ファイナル・カウントダウン ★☆☆
(The Final Countdown)

1980 US
監督:ドン・テイラー
出演:カーク・ダグラス、マーチン・シーン、キャサリン・ロス、ジェームズ・ファレンティノ

上:タイムトンネルに巻き込まれる空母ニミッツ

数あるタイムトラベル(タイムスリップ)もの映画の1つであり、現代アメリカの最新鋭空母ニミッツが真珠湾攻撃の舞台に突如出現したならばどうなるかというWhat if?シナリオが展開され、馬鹿馬鹿しくはあれどなかなか興味深い作品です。殊にボードシュミレーションゲームのファンであった小生のような輩には堪えられないものがあります。ただ、残念のことに、What if?シナリオを自分なりの仕方でイメージするオーディエンスの期待を見事にはぐらかすところがあり、最初に「ファイナル・カウントダウン」を見た折には、「なーーーんだつまらねえ!」と思っとことを覚えています。そもそも、この手の作品を好んで見るオーディエンスが期待するアクションシーンすらほとんどありません。ジェット戦闘機がゼロ戦を蹴散らすシーンがあるとはいえ、そのシーンですら両者の性能があまりにも違い過ぎ滑稽にすら見えます。因みに、DVDの音声解説によると、空中戦シーンを撮影する際、ジェット戦闘機に搭乗するパイロットは滑稽どころか実は命懸けであったようです。なぜならば、ジェット戦闘機に比べプロペラ機はあまりにも速度が遅いので、何らかの交戦シーンを撮ろうとすれば、ジェット戦闘機のパイロットは失速速度限界で飛行する必要があったからです。また、ニミッツの艦長(カーク・ダグラス)が、真珠湾を攻撃する日本軍を殲滅すべきか否か決断せんとする丁度その時、突如再びタイムトンネルが発生し、現代に戻る都合の良さには、開いた口がふさがりませんでした。要するに、モラル問題が見事に回避されているということです。しかしながら、横須賀までわざわざ空母ミッドウェイを見に行った程の軍艦マニアを自認する小生にとっては、「ファイナル・カウントダウン」には1つの大きな魅力があります。それは、ほとんど全篇に渡って実際に空母ニミッツ上で撮影が行われている点であり、全てがモデルではなくモノホンであることです。DVDの音声解説によると、本来スタジオで撮影しても良さそうなシーンですらリアルさを求めて実際にニミッツ艦上で撮影されたそうです。80年代初頭といえば、ソビエトがアフガニスタンに侵攻し、またデタント政策を掲げていたカーター政権から対ソ強硬路線を敷くレーガン政権に政権交代した時分でもあり、最新鋭の原子力空母がパブリックなメディアに撮影されるには、必ずや都合の悪い点もあったであろうにも関わらず、後にも先にもこれだけ最新鋭空母のオペレーションがよく分かる作品はまずないようにすら思われるほどのリアルさに溢れている点には感心せざるを得ません。とはいえ、それだけでは単なるドキュメンタリー映画であることになりますが、そのようなドキュメンタリータッチが光るモノホンの空母オペレーションを巧妙に取り入れて、ドキュメンタリーとは180度正反対の途方もないSFストーリーに仕立て上げている点は、極端なジャンル混淆の見本であるようにも見え、また少なくとも軍艦マニアの小生には大きな興味がそそられます。また、ラストシーンは、タイムパラドックスものの作品のオチとしてなかなかよくできています。DVDの音声解説では、ラストシーンはcheesy(安っぽい)であるという批判もかなりあったと述べられていますが、cheesyであるとすれば、それは作品の題材そのものが既にcheesyであり、ラストシーンはむしろ洒落ていると個人的には思っています。それから、突然出現した未来世界の空母に連れ去られ途方に暮れている議員を演ずるチャールズ・ダーニングとチャーミングなキャサリン・ロスが光っています。何でもキャサリン・ロスは、ゼロ戦に攻撃されヨットから海に投げ出され、救出されるまでのシーンをスタント無しで演じたそうで、チャーミングなだけでなく根性も備わっているようです。


2004/05/01 by 雷小僧
(2008/12/16 revised by Hiroshi Iruma)
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