英語の発音とそのカナ表記PART2




豪州

佐藤和美 (2000/09/20 12:49)

「オーストラリア」、漢字で書けば「濠太剌利」。
「濠」は常用漢字にないんでしょうか。
「オーストラリア」を漢字一字で表わすときは「豪」の字を使ってますね。

アジア、ヨーロッパなどに州をつけて、例えば「ヨーロッパ州」を「欧州」といいます。
アメリカの州も「カリフォルニア州」は「加州」などと書きます。
さて、「豪州」。
オーストラリアって国の名ですけど、国名に「州」をつけるのはどうして?
どうもマチガイなような気がするんですけど。

それとも「オーストラリア大陸」だから、この場合の「豪」は国名ではなく、大陸のこと?
それで「州」がついてる?



Re: 豪州

面独斎 (2000/09/21 06:13)

『大修館新漢和辞典』によれば、「州」には「大陸」の意味はなく、逆に「国」の意味はあるようですが……。

「豪州」は、もとは「濠洲」と書かれたものが、「当用漢字」時代の漢字制限によって書き換えられた結果であるようです。「洲」には「大陸」の意味があるので、「濠洲」は「オーストラリア大陸」という意味になるかと思います。とすれば、その書き換えである「豪州」もやはり「オーストラリア大陸」という意味になる? そもそも「洲」は「州」の俗字であったようですし……。

なお、「濠太剌利」というのは当て字に過ぎず、したがって唯一無二の書き方というわけではありません。「濠」のほか「豪」や「澳」も実際に用いられることがあったようです。



オーストラリアはなぜ豪州?

MIMA (2001/07/15 14:01)

はじめてお邪魔します。
オーストラリアをなぜ「豪州」「濠州」というのかという疑問を追っかけています。
現在では一般的には「濠太剌利」と書きますね。
古地図等を調べて、江戸時代の蘭学者が地図の上で「豪斯多棘里」と表記したのが始まりであろうというところまで辿りついたのですが、
(こちらの過去ログで、豪州は濠州の略字……というご意見がありましたが、どうも最初に出てきたのは「豪」の方だったと思われます。)
なぜ「豪」または「濠」の字が当てられたのか、未だに答が見つかりません。
どちらも、漢音、呉音とも「ゴウ」「ガウ」ですし、現代中国語では"hao"です。

英語のAustralia、オランダ語でAustraliの"au"が、なぜ"gau"になり「豪」「濠」と表記されたのか。
どなたか、この辺の理由をご存知の方はいらっしゃいませんでしょうか。
よろしくお願いします。


http://homepage2.nifty.com/jonai/



豪州

poronup (2001/07/15 14:12)

確か私の記憶では、「豪」の字の広東語読みが、ouに近い発音だったと思います。あとで確認しておきます。

中国語の、外国の地名の音訳は、広東語読みがもとになっているものが多いみたいです。中国で、外国の情報や文化が一番先に入ってきたのが、香港を中心とする広東だったからではないでしょうか。
ハワイ(夏哇)もそうですね。北京語だと、「シアワイ(xiawai)」ですが、広東語だとhawaiです。スイス(瑞西)などもそうだったと思います。



RE:豪州

MIMA (2001/07/15 15:30)

poronupさん、早速ありがとうございます。
前の書き込みで書き漏らしましたが、中国では「澳太利亜」と表記しています。日本の地図ではじめて「豪斯多棘里」の表記が現れたのは、私の調べでは1844年です。
中国の「澳太利亜」がいつから使われているのかは不明ですが、ヨーロッパで"Australia"が世界地図上に現れるのは1814年以降(それまでは"New Holland")ですから、中国とてそう古いものではないはずです。
1844年、まだオランダ人にしか接触していなかった蘭学者が「豪」を使ったのは、当時の「豪」に"ou"に近い読みがあったのか、あるいはオランダ語の"au"に日本人が聞いたとき「ガウ」または「ゴウ」と聞き取れる発音があったのか。
後者の方は、オランダ語関係のBBSの方にもHELPを出させていただいています。



RE^2:豪州

松茸 (2001/07/15 23:03)

 検索したら、こういうページがありました。

http://www.melbournenet.com.au/dengon/essay/souryouji/souryouji_0101.asp

 これで見る限り、他の地名にも日本語音読みでなく中国音を用いていますから、「豪」も中国音でしょう。
 箕作による独自の表記なのか、中国での表記の特殊なものを採用したのかは不明ですが、前者の場合も、当時の日本では、北京語より広東語を知る機会が多かった以上、特に問題はないと思います。



豪州

MIMA (2001/07/16 12:13)

松茸さん、ありがとうございます。
ご指摘のメルボルン総領事上野さんのページは以前から拝見しています。
やはり「広東語」の発音ということになりますかね。
長女が4年間北京に留学していましたので中国語の辞書類をあさっていますが、広東語についてはまったくの資料不足です。
poronupさん、よろしくお願いいたします。

http://homepage2.nifty.com/jonai/





佐藤和美 (2001/07/16 23:04)

広東語の「豪」の発音は「hou」ですね。
(香港萬里機構出版有限公司・東方書店編「広東語辞典ポケット版」東方書店)



「豪」

MIMA (2001/07/18 02:08)

佐藤さん、ありがとうございます。
「豪」は、北京語では"hao"、広東語では"hou"。
"h"の音がサイレントなら、どちらもそれらしく聞こえてくるのですが。



Re: 豪

massangeana (2001/07/18 02:25)

ちゃんと調べてないので, いいかげんですみません。

古い時代の「豪」の声母は伝統的な用語でいうと匣母といい, おおざっぱにいうと有声の h
です。
多くの方言では無声化してただの h になっているのですが, 有声音のまま残っている方言で
はほとんど聞こえない場合があり, じゅうぶん「アウ」(または「オ」)に近い音になります。
ちょっと見たところでは上海では「オ」のように聞こえる音ですし, 調べてませんがたぶん
寧波あたりでもそうでしょう。(「行」が唐音でアンになるのも同じ原理)

また, 福建の一部でも au になる地方があるようです。厦門でも「豪」は ho ですが, 虫
へんに豪の字(歴史的には豪と同音のはず)は文語音で ho, 口語音で o のようです。

実際にどこの方言の音を使っているかはこれだけではわかりませんが, みなさんのおっしゃ
るように中国由来の表記である可能性が高いので, やはり 19世紀の中国の資料をあたって
みるのがよいのではないでしょうか。



ふたたび「豪洲」

MIMA (2001/07/19 20:48)

massangeanaさん、ありがとうございます。
「豪」の音については、だいたい理解できました。
広東語圏(多分香港)で、Australiaという音を聞いたとき、【o:】に「豪」が宛てられる可能性はあったということになりますね。
手元にある現代漢語の辞書で調べてみましたが、今のところ「豪」にも「濠」にも、オーストラリアの意味に使われた形跡は見つかりません。今後も探してみたいと思っています。

> 19世紀の中国の資料をあたってみるのがよいのではないでしょうか。

webの上でだけしか探していませんが、何かいい方法がないものでしょうか?

ところで、「匣母」という言葉をはじめて聞きました。
簡単にいうと、どういう意味なのでしょうか?

http://homepage2.nifty.com/jonai/



Re: 豪州

massangeana (2001/07/22 21:30)

MIMA さん,
>広東語圏(多分香港)で、Australiaという音を聞いたとき、【o:】に「豪」が宛てられる
>可能性はあったということになりますね。

ああっと, 私は広東語とはひとことも言ってませんのでよろしく...

>「匣母」

これはたいしたことではありません。昔の中国にはアルファベットがなかったので, 漢字の
先頭の子音を区別するのに漢字を使って名前をつけたのです。たとえば「k」の音なら「見母」,
「g」なら「群母」という具合です。たまたま「匣母」の場合はちょっとアルファベットで
表しにくい音だったので, 伝統的な用語をそのまま使いました。



「星の王子様」の作者の表記

佐藤和美 (2000/10/03 12:34)

「星の王子様」の作者は今年が生誕100年だそうです。

さてその名前を「goo」で検索してみましょう。

「サン=テグジュペリ」
264件ありました。

「サン・テグジュペリ」
91件ありました。

「サンテグジュペリ」
271件ありました。

「大辞林」には「サンテグジュペリ」で出てますけど、そこでスペルを見ると「Saint-Exupery」です。
「テ」の真中(子音と母音の間)に区切りがありますね。
日本語のカナじゃ区切り記号が入れられないですねぇ。
「サン=テグジュペリ」や「サン・テグジュペリ」じゃウソになるし……

私は「サンテグジュペリ」に1票!



サンテグジュペリ

面独斎 (2000/10/04 07:53)

> 「サン=テグジュペリ」や「サン・テグジュペリ」じゃウソになる

「Saint」は母音が後続しないかぎり「サン」と発音されますから、カナ表記の際に「サン」の後に区切り記号を入れるのも必ずしも間違いとは言い切れないという気がします (苦しいけど ^^;)。



「Beauvoir」、「Beethoven」の表記

佐藤和美 (2000/10/04 12:37)

「第二の性」の作者ですが、「大辞林」では次のように書かれています。

フランスの小説家・思想家。サルトルの伴侶。実存主義の観点に立つ女性論「第二の性」で知られる。小説「レ-マンダラン」、自伝「お嬢さんの回想」など。

だいぶ、昔ですが、私は新聞で「ヴォーヴォワール」という表記を見たことがあります。
これにはビックリしました。

「goo」で「ヴォーヴォワール」を検索すると1件ありました。

ちなみにスペルは「Beauvoir」です。

さて、ついでに「Beethoven」
「ヴェートーヴェン」で14件ひっかかりました。
「ベートーベン」て書いても別にどうってことないけど、「ヴェートーヴェン」だとちょっと恥ずかしい。

スペルを知らないで、「ヴァ」、「ヴィ」、「ヴ」、「ヴェ」、「ヴォ」を使うと恥をかくときがあるので注意しましょうね。



「reference」の表記

佐藤和美 (2000/10/05 12:57)

またまた「goo」での検索ネタです。

「reference」の表記は?

リファレンス
14340件

レファレンス
2216件

圧倒的に「リファレンス」のほうが多いですね。
でも1番目の「e」の発音記号って「e」なんですよねぇ。
「レファレンス」っていうと、日本語ナマリのような気がしちゃいますね。

2番目、3番目の「e」の発音に関しては今回はふれません。
特に2番目の「e」の発音はややこしそうです。
辞典を複数あたってみると発音記号に違いがあったと思います。



Vulgar Latin

佐藤和美 (2000/10/13 10:09)

「Vulgar Latin」の一般的な訳は「俗ラテン語」でしょうか。

私の前からの疑問なんですが、「Latin」はなんで「ラチン」にならずに「ラテン」になったのか?
「ti」が「テ」になってるのは、そう多くないと思うんですが。



「ti」の発音

いばら (2000/10/15 01:03)

日本語でどうしてLatinをラテンと発音するのか?という話ですけれど…

佐藤さん:
>「ti」が「テ」になってるのは、そう多くないと思うんですが。

これを読んでふと思い出しました。
中学生の頃、家庭科の先生(当時でも結構お年を召してらしたように思います)が
スパゲティをスパゲテー、レモンティをレモンテーと発音しておいででした。

今は外来語ですっかり定着してしまったようですが
もともと「ティ」とは日本語にはなかった音なので、
判別できない人はそれに近い(と本人が感じた)音に置き換えて
「チ」といったり「テ」と言ったりするのかなと考えていたのですが、
実際に「ティ」を「テ」と発音するってあんまりないことなのでしょうか?
(自分でもちょっと具体例を思いつかない...)

さらに湧いてきた疑問は「日本語の『ラテン語』の『ラテン』の語源は?」
最初は英語のlatin(敢えてカタカナで書けば「ラティン」)が転じてラテン
そう思い込んでましたが
もしかしたら「ラテン」と発音している別の言語があって、
そこから来ているのでしょうか??
(例えばフランス語だとlatinはラタン、ですよね。そんな具合に。)



「ti」の発音

佐藤和美 (2000/10/15 16:52)

いばらさんwrote
>さらに湧いてきた疑問は「日本語の『ラテン語』の『ラテン』の語源は?」
>最初は英語のlatin(敢えてカタカナで書けば「ラティン」)が転じてラテン
>そう思い込んでましたが

私もそう思い込んでいました。

>もしかしたら「ラテン」と発音している別の言語があって、
>そこから来ているのでしょうか??

で、「ラテン」を漢字でどう書くか調べてみました。
「羅甸」(いくつかあるうちの一つ)
これを日本漢字音で「ラテン」って読みます。
(ラテン語の辞典は「羅和辞典」ですね。)
ひょっとすると「ratin」に中国で「羅甸」等の字を当て、日本漢字音でそれを「ラテン」と読んだ?



あ、あれ?(^^;)

いばら (2000/10/15 18:15)

latinの音節は英語の辞書をひくと確かに[lat・in]であって[la・tin]ではありませんよね。
ただ日本人が音をとらえるときにはどうしてもカナを単位に考えてしまうので
latinと聞いたら頭の中でla・ti・nと子音+母音=ひとつの区切りとしまいます。
(日本人は英語の発音がヘタとか所謂カタカナ英語などはここらに起因しているのだと思いますが。)

それで、外国語をどう発音するか(なぜそう発音するようになったか)を考える際に、
(例えば、ここでは英語のlatinを日本語ではラテンと発音するということ)
やはりもとの言語の音節にあわせて考えるべきなんでしょうか?
(この場合なら[la・ti・n]ではなく[lat・in]と)
それとも受ける側の言葉のシステムで考えてしまっていいのでしょうか?
(つまり[la・ti・n]と、本来のlatinという語には無い区切り方で。)

恐らくこれは音韻論の話なのかなと思うのですが、
どなたか専門の方がいらしたら是非教えていただきたいなと...
言語学の世界ではどういう考え方が基本なんでしょうか。
#私個人の、素人の興味本位の質問で恐縮なんですが。



音節による違いではない

面独斎 (2000/10/16 03:51)

フランス語の latin は、音節境界をハイフンで示せば la-tin となります。ご参考まで。

国語辞典などでは「ラテン」という語は英語の Latin に由来するということになっているようなので、in という音節が「テン」と発音させているという発言も英単語 Latin についてのものであるとして、では、そういう現象は Latin の場合だけなのでしょうか? たとえば、「ナイチンゲール」という語は英語の nightingale に由来しますが、これが「ナイテンゲール」にならなかったのは、なぜでしょうか? 音節境界を示せば night-in-gale です。

そもそも、外来語の発音・表記 (あるいは外国語の単語の日本語への転写) は純粋に原語の発音のみに依拠するものなのでしょうか?



Latinと「ラテン」

いばら (2000/10/17 01:10)

なんだか考えれば考えるほどわからなくなってきちゃったのですが…

まずは、一般論にすると収集がつかなくなりますので
(…というのは私の頭の中の話なのですが、すみません、
できましたらこのレベルにお付き合いください)
話を英語の"Latin"、日本語の「ラテン」を中心に
tiやtinと「テ」「チ」「ティ」あたりに絞って考えてみます。

まず、

(1)lat-inとla-tin、どちらの区切り方も耳には同じに聞こえるが
(2)「英語の」Latinの音節はlat-in
というところまではわかりました。

次に、
日本語の「ラテン」は英語のLatinに由来するのだと考える場合

(3)もしこれが英語の発音から日本語ではラテンという発音に置き換えられて、
  それがラテンと(音に則して)表記されているとするのであれば
(※というのも、面独斎さんの御指摘でその逆?もありうるかなと思ったので)

(4)tiがテと発音されているのではなく、inがテンと発音させてている。
どうもこの辺からわからなくなってきます。

(5)Latinて私の日本語の耳にはラティンと聞こえるますし、
  日本語モードの頭の中ではla-ti-nと区切られているんです。
 (カタカナで考えるんだからあたりまえといえばあたりまえなんですが。)
(6)そうすると、Latinと聞いた人がそれをラテンと発音するというのは
  「ティ」というおとが「テ」に聞こえたのかなあ、とそう考えてしまうわけです。
(7)学者の名前は忘れちゃいましたが、人は自分の聞こえる(聞き分けられる)音しか
  発音できないという理論がありますが、(あ、トマティス博士でしたっけ?)
  そういう考え方をするならば、「ティ」が「テ」というのも可能性としてはあるかな、と。
  ティが聞き分けられなくて、一番近いと感じた音「テ」に置き換えるとか。
 丁度、私の中学時代の家庭科の先生みたいに。(レモンティ→レモンテー)
 
…と考えていくと、「ティ」を「チ」と聞く人もいますよね。
レモンティ→レモンチー
(昔トワイニング紅茶のCMで「トワイニング・チー・プリーズ」なんてのがありましたっけ)
それなのになぜ「ラチン」というのは出てこなかったのか?とか
面独斎さんの挙げられた例のようにNightingaleが「ナイテンゲール」とならなかったのは?とか
いろいろ疑問が湧いてきます。

(8)面独斎さんの「そもそも、外来語の発音・表記 (あるいは外国語の単語の日本語への転写) は
  純粋に原語の発音のみに依拠するものなのでしょうか?」
  そういえば、こちらの過去ログにもあったような気もするのですが、例えば、
  Pudding→プリンや(Sawing)Machine→ミシンというのは発音から。これに対して
  Pudding→プディングやMachine→マシンというのは表記から。というようなことですよね?
  だとすれば、Latinという表記をカタカナにうつす際にラテンとした、ということも
  可能性としてありますね。tin→テン?!

下手の考え休むに似たり、なんて言いますが、
私が考えれば考えるほどとんでもない深みにはまってしまっているような気がします。
(どんどん間違った方向に進んでいるようです。)
番号をわざわざ振ったのは「ここからすでに間違っているぞよ」というのがあったら
御指摘いただきたいなと思って。

ながながとすみません。



Re: Latin と「ラテン」

面独斎 (2000/10/18 02:21)

日本語の「ラテン」は中国語の「羅甸」を音読みしたものであるという佐藤さんの説は卓見だと思います。もちろん、それを証明するにはクリアしなければならない点も多々あるでしょうが、私の気分としては、もうそれ以外に考えられない、という感じです (^^;)。

が、それはそれとして、いばらさんの疑問について考えてみます。

>もとの言語の音節にあわせて考えるべきなんでしょうか?
>(この場合なら[la・ti・n]ではなく[lat・in]と)

そんなことを考える必要はないでしょう。

>受ける側の言葉のシステムで考えてしまっていいのでしょうか?
>(つまり[la・ti・n]と、本来のlatinという語には無い区切り方で。)

それでいいと思います。原語での音節の区切り方がどうあろうと、日本人の耳には同じにしか聞こえないのですから、日本人の言語能力に即して考えるべきです。特定の言語にしか通用しない理論を別の言語に適用できるはずもありません。

いばらさんがすでにお書きのように、最近は「ティ」という発音・表記がすっかり定着してしまったようです。極端な例ですが、たしか NHK のアナウンサーは team を「チーム」ではなく「ティーム」と発音していたと思います。しかし、以前の日本語には「ティ」という音はなく、そのために「ti」という音声ないし綴りを「チ」と転写するという慣習があったことは周知のとおりです。「チーム」や「ナイチンゲール」をはじめとしてこの慣習に依る例は枚挙にいとまがありません。そうした中にあって、ti を「テ」とする「ラテン」はかなり特異な存在なのですが、ただ「ラテン」が唯一の例というわけではなく、他に「ステッカー (sticker)」「ステッチ (stitch)」「パテ (putty)」などがあります。

同様の問題は「di」の場合にもあります。「radio」が「ラジオ」なのは、di に対して「ヂ」(ジ) をあてたからです。「ヂ」「ジ」ではなく「デ」を使って転写した例には「デジタル (digital)」がありますが、これなどは最近のものですから、「ディ」はまだ定着していないと言えるかもしれません (^^)。



Re:Latinと「ラテン」

のんきぃ (2000/10/18 10:03)

「古典」に引きずられて「ラテン」になった
という考えはいかがですか。
以前にもstation「ステンショ(所)」とかで
話題になったことがあったかと思いますが。

>面独斎さん
diを「デ」になる場合は、diが巻頭にきた場合が多いようですね。
dictionary「デクショナリ」
Dixie「デキシー」
なんかは古くからある例になるのではないでしょうか。
そもそもアルファベットのDは「デー」と言ってましたね。



Re: Latin と「ラテン」

いばら (2000/10/19 00:35)

>佐藤さん
中国語の「羅甸」ですか…。
今まで英語など欧米の言葉ばかり頭にあって、中国語経由とは
考えてもみませんでした。
発音より先に表記に由来というのも充分ありえますよね。なるほど。

>通りすがりの言語学者さん
>tiが「テ」と発音してるのではなく、inが「テン」と発音させている
というのが私にはどうしても理解できないのです…
元の言語において、というのならわかるのですが、
それを耳から聞いて日本語の発音なり表記なりに置き換えるという場合には。

いろいろご説明いただきありがとうございます。
しかしながら素人の悲しさ、
「モーラ発音」「音節発音」「オッカム式」など言葉自体がわからず... 
(図書館にでも行き調べればいいのでしょうが…怠惰ですみません)

>ちなみに「ティ」が日本人の発音の都合上「テ」という発音に置き換わったのならば、
>チャラチャラした現代っ子が「ラテンのリズム」などと言うのでしょうか?? 
これについては、「ラテン」という言葉が日本語として確立してしまっているから、
というのが理由のように思われるのです。
プリン→プディングという例もありますが、
車のブレーキをいまさらブレイクとは言わないように。
(もちろん別の意味でのブレイク/ブレークは使われておりますけれども。)

>面独斎さん
いろいろとコメントありがとうございました。

>原語での音節の区切り方がどうあろうと、
>日本人の耳には同じにしか聞こえないのですから、
>日本人の言語能力に即して考えるべきです。
これ、一番疑問があった点でしたので、すっきりしました。
確かに外国語を聞く者はもとの言語での規則を知らなければ
まったく意識するはずもない(というかできない)んですよね。

ステッカーやパテ、なるほど!です。
ti→テですが、今日になってもうひとつ例を思い出しました。
satin→サテンです。

ちらかり放題の私の頭の中もちょっとだけ片付いたような気分です。
これが気になって夜も眠れず…という訳じゃありませんでしたが。(笑)
私にとってこちらの掲示板で何が楽しいかと言うと、自分の疑問を解いてもらったり
解く手がかりを伺ったり、自分の知らなかったことがわかるとか、
自分とは異なった視点・論点に気づかせてもらえるということです。
みなさま、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。o(_ _)o



モーラ(拍)

佐藤和美 (2000/10/21 10:56)

「大辞林」からです。
モーラ [(ラテン)mora]
(2)日本語などにおける音韻論上の単位。単一のリズムをなす音節(音韻論的音節)で、普通は子音音素と母音音素の組み合わせで一つのモーラをなす。日本語では、仮名一文字が一モーラになる。拍。

「ン」、「ッ」、「ー」も1拍になります。
「ライダーキック」は7拍
「かめん」は3拍
英語などのシラブル(音節)の考え方とはずいぶん違いますね。

「かきくえば かねがなるなり ほうりゅうじ」
「ほうりゅうじ」は5拍
俳句、短歌などはモーラで数えるのがいいみたいですね。



ラテン

佐藤和美 (2000/10/22 07:55)

現在の中国では「ラテン」をどういう漢字で書き、どういう発音なのか調べてみました。
(私の持ってる辞典は小学館の「中日辞典」です。)
まず漢字ですが「拉丁」のほうでした。
「大辞林」では「ラテン」に当てた漢字は「羅甸」と「拉丁」が載ってましたけど、その「拉丁」の方です。
で、そのピンインですが「Lading」でした。
日本語の音読みでは「丁」は「てい」か「ちょう」です。
「Latin」に漢字の「拉丁」を当てたが中国語と日本語の発音のどちらが使われたか聞かれれば、中国語だと断言してもいいんじゃないでしょうか。

その他のピンインは
「羅」は「luo」
「甸」は「dian」
でした。



Re: モーラ

いばら (2000/10/22 17:11)

佐藤さん、こんにちは。

モーラの意味がやっとわかってうれしいです。ありがとうございました。
ああなるほど、「モーラ」で引いてみればよかったんですね。
モーラ発音ていろいろ検索したけど見つからなくて...
(ほんとに検索が下手だなあと我ながら思いますが。)
音韻論的音節、面白いというか日本人には一番わかりやすい概念ですね。

#それにしても、「大辞林」てすごい...なんでもアリですねぇ。



「オッカム式」

松茸 (2000/10/22 18:20)

いばらさんへ:
 「オッカム式」については、通りすがりの言語学者さん・佐藤さん共にコメントしておられないので、僭越ながら。
 おそらくこれは、詳しく言うと「<オッカムの剃刀>式」とでもすべきものでしょう。
 念のため、やはり「大辞林 第二版」から引いておきます:

オッカム-のかみそり 【―の〈剃刀〉】

〔哲〕〔Ockham's razor〕存在は必然性なしに増加されてはならないという原則。より広範囲の事象を説明できる、より単純な理論がよりよいとする考え方。思考経済の原則。オッカムが論理的思考として多用したことにちなむ。



Re:「オッカム式」

いばら (2000/10/22 22:16)

松茸さん、オッカムについての説明、ありがとうございました。
「オッカム」で検索したらいろいろ出てきました。
哲学と言うか、論理学なんですね。
(オッカムとは名前かと思えば実はイギリスの地名でした。)
いろいろ勉強になります。
#あとはそれを身につけなきゃいけませんね...(^^;)



「ti」の表記

佐藤和美 (2000/11/02 12:32)

「ti」の表記に関して、おもしろい例を見つけました。

「fetishism」を今どき「フェチシズム」と書く人はいないでしょう。
普通は「フェティシズム」でしょうね。
で、その「フェティシズム」の短縮形ですが、
なぜか「フェチ」で「フェティ」じゃない。
フシギですねぇ。



cute、cut

佐藤和美 (2000/10/25 12:44)

高校生の頃だと思いますが、英語の発音で印象に残っていることがあります。
それは「cut」と「cute」の違いです。スペルの違いは語尾に「e」があるか、ないか。そでかたや「カット」、かたや「キュート」。これだけの違いができてしまう。

英語の発音はわけがわからんと思ったもんです。

他にはこんなのがあります。

past パスト
paste ペイスト

lose ルーズ
loss ロス

(カナの表記が発音記号と違うなんて言わないでくださいね)

語尾がちょっと違うだけなのに、発音が違ってくるのって、
他にはどんなのがあるかな?
考えてみませんか?



Re: cute cut

田邉露影 (2000/10/25 15:27)

お久しぶりです。

次に挙げるのは佐藤和美さんが挙げられた例とは
多少異なるかも知れませんが、
read (現在) と read (過去、過去分詞)、
それから head と heat も母音は同じなのに
読み方は大きく異なっていますね。

前者は Ablaut(母音交代) の代表的な例、
後者は……なんでしょうね。語源的違いなのかなぁ……?


PS
余談ですが言語学ではモーラという呼び方を一般的に用いますが、
発音自体は英語から入っていますので
本来(ラテン語)の発音は「モラ」ですね(^_^)。
つまり、複数形は -s ではなくて -e を付ける形になります。



Re: cute cut

佐藤和美 (2000/10/26 12:46)

田邉さん、お久しぶりです。
いつぞやは大変勉強さしていただき、ありがとうございました。

スペルが同じで発音が違う「read」なんてのがあったんですね。
すっかりわすれてました。



Re: cute cut

のんきぃ (2000/10/26 13:15)

スペルが同じで発音が違う単語の違う例としては、他にもこんなのがありますね。

unionize(ユニオナイズ:組合を結成する)
unionize(アナイオナイズ:非イオン化する)

polish(ポリッシュ:磨く)
Polish(ポウリッシュ:ポーランド人)

上は、読む人の職業で発音・アクセントが変わってしまう例、下は頭文字が大文字か小文字かで発音が変わってしまう例です。
作家のアイザック・アシモフが自著「黒後家蜘蛛の会」で披露していました。



re^2: cute cut

田邉露影 (2000/10/26 15:39)

> unionize(ユニオナイズ:組合を結成する)
> unionize(アナイオナイズ:非イオン化する)

これの原因はもしかしたら、
大まかな形態素の境目なのだろうと思います。
 union-ize union 組織 + ize 化する
 un-ionize un 非 + ionize イオン化する
ここで「大まかな」と説明しましたのは、
上で挙げた形態素はさらに小さな形態素に分けられるからです。

polish の例は……推測がつきませんでしたが、
たぶん大文字または小文字が読み方を変えさせているのでは
なさそうですね。
確認していませんが語源辞典で引けば
もしかしたら古英語や古ノルド語ではお互いに違う形かも!?



Re: cute cut

狐の悠 (2000/10/26 16:44)

#私は語源とかそっちの方は詳しくないので、現象面で捉えてますが...

ルール:語尾に"e"が来る英単語は、一番最後に来る単母音の発音が変化します。

"a"は「ア」から「エイ」に、"e"は「エ」から「イー」に、"i"は「イ」から「アイ」に、
"o"は「オ」から「オウ」に、"u"は「ア」から「ウー(ユー)」に。
#発音記号で書けない(知識がない)ので片仮名標記で勘弁願います。
##気が付きますか? 後者はアルファベットをそのまま発音するのと同じです。
###因みに、NewYorkerは自分達を「ヌーヨーカー」と発音しますね。それが「ウー」と「ユー」の違いです。

このルールに当てはめると、"cut"と"cute"は「カ(ッ)ト」「クート(キュート)」になります。 他には"past","paste"が「パスト」「ペイスト」に、"rid","ride"が「リ(ッ)ド」「ライド」、
"cod","code"が「コ(ッ)ド」「コウド」になりますね。"e"の例を思い付けなかったのですが、 "athletic","athlete"が「アスレティック」「アスリート」というところで如何でしょう。

勿論、このルールより優先されるルールがあるので"here"は「ヒール」にはなりません。
この場合は"er"を曖昧に発音して(やや巻き舌に)「イア」と発音するので、「ヒア」です。
尚、"cheese pie"が「チーズパイ」なのは「末尾の"e"」のルールよりも二重母音の
ルールの方が優先された結果です。

"lose","fete","fence"? 須らく「ルール」には例外が付き物です(爆笑)。

http://yokohama.cool.ne.jp/yew/



re^3: cute cut

田邉露影 (2000/10/26 18:08)

>キツネの悠さん、佐藤和美さん
> ルール:語尾に"e"が来る英単語は、
> 一番最後に来る単母音の発音が変化します。

あ、今思い出しましたが、
ず〜っと以前に house と hus について書きましたよね?
報告が遅れてしまったのですが、
あとで調べてみたところ、この語尾の -e というのが
二重母音などで読ませるための「標識」なのだそうです。
(つまり、意図的に -e を付けた)

ですから、e や o のような中段の母音で
大母音推移以降でも /e/, /o/ と発音を保っていたものや
もともと -e が付いていたものは
ちがう歴史的背景で -e の音価が脱落したのでしょうね。(多分)
 cf. have, love, come
だから、kam → cam > 《GVS》> cam /keim/ +e となった、と
取りあえず説明が付けられます。

今覚えているかぎりの例では have は古ノルド語で hafa ですから
古英語も似た感じのつづり方、恐らく -a が付いているはずです。



Re: Polish unionized

松茸 (2000/10/27 12:59)

 http://www.m-w.com/で確認したところ、"Polish" は "Pole"が語源だそうです。
 後、"unionize"(非イオン化する) なる「動詞」はないのでは? 形容詞"ionized" に接頭詞 "un-"がついたものだと思うのですが……。
# アジモフはこのネタを使いまわしていましたが、いつも"unionized"だったはず。



Re:Re:Polish ionized

のんきぃ (2000/10/27 14:34)

>松茸さん
ご指摘ありがとうございます。
なるほど、確かにそうだったような気もいたします。
ただ、アシモフ(松茸さんはアジモフですが)の例はunionizedだったかもしれませんが、unionizeなる動詞は確かに存在いたします。
だからと言って、私がミスったことは確かなんですけど。



Re:本人は「アジモフ」と言っていたが…

松茸 (2000/10/27 18:07)

のんきぃさんへ:
 こちらこそ失礼いたしました。元(?)化学者のアジモフがわざわざ"...ed"としていたので、かんぐったのですが……。
 「アシモフ/アジモフ」については、書きこみ時にはまったく意識していなかったのですが、確かに「言葉の世界」にふさわしい面白い問題を含んでいますね。



アシモフとアジモフ

のんきぃ (2000/10/27 18:18)

>松茸さま
いえいえ、こちらも余り自信がないんで、かなりあせりましたです。
「アシモフ/アジモフ」の問題は、確かロシア語読みするか英語読みするかの違いだったと記憶しております。どっちがどっちだったか忘れましたが...
あの人、発音とかに結構うるさそうでしたからねぇ。



Re:アシモフとアジモフ

松茸 (2000/10/27 19:03)

のんきぃさんへ:
 迅速なご返答恐れ入りました。
 私も記憶で書いているのであやふやですが、一家がロシアからアメリカに移住したとき、キリル文字"Азимов"のローマナイズ("Azimov")を間違えて"Asimov"にしてしまった、という話だったと思います。
# ただし、かれらはアシュケナージムですから、“キリル文字”云々が妥当かどうか疑問もあります。

 さて、ここで問題となるのは:
・<威信>の高い語は、相対的に威信の低い語の固有名詞まで勝手に変えてしまう場合がある。
……もっとも知られた例は、“マリア・スクロドフスカ”→“キュリー夫人”でしょうか。
# 「創氏改名」などは別次元の話としておきます。
 もうひとつは:
・一度定着した語は、なかなか訂正できない。
……やはりスラヴ関係の例で、スロヴァキア分離後も「チェコ(人)」という表記がなくならない。
 まあ、“シャーロク・ホウムズとウォトスン医師”なんて、私も読む気がしませんが……。



チとティ

泰樹 (2000/11/03 02:23)

「ti」の表記 投稿者:佐藤和美  投稿日:11月 2日(木)12時32分28秒
>「fetishism」を今どき「フェチシズム」と書く人はいないでしょう。
>普通は「フェティシズム」でしょうね。
>で、その「フェティシズム」の短縮形ですが、
>なぜか「フェチ」で「フェティ」じゃない。
>フシギですねぇ。

皆さんtunaとtubeはどういう風に発音していますか?
まず「ツナ」と「チューブ」かと思います。
ところが現在のロンドンの標準発音では、それぞれ「チューナ」「テューブ」(便宜的にカタカナで書きましたが)と発音します。「テューナ」「チューブ」とは言いません。
なんか「チューナサンドイッチ」などと言われると汚らしく感じますね。

更に面白いのがHの発音。これは「ヘイチ」なんですね。これもなんか気持ち悪い感じがします。



Re: チとティ

いばら (2000/11/03 19:35)

泰樹さん
>皆さんtunaとtubeはどういう風に発音していますか?
>まず「ツナ」と「チューブ」かと思います。
>ところが現在のロンドンの標準発音では、それぞれ「チューナ」「テューブ」
>(便宜的にカタカナで書きましたが)と発音します。
>「テューナ」「チューブ」とは言いません。

「私の耳には」という注釈つきなのですが。
イギリス人の「チューナ」、「テューナ」はどちらもtunaと聞こえます。
「チューナ」の「チュ」もchuじゃなくてtuに。
…と書くとなんのことやら、ですが、ええと、舌の先の位置が違うような...
イギリス人のTって破擦音が強くて
例えばteaもカタカナで言えば「ティー」より「チー」に近く聞こえます。
#あ、これって泰樹さんがおっしゃってるのと同じこと言っているのかも知れませんね。

>更に面白いのがHの発音。これは「ヘイチ」なんですね。

Cockneyの影響なんでしょうか。
昔、ロンドンで露店を出しているお兄ちゃんから活字(イニシャルなんか)のスタンプを
買ったことがあるんですが、「エイチ」をくださいといったら「ハイチ」って言われました。(^^;)

手元の本に19世紀か今世紀初頭の風刺画で"SUPERIRO EDUCATION"というのがあります。
小学生くらいのpage boyがアーモンドの載ったお皿を手に、
シェリーグラスの載ったお盆を持っている執事ジェームズに話し掛けているという図です。
ジェームズは右手をちょっとあげて、 つんと鼻を上に向けて、小ばかにしたような表情。
Page Boy (to James). "WHERE SHALL I PUT THIS 'ERE DISH OF AMMONDS?"
James (with dinity). "I'M SURPRISED, HARTHUR, THAT AT YOUR HAGE
           YOU 'AVEN'T LEARNT 'OW TO PERNOUNCE THE HAR IN HARMONDS!"

もうひとつ、やはり使用人を揶揄した風刺画で、使用人が同じような話し方をしてます。
Lady of the House. "OH, THOMAS! HAVE THE GOONESS TO TAKE UP SOME COALS INTO THE NURSERY!"
Thomas. "H'M MA'AM! IF YOU ASK IT AS A FAVOUR, MA'AM, I DON'T SO MUCH OBJECT;
     BUT I 'OPE YOU DON'T TAKE ME FOR AN 'OUSEMAID, MA'AM!"

ふつうのHは落ちてしまって、いらぬところにHをつけるという感じですねえ。
MY FAIR LADYの世界だ…



マイ・フェア・レディ

佐藤和美 (2000/11/05 17:33)

オードリー・ヘップバーンは私の好きな女優の一人ですが、
「マイ・フェア・レディ」での役はコックニーの娘で、言葉の特訓を受けるというのでしたね。

いつもの「大辞林」から。
コックニー [cockney]
(1)生粋のロンドン子。
(2)ロンドンなまりの英語。

その中の一場面、「H」の発音の特訓で、
ろうそくを前にして「ハリケーン」(だったかな)を炎がゆれるように発音させられるところがありました。
なかなか意味深な場面です。
「マイ・フェア・レディ」という映画は言葉に興味のある人に是非見てもらいたい映画ですね。

私の「H」の発音?
炎はゆれそうにもないです。



re: マイ・フェア・レディ

田邉露影 (2000/11/06 04:46)

知っている人は知っていると思いますが、
この作品は GHOTI で有名な(笑)バーナード・ショウの
『ピグマリオン』(原題“Pygmalion”)という作品が原作ですが、
どうやら邦訳はされていないようですね。
(注釈本とDVD映画なら出ていますが)

Πυγμαλιων (アクセントの位置は忘れました)といえば、
自作の象牙の乙女像に恋をしたので、
アフロディテーはこれに生命を与えて妻にさせたという
ギリシア神話の登場人物(キュプロスの王様だったと思います)でして、
『マイ・フェア・レディ』という題よりも
皮肉がこもっていて好きです。

この作品で出てくる音声学者ヒギンズ教授というのは、
イギリスの音声学者ヘンリー・スウィートという人物で、
私がお世話になっている古アイスランド語の入門書“Icelandic primer”、
古英語の入門書“Anglo-saxon primer”
独自の発音記号で書かれた英文“A primer of spoken English”
など様々な著作を残していて、
特に音声学の入門書は邦訳も出ています。

……英語音声学入門書にちょっとした伝記が出ていましたが、
やはり偏屈は映画の中だけでなく実生活でも同じだったようですね。



Re:マイ フェア レディ 

いばら (2000/11/10 01:30)

>佐藤さん
>ろうそくを前にして「ハリケーン」(だったかな)を炎がゆれるように発音させられるところがありました。

♪In Hartford, Hereford, and Hampshire Hurricanes hardly happen♪
というあれですね。(^^)

Cockneyというのは厳密に言うとロンドンのEast Endの、それもどちらかというと
貧しい人々の言葉のようです。
昔はEast End出身というのを恥じて育ちのいい人を真似てちゃんと話しなさいなどと
子どもをさとしたりしたようですが、今では逆にcockneyを誇りにするようです。
(先日Gilda O'Neillという人の"My East End"という本を買ったらそんなことが出ていました。)

>田邉さん
バーナード・ショーのピグマリオン、検索してみましたら
1995年に講談社から文庫で出ていたようですが、現在は注文できないとありました。
絶版&在庫切れなんでしょうか。残念...
そういえば、原作ではレディに仕立て上げたイライザを青年にさらわれちゃって終わり、
だそうですね。私自身は読んだことありませんが。

音声学者のヒギンズ教授にモデルがいたというのははじめて知りました。
伝記、面白そうですね。(捜してみようかな。^^)



Henry Sweet 

田邉露影 (2000/11/10 02:25)

>いばらさん
> バーナード・ショーのピグマリオン、検索してみましたら
> 1995年に講談社から文庫で出ていたようですが、現在は注文できないとありました。

私も古本でも色々探してみたのですが、
探し方が悪いのか、どうも見つかりませんでした。

「ペンギンブックス」という出版社から、
注釈付きの英文は手に入れたので、
時間が出来たら挑戦してみようと思っています。


> 絶版&在庫切れなんでしょうか。残念...

多くが絶版みたいですね。
他の作品も岩波から出ていたようですが、
やはり絶版でした。


> そういえば、原作ではレディに仕立て上げたイライザを青年にさらわれちゃって終わり、
> だそうですね。私自身は読んだことありませんが。

恐らく、そちらの方が、
史実のつじつまが行くような気がします。
恐らく『ピグマリオン』は創作でしょうけれども、
ヘンリー・スウィートは奥さんがいませんでしたから。


> 音声学者のヒギンズ教授にモデルがいたというのははじめて知りました。
> 伝記、面白そうですね。(捜してみようかな。^^)

伝記といっても
彼の生涯についてそれほど詳しく
書いてあるわけではなく、
メインはスウィートが主張した
英文法・音声学に関してです。

石橋幸太郎 他, 『不死鳥英文法ライブラリ 第1巻 -- H. スウィート』, 東京, 南雲堂, 1967.


ちなみに彼の書いた著書の中でも、
“A primer of spoken English”と
“Icelandic primer”は
本当に興味深いです。
ぜひ、探してみてはいかがでしょうか!!



ニウム、ニューム

佐藤和美 (2001/08/27 12:12)

きのうの朝、妻がNHKの園芸の番組を見てたら、私の目に「ゼラニューム」という文字が飛び込みました。
自分だったら「ゼラニウム」と書くけど、さて世の中はどうなってる?

ということで、gooで「ニウム」、「ニューム」を検索してみました。
(「ニューム」の方のパーセントも計算してみました。)

ゼラニウム
4790件

ゼラニューム
706件(12.8%)

アルミニウム
29018件

アルミニューム
1039件(3.5%)

ウラニウム
776件

ウラニューム
25件(3.1%)

プルトニウム
6323件

プルトニューム
69件(1.1%)


こうして見ると「ゼラニューム」は他の「ニューム」に比べて率が高いみたいですね。
NHKに採用されたところを見ると「ゼラニューム」はこれからも勢力を拡大してくのかな。



ニューム

UEJ (2001/08/27 23:03)

「ニューム」だけでアルミニウムのことを指すことがあるようです。
広辞苑にも
 ニューム:アルミニウムの俗称。
とあります。
でも見出し語としての「アルミニューム」はありませんでした。



カラジウムの場合は

朝倉勇一 (2001/08/28 23:57)

 観葉植物「カラジウム(caladium)」の場合をgooで調べてみました。

カラジウム 185件

カラジューム 156件(45.7%)

#余談です。
平凡社世界大百科事典によると、アルミニウムは『イギリスの H. デービーはによって,ミョウバン KAl(SO4)2・12H2O のラテン名 alumenにちなんで aluminum と命名され,のちにaluminium となったが,現在でもアメリカではaluminum とつづる』のだそうです。



-ium

UEJ (2001/08/29 03:58)

googleで調べるといろいろありますねぇ。
以下、昼休み1時間かけて調べた結果です(←ヒマジン)。
()内はヒット数。

 リチウム→リチューム(約690)
 ラジウム→ラジューム(262)
 カドミウム→カドミューム(66)
 ヘリウム→ヘリューム(136)

-iumの前の子音には関係なく変化するようです。

元素名以外にも
 シンポジウム→シンポジューム(約4,700)
 サナトリウム→サナトリューム(約59)
 リノリウム→リノリュ−ム(29)
 デンドロビウム→デンドロビューム(約2,030)(園芸植物の名前だそうです)
 アクアリウム→アクアリューム(約417)
 ギムナジウム→ギムナジューム(約13)
 コロシアム→コロシューム(1)

極めつけはこれ。diの表記とあいまって10種類の表記を発見。
 シンビジューム(約3,200)
 シンビジウム(約2,660)
 シンビジュウム(約582)
 シンビディウム(約184)
 シンビデューム(約48)
 シンビジュム(約24)
 シンビジゥム(約20)
 シンビヂューム(3)
 シンビデュウム(1)
 シンビデゥム(1)

但しシンビヂュウム、シンビジゥーム、シンビデュム、シンビヂゥムはヒット無し。
他にもあるかも。



Re: ニューム

massangeana (2001/08/29 09:35)

ゼラニューム・ゼラニウムだけでなく, 「ゲラニューム・ゲラニウム・ゲラニアム・
ゼラニアム・ジェラニューム・ジェラニウム・ジェラニアム」などがあるようです。

植物名としてはほかに「デルフィニューム・ぺラルゴニューム・アデニューム」も
「ニューム」率が高そうです。あと楽器名のユーフォニューム。

平成3年度内閣告示第二号「外来語の表記」で, 「語末(特に元素名等)の-(i)umに
当たるものは,原則として「-(イ)ウム」と書く」とあるため, 元素名については
ニウムの場合が多くなっていると思いますが, それ以外の場合はニュームも多いので
しょう。

http://www.law.osaka-u.ac.jp/~kikuo/mater/kana.html



ギョエテ

UEJ (2001/08/29 10:54)

> ゼラニューム・ゼラニウムだけでなく, 「ゲラニューム・ゲラニウム・ゲラニアム・
> ゼラニアム・ジェラニューム・ジェラニウム・ジェラニアム」などがあるようです。

植物界の"ゲーテ"といったところでしょうか (^.^)



-ium

佐藤和美 (2001/08/29 12:20)

UEJさん、massangeanaさん、朝倉さん、ありがとうございます。

「シンビジウム」類も多いですけど、「ゼラニウム」類もそんなにいろいろあるんですか。
思いもしなかったです。(^^);




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