素晴らしき日 ★★☆
(One Fine Day)

1996 US
監督:マイケル・ホフマン
出演:ミシェル・ファイファー、ジョージ・クルーニー、メイ・ホイットマン、チャールズ・ダーニング



<一口プロット解説>
ともにシングル・ペアレントであるミシェル・ファイファーとジョージ・クルーニーが、大事な仕事を控えた一日であるにもかかわらず、それぞれの子供を抱えたまま行動しなければならなくなってしまう。
<雷小僧のコメント>
最近の映画は余りたくさん見なくなったこともあってか、この手の所謂ロマンチックコメディでこれはというのがあまりないなと思っていたのですが、この「素晴らしき日」はなかなかいいですね。もともとこういう映画は初めから最後迄展開が読めてしまう場合が多くこの映画もその例外ではないのですが、それは余り気にする必要はないでしょうね。期待通りにストーリーが進展しない方がこういう映画の場合は問題であると言ってもよいでしょう。まあロマンティックコメディとしては多少テンポが速いような気もしますが、この点に関しては実に安心して見ていられます。金魚鉢や人形や猫などの小道具も揃っていますし(私目には金魚鉢抱えて走るなどという芸当は出来そうにありません)、アメリカ産のコメディ映画には必須の精神分析医もしっかりと登場します。よくこういう映画で、主人公が精神分析医と相談するシーンがあると必ず何やらわけのわからない会話が交わされるのですが、その点までもきちんと踏襲されています。
さて、けれどもこの映画はやはり90年代の映画であって、70年代以前のロマンティックコメディとは違うなという点がいくつかあります。まず1つは、子供がキーポイントとなっているという点です。昔のロマンティックコメディを全部見ているわけではないのではっきりとは言えませんが、昔のこの手の映画にはほとんど子供は登場しなかったように思います。勿論、どちらかというと子供向けの映画には子供がキーとして登場することはあったとしても、あまり大人の映画に子供がしゃしゃりでてくることは少なかったのではないでしょうか。第2点としては、1点目とも関係するのですが、ミシェル・ファイファーもジョージ・クルーニーも離婚したシングルペアレントとして描かれている点です。昔の映画では、シングルペアレントというのは、どちらかと言えばアブノーマルな状態として描写されることはあっても、この映画のようにそれをこうもノンシャラントに描くということはまずなかったのではないでしょうか。それから、これは当たり前の話なのですが、最近の映画で目立つ小道具としてパソコンと携帯電話が挙げられるのですが、この映画程(携帯)電話による会話が多く、プロットの進展自体がそれにかかっている映画はなかったように思います。最近の映画の中だけで比較したとしても、異常な程携帯電話でしゃっべているシーンが多く、恐らく10年前にこの映画のスクリプトを書くことは不可能だったでしょう。最後の点として、男のクルーニーと比べてどちらかというと女性のミシェル・ファイファーの方が何でもアクティブ且つアグレッシブに動くことが挙げられるですが、この点も時代の移り変わりを示しているように思います。確かに女性の方がアクティブであるようなロマンティックコメディは昔にもありましたが、それはまさにそうであることがコメディ度を上げるという計算があってそうしたように思われるふしがあるのに対して(70年代初頭でもたとえば「おかしなおかしな大追跡」(1972)を見れば分かるようにまだそういう点を生かしてコメディを作ることは出来たのですね)、現代ではそれが至極普通の状態なのでそれだけではコメディの出汁にはならないのです。まあ、映画を見ているとこのように時代の流れがよく分かる場合があります。元来今の映画を昔の映画と比較するのは好きではないという人も少なからずいるとは思いますが、その時代その時代のものの見方や風潮が比較によってかなり明瞭になってくるという点においてはそのような見方もまた面白いのではないでしょうか。
それから、ミシェル・ファイファーとジョージ・クルーニーという取り合わせもなかなか良かったのではないでしょうか。クルーニーは、ケーリー・グラントの再来と時に言われるようですが、確かにどこかケーリー・グラント的にソフィスティケートされたところがあるようですね。ケーリー・グラントがこの手のロマンティックコメディを得意としていたことをも考え合わせてみると、クルーニーの起用はこの映画に大きなプラスであったと言えるのではないでしょうか。一方のファイファーは、40近くなってもやはりビューティフルですね。よく40才を過ぎてからの方が魅力的になる女優さんやその逆に30代で随分と年を取ったなと思わせる女優さんがいるのですが、この人の場合は若い頃から40過ぎまで一貫して魅力的であるという希有な(希有なとは我乍ら少し大袈裟な表現ですね)女優さんかもしれません。元々ロマンティックコメディというのは、あまりにも若い女優さんでは勤まらないように思われるふしがあるのに加えて(キャサリン・ヘップバーンやドリス・デイを思い起こしてみて下さい)、なお且つそれでも魅力的ではないといけないのですが、ファイファーはこの条件にピタリと当てはまるのですね。まあいずれにしても、なかなか面白い映画でした。最後に付け加えておきますと、クルーニーのボス役で名脇役チャールズ・ダーニングが相変わらず丸々として元気に出演しているのを見て安心してしまいました。

2000/06/03 by 雷小僧
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