと取材し続けた鈴木さんの執念こそ、写真を撮る私達が学ぶべきことではないでしょうか。
放送人としては、構成、ナレーション、編集、音楽ともよくできていると感じました。欲を言えば、同時録音の編集をもっと丁寧にすればと思いました。
(元NHK音響効果担当)
鈴木さんの笑顔
西野 稔
お会いしたときは何時も、先程までの話の続きをするように話しかけられる。こちらも失礼ながら、兄貴に話すような口調になっているのに気づく。
韓国KBSのテレビで話される鈴木さんは何時もの通りだ。韓国の人の心にもスッと入って話されている。心をつかむためには、お人柄もさることながら、忍耐と努力をされたことが伺われる。
写真集を補う、意味のある今回のドキュメントだったと思う。鈴木さんの写真からは激しい怒りより、静かな怒りが祈りのように伝わってくる。
被爆者となる以前に、私は韓国の人に加害者意識を持っていた。戦時中の小学校で在日の子供たちに加えられる理由なき見せしめのための、凄まじい教師の暴行。いくら軍国教育とはいえ、人として許せないと思うものの、口に出せる状況ではなかった。
被爆後も生死不明のあの人達のことは心のトゲとなっていた。(昨年そのうちの一人と再会できたことは一昨年、本会報の32号に載せて頂いた)今から思うと、再会を喜び合ったものの、自分はまず最初に「被爆の罪・加害の罪」を謝っただろうか。
被爆者も加害者であることの重さを感じ、反省している。
故郷に帰った被爆者が被った二重、三重の苦しみを改めて知らされ、鈴木さんの写真集を読み直した。
八月十五日に放映されたことと、その静かな淡々としたナレーションが、今、日本が戦争に、核武装に、音をたてながら曲がろうとしている騒々しさを、際立たせているように感じた。
(広島被爆・東友会事務局次長)
心の被爆者
鄭 良子
私は在日韓国人三世です。
日本で生まれ育ち、日本語を話し、日本の教育を受ける中、三世ともなると韓国人の意識は薄れ、戸籍抄本の紙切れ一枚で区別され、それは差別へとつながります。
十四年前、あるキッカケから韓国に留学することになり、そこでさまざまな人々と出会い、いろいろなことを学びました。
創氏改名、歴史の流れ、日韓のさまざまな問題・・・、韓国に住む被爆者のことも日本の支援者の存在も知りました。写真展などにも誘われて見に行きました。
その時、私の中ではそのことがとても重要で、どうしてもしなければいけない事柄とは思えなかったのです。今、思うと私は余りに日本人化され、歴史のことなど遠い昔の、無関係なもののようにぼやけていました。今の日本の若者のように・・・。
あれから十四年、少しずつ意識を取り戻し、今、改めて在外被爆者達の無残な映像を見ながら「私達二世、三世は体に原爆は受けていないが、心に『差別』という原爆を受け『心の被爆者』になっている」と感じました。私は留学によって心が解放されたけど、日本人の名前を名乗り、韓国人だということを隠し、心の闇を抱えて生きている人がほとんどです。そうさせたのは誰なのか。
鈴木賢士さんは「日本人の責任として関わっている」と言われます。その姿勢に敬意を表したいと思います。
8月15日 例会で話をする鈴木賢士さん
(東京都芸術劇場会議室)
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