手塚治虫研究・伝言板 2001年8月



『BJ・ディンゴ』

佐藤和美 (2001/08/31 12:09)

ディンゴはオーストラリア古来の種ではありません。
人間が持ち込んだのですが、ヨーロッパ人ではありません。
オーストラリア先住民が持ち込んだものですね。
なにも知らないで『BJ・ディンゴ』を読むと勘違いしそうなので一言。



『落盤』の二つのバージョン

佐藤和美 (2001/08/29 12:06)

『落盤』には二つのバージョンがあります。
講談社全集に収録されている版ともう一つ。

発売された「伝説マガジン」2号にそのもう一つの『落盤』が掲載されてました。
未読の方は是非読んでみてください。
ラストの1ページの印象がかなり違います。
講談社全集よりもこちらのほうがいいですね。

講談社全集のラストのコマには「前橋さん」っていうセリフがありますが、もう一つのバージョンには「前橋さん」はありません。講談社全集のラストのコマの「前橋さん」を手で隠してみてください。だいぶ違うでしょう?



『悪右衛門』

佐藤和美 (2001/08/28 12:07)

『大辞林』からです。

しのだ-づま 【信太妻】
信太の森の女狐が安倍保名(やすな)と結婚し、晴明を産むが、正体を見破られて姿を消したという伝説。また、その狐。説経・浄瑠璃・歌舞伎などに脚色された。

葛の葉
信太妻(しのだづま)伝説に登場する白狐。また、これに基づく作品の一つである浄瑠璃「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」の通称、および女主人公。

安倍晴明(あべのせいめい )
(921-1005) 平安中期の陰陽家(おんようけ)。識神(しきしん)を用いてよく異変を予知したといわれ、伝説が多い。土御門(つちみかど)家の祖。著「金烏玉兎集」など。

「安倍保名(やすな)」と「葛の葉」の子が「晴明」(安倍晴明)なんですね。
(もちろん「伝説」ですが)



『鉄腕アトム・海蛇島』の北斗七星

佐藤和美 (2001/08/27 12:14)

『鉄腕アトム・海蛇島』の北斗七星の見え方がちょっとヘンじゃないかと思うのですが。
(講談社全集2巻P15)

1.北斗七星の形が左右逆
2.季節がヘン(夏にはこういう位置で見えない)
3.位置が低い(北斗七星のひしゃくの先の5倍が北極星。
  北極星の高さは緯度の高さ。赤道付近(緯度0)では水(地)平線。)



古代遺跡の建造者

佐藤和美 (2001/08/26 08:40)

「神々の指紋」といえば、大ベストセラーですが、なんでこんなわけのなからない本がベストセラーになるんでしょうか。
ふしぎでしょうがないですね。

「手塚治虫ランド2」(昭和53年発行)に入ってる「ナスカは宇宙人基地ではない」を読んだときは、目からウロコが落ちたような気分をあじわったものです。

その一説を引用します
「リマ市の私設博物館「ムーゼオ・アマノ」を造った天野芳太郎氏は、腹立たしげに見学客に話しかける。
「宇宙人だって? それは白人どもがでっち上げたお題目でしょう。
 フランシスコ・ピサロがインカ帝国へ侵入して、古代インディオが造った大建造物にブッたまげて、まず考えたことは、この文明をキリスト教国に紹介したくないということだったのです。つまりキリスト教徒以外に、ヨーロッパ人以上の文明人が居てはならないのですな、白人の論理は。
 で、どうしようもない文明の遺跡にぶっつかると、それを素直に認めないで、みんな宇宙人が造ったのだということにしてしまうんです。デニケン? いや、白人はみんな同じムジナですよ。つまり白人が文明の最先端にいて、宇宙人は、その上に居たって仕方がないという構図です。」

「神々の指紋」もこの話の構図と同じでしょう。
「神々の指紋」の作者はエジプトのピラミッドをつくったのは、地元の人だとなぜ考えないのでしょうか?
やはり、人種差別からなのでしょうか?
(私はそうだと思ってますけど。)
「神々の指紋」の作者はピラミッドを造らせたのは白人だと言いたそうに思えます。

なお、「ナスカは宇宙人基地ではない」は講談社全集では「エッセイ集4」に収録されています。



少年サンデー100号

佐藤和美 (2001/08/24 12:17)

少年サンデーが創刊されて100号目に掲載されてた作品ってなんだと思いますか?

『キャプテンKen』講談社全集版1巻142ページの最下段の右のコマで手塚治虫がプラカードを持ってますが、このプラカードの中が少年サンデーではこうなってました。
「少年サンデー 100号とっぱおめでとう!!」
で、セリフが
「こんごとも よろしく ………… もうし……」
です。

この頃がまだサンデー創刊100号だったんですね。



ビッグローリーの原型

佐藤和美 (2001/08/23 12:02)

ビッグローリーって『W3』に出てくるタイヤ型の乗物です。
そのビッグローリーの原型についてですが、『誕生!「手塚治虫」』(朝日ソノラマ)から引用します。(P216)

「「科学画報」昭和十(1935)年六月号表紙。手塚の「W3」のビッグローリーにそっくりである。これもおそらくアメリカの雑誌の影響下のイラストであろう。もしかして手塚も。幼児期にこのイラストを……?」

『誕生!「手塚治虫」』(P216)には「科学画報」昭和十年六月号の表紙も載ってるので、ぜひ見てもらいたいですね。



『火の鳥・太陽編』の改変

佐藤和美 (2001/08/22 12:45)

『火の鳥・太陽編』の改変はいろいろありますけど、私が思い出すのは角川文庫のあとがきです。

角川文庫『火の鳥・鳳凰編』あとがき 酒見賢一
「そして”火の鳥”の生き血を飲んでいないにもかかわらず不死不死身である者さえ登場する。これまでの「火の鳥」ではあり得なかった存在である。」

単行本を見るかぎりではそうなっちゃうんですよねぇ。
ところがこれは「改変」によるためで、雑誌ではそうではなかった。
火の鳥により生き返ってた。

手塚治虫はどうしてこんな「火の鳥」を否定しかねない「改変」をしたんだろう?
ナゾだ。



『火の鳥』の疑問点(その3)

佐藤和美 (2001/08/21 12:05)

鳳凰編→乱世編
奈良時代に生まれて、源平争乱の頃に死んだ我王って何歳だった?
やっぱり400歳くらいですかね?



『火の鳥・ヤマト編』のオグナ

佐藤和美 (2001/08/20 12:09)

オグナの意味は?

古語辞典で調べてみればすぐわかりますが、「ヲグナ」は「男の子」という意味です。
「ヤマトヲグナ」で「大和の男の子」
固有名詞というよりは、普通名詞ですね。

なお、女の子のほうは「ヲミナ」といったようですが、これはのちには女性全体を指す「オンナ」に発音が変化しました。

なお、男の年寄りは「翁オキナ」
女の年寄りは「嫗オミナ」

規則的なところがおもしろいですね。



『火の鳥・ヤマト編』のオグナの手下の名

佐藤和美 (2001/08/19 09:44)

「ヤマト編」でオグナと一緒にクマソに行くのは、ラムネとカルピスですね。
この二人の役名ですが、オグナが女装したときに出てきます。
「手ナズチ」、「足ナズチ」
さてこの名の由来は?
スサノオがヤマタノオロチを退治したときに生贄にされそうになったのが、クシナダヒメで、その父母がアシナズチ、テナズチでした。



『火の鳥』の疑問点(その2)

佐藤和美 (2001/08/18 08:44)

未来編
放射能や火山の噴火だけで、地球上の生命すべて、細菌、ウイルス等まで全て死んだ?
蛋白質などで新しい生命を創らなけりゃダメなほどに?



『火の鳥』の疑問点(その1)

佐藤和美 (2001/08/17 07:13)

黎明編
10年以上の間、閉じ込められてなに食べてたんでしょう?
狼などの肉食類は食べるものあったんでしょうか?



『ネオ・ファウスト』のその後

佐藤和美 (2001/08/16 07:22)

『ネオ・ファウスト』のその後は……

ゲーテの『ファウスト』にはホムンクルスという人造人間が登場する。

『ネオ・ファウスト』第一部で、石巻は坂根第一に自分の精液を渡した後、メフィストに殺される。

その後、第一はバイオテクノロジーにより石巻の精液から石巻をクローン再生する。石巻はホムンクルスとしてよみがえったのであった。そして、再生したホムンクルスの石巻はかつての石巻のように革命を目指し、地球を滅亡の淵におとすのだった。

って、展開のようですね。

(『ガラスの地球を救え』の「負のエネルギー」による)

ちなみに減数分裂した細胞(精子・卵子)ではクローンはできないですよね。

「坂根第一」の「第一」は「ファースト」ね。



『BJ・ペンをすてろ!』の地名

佐藤和美 (2001/08/15 07:28)

BJ「ペンをすてろ!」 の最後のところに地名がでてきます。
「青森県西津軽郡一ツ森村」
これが実在するかどうか調べてみました。
「ぽすたるガイド」(郵便番号簿)1997年版
青森県西津軽郡鯵ヶ沢(あじがさわ)町の中に一ツ森町が存在しました。
「青森県西津軽郡一ツ森村」は実在の地名と考えるべきでしょうね。



『キャプテンKen』の爆弾

佐藤和美 (2001/08/14 08:56)

『キャプテンKen』に出てくる爆弾もいろいろ変遷があります。
少年サンデーでは「水爆」でした。
これが虫コミックスでは「宇宙線爆弾」です。
そして講談社全集では「太陽爆弾」です。
爆弾一つとってもこれだけの変遷があるのでした。



ユニコ・アゼンスの牙の物語

佐藤和美 (2001/08/12 09:00)

「アゼンス」ってなに?

「アゼンスの牙の物語」はシェークスピアの「真夏の夜の夢」をベースにしている部分がありますが、「真夏の夜の夢」の舞台が「アセンズ」(アテネの英語読み)です。

「アゼンス」って「Athens」(アテネ)のことだったんですね。
「アゼンス」じゃなくて「アセンズ」が正しいようだけど、
(「アシンズ」のほうがより正しいようだけど。英和辞典で発音記号見てみてください)
意図的に変えたんだか、間違えたんだかわかりませんが。



ブラック・ジャック・ザ・カルテ

佐藤和美 (2001/08/11 09:53)

新刊です。
B・J症例検討会「ブラック・ジャック・ザ・カルテ」海拓舎
オビのコピーから
B・Jの苦悩の歴史が刻まれた36のカルテを、現役医師17人が医学の粋を集めて検証する。「病」とは、「人」とは、そして「命」とは…。



「白いパイロット」未収録の話

佐藤和美 (2001/08/10 12:06)

「白いパイロット」単行本には未収録部分があります。

このHPの「私の手塚治虫ベスト10」では以下のように書きました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

全集1巻201ページにイカかタコの足みたいなのが見えます。また次のページ
には巨大な巻貝があります。実はこれは巻貝の中にタコの足みたいなのが入って
るんですね。白いパイロット達はハリケーン号の外に出るとこの怪物と戦うこと
になります。この怪物の正体は実は……。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

怪物の正体はアンモン貝(アンモナイト)です。
この場面は鈴木出版ではあったのに、
小学館ゴールデンコミックスからなくなってしまいました。
残念。

も、一つ。
13号のモデルはなんだと思いますか?
バッタ?

答えは「モスラ」です。
サンデー/鈴木出版には「モスラ型」だという場面がありました。

地下工場でのハリケーン号の鳥瞰図的な絵は残ってるのに、
13号のアップ+「モスラ型」だっていう場面はなし。
これも残念。



昭和40年代の講談社の雑誌への掲載作品

佐藤和美 (2001/08/09 12:05)

「W3」がマガジンからサンデーへ引越しするにあたり、手塚治虫と講談社は絶縁状態になり、それは「おけさのひょう六」まで続いた、という伝説があります。

「W3(マガジン版)」と「おけさのひょう六」の間に講談社の雑誌に掲載された作品をピックアップしてみました。

「ヌーディアン列島」 現代43年9月号から12月号
「大暴走」 別冊少年マガジン44年9月号
「がちゃぼい一代記」 別冊少年マガジン45年2月号
「アトムの最後」 別冊少年マガジン45年7月号
「ボンバ!」 別冊少年マガジン45年9月号から12月号
「海のトリトン」 テレビマガジン47年5月号

このリストからわかるとおり、手塚治虫は講談社と絶縁してたということはありません。 この辺は手塚ファンでも誤解している人が多いかもしれませんね。



提婆達多

佐藤和美 (2001/08/08 06:53)

岩波文庫にはいろいろな本がありますが、その中の一冊です。
中勘助『提婆達多』
「提婆達多」には「でーばだった」とルビがふってあります。
つまり手塚版『ブッダ』ではダイバダッタですね。インドの発音はデーヴァダッタです。
インドは歴史記録には不熱心だった国でブッダの時代になにがあったのか詳しくわかりません。ブッダの生年もはっきりしないし。こういうダイバダッタの物語もあるんですね。
なんとシッダルタの出家後、ダイバダッタとヤショダラが不倫しちゃうという話が出てきます。



青いトリトン

佐藤和美 (2001/08/07 07:59)

私が高校の頃、家ではサンケイ新聞をとっていたのですが、ちょうどその頃『青いトリトン』が連載中でした。毎日1ページ分の連載ですが、朝起きてその1ページを読むのが楽しみでした。ラストで不死身のポセイドンをどうやっつけるのか、気になっていたのですが、ロケットで自分もろとも宇宙に行く、という結末に納得したものでした。
アニメ化されたときは『海のトリトン』という題に変わり、その後秋田書店のサンデーコミックスで出たのですが、サンデーコミックスでも『海のトリトン』になってしまいました。私はずっと『青いトリトン』という題で読んでいたので、この事は非常に不愉快でした。(なんでマンガが(虫プロ作品でない)アニメにあわせなけりゃいけないんだ。)さらに不愉快だったのは、不死身のポセイドンが爆発で死んでしまうというようにとれるばかげた設定に変わっていた事です。
講談社全集では新聞連載時と同じように宇宙へ行くというように戻ったので、まずはめでたしめでたしというところでしょうか。



手塚治虫のふしぎな虫眼鏡展

佐藤和美 (2001/08/06 07:31)

新宿タカシマヤ10Fで
「手塚治虫のふしぎな虫眼鏡展」
というのをやってるようです。
14日(火)まで。



ミッチイの仮面

佐藤和美 (2001/08/05 08:49)

『メトロポリス』からです。
「それから二三月たって…
そのころ市中を走る怪自動車がありました。
その自動車にはふしぎな老人と黄金仮面とがのぞいている、というのです。」

この「黄金仮面」ってなんでしょうか?

昭和の初め頃、講談社からだったか、江戸川乱歩全集がでたときに、そのオマケとしてこの全集に収録されていた「黄金仮面」のフィギュアがついたそうです。
実際にかぶれたと思います。
手塚治虫はこの黄金仮面を見たことあるんでしょうか?
ミッチイが外出するときにかぶらされてた仮面と、江戸川乱歩全集の付録の黄金仮面を比べてみたいですね。
どこかに写真でも残ってないかな。



ロボットの本

佐藤和美 (2001/08/04 20:02)

ロボット関係の本の新刊を二冊紹介します。

瀬名秀明「ロボット21世紀」文春新書
「世界一の水準を誇るロボット研究。研究者たちは何を考え、何をめざしているのか。丹念な取材をもとにロボット開発の今と未来を描く」
「東大、ホンダ、ソニー、日立、北九州・八幡の安川電機……。取材した「主な登場人物」はおよそ二十人。瀬名さんと「ロボット最先端」を旅するうち、今世紀は「ロボットの世紀」だと確信しました。遠くホメロスから鉄腕アトムまで、夢物語でしかなかったロボットが今やサッカーをする、食事を運ぶ……。研究者は言います、「人類が初めて空を飛んでから月へ行くまでわずか六十六年」。 瀬名さんは言います、「ロボットを知ることは、未来を知ることなのだ」。」

田近伸和「未来のアトム」アスキー
「人間型ロボット造り最大の命題、それは「人間とは何か」を解明することに
あった!取材、執筆に丸2年!早稲田大学、大阪大学、東京大学、経済産業省、
ホンダ、ソニー、NEC…日本のロボット開発の最新動向や現代科学の最新理論
から「ヒューマノイド」の未来を探る、渾身のサイエンス・ノンフィクショ
ン。」



アナタハン島を見つけよう!

佐藤和美 (2001/08/03 12:09)

『太平洋Xポイント』にアナタハン島という島が登場します。
実はこのアナタハン島は実在の島です。
アナタハン島を探してみましょう。

まずは太平洋はマリアナ諸島のあたりの地図をひろげます。
次にサイパン島を探します。
そしてそのほぼ真北を見ます。
アナタハン島、あったでしょう?



ヒュースケン

佐藤和美 (2001/08/02 12:05)

『陽だまりの樹』の登場人物であるヒュースケンのことをちょっと書いてみたのですが、完成しそうにもありません。
以下、中間報告(?)ということで。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ヒュースケン伝

 鎖国していた日本が、貿易していた二つの国がある。清(中国)とオランダである。つまり日本人の知っている外国語は中国語とオランダ語だけということになる。(貿易をしてはいなかったが、李氏朝鮮とも国交をもっていた。朝鮮語も知っていただろう。)欧米諸国が日本と外交接触を持とうとしたら、選ばれる言語はオランダ語になるのは当然だろう。

 ヘンリクス・コンラドゥス・ヨアンネス・ヘウスケンは1832年1月20日、オランダのアムステルダムで生まれた。1853年アメリカに移住した。この年は日本に「黒船」が来た年でもある。ヘンリクス・ヘウスケンはヘンリー・ヒュースケンになる。
 日本の初代アメリカ総領事ハリスが日本に赴任するのに際し、通訳としてオランダ語のできるものが募集された。そして選ばれたのが、オランダからの移民者ヒュースケンであった。ヒュースケンがハリスとともに日本に着いたのは1856年である。

以下、未完

(参考:『ヒュースケン日本日記』岩波文庫)



伝言版、始めます。

佐藤和美 (2001/08/01 11:15)

「手塚治虫研究」を始めたのは1997年10月22日ですが、
最近、更新もあまりしてないし。
ということで、気分転換もかねて、伝言版、始めます。
今日はついたちで、切りもいいしね。
どんな伝言版になるかは、なりゆきまかせでいきます。



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