Tunes of Glory ★★★

1960 UK
監督:ロナルド・ニーム
出演:アレック・ギネス、ジョン・ミルズ、スザンナ・ヨーク、ゴードン・ジャクソン

左:ジョン・ミルズ、右:アレック・ギネス

週刊誌的な言い方をすると、軍隊内での権力抗争を赤裸々に綴った作品であり、見る者を人間不信に陥らせるような激烈ないがみ合いが最初から最後まで続き、軍隊であろうが民間企業であろうが人間関係がこれほどまでに捩れていれば、誰であろうがそれに巻き込まれればあらぬ方向に根性が曲がること必死であろうと思わせます。そのような陰湿ないがみ合いを延々と繰り広げているのは、誰あろうアレック・ギネス及びジョン・ミルズというイギリスの名優二人なのです。前者が演じている表面的には親分肌で気の良さそうな酔っ払いのスコットランド人司令官は、実は自分の取巻き連中以外に対しては敵意しか抱いておらず、自分の気に入らない連中に対して向けられた小学生のいじめにも近い陰湿な態度は、すさまじいの一言です。但し、彼のいじめが原因で、後者が演ずる将校が自殺し、恐らく罪の意識に囚われたがゆえの彼のその後のセンチメンタルな行動は、前半の態度からすると少しアウトオブキャラクターであるように見えます。「Tunes of Glory」を見ていると、人間という生き物は、どんな時代でもどんな国でも似たような愚行を繰り返していることにふと気付かされ、あのような陰湿さは日本人の専売特許ではなかったのかと妙に安心できるところすらあります。権力関係が明確化された軍隊という組織の中において発生する権力抗争を通して、またアレック・ギネス及びジョン・ミルズという演技派俳優のパワーハウスパフォーマンスを通して、人間という生き物のエグさの極限様態が描かれていると言っても決して大袈裟ではありません。正直いえば、現代のオーディエンスにはまず受けないであろうことが十分に予想されますが、パワーハウスパフォーマンスをウリとするこの手の映画が好きな人にはこたえられない作品であることは請合えます。ほぼ野郎ばかりが登場する映画であるとはいえ、デビッド・リーンの最初の奥さんであったケイ・ウォルシュと共に、スザンナ・ヨークが出演しています。スザンナ・ヨークは、当作品で映画デビューしたはずであり、イギリス出身の女優さんにはなかなか見られないフレッシュな魅力を発散させています。その意味では、この典型的にイギリス的で渋く地味な作品の中において、彼女はやや浮いて見えるのは確かですが、彼女のような華やかな存在がなければ、ストーリーのあまりのエグさにオーディエンスは気が滅入って立ち直れなくなるかもしれません。


2002/07/28 by 雷小僧
(2009/02/01 revised by Hiroshi Iruma)
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