ゼフィルス

佐藤和美

 手塚治虫の作品には『ゼフィルス』という短編がある。また『地球を呑む』にも「ゼフィルス」が登場する。『ユニコ』に登場する西風の精も「ゼフィルス」であった。

 ギリシア神話ではアストライオスとエーオースとの間に東西南北の風の神が産まれている。(エーオースはローマ神話ではアウローラである。暁の女神であり、英語のオーロラの語源となった。)
東西南北の風の神はそれぞれ、
東風の神 エウロス
西風の神 ゼピュロス
南風の神 ノトス
北風の神 ボレアース
である。
「ゼピュロス」をローマ字では「Zephyros」と書く。これが「ゼフィルス」である。

 英和辞典で、「zephyr」を調べると「そよ風、微風。西風。」などとでている。「Zephyros」の雰囲気がよくでているのではないだろうか。

 また、ゼフィルスはボッティチェリの有名な絵「ヴィーナスの誕生」にも描かれている。この絵でヴィーナスに息を吹きかけているのがゼフィルスである。

 岩波新書だったらなんでもいいが、表紙をめくってみていただきたい。そこには著者名、著書名などがならんでいるが、その四隅には火のような、煙のような模様が描かれている。そのそばには字が書かれている。
右上には 「eurus」
左下には 「zephyrus」
右下には 「notus」
左上には 「boreas」
これらは東西南北の風の神であり、左下が「ゼフィルス」なのであった。

(2000・06・23)


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