The Birthday Party ★☆☆

1968 UK
監督:ウイリアム・フリードキン
出演:ロバート・ショー、パトリック・マギー、ダンディ・ニコルズ、シドニー・タフラー

左:パトリック・マギー、右:ロバート・ショー

後に「フレンチ・コネクション」(1971)や「エクソシスト」(1973)を監督するウイリアム・フリードキンの最初期の作品であり、また、ノーベル賞劇作家で先頃(2008年)亡くなったハロルド・ピンターの戯曲の映画化です。ウィキペディアには、ピンターの原作は、「興行不振により6日で打ち切り」と記されており、初期の作品ゆえに、若書きであるようなところがあったのでしょう。そのためか、映画化バージョンにも、万人向けとはとても言えないような晦渋さが明らかに見て取れます。70年代以後のフリードキンの作品と同じ娯楽性をこの作品に期待すると、とんでもない肩透かしを食らわされる破目になることは必至です。何しろ、ほとんどのシーンは、イギリスのみすぼらしい下宿屋に舞台が置かれている上、主演のロバート・ショーは、髪の毛は無茶苦茶で、無精ひげはぼうぼうというむさ苦しい出で立ちで登場します。当作品は、日本では全く受けないであろうという判断があったすれば、確かに、それは正しかったと見なして差し支えありません。また、それ以上に、現代演劇の映画化ということで、内容そのものが非常に捉えにくい側面もあります。とはいえ、あまりにも分かり切った作品よりも、抽象的な表現や象徴的な表現を好むオーディエンスには、「The Birthday Party」は、面白く感じられるかもしれません。その晦渋さのゆえにストーリーを紹介するのは極めて困難ですが、ビデオのパッケージに「見た目に空虚で瑣末な会話が、突然おかしみから非常に恐ろしいものへと変化する(seemingly inane and trivial conversation suddenly transforms from humorous to terrifying)」と記されているように、全体的に心理劇的な傾向を色濃く持つ作品であり、たった1つしかないはずのリアリティに対する人それぞれの見方がテーマであると考えられます。パトリック・マギー(アイルランド出身の俳優であり、サミュエル・ベケットの作品のいくつかは彼を念頭に書かれたそうです)が、ジーコジーコと音をたてながら新聞紙を短冊状にちぎるシーンは、作品の全てを物語る象徴的なシーンであると言えます。冒頭の唯一の野外シーンは、なかなかビューティフルであることを、最後に付け加えておきましょう。


2001/06/30 by 雷小僧
(2009/03/21 revised by Hiroshi Iruma)
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