韓国で三菱を提訴
「韓国原爆被害者協会」会報より
(2000年7月1日より)

 戦時中、三菱重工業の徴用工として広島に連行され、被爆し韓国原爆被害者協会の会員6名が5月1日、釜山市中区中央洞の三菱重工業韓国連絡事務所と日本にある本社を相手どって、強制連行、監禁、賃金未払い、原爆被害の放置等に対して、一人あたり韓国1億100万韓国ウォン、総額6億600万ウォンの損害賠償を求める裁判を釜山地方法院(地裁)に提起した。原告は朴昌煥(パク・チャンファン)現原爆被害者協会畿湖支部長ら。 三菱に対する裁判は、昨年3月、日本の広島地裁で敗訴となり、現在広島高裁で控訴審が行なわれているが、今回これに平行して被害国韓国での裁判を起こすことにしたもの。 一審での判決は日本の裁判官の歴史認識の欠落を示すものであるという批判があるが、韓国での裁判がどのような展開をするか、またその判決が日本の裁判にどのような影響を与えるかが注目されている。
 韓国の裁判での弁論に当たるのはは民弁協所属の張完翼(チャン・ワンイク)、崔鳳泰(チェ・ポンテ)両弁護士ら。韓国でも「三菱徴用工支援会」が結成され、法的対応とともに、韓国内で三菱製品の不買運動などのキャンペーンを通してこの問題を訴えてゆこうとしている。韓国原爆被害者協会の崔日出(チェ・イルチュル)会長は提訴にあたって記者会見で、「今日の提訴は三菱重工業という一介の日本企業の責任を問うものであるが、それに止まらず、正義と人権の価値を認識し、不幸な過去を再び繰り返さないためには過去の責任を決して座視することができないがゆえに、私たちの意志をひろく知らせるためのもの」であると強調した。この日提訴後、原告と支援者たちは釜山駅広場で開催中のメーデーに参加して支援を訴えたのち、支援にかけつけた日本の「在韓被爆者を救援する市民の会」(大阪)の市場淳子さんらも交えて三菱連絡事務所前までデモ行進を行なった。

 注・日本国内だけでなく、外国で日本企業を相手に訴訟を提起する例は、すでに米国でもいくつかの訴訟が行なわれ、注目されている。

(訳・まとめ 山口明子)