在外被爆者の現状と展望

           ―アンケート結果から 

 韓国・北米・南米被爆者の現状と要望について、本年一月末、三団体(韓国原爆被害者協会・米国被爆者協会・在ブラジル被爆者協会)に伺い、お忙しいなか、丁寧な回答をいただきました。
 以下にその内容をお知らせします。

(数字は二〇〇四年二月現在)  


@ 手帳を持っていない理由
 「以前は何の役にも立たなかったし旅費もなく、日本まで行けなかった。」「今となっては老齢で渡日は無理」(南米から成田までは飛行機で24時間)「余りに永い年月が過ぎて証人が見つからない」等が共通している。それでも現在、手帳を申請している人は、韓国が八百名前後(協会に知らせない人も多数いると思われる)北米は五名、南米は十七名(五名は認定された)。
 「申請中だが審査が滞っている」影響も大きい(韓国)

A 手帳はあるが、健康管理手当などを受給していない理由
 「疾病・寝たきり・老齢・家庭事情などから遠い日本まで手当申請に行けない」というのが各国共通の回答。

B 申請はまだしていないが今後手帳取得を希望している人数
 北米約五名、南米ゼロ。
 「在韓被爆者は現在少なくとも三千名以上生存中と推測していますが、自ら名乗り出ないかぎり、その数字を確定することは困難です」(韓国)

C 現地で申請を受け厚生省が発行する「被爆確認証」所持者
 韓国の協会がつかんでいるのは十九名
 北米は不明、南米はゼロ。

D 手当の送金状況
 大韓赤十字社が滞りなくやっている(韓国)
 送金まで五ヶ月以上かかった十数名以外は問題なし(北米) 多少の遅れはあるが、ほぼ順調(南米)

E 現行被爆者援護法の「葬祭料」が海外で亡くなった被爆者には出ないことについて・・・「当然支払われるべきだ」
 「被爆者はどこにいても被爆者≠フ精神を生かしてほしい」「何の支援も受けられず無念の思いで亡くなった被爆者に対して大きな差別。これらの被爆者は安らかに眠っておられないと思う」という意見が寄せられた。

F 今年度予算で新たに居住国での「保健医療助成事業」が始まるが(被爆者健康手帳と被爆確認証所持者が対象)開始時期についての希望は?
 「できるだけ早く、会計年度が始まる四月からでも」
 「早くても、居住国の状況に合った形でないと困る」

G 厚生労働省健康局総務課作成「新規事業の概略説明」には、「医療機関への医療費の支払いは、居住国の『公的団体』を通じておこなう」とあるが、希望する『公的団体』は?
 「手当と同じ大韓赤十字社を希望」(韓国)
 「領事館・全米に支店のある銀行」(北米)
 「日伯援護協会(費用は日本政府が負担のこと)」(南米)

H「提携医療機関」についての希望
 「すべての医者・クリニック・病院と提携あるいは指定してほしい。でないと指定されない医療機関の患者である被爆者は助成されず、三重の差別が生じる」(北米)
 「日伯援護協会はこの予算規模では態勢作りが無理とのことです」(南米)

I「県・市が必要と認めた場合、健康診断や健康相談事業を実施できる」と概略説明にあるが、希望する形態は?
 「東部・中西部・南部の地域では少なくても二年に一回、カリフォルニア、ワシントン州、ハワイは二年ごとに検診団が来るが、多額の経費がかかる。その分を『医療助成事業』に回わして上限額を上げてほしい」(北米)
 「従来より高度の医療検査の実施を望む。協会と関係官庁間の親密な事務連絡も希望する」(南米)
 「居住地に近い適切なところで必要なだけ実施してほしい」(韓国)

J その他の要望
 「被爆者健康手帳」を持たない被爆者が二十二名いるが、うち五名は日本に行けば取得が確実であり、他の一七名は、『被爆確認証』交付の対象者である。そして、この人たちは、いずれもブラジル被爆者協会創立当時、あるいはその後、隔年ごとの巡回医師団に同行した県庁、または厚生省の職員に書類を出し、その都度、検診を受けてきている。彼らがもし被爆者でないならば、次回には断られるはずだが(そういう人も現にいた)続けて検診を許されてきたので、被爆者として認めて『被爆認定証』を交付してほしい」(南米)


 全体として、三団体とも「在外被爆者事業は、被爆者援護法の枠外の措置ではなく、被爆者援護法を改正して、各国の事情をふまえた上で、国内外に適用する援護法にしてほしい」と望んでいる。しかし、被爆者は高齢で、いつ亡くなるかわからないので、手帳の申請・発給・手当支給などの審査や事務処理をもっとスピードアップするよう切望し、要求している。
「健康管理手当がようやく在外被爆者に支給されるようになったものの、渡日できる者とできない者の差など、在外被爆者の間に新たな差別が生じていることは見過ごせない問題だ」という声がとりわけ強かった。
三団体からの回答により、各団体に共通する要望とともに、独自の事情と要望があることが改めてよくわかった。
三団体のご協力に感謝し、今後の活動に役立てたい。


協会登録者数と各種手当受給者数
  韓国 北米 南米
協会への
登録者
 2146名 サンフランシスコ(約200名)ロサンゼルス(約225名)  135名
( 以下いずれも登録者中 )
被爆者健康手帳所持者 1293名
(届け出ない者も多数) 
約200名  102名
医療特別手当    7名    0名    2名
健康管理手当 1156名
(届け出ない者も)
 約100名   73名
原爆小頭症手当    0名    0名    0名
保健手当    3名    0名    0名