Europe


佐藤和美


 オリュンポスの主神であるゼウスは、多情の神であった。ゼウスは多くの少年少女に目をつけたが、その内のひとりにフェニキアの王女エウロペがいる。
 ゼウスは白い牡牛に変身して、エウロペに近づいた。そうとは知らないエウロペはこの牛と馴れ親しみ、やがてその背に乗った。すると牛は浜辺から海へ入り、泳ぎだした。このようにして、エウロペはゼウスにより、誘拐されてしまった。なお牡牛座は、このゼウスの変身した牡牛だという

 ゼウスの変身した牡牛とエウロペは、やがてクレタ島についた。そこでエウロペはゼウスの子を三人産んだ。その内のひとりがミノスであり、後クレタ島の王となった。
 クレタ島の文明はミノス王の名をとって、ミノア文明とも呼ばれる。ギリシア文明はミノア文明から多くの影響をうけた。ミノア文明はギリシア文明の母であり、エウロペはミノア文明の母である。ギリシアでは自分達の大陸をエウロペEuropeの名で呼ぶようになった。

 エウロペEuropeはギリシア語であり、ラテン語ではエウロパEuropaという。日本にこの言葉が入ったのは、ラテン語の直系であるポルトガル語からである。旧仮名「えう」は新仮名では「よう」である。日本人の発音は「えう」が「よう」に変化した歴史をもっていることもあって、エウロパはヨーロッパと呼ばれるようになったのである。

(1984・7・15)

(注) 「ヨーロッパ」の語源が「エウロペ」であるというのは、地名伝説に過ぎないかもしれない。

Copyright(C) 1998 Satou Kazumi

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