今後、検討したい(坂口厚生労働大臣)

法に明文化されていない(篠崎健康局長)

―厚生労働省への中川智子議員の質問より―

 本年三月十六日、厚生労働委員会で、社会民主党・市民連合の中川智子議員が、情と理を兼ね備えた質問をおこない、右の答弁をひきだした。以下はその議事録全文である。

 ○中川智子委員

 在外、日本以外に住んでいらっしゃる被爆者の方に対しての質問をさせていただきます。

 朝鮮民主主義人民共和国に住まわれる原爆被害者の実態と医療状況を把握するために、今月十三日、三日前から、外務省、厚生省そして日本赤十字の調査団がピョンヤンに派遣されています。これは、昨年の二月に、在日本朝鮮人被爆者連絡協議会と私どもが招聘させていただきました朝鮮被爆者実務代表団が来日した際に、外務省、厚生省との懇談会で、外務省側からこのようなお話がありました。

 両国間には難しい問題がありますが、被爆者の苦しみ、国籍やどこに住んでいるかとかは、関係ないと考えています。純粋な人道的観点から関係当局と協議し、被爆者支援が今後の課題になると考えています。お国の被爆者や治療の状況など情報がないので、共和国の協力を得て被爆者にそのような協力があり得るのかを検討し、今後の協力の第一歩として互いに意見を交換したいという発言をきっかけに、今回のこの共和国への訪問調査団が実現いたしました。関係者の大変な御努力に心から敬意を表するとともに、一日も早い被爆者支援が実現することを期待いたしまして、私の質問に入りたいと思います。

 まず第一に、在韓、韓国にお住まいの被爆者に対しては、人道的な医療支援として四十億円が支払われました。でも、この四十億円も二〇〇三年には使い果してしまう試算が大韓赤十字の方から出されています。

 二〇〇三年以降、在韓被爆者は再び何の援助策も受けられない無援護の状態になります。被爆者に対する人道的な援助というのであれば、被爆者が生きている限り医療上、社会生活上の援護策をする必要があると考えています。

 日本国内では、被爆者援護法により、被爆者が亡くなるまで医療上、生活上の援護策が実施されています。このことから見ましても、韓国に住む被爆者に対して、人道的な見地からも、一時金を一度出して後はもう知りませんよ、そのようなことでは済まされないと思うのです。ましてや、北朝鮮や韓国の被爆者の方々は、日本の朝鮮植民地支配の結果、広島や長崎に来て被爆した人たちです。この人たちに対して継続的な援護対策が必要だと考えます。

 この四十億円に関しては人道的な援助ということで外務省がお金を出しましたが、本来これは厚生労働省がしっかりした社会保障としてするべきものだと私は考えておりますが、大臣の御答弁をお願いいたします。

 ○桝屋副大臣

 私の方からお答えを申し上げたいと思います。

 中川委員とは被爆者援護法の国籍の問題についてずっと議論させていただいているわけでありますけれども、最初に厳しいことを申し上げるようでありますが、国外に居住する被爆者の方々につきましては、基本的には健康と福祉を預かるその国において対応していただきたい、こう考えているわけであります。

 ただ、今、御指摘のありました四十億円のお話でありますが、一時金という話を委員はされましたけれども、基金ということも聞いているわけでありますが、経緯は今お話があったとおりでありまして、韓国に居住する被爆者につきまして、人道的な観点から平成二年の五月に医療支援を行う旨を日本側から意思表示をいたしまして、海部総理の時代だというふうに聞いておりますけれども、外務省において、平成三年度、四年度、二年間続けまして計四十億円を大韓赤十字に対して拠出をしたというふうに私どもも聞いているわけであります。

 これが委員がおっしゃった一時金ということなのか、私は基金というふうに聞いておるわけでありますけれども、その内容についてはやはり外務省が担当して行われたということでございます。したがいまして、この基金、今枯渇しているというお話もありましたけれども、これはやはり外交上の判断に基づいて支援措置として講じられたものでありまして、厚生労働省として、その現状あるいは今後どうするかというような問題について、この四十億円の部分について申し上げる立場ではないということをぜひ御理解いただきたい。今お話もあったとおりであります。

 厚生労働省といたしましては、従来から、

 韓国に居住する被爆者の方々が渡日をされた場合には被爆者援護法に基づきまして医療費の援護を行っておりまして、引き続き誠意を持って対応していきたい、このように考えているところであります。

 ○ 中川(智)委員

 桝屋副大臣からお答えがありましたが、私は四十億円がどうのこうのと言っているのじゃないのです。本来は厚生労働省がしっかりやるべき施策なのにもかかわらず外務省が出したその四十億円で打ち切るおつもりなのかどうか。厚生労働省として今後この在外の、特に韓国の被爆者の方々に対してどうするのかということを伺ったわけです。そこに対して明確な御答弁を端的にお願いします。

 ○桝屋副大臣

 お答えをしたつもりであったのですが、四十億円そのものが、私ども厚生省、今は厚生労働省でございますが、旧厚生省として判断をして必要なものだということで拠出をしたものではないということ。先ほど委員もお話がありましたように、人道上の観点から外交ルートで行われたものでありまして、したがって、この後をどうするか、これを踏まえてどうするかということを、ただいまの厚生労働省で考える立場にないということを先ほど申し上げたわけであります。

 私ども厚生労働省といたしましては、渡日をされた場合の支援についてしっかりとやっていくという立場を申し上げたわけであります。

 ○ 中川(智)委員

 私は、被爆者というのは、地球上のどこに住んでいても被爆者であることは変わりがない、そのように考えていますが、それはそうですね、事実ですよね。桝屋副大臣どうお考えですか。

 ○ 桝屋副大臣

 突然のお尋ねでありまして、今何とおっしゃいましたか、被爆者というのは:::(発言する者あり)わかりました。それは恐らく、中川委員は、広島、長崎で被爆をされた方、被爆という言葉の概念でいくと委員のおっしゃるとおりであろう、このように思います。

 ○ 中川(智)委員

 日本には被爆者援護法というのがあります。ですから、外国にいらした方も皆さん被爆者手帳を持っていらっしゃる。それを言っているわけですね。ですから、一度、被爆者と認定されて、そして被爆者として日本の国の中にいたらその適用を受けるけれども、一たん日本から外に出てしまえば被爆者としての扱いを受けない実態がございます。

 これは単に韓国や北朝鮮にお住まいの被爆者のみならず、北米や中南米や中国の被爆者たちからも、日本政府に対して援護策を求める声が上がり続けています。本当に身銭を切って訴えに出しています。これらの国の被爆者のなかには、日本に来て被爆者手帳を取得したことのある被爆者がたくさんいまして、手帳は持っているけれども、それは外に出て暮らしてしまうと本当に効力がなくなるという大変矛盾した理不尽なことが現実にあります。

 そして、海外から日本に訪れて被爆者健康手帳を取得して、そして日本を出国したことによって被爆者としての権利を失ったこの被爆者の実態調査というのも、きっちりと行なわれていない。ですから、今回北朝鮮に行ってその被爆者の実態というのもお調べになるのでありましょうけれども、アメリカそれから中国や韓国、そこに被爆者手帳を持っていながら出国して在外に住まれている人が何人いるのか、厚生労働省のお調べでの人数を明確にお答えください。

 ○ 篠崎政府参考人

 ご質問でございますが、現在の被爆者援護法におきましては、出国に際して被爆者健康手帳を返還する法律上の義務はございません。したがいまして、外国に行かれている方の被爆者数を正確に把握することはできておりません。

 ○ 中川(智)委員

 それでも、ブラジルとかアメリカとかの方は、二年に一回ですか、医師が行ってちゃんと治療をしているのですから、人数がどれくらいいるかというのはわかっているはずですし、韓国にもちゃんと被爆者協会ができました。北朝鮮にも、今回は被爆者協会が受け入れて、それでやっているわけです。把握していないって、手帳を日本で取っているのですよ。その人たちが海外に行ったというだけで人数がわからないというのはおかしいでしょう。わかっているだけでもちゃんと答えてください。

 ○ 篠崎政府参考人

 今御答弁申し上げたことを前提にいたしまして、私どもが把握している数字を申し上げますと、韓国につきましては、これは、韓国政府の方でお調べになった数字は、平成一二年一二月現在二千二百四人でございます。それから、在韓被爆者協会の推定では二万人という数字も聞いております。

 また、アメリカの方でございますが、北米では、これも平成七年の私どもが承知をしておる数字ということでございますと、米国、カナダ合わせまして千六十六人でございます。それから、南米の方でございますが、平成一二年現在、何らかの形で把握しているというものが百八十人という数字でございます。

 ○ 中川(智)委員

 最初からちゃんとそう答えてください。本当にどんなふうにお思いか。

 坂口厚生労働大臣、先ほどから私はずっと大臣にお答え願いたいのですが、公明党さんもこの問題に関してはずっとしっかりやらなければということをおっしゃっていた党ですし、特に坂口大臣はお医者様でもいらっしゃいます。被爆されて、平均年齢が、先ほどの小沢議員のように戦争中の事柄に関しての方々は、特に被爆者の方々は、たくさんの病気を抱えて生活していらっしゃいます。

 日本で被爆したからといって、海外に自分のふるさとがあれば、帰るのは、帰りたいのは当たり前です。そのことをよく考えていただきたいと思いますし、被爆者援護法というのは、適用条件として、受給者が海外に出た場合の法律の中身は打ちきりとも書かれていませんし、海外への移住をしても受給可とも書かれていない。全くこれは法律的には、海外に出ても、この援護法が受けられないという法的な根拠は一切ないのです。

 それが、一九七四年、都合のいいような通達一本によって、在外の被爆者の方たちはこの援護法の適用を受けられなくなりました。人道的な援助で外務省がやっているからという答弁では済まされません。しっかりした御答弁をお願いします。

 ○ 鈴木委員長

 答弁は。

 ○ 中川(智)委員

 大臣に決まっていますでしょう。

 ○ 鈴木委員長

 健康局長。

 ○中川(智)委員

 委員長。おかしいですよ。この問題に関しては大臣に通告していますよ。

 ○ 鈴木委員長

中川さん。委員長に整理権がありますから。

 ○ 篠崎政府参考人

 大臣がお答えになる前に事務的なことで申し上げますと、現在の被爆者援護法につきましては、国内に居住をする者あるいは現在している者を法的には対象として規定しているもの、それの事務的なものを今御指摘のございました局長通知で示しているもの、このように理解をいたしております。

 ○ 坂口国務大臣

 申しわけありません。頭の中が整理できていないものですから、少し事務当局の整理のできたところを聞きたいと思ったわけでございます。

 御指摘のように、広島なり長崎で起こりましたことが、それからもうかなり歳月がたっているわけでありますし、そして今までの考え方は日本の国の中で処理をする、外国に行かれたときにはその国に処理をしてもらうという振り分けをしていたと思うのですね。

 韓国の方と北朝鮮の方とはこれまた違って、北朝鮮の場合には国交がまだないわけでありますから、今度行かれた皆さんがどこまでお調べになっていただけるかという問題があるというふうに思います。

 また、国と国との問題もあるというふうに思いますが、韓国の場合には、きちんと国交を正常化した国でありますしいたしますから、日本にお住まいで韓国に行かれる、また韓国から日本にお見えになった場合には、それはちゃんと今までどおりまたできるのだというふうに思いますけれども、いわゆる韓国人としてずっと韓国でお住まいになっているときに、日本の国の中で行うことと同じことができるかどうかというのは、これはやはり日本の国の法律を韓国にまで全部同じように適用するということはなかなか難しい面もあるのではないかというふうに私は思います。

 ですから、こういうグローバルな時代ですから、日本の国が責任を持ってやらなければならないこと、そして日本の国にお越しをいただいて日本の国で処理できる問題は、例えば医療の問題ですとかそういうことは処理ができるわけでありますから、お越しをいただいてやるということにすればいいというふうに思うのですが、しかし、最近は韓国の方も医療も進んでまいりまして、一々日本に行かなくてももう韓国の中でやれるから、こちらでやれるようにしてほしいというお声があることもお聞きをいたしております。

 いずれにしましても、これを決めましたときには、そういう今のような状況ではなくて、かなり国というものの限界を明確にして決めた取り決めだというふうに思いますが、最近はこれだけグローバル化してきたわけでありますから、そこのところを一体どうするかという問題はあるだろう。しかし、国籍の問題はありますから、国籍の問題を踏まえなければいけない。その辺の仕切りを今度どうしていったらいいのかということを頭の中で考えていたものですから、なかなかまとまらなかったので立たなかったということでございます。

 ○ 中川(智)委員

 日本人であっても、被爆者だけれども子供さんが海外に転勤になったからといって住んでいらっしゃる方とか、そして移住して住んでいらっしゃる方も、皆さん失効するという状態になっているのです。本当にあなたたちに人間の心というのがあるのかという答弁でした。

 坂口大臣が、もしも強制的に連れてこられて、原子爆弾で被爆して、でも自分の国は、ふるさとはこの日本ではない。そのときに、自分の国に責任があると思いますか。

 日本に責任があるとお思いでしょう。だって、法律的にもここのところをはっきり書かなかったのは、被爆者は、日本で被爆して被爆者手帳をとれば、どこに住んだってやはり被爆者であることには変わりがないし、それに対しての医療そして生活の援助をするということではっきり書き込まれなかった、そのように認識しております。

 先ほどの局長の御答弁は、法的な裏づけというふうにおっっしゃいましたが、法的な根拠はないですよね。通達一枚で動いている、そこを確認したいのですが。はっきり、これだけでいいですから、法的な根拠を言ってください。

 ○ 坂口国務大臣

 答えます前に一言だけ言っておきますが、今申したように、今先生が御指摘になりますことも僕は全部理解できているわけではありません。少し理解できないところもありますから、もう少し私も整理をいたします。もう少し検討いたしますが、現在の段階における状況というのは局長の方から答弁をさせます。

 ○ 篠崎政府参考人

 御指摘のように、法文上に今のようなことが明文化されているわけではありませんけれども、この法の趣旨から申し上げて、今までるる申し上げましたように、私どもとしては国内に居住または現在している方々に対してのいろいろな施策であるというふうに理解をいたしております。

 ○ 中川(智)委員

 もう終わりますが、法的なあれはない、勝手に都合のいいようにやっているというふうに認識しました。

 ありがとうございました。

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