英語論文・教科書の読み方のヒント


みなさんは,英語の論文や本をどのぐらいの早さで読めますか? ネイティブの研究者が読む早さを見ていると,結構早いです.例えば,NatureやGeologyなどの4ページ程度の論文なら,内容にもよりますが,5-10分ぐらいで読んでいるようです.Volcanoes (Fisher et al., 1997)などの教科書でも仕事の合間に1-2週間で読んでしまうようです.われわれが研究を行ったり,論文を書く場合,他の世界中の研究者がどの程度までその研究を進めているのかを知っておくために,相当量の英語の論文を読んでおく必要があります.また,学生の場合,ゼミでの論文紹介,英語の教科書の輪読などでもかなりの英語を読む必要があるでしょう.さらに,修論や博士論文を書くためにも相当量の参考文献を読まなくてはならないでしょう.

つまり,できるだけ日ごろからたくさんの英語の論文や教科書を読めるに越したことはないのです.せっかく高いお金をだして買った教科書や,高いコピー代を払って手に入れた論文を読まない手はありません.手に入れても読まなければ,それらはただの紙束にすぎません.

そこで,最近私が実践している方法を紹介しましょう.特に学生さんには参考になるかも?しれません.

1.まず,論文では,アブストラクトを読みます.一通り図も見て下さい.そしてこの論文が本当に価値のある論文かどうか,本当に読みたい論文かどうか判断します.読む価値のない論文を読んでも時間の無駄です.

2.次に,本文を読む際には,英語の授業ではないのですから,いちいち単語の意味を書き込まないことです.こうすると,だいぶ早く読めます.2回目に読んだときに思い出せなかったらまた辞書を引けばいいでしょう.もちろん,読んでいて気のついたことや,アイデアなどは忘れないうちにメモしておきましょう.

3.英和辞典は使わない.できれば英英辞典を使いましょう.英語で読みながら,いちいち頭の中で日本語に訳していると遅くなります.英語を読むときには英語のまま直接理解したいものです.そのためには,英英辞典の方がよいと思います.微妙なニュアンスは,英和辞典で完全に1対1に対応していない言葉に置き換えた瞬間に失われています.私が今使っていてなかなか使い勝手がいいと思っている英英辞典は「Longman Dictionary of contemporary English -third edition- (1995)」です.日本でも桐原書店から発売されているはずです.この英英辞典は,基本語2000語で書かれているので,われわれ日本人でもすぐに意味がわかります.それにイラストや例文が多く,どういう風に使うのかが分かりやすく解説されています.基本語3000語には記号がついていて,Spoken EnglishとWritten Englishでどの程度頻繁に使われているかも示されています.UCSBの学生は,American Heritage を使っている人が多いようですが,使ってみた感じではやや難しい印象があります.

4.毎日少しずつでいいから,英語の論文や教科書を読むくせをつけましょう.日本語の文庫本でも毎日読んでいるうちに,早く読めるようになるでしょう? それと同じです.「習うより慣れろ」です.例えば,毎日GeologyかScineceの論文を1つだけでも読んでみるのはいかがですか? (私の場合,ようやく最近では,4ページぐらいの論文なら15-30分程度で読めるようになりました.これでもネイティブよりはだいぶ遅いですが..)

「早さは力なり??」です.たくさん読んでいる方が,英語で論文を書く場合でも言い回しに困らないかもしれません? たくさん英語の論文,教科書を読んで,世界中の研究者と肩を並べようではありませんか.

最後に読んでみてなかなかよかった参考文献を一つ紹介しておきます.

「サバイバル英語のすすめ」西村肇(1995) ちくま新書

日本人が間違えやすい"r"と"l"の発音の問題から始まって,日本語の「てにをは」にあたる"a"と"the"の冠詞の使い方までくわしく説明してあります.なかなかためになる本なので,ぜひ読んでみて下さい.

少しでも参考にしていただければ幸いです.

(Feb. 3, 1998)