昨年6月の郭裁判一審判決後、坂口大臣の呼びかけで設置された「検討会」の、ごく主観的な傍聴記を少し記させて頂きます。 今回の「検討会」は公開で5回行われ、第1回は8月1日でした。よく冷えた厚労省の大きな会議室中央に森亘座長(日本医学会会長)と5人の委員が、右手にはずらりと官僚方が着席。どの委員がどんなお考えなのか、手許の資料とお顔を見比べながら期待と不安にかられます。在外被爆者のこの55年余の苦しみが改めて胸に迫るのを感じつつ、ここでしっかり見守らなければという思いでした。 少し遅れて見えた坂口大臣は「今まで必ずしも十分でなかった在外被爆者に関する議論を改めてお願いしたい。年内に方向性を」と、会の趣旨を述べられ、間もなく退席。大臣は新しい方向をと願って会を設置されたのでしょうが、今までの経緯を説明する事務方の口調の中に何か温度差を感じさせられました。 第2回は残念ながら私は欠席。第3回は韓国から崔日出氏、米国から倉本寛司氏、ブラジルから森田隆氏が招かれ、それぞれの地の被爆者代表として、切々と現在に至る被爆者の状況を訴えられました。各委員からの質問では、被爆者の具体的状況など大事な内容を引き出す質問があった一方で、最も長く繰り返しなされたのが伊藤千賀子委員の各国の医療、保険制度に関する質問でした。お三人とも専門家ではないので当然ながら詳しくは答えられません。ご自分は仕事上、知識も資料もあるのに、はるばる招いた方々の貴重な時間を何でこのことばかりに使うのか、あまりに不思議だったので、終ってからご挨拶に行ってお尋ねしたところ、自分は知っているが知らない方もあると思ったので、とのこと。考えてみると医療と健康管理手当は不可分、手当が一人歩きしないようにというのが国側の固守しているスタンスです。医療制度がこれだけ違っているのだから、それと不可分の手当だけを各地の医療に接続させるのは無理、ということをわざわざお三人フ前で証明したかったのか、何とも解せない気持ちでした。 第4回は論点整理のためのフリートーキング。中島竜美氏も本紙32号に書いておられるように、ここでようやくスタートラインに立った感じです。次は最終回で原案の検討になるのでしょうが、もう大体腹案がおありなのか座長は泰然としておられます。 各委員からはそれぞれの専門を通しての考えが述べられ、特に土山秀夫委員が緊急性からも手当で救済を、と強調されたのは心強いことでした。 この第4回の後に、委員と厚労省による非公開の報告書起草委員会があって、最終回は12月10日に開かれました。提出された報告書案にさらに意見が出され、訂正されました。その内容については別途ご覧ください。いろいろ書いてありましたが、健康管理手当に関し、「金銭的給付のみを行う等、部分的適用を図ることは法の趣旨を大きく逸脱するし不適切。『基金で』という考え方はある」、とされたのにはがっかりしました。会が終ってすぐ、「手当」救済を言われた土山委員に伺いに行ったのですが、今は「基金」で行くしか手だてがない、と語られ、壁の厚さを感じました。 しかし最終回の訂正の時に、「結論」の第一として「共通の認識」という項目がきちんと立てられ、「その現在の居住地によって援護の程度に差をみることは不合理であるというのが各委員共通の考えである」と明記されたことはせめてもよかったと思います。高齢の被爆者の方々に本当に申し訳ないと思うのですが、希望を失わず歩み続けたいと願っています。 |