戦略泥棒作戦 ★☆☆
(The Horizontal Lieutenant)

1962 US
監督:リチャード・ソープ
出演:ジム・ハットン、ポーラ・プレンティス、ジム・バッカス、ミヨシ・ウメキ

左:ポーラ・プレンティス、右:ジム・ハットン

またまた60年代の毒にも薬にもならないシチュエーションコメディを取り上げてしまったと後悔しても、もう遅い!いずれにせよ、この手の映画は、あまり真剣にマジマジと見てはならない作品なのです。何しろ、太平洋戦争まっただ中の南洋の島で、アメリカ軍の食料や生活必需品をかすめ取る神出鬼没の日本軍兵士(と思われているが実際は民間人)コバヤシを捕らえる為に、戦争を遂行するよりもギャルの尻を追いかけることに多大のエネルギーを費やす兵士(ジム・ハットン)が派遣されるという、これ以上ない程どうでもよさそうなストーリーが展開されます。しかしながら、ジム・ハットン演ずるお気楽なキャラクターがいかにもハットンらしく可笑しいですね。彼は、「グリーン・ベレー」(1968)で哀れブービートラップに引っかって逆さ釣りの串刺しになってしまうシーンを除くと、どんな作品のどんなシーンでも、「グリーン・ベレー」のそれ以外のシーンですらも、お気楽さを満開にしているように見えます。「普通の人々」(1980)でデビューしたティモシー・ハットンは、彼の息子ですが、オヤジの軟弱さに愛想が尽きたか、シリアスなドラマにシリアスな役で出演することが多いようです。しかし、その軟弱なジム・ハットン以上に傑作なのが、彼の部下を演じているタダという日系人で、これが彼以上のドンファンなのです。そもそも太平洋戦争時の太平洋戦線で、いくら通訳として役立ちそうでも、アメリカ軍が日系人を本当に雇っていたのか大いに疑問がありますが(寝返ったらどうするのでしょう)、そこはまあコメディなので気にしないことにしましょう。あまり、マジマジと見てはいけないのです。「日本人=真面目な働きバチ」という固定観念を「日本人=ドンファン」という未だかつて見たことがない恐るべき等式に置き換えたこの作品はユニークと言えばこれ以上ないほどにユニークです。太平洋戦争時の南洋が舞台だけあって、「戦略泥棒作戦」には日本語が飛び交うシーンがかなりありますが、マーロン・ブランド主演の「サヨナラ」(1957)で俳優関係のオスカーを日本人ではこれまでのところ唯一受賞しているミヨシ・ウメキがやたらに「マヌケ、マヌケ」を連発するのと、くだんの日本人アメリカ兵がでんでん虫がどうのこうのとわけのわからないことを言うのには笑えます。いかにも60年代前半ののんびりしたコメディ作品であることが分かるというものです。ところで、原題の「The Horizontal Lieutenant」のHorizontalの意味がイマイチよく分かりません。勿論一般的には「水平の」という意味ですが、「水平のLieutenant(軍隊の階級の1つ)」では意味が通らないので何か別の意味合いが含まれているはずですが、どのような意味でしょうか?


2002/01/12 by 雷小僧
(2008/10/19 revised by Hiroshi Iruma)
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