The Black Bird ★☆☆

1975 US
監督:デビッド・ガイラー
出演:ジョージ・シーガル、ステファーヌ・オードラン、ライオネル・スタンダー、リー・パトリック

左:ステファーヌ・オードラン、右:ジョージ・シーガル

正直言えば評判の芳しいとは言えない映画です。なにしろダシール・ハメットのというかボギーの出演していた名作「マルタの鷹」(1941)のパロディであり、ジョージ・シーガル扮するかなり間抜けな探偵がサム・スペード・ジュニアということで要するにボギーの息子という設定なのですね。しかも念が入っていることには41年版「マルタの鷹」にも出演していたリー・パトリックとイライジャ・クックがこの映画にも出てきます。殊に前者は、何と給料がまともに払ってもらえないので今も(サム・スペードの)息子の事務所にたむろしているという設定なのです。リー・パトリックは「マルタの鷹」ではボギーの秘書をしていたと思いますが、その頃は共演のメアリー・アスターに比べても随分おしとやかなレディを演じていました。けれども、この人1950年代を過ぎると急速にオバタリアン化して何やらオバタリアン役のスペシャリストのようになってしまい(そう言えばメアリー・アスターも晩年は意地悪婆さんのような役が多かったように思いますが)、この「The Black Bird」でもジョージ・シーガルといつもいがみ合いをしているオバタリアン(というかお婆さん)秘書を後年のこの人らしく演じています。それから「マルタの鷹」でメアリー・アスターが演じていた役に相当するであろうと思われるミステリアスな女性の役を、ここではフランス人のステファーヌ・オードランが演じていますね。確かにくだらないギャグ(殊に小人のナチやわけのわからないハワイアンが飛んだり跳ねたりしているのには参りますね)が入り乱れる傾向にある映画なのですが、それでもジョージ・シーガルのキャラクターがいいのですね。シーガルは60年代はシリアスドラマや戦争映画ばかりに出演していたのですが、この人の最大の特徴はケーリー・グラントの持っていたようなソフィスティケートされたコメディセンスにあり(まあ格としてはグラントよりはるかに落ちますが)、70年代になってコメディ的な映画に数多く出演するようになった彼の方が60年代の彼よりも遥かによく特徴が出ているように思っています。そういう中での一本としてこの作品を見ると結構楽しめるのではないでしょうか。尚、くだんのリー・パトリックはこれがラストフィルムではないかと思われます。


2001/07/21 by 雷小僧
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