ヤ(岸・陸)



佐藤和美


 アイヌ語で「ヤ」yaとは「岸、陸」という意味である。それでは「ヤ」のつく地名にはどのようなものがあるか見てみよう。

 まずは洞爺湖である。語源は「トーヤ」To-yaで、「湖の岸」、つまり「湖畔」という意味である。
 これに対して「海岸」の意味になるのが、国後島の東端の岬である安渡移矢(あといや)岬である。語源は「アトゥイヤ」Atuy-ya(海の岸)である。
 青森県下北半島の尻屋崎は「シリヤ」Sir-ya(山の岸)である。山が海に張り出している所の「陸・岸」をいう。

 以上が「場所」に関する地名であるが、次に「材質」に関する地名をあげる。

 北海道最北端の宗谷岬であるが、語源は「ソーヤ」So-ya(岩の岸)である。
 アイヌ語では「ソー」も「ショー」も同じ音韻として区別をしないが、「ショーヤ」(アルファベットではSo-yaと書く)は小樽市内に塩谷として残っている。(駅では函館本線の小樽駅の西どなりの駅である。)
 江差追分で「 忍路(おしょろ)、高島及びもないが、せめて歌棄(うたすつ)、 磯谷(いそや)まで」と歌われた磯谷の語源は「イソヤ」Iso-ya(磯岩の岸)である。
 北海道で最初に鉄道が開通したのは1880年(明治13年)手宮・札幌間である。手宮は小樽市内にあるが、手宮の語源は「テムイヤ」Temuy-ya<Temmun-ya(スガモの岸)である。

(1998・3・14)




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