要  望  書

坂口厚生労働大臣殿
社団法人 韓国原爆被害者協会 会長 李廣善
会員 一同

私たち韓国被害者のために、多大なご努力をなさっておられますことに、心より感謝申し上げます。

私たちはこの度、大臣はじめ、日本の国民、国会議員、関係担当官に、韓国原爆被害者の窮状を訴え、早急に解決策を講じてくださるようお願いするために、日本に参りました。

大臣は、昨年、訪韓なさり、韓国の被爆者に希望を与えてくださるようなお言葉を数々述べられ、その後も継続して在外被爆者のための措置を講究しておられます。また、最近の国会においても、「被爆者はどこにいても同じである」という、ありがたいご答弁をなさいました。

振り返ってみますに、第二次世界大戦末期の1945年8月、広島、長崎で原爆の洗礼を受け、病に冒された体を引きずり帰国した4万3千名余の韓国人被爆者のうち、現在生存中の被爆者は、その4割である1万5千名ほどでしょう。

私たち韓国原爆被害者は、57年間、病名もはっきりしない病苦にさいなまれ、あらゆる社会的偏見に苦しめられながら、かろうじて生きながらえてき、今この瞬間にも苦痛のなかで生きています。

しかし、私たち韓国原爆被害者にとっては、日本政府の差別的待遇がなによりも耐え難いものであります。

それは、同じ被爆者でありながら、それも同じく「日本人」として被爆した身でありながら、被爆者援護のための法律である被爆者援護法が、私たち韓国に暮らす被爆者には適用されないことです。

「被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給要求」に対する原告である郭貴勲と李康寧の2名の被爆者の勝訴は、大臣が述べられたお言葉の根拠になっているものと、考えます。まさに、日本の司法当局と行政当局の意見が一致している証拠です。

にもかかわらず、その勝訴判決に対して控訴し、上級裁判所に再び争いを持ち込まれたことは、日本政府の二律背反的な処置と言わざるを得ません。まことに遺憾であります。

坂口大臣様!

日本は国際的にも先進文明国であり、人権を尊重し、世界平和と人類福祉の向上のために、活発な活動をしているという事実を、私たちはよく知っており、また、そのことに対して尊敬と声援を送ることを惜しみません。

日本は今や、人類史上最も悲劇的な被爆者問題に対して、大乗的な解決のために決断をすべきです。

私たちは日本の経済事情もまた、世界経済の流れと同様に、平穏ではないと聞いており、ともに憂慮しております。しかし、そうはいっても、今日の日本経済が、人類史上最大の悲劇的な被爆者問題の解決に、手をつけられないほどのものではないと思います。

不足しているのは、解決しようという意思と勇気です。

私たちは、日本が在外被爆者の援護問題を解決した暁に受けるようになるであろう国際的地位の上昇を、ともに喜ぶでしょう。

坂口大臣様!

この度、厚生労働省で「在外被爆者援護に関する当面の対応」として打ち出された施策内容のうち、「被爆者健康手帳等在外被爆者の処理に関して、法令上の規定整備を行なう(すなわち、海外に居住する場合の申告規定の創設、被爆者健康手帳が日本国内のみで有効であるという事実の明記等)というものがありました。

これは、日本政府が今後、郭貴勲や李康寧のような訴訟が提訴されないよう、源から封鎖するために、規定整備という名のもとに、在外被爆者たちに不利益をもたらす措置だとみなすほかはありません。

この点、どうか、もう一度お考え直しくださり、在外被爆者たちをこれ以上悲しませることのないよう、ご善処くださるよう、お願い申し上げます。

坂口大臣様!

私たち韓国原爆被害者は、好むと好まないとに関わらず、被爆当時は日本国民でした。私たち韓国原爆被害者問題の解決は、被爆当時の国籍を原点として、始めなければなりません。

私たちは、その被爆による被害を補償し援護するよう求めているのです。

その後、韓国に帰国後に起きたことに対する補償を要求したり、帰国後のことが原因の病気を治療してくれというのではありません。

すべては、被爆当時の問題に帰着します。これは大原則であり、この原則を歪曲してはならないでしょう。

坂口大臣様!

私たちにはもはや時間がありません。体は年老い、病苦は深刻化するばかりです。

一日も早く日本の被爆者と平等に援護してくださいますよう、一日も早く被爆者援護法に基づく援護施策を実施してくださいますよう、再度、声を大にして要望いたします。

いずれなさるべきことなら、これ以上遅くなる前に、ご勇断を下さり、私たちを悔恨と苦痛から抜け出させてくださいますよう、切にお願い申し上げます。 大臣がますますご健勝で、やり甲斐のある大きなお仕事をなさいますよう、お祈り申し上げます。

(以上)