Bedtime for Bonzo ★★☆

1951 US
監督:フレデリック・デ・コルドバ
出演:ロナルド・レーガン、ダイアナ・リン、ウォルター・スレザク、ボンゾー(猿)

左から:ダイアナ・リン、猿のボンゾー、ウォルター・スレザク、ロナルド・レーガン

いよいよ、アメリカの新大統領が誕生するということで、今回はアメリカ大統領が主演した作品を取り上げることにしました。といっても、現役アメリカ大統領が、ドキュメンタリーであればともかくハリウッドの商業映画に出演するはずはないので、勿論未来の大統領という意味です。ということは、そうです、大根役者出身の誉れ高い、かのレーガンさんのことです。しかも、故レーガン大統領のキャリアの中でもどん底であると言われる「Bedtime for Bonzo」を取り上げました。なぜどん底かというと、ななななんと!ストーリー中で、未来のアメリカ大統領は猿のボンゾーに手玉に取られるばかりか、明らかに演技でも負けているからです。「Bedtime for Bonzo」は、1951年の公開作品であるとはいえ、ケネディさんやクリントンさん、或いは次期大統領のオバマさんもそうですが、現在の小生よりも若い40才台の年齢で大統領に就任することが少なからずある民主党出身の政治家と違って、ほぼ70才というアメリカ大統領歴代最高齢で大統領に就任した共和党のレーガンさんは、当作品に出演した頃は既に40才にならんとしていました。恐らく、自分がいずれアメリカ大統領になることが分かっていれば、若気の至りなどという言い訳が通用しない年齢にあって、恐らくこの作品には出演しなかったことは間違いないところでしょう。しかしながら、たとえ彼にとってはキャリアのどん底であったとしても、それは必ずしも作品自体が見るに値しないことを意味するわけではありません。勿論、未来のアメリカ大統領の無様な姿を見て思い切り笑うなどという意地の悪い見方をするオーディエンスも存在するかもしれず、確かにそれはそれで笑えますが、しかし未来のアメリカ大統領の存在を無視してでも文句無しに絶賛の拍手を送りたくなるほど、猿のボンゾーの演技が光っているのです。これでは、未来のアメリカ大統領も形無しであり、もしかするとレーガンさんは、エネルギッシュに後方宙返りを繰り返すボンゾーから、後に大統領にまで登りつめるパワーを汲み取ったのかもしれません。勿論、かくして「Bedtime for Bonzo」の真の主演は猿のボンゾーと見なすべきであり、その意味では当作品はディズニー的な動物映画であると見なせる一方で、レーガンさんとダイアナ・リン演ずる住み込みのお手伝いさんのロマンティック・コメディとも見なせます。しかしながら、猿のボンゾーの爆発的なパワーに圧倒されるのは仕方がないとしても、ロマコメ面においても、彼は人の良い娘を演じているダイアナ・リンにすらひけをとり、またキャラクターアクターのウォルター・スレザクにも当然の如く負けています。というのも、この手の作品に出演するには、彼はあまりにも表情のバリエーションがとぼしく、どうしても全体的に柔軟性がない印象を受けざるを得ないからです。確かに、もう少しスラップスティック度の高い作品であれば、かえって柔軟性の無さが活かせる場合もありますが、ヒューマンドラマの側面も持つロマコメではどうしても硬直したように浮いて見えます。いかんせん、一応二枚目として売っていた彼にしてみれば、スラップスティックコメディは論外だったことでしょう。これでは、彼はアメリカ大統領になる以外道がなかったことがよく分かります。もともとレーガンさんは、俳優としてよりも俳優協会の会長のような役職を歴任し政治的活動に秀でていたところがあり、その後も超保守派と見なされていた有名なバリー・ゴールドウォーター上院議員を支持するなど、保守政治家としての地歩を固めていくのです。因みに、彼は以前は、大統領選や予備選などで確かリーガン候補と呼ばれていたはずであり、70年代以前はロナルド・リーガンと表記されていたはずです。いずれにしても、レーガンの過去を知ることが出来るという特典は別としても、とにかく猿のボンゾーのエネルギッシュなパーフォマンスが素晴らしく、下手なディズニーの動物映画よりは面白い作品です。


2008/11/21 by Hiroshi Iruma
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