おたかの道 2 もうここまで、という突き当たりの一歩手前まで来た時だった。 『なにか獣を感じさせるような太い木の枠組みの鈍重な札が蹲っていた。 真吉は、道などないではないか、とまず思った。 屋敷の裏門に似た戸が行く手を阻み、その足許を細い流れが走っている。 また、人家に遮られて、先がどうなっているのかは見届けられない。 『とうとう出会ってしまったらしい・・・』と真吉は大きく息をついた。 『行けば行くほど、それは不思議な道だった。左側にあるのは広い敷地をもつ旧農家ででもあるのか つまり、ありふれた校外住宅のすぐ背後に、冗談のように石畳の遊歩道がひそんでいるのだ。』 最初の四つ角で流れは横から来た水路と合流し、俄かに水の量が多くなる。 それだというのに、ほんのしばらく歩くとまた水は薄く勢いを失ってくる。 ・・・、両側にアパートが多くなった。・・・ 『・・・行く手に立ちはだかったのは、中に乗用車の納まった伸縮式の黒い鉄の門扉だった。 もう一度引き返してみようか、とちらっと思ったが、真吉はすぐその考えをうち消した。 いきなり名前を呼ばれて真吉はぎくりとした。 「実はね、急に思い立って、〈お鷹の道〉というのを歩きたくなったから・・・」 言葉を跡切らせた渡辺が一度空を仰いでから急に顔を近づけてきた。 「亡くなってたんだよ、もう6年も前に。」 空がずうんと高くなった。 引き留める渡辺に、真吉は別れを告げて駅への道を歩き出した。 『真吉の足は、先刻のバスで登った坂の途中に出ていた。とろとろと坂を下った底に 『しっかりと両岸をコンクリートで固められ、その上に等間隔でコンクリートの桁が渡されている ☆☆ 真吉が目にしたのは、「恋ヶ窪」を目前にする野川の源流の姿でした。 礎石だけの武蔵国分寺、変わり果てた武蔵野の野川、人工の湧水
|