ダイヤモンド作戦 ★★☆
(Operation Amsterdam)

1959 UK
監督:マイケル・マッカーシー
出演:ピーター・フィンチ、エヴァ・バルトーク、トニー・ブリトン、アレクサンダー・ノックス

左:エヴァ・バルトーク、右:ピーター・フィンチ

ピーター・フィンチ主演と聞くと、派手な映画ではないけれどもハズれはないであろうと予想されますが、この作品もその例外ではありません。ドイツ軍の侵攻を間近に控えて、オランダのアムステルダムに貯えられているダイヤモンドを、ドイツ軍に徴発される前に回収する為に、ピーター・フィンチ、トニー・ブリトン、アレクサンダー・ノックス演ずる3人のイギリス人が密かにアムステルダムに送り込まれるというストーリーが展開され、内容はアクション映画に近いとはいえ、そこはピーター・フィンチが主演しているということで、緊張感溢れる展開の中にもいかにも落ち着いた渋さが感じられます。勿論アクション的と呼べるシーンもかなりあり、ピーター・フィンチが演ずるアクションシーンとは、それはそれでなかなかの見ものです。また、20世紀を代表する作曲家の一人ベラ・バルトークと同じ姓を持つハンガリー出身の女優さん(と言えばガボール姉妹を思い出しますが)エヴァ・バルトークが、なかなかシャープです。実は、この作品を見て「ふむむ」と思ったことが1つあって、それはアムステルダムに貯えられているダイヤモンドについてです。勿論低地帯に位置するオランダにダイヤモンド鉱山など存在しないので、アムステルダムに貯蔵されているダイヤモンドとは全て商業的な交易或いは金融活動によって貯えられたものでなければならないはずですが、それがその後のナチスドイツの運命を決定付ける程の量であるとするならば、それは恐ろしく莫大でなければなりません。そこでふと思い出したのが、高校の世界史の授業です。確か、中世においてはアントワープやアムステルダムなどの都市は、ヨーロッパの金融の中心地であったはずです。因みに、アントワープは、16世紀中頃までには、10万の人口を持つヨーロッパではベニスに次ぐ重要な商業都市に発展していたとのことです。「地中海世界」(藤原書店)で有名なフェルナン・ブローデルやベルギー出身のアンリ・ピレンヌのような歴史家の本を読んでいると、中世ヨーロッパの経済システムは、一般にそう見なされがちであるのとは異なり、ローカルな土地に縛られた封建経済のレベルを既に脱していて、というよりもアンリ・ピレンヌによれば、ヨーロッパの経済はむしろローマ時代からグローバルな様相が強く、イスラムによって地中海が支配されている間のみ交易ルートが寸断されて、土地に縛られたローカルな封建経済が発達したのであり、アムステルダムなどの都市はいわばグローバルな交易の中心地の1つとして栄えていたことが分かります。というよりも独自の産業をバックに控えていたわけではないアムステルダムのような都市に関しては、交易よりも金融と言う方が正しいかもしれません。どのような過程を経てダイヤモンドという形態で富が蓄積されたかは不明ですが、この作品の舞台となる第2次世界大戦勃発時においても、まだアムステルダムは、ヨーロッパの金融経済の中心地の1つであったのかという印象を受けました。


2003/08/09 by 雷小僧
(2008/10/13 revised by Hiroshi Iruma)
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