殺しの接吻 ★★☆
(No Way to Treat a Lady)

1968 US
監督:ジャック・スマイト
出演:ロッド・スタイガー、リー・レミック、ジョージ・シーガル、アイリーン・ヘッカート

左:リー・レミック、右:ロッド・スタイガー

変態的な殺人鬼(ロッド・スタイガー)が中年女性ばかりを狙って連続殺人を犯すというストーリーが展開される作品で、邦題の「殺しの接吻」とは、彼が口紅で犠牲者の額にキスマークを必ず描くところから取られています。というと、レクター博士のおかげで昨今大はやりのサイコホラーものであるかのように必ずや聞こえるはずですが、実は違います。どちらかというと「殺しの接吻」は、ブラックユーモアを強烈に効かせたイギリス人が得意とするコメディに近く、僧侶や鉛管工やレストランのシェフに化け、果ては女装まで見せてくれるロッド・スタイガーの殺人鬼パフォーマンスは妙にコミカルです。ロッド・スタイガーは現在でも映画に出演している俳優さんですが(※)、若い頃から老け役が多く実際の年齢がよく分からないところがあり、このような七変化がよく似合う人でもあります。そのロッド・スタイガー演ずる殺人鬼に対抗するのは、ジョージ・シーガルですが、その彼も母親(アイリーン・ヘッカート)と一緒に暮らすおぼっちゃま刑事を演じており、相当にユーモラスです。個人的には、戦争映画やギャング映画などのシリアスな作品に出演していた60年代のジョージ・シーガルよりも、主にコメディ映画に出演するようになった70年代の彼の方が、役柄にフィットしている印象を持っていますが、60年代の末に公開された「殺しの接吻」は、まさに彼のこの後の役者としての方向を決定付けた作品であると見なせるかもしれません。それから、リー・レミックを挙げないわけにはいかないでしょう。本当にキュートな人で、「殺しの接吻」は、ジョージ・シーガルと彼女のロマンティック・コメディでもあり、一歩間違えるとグロテスクになり兼ねないこの作品に、華麗な彩りを加えています。

※2002年に亡くなられました。合掌。(2008/11/07追記)


2001/04/22 by 雷小僧
(2008/11/07 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp