ソ(滝)



佐藤和美


 アイヌ語で「ソ」soとは「滝」という意味である。「so」は地名では、「ソ」、「ソー」、「ショ」、「ショー」の4パターンで出てくる。

 アイヌ語では発音を区別しないものがある。「k」と「g」、「t」と「d」、「p」と「b」そして「s」と「sh」である。「s」と「sh」は区別しないので、発音は「ソ」でも「ショ」でもどちらでもいいのだが、表記では一般には「s」のほうで表記する。

 語頭のアクセントのある開音節は長めに発音されることがある。これで「ソー」、「ショー」という発音もでてくるわけである。

それでは「so」のつく地名にはどのようなものがあるか見てみよう。

 まずは層雲峡である。「阿寒地名行」でもふれたが、層雲峡は「ソーウンペツ」So-un-pet(滝のある川)という意味である。「層雲峡」の字は、大町桂月によって当てられた。「ソー」の例である。

 現在では、空知というのは郡名、支庁名にもなっているが、もともとは川の名で「空知川」に由来する。空知の語源は「ソラプチペツ」So-rapti-pet(滝がごちゃごちゃ落ちている川)である。「ソ」の例である。
 なお、「ソラプチペツ」からは音訳で「空知」という地名が、意訳では「滝川」という地名ができている。

 かつて名寄本線にあった渚滑(しょこつ)という駅だが、これは「ショコツ」So-kot(滝のくぼみ=滝壺)である。「ショ」の例である。

 興浜北線の斜内(しゃない)は「ショーナイ」So-nay(滝川)である。東北地方の「しょうない」(庄内、等)のうちいくつかはアイヌ語起源の「滝の川」であるかもしれない。「ショー」の例である。

(1998・7・12)



Copyright(C) 1998 Satou Kazumi

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