2001年後半伝言板アイヌ語関係集




『地名の由来を知る事典』のアイヌ語

佐藤和美 (2001/07/01 12:14)

「北海道のアイヌ語地名」に「『地名の由来を知る事典』のアイヌ語」を追加しました。

6月の伝言板に書き込みのあった武光誠の『地名の由来を知る事典』のうち、アイヌ語地名について検討してみました。アイヌ語をほとんど知らないのにアイヌ語のことを書いてしまう、というよくあるパターンが見えてきます。



アイヌ語

マナ (2001/07/31 21:55)

はじめまして。
アイヌの言葉にとても興味があるのですが、
アイヌ語で「呼吸」とは、何て言うのでしょうか?
どなたか教えて下さい。



RE:アイヌ語

佐藤和美 (2001/08/02 12:04)

マナさん
>アイヌ語で「呼吸」とは、何て言うのでしょうか?

アイヌ語「ヘセhese」が「息をする」という意味です。



新聞記事の情報です

未菜実 (2001/08/08 10:42)

この掲示板、アイヌに関する話題が多いので、興味がある人も多いかと思って、情報です。

今日2001.08.08の日経新聞 文化欄に
コタンの調べ歌い継ぐ
 アイヌ口伝の歌や「ムックリ」保存へ奔走
             安東ウメ子

と題する記事が載っています。





きさらぎ (2001/08/14 15:00)

はじめまして。書き込みなんて初めてなんですが、ちょっぴり参加させてください。
私は今新潟に住んでいますが、地元は北海道です。北海道の厳しい寒さも雪も大好きです。
そこで、アイヌ語で冬に関する言葉を教えて欲しいんです!「雪」とか・・・あと「スキー」や「そり」なんてのもあったんでしょうか??



RE:冬

佐藤和美 (2001/08/15 07:30)

アイヌ語、ひろってみました。

冬  マタmata
雪  ウパシupas
氷  コンルkonru/ルプrup
ソリ ソリsori

スキーはないですねぇ。そもそもスキー自体が昔はなかったですから。
ソリは日本語から入ったものです。
コンルも日本語から入った可能性大。



冬とアイヌ語

poronup (2001/08/15 20:59)

私の知っている範囲で書きます。
スキーやソリは、北海道で一般的ではなかったようですが、樺太では日常的に使われていました。

『知里真志保著昨集』(平凡社)に収められている「樺太アイヌの生活」(山本祐弘との共著)と『樺太アイヌ・住居と民具』(相模書房。絶版)に参考になる記述がありました。

スキーは、シトゥ(situ)と言っていました。形は現在のスキーにそっくりです。接地面にアザラシの皮を張っていました。北海道の場合、雪の上を歩くためのカンジキはありましたが、スキーはなかったようです。
現在のスキーは単なるスポーツですが、アイヌの場合は冬、狩りに行くとき履く実用的な意味のあるものだったそうです。
※ スキーについては、シト(sito)と書いてある個所もありますが、どちらが正しいのか分かりません。地方差か、聞き取り違いだと思います。


ソリは、犬ゾリを使っていました。木で作られたソリそのものはシケニ(sikeni)と言います。ただ、犬とつながれた状態のものはヌソ(nuso)と言いました。

有名な話ですが、1910年の白瀬陸軍中尉の南極探検隊に2人の樺太アイヌの隊員がいました。山辺安之助と花守信吉です。彼らは犬ゾリを引く樺太犬の管理係として活躍したそうです。彼らなしには南極点到達は達成できなかったでしょう。

そうそう。
冬と言えば、ダイアモンド・ダストがありますね。
千歳のアイヌ語では「クルッペ・イメル(kuruppe-imeru)」と言ったそうです。クルッペは「霜」、イメルは「稲妻」です。鮮烈で美しい表現だと思います。

ちなみに、これまた有名な話ですが、道東のアイヌ語で「氷」を指すrupは、分解するとru-p、溶ける・もの、です。日本語とは発想が逆ですね。水が凍ると氷になりますが、rupは溶けるものだからwakka(水)になるわけです。
もともとアイヌ料理であるルイベの「ル」も同じです。口の中で溶ける「食べ物(イベ=イペ)」だからルイベなのです。



アイヌ語と雪

nupkes (2001/08/16 10:18)

 ある本にアイヌ語の雪として「upas,ukaka,upepe」が記載されていました。
 信頼性についてお教え下さい。



RE:アイヌ語と雪

佐藤和美 (2001/08/17 07:16)

nupkesさん
>ある本にアイヌ語の雪として「upas,ukaka,upepe」が記載されていました。
>信頼性についてお教え下さい。

「upas」は「雪」で問題ないでしょう。

知里真志保『地名アイヌ語小辞典』(北海道出版企画センター)から。
upepe
「増水」
paykar-upepe
「春の増水;雪解に川の水が増すこと。」

「upepe」は「雪」じゃないですね。

「ukaka」は私の持ってる資料では該当なし。


ところで、nupkesさん、私よりもアイヌ語の資料多く持ってるはずだけど、なんで回りくどくこの伝言板に質問(?)してくるんですか?
「ある本」ってなんの本か知らないけど、その本の内容が問題なら初めからそう書けばいいんじゃないですか?



RE:RE:アイヌ語と雪

nupkes (2001/08/17 08:12)

>「ある本」ってなんの本か知らないけど、その本の内容が問題なら初めからそう書けばいいんじゃないですか?

「ある本」とは、藤原聖明「アイヌ語正典」です。巻末に引用禁止となっているため詳しく書けないのです。
 この書籍の他の部分は、驚くほど刺激的で、なるほどと頷くことばかりです。
 しかしながら「雪」に関するここの部分は、他文献にては確認できないのです。

>nupkesさん、私よりもアイヌ語の資料多く持ってるはずだけど、なんで回りくどくこの伝言板に質問(?)してくるんですか?

私は、必要とする資料は、購入できるものは購入し、購入できないものは道立図書館でコピーしました。それでも、見逃したのか、「ukaka,upepe」は確認できません。
 他の内容から考えて、これを不正確とは考えづらいのです。
広く、教えを請うしかないのです。



「アイヌ語正典」

poronup (2001/08/17 11:44)

ukakaは知りませんが、ukaでしたらあります。これは「堅雪」ですね。萱野辞典・中川辞典でしたら載っていたと思います。
(今、手元にありません)

upepe、もしくはupepe-wakkaはあくまで「雪解け水」もはずです。雪にはならないはずです。

さてさて。
一部では支持を得ている『アイヌ語正典』(新泉社)ですが、まず、これは公刊された著作物ですから、引用するのは問題ないはずです。
著作健法の第32条にこうあります。

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

私は件の本を通読してませんが、その中のいくつかの論考は読みました。まず気になったことを書きますと、この著者はアイヌ語を実際に聞いたりしたことがないのではないでしょうか。
実際にアイヌ語の会話なり口承文芸など実際のアイヌ語野文章を理解する能力はないと思われます。

例をあげれば、nupuriを頭の中で勝手に語義解釈してnupriなどと書いてます。これは考えられません。

確かに、論考の中に述べられている解釈や意見については興味深いものも含まれていますが、私はあまり信頼できる文献だとは思っていません。実際のアイヌ語とは関係なしに頭の中で作り上げられたアイヌ語解釈が多いように思えます。

ただ、最終的な判断は、全体を通読してから出すべきだと思うので一度通読してみようと思っています。ま、通読したとして評価が180度ひっくり返る可能性は低いと思いますが(笑)。

しかし、この本を評価する人がいるのも事実です。以前から気になっていたのですが。

nupkesさん、何でしたらこの本の評価について意見交換してみませんか?



RE:「アイヌ語正典」

nupkes (2001/08/17 22:48)

>ukakaは知りませんが、ukaでしたらあります。これは「堅雪」ですね。
>萱野辞典・中川辞典でしたら載っていたと思います。

両辞書に、確かにそのように記載されていました。

>upepe、もしくはupepe-wakkaはあくまで「雪解け水」もはずです。
>雪にはならないはずです。

 「アイヌ語正典」では、「掌に載って「溶けて流れる雪」」としていますので、少し意味が近いですね。これに対しての知見を、私は持っていません。

>実際にアイヌ語の会話なり口承文芸など実際のアイヌ語野文章を理解する能力は
>ないと思われます。

「アイヌ語正典」に対する評価が定まっていないことは、承知しています。ですから、私は、論文の引用には使用していません。
 
 ある地域における調査で、「siとmoの対」においては従来説では説明しきれないことに気づきました。ところが、このことに問題意識を持っている文献がないのです。
 唯一「アイヌ語正典」だけが、このことを問題にしているのです。また、この解釈で某地域の解釈が可能となるのです。驚くべきことでした。

 そのことに気づいたとき、数年後の論文には、このことを記載しようと思ったのですが、昨年末でアイヌ語地名調査を断念しましたので、日の目を見ることはないと思います。



別について

旭川出身 (2001/08/20 22:51)

初めて書込みします。
北海道の地名について最近不思議だなぁって思ったことについて教えて欲しく書き込みます。
それは、北海道の地名に「別」と書く地名が多いことです。
例えば、別海町、士別町、陸別町、江別市、札幌市厚別区・…市町村名で約24ほどありました。
また、地域でも「別」のつく地名が多く見受けられます。
どう言う意味があり、どうしてなんでしょうか? 教えて下さい。



(無題)

永瀬研二 (2001/08/21 12:15)

初めまして.すごくレベルが高いページでどきどきしています.
ところで,ひとつ質問があるのですが,「地名語源事典」(山中嚢太著・校倉書房)のアイヌ語はどのくらい信憑性があるのでしょうか.特に「山本直文」という人にかかると,阿蘇(asoy-ye「穴を作っている溶岩」),明石(wakka-ush「水のあるところ」),伊香保(ika-pop「山越えのたぎり立つところ」)など全国にアイヌ語地名が存在することになっています(思いっきり幽霊アイヌ語っぽいんですが…).後半には北海道が独立した項で扱われていますが,そこでも知里氏,更科氏,バチェラー氏の説が入り乱れていてどこまで信じて良いのかわかりません(例:虻田…更科説「アプタ・ペッ」で「うばゆりの根を掘る・川」 バチェラー説「ap-uta-kotan」で「銛先のところ」).
どうかご教授願います.



RE:別について

佐藤和美 (2001/08/21 12:56)

アイヌ語「ペツpet」は「川」という意味ですが、この「ペツ」に宛てられた漢字が「別」です。
アイヌ語では「ペツ」のつく地名が多いので、「別」のつく地名も多くなっています。



アイヌ語地名

佐藤和美 (2001/08/23 12:36)

阿蘇(asoy-ye「穴を作っている溶岩」)
アイヌ語も日本語も意味不明。

明石(wakka-ush「水のあるところ」)

「wakka-us-i」だったらアイヌ語としては成立しますね。ただし「ワッカウシ」が「アカシ」になるかどうか(なったかどうか)はわかりませんが。

伊香保(ika-pop「山越えのたぎり立つところ」)
ika (山や尾根や川)を越えて近道して(行く)。
pop 煮立つ。

単語は存在するけど、「ika」も「pop」も動詞ですね。無関係の動詞を無理やりくっつけて地名をでっちあげたという感じがします。動詞だけで地名をつくるというのもなかなかの根性ですね。

「アプタ・ペッ」 「うばゆりの根を掘る・川」 、「ap-uta-kotan」で「銛先のところ」
ap 釣り針
uta 該当の意味なし
kotan 集落
アプタ 該当の意味なし



(無題)

永瀬研二 (2001/08/24 15:22)

ありがとうございました.どうやら他のアイヌ語地名も知里氏の小辞典と比較すると怪しそうです.やはり東北以南の地名はアイヌ語と関連付けない方がいいんでしょうか?これからは他のきちんとしたアイヌ語の地名語源辞典を参考にしますね.まずは山田氏の本でしょうか?もちろんこちらのHPも参考にさせていただきます(^^)
あくまで趣味で地名の由来を調べてるんですが,やはり現地に赴いて実際に目で確かめながらの方がいいんでしょうね…



虻田

nupkes (2001/08/24 15:28)

 「北海道 駅名の起源」の「虻田」には、「ハプ・タ・ウシ いつもそこでウバユリの球根を掘った所」とし、「ハプ」は樺太方言としています。
 また、「この地のアイヌは古くは樺太アイヌと同系と考えられ」としています。

 服部四郎方言辞典p.93には、「食料の粉の意味で」「ko,-ho」は記載されていますが、このような意味の「hap」は記載されていません。

 知里真志保「分類アイヌ語辞典 植物編」p.204には黒百合の鱗茎の意味で「hax < hap」が記載されています。このことらしいのですが、ウバユリではないのが不思議です。

 「アプタ・ペッ」 「うばゆりの根を掘る・川」は、知里真志保説の変形のようですね。



阿蘇・明石・伊香保

佐藤和美 (2001/08/26 17:25)

吉田茂樹『日本地名語源事典』(新人物往来社)からです。

アソ(阿蘇・阿曽)
「『古事記神代』に阿蘇君、『景行紀』に阿蘇国がみえ、熊本県の阿蘇山で知られる上代地名。三重県度会郡南勢町阿曽浦の海食崖でも知られるように、拙著『地名の由来』のいう「アズ(坍・崩崖)」の転化と決められよう。南島語のasap(煙)説は無理であることを示し、阿蘇山のカルデラ壁を表現した地名である。ただ、一部に丹後国阿蘇海のように「アサ(浅)」の転化と思われる地名もあろう。」

アカシ(赤石・明石)
「兵庫県明石市は海中から赤い石を産することによるというのが通説。この地名は『允恭紀』に「赤石」、「万葉集(第二五四)」に「明石の大門」とみえ、風土記には「明石郡」とあるから、赤い石が妥当ともみられる。ただし、「平城京木簡」から「明」でみえ、これは「アカシ・アカス」のいずれにも読みとれる。現地でみる限り、陸上には赤い石は見えず、別語の可能性もある。明石川の河口付近で洲が開いて小潟があった所で、あるいは「アカス(開洲)」といったかもしれない。」

イカホ(伊香保)
「「万葉集(第三四〇九)」に伊香保の峰がみえ、群馬県榛名山の古名で、山腹に伊香保温泉が立地する。「イカホ(厳穂)」の意で、神聖な厳しい山の意。」



(無題)

永瀬研二 (2001/08/26 23:57)

>nupkes様,佐藤和美様

例に出した地名にも詳しい解説を下さり,本当にありがとうございました.

私の持っている「地名語源辞典」には,この三つの地名に関して,アイヌ語由来説と「阿蘇=asap」「明石=赤い石」説以外の説が載ってませんでした….
それだけならまだしも,阿蘇に関しては「ラテン語で焼く,あぶるを意味するasso」「火山灰を意味する英語ash,ドイツ語asche」と似ているなんて書かれていました.似ているだけで全然関係のない言語を引き合いに出すなんて,この本もかなりトンデモ本でしょうか.そういえばアイヌ語のcipと英語のshipも関連付けられてました.

「地名語源辞典」で阿蘇や明石をアイヌ語と関連付けていた「山本直文」という学者(?)の方は,「四国は最もアイヌ語由来の地名が濃厚である」なんて事を書いていました(正確には著者の引用ですが).以前伝言板で話題になった「四万十アイヌ語説」は載っていませんでしたが,もしかすると関係があるのかもしれませんね….現地に行かないで,バチェラーあたりの辞書を見て語呂合わせしただけなのでしょうが.(ところで,「バチェラー」と「バチラー」どちらが正しいのですか?私の持っている本ではすべてほとんどバチェラーなのですが…)

ところで,伊香保の由来を読んで新たに疑問なんですが,伊香保の由来が「巌穂」で「神聖な厳しい山」だとすると,「穂」には「山」というような意味もあるのでしょうか.「高千穂」なんて山もあったな…と思ったもので(^^; この本には高千穂は「高千火」で「多くの噴火口」の意味だと書いてありました.後は記紀関係の説がちらほら….

できればでいいので,どうかお願いします.
新参者がだらだらと長文を書き散らして,申し訳ありませんでした.



バチェラーとバチラー

nupkes (2001/08/27 08:42)

>「バチェラー」と「バチラー」どちらが正しいのですか?
>私の持っている本ではすべてほとんどバチェラーなのですが…)

 辞書の著者名は以下のようになっています。
ジョン・バチェラ『蝦和英三對辭書』明治22年発行  昭和50年復刻  国書刊行会
ジヨン・バチラー『アイヌ・英・和辞典第三版』   大正15年8月    教文館
ジヨン・バチラー『アイヌ・英・和辞典第四版』  1938年    岩波書店

 新しい方では、バチラーとなっています。辞書ですから、本人が最初はバチェラとし、後にバチラーとしたと推定できます。名前の表記ですから、本人がそのようにすれば、それが正しいことになります。
 どちらが正しいとかの問題ではないようです。



阿蘇

佐藤和美 (2001/08/27 20:50)

阿蘇などの南島語源説ですが、以下の書き込みがありました。

「RE:そこに山があるから?」(2001/03/03 11:53)





佐藤和美 (2001/08/28 12:18)

>「穂」には「山」というような意味もあるのでしょうか.

これかな?

『大辞林』
ほ【穂】
(2)とがったものの先。「筆の―」

「穂高」なんてのもありましたね。



慣用読みと「ん」に関して

永瀬研二 (2001/09/03 17:30)

nupkesh様 書き方が悪かったですね(^^;どちらが一般的な表記か,ということを聞きたかったんだと思います.外国人の名前のカナ表記に正しいも間違いもありませんよね・・・すいませんでした.
佐藤和美様 ありがとうございました.すっきりしました.

慣用読みと関係あるかわかりませんが、中学生のとき、国語の先生が国語便覧に関して「今はびんらんと読んでいるが、昔はべんらんと読んだ」と言っていました.でも高校のときの20代の先生は,べんらんという読み方はすでに使ってなかったと言っていました.これも,時代による変化のひとつですよね.いったいどのくらいの世代まで,べんらんと言ってたんでしょうかねえ・・・(地方によって違ってたり?)私は辛うじて10代ですが.

「ん」の発音の変化なら,確かアイヌ語にもありましたよね.サ行の言葉かヤが後にくると,イに変化するんでしたっけ? 
pon 小さい + seta 犬 = poi(y?)seta
pon 小さい + yaunpe 内陸人 = poi(y?)yaunpe
これって結局,発音しづらくなるから変化するんでしょうか?英語で母音が語頭の名詞には「a」でなく「an」を使う,みたく・・・
a apple → an apple



バチェラーとバチラー

nupkes (2001/09/03 23:54)

>書き方が悪かったですね(^^;どちらが一般的な表記か,ということを聞きたかった
>んだと思います

 北海道で権威があるとされている『北海道大百科事典』(昭和56年 北海道新聞社)には、「バチラー」と記載されています。さすがですね。
 しかしながら、たいていはバチェラーと記載されるのが普通です。

 上記のように記載しましたが、『北海道大百科事典』を権威があるとは、わたくしは思ってはいません。ある部分は、肯けても、ある部分は肯けない項目があります。



『日本地名さんぽ』のアイヌ語

佐藤和美 (2001/09/09 16:29)

「北海道のアイヌ語地名」に「『日本地名さんぽ』のアイヌ語」を追加しました。



「『日本地名さんぽ』のアイヌ語」について

nupkes (2001/09/09 21:08)

>千歳
>「かつては、谷間を流れる千歳川からアイヌ語でシコツ(大きな窪地)と呼ばれていたという
>が、「死骨」に通じて縁起が悪いので江戸時代に改めた。」
>「大きな窪地」では川の名称にならない。
>知里真志保『地名アイヌ語小辞典』(北海道出版企画センター)
>kot
>凹み;凹地;凹んだ跡;沢;谷;谷間
>この場合の「コツ kot」は「沢、谷、谷間」などの訳語を使うべきだろう。

 【「コツ kot」は「沢、谷、谷間」などの訳語を使うべきだろう。】と記載なさっていますが、どのような根拠で、つまり、どのような現地調査結果なのでしょうか。

 resaknay氏の調査結果と異なるようですが。



「『日本地名さんぽ』のアイヌ語」について 2

nupkes (2001/09/09 21:53)

>利尻島
>「アイヌ語でリイ・シリ。高い島の意味」
>「リイ・シリ」ではなく「リ・シリ ri-sir」である。

知里真志保「アイヌ語入門」p.123に、単母音と長母音についての記載があります。これからは、どちらでもいいように思えるのですが。他に、なにか根拠があって記載しているのでしょうか。



「『日本地名さんぽ』のアイヌ語」について 3

nupkes (2001/09/10 08:48)

>「クシュル(通路)」は「クシル kus-ru」(通る・道)のつもりか。

 知里真志保「アイヌ語入門」p.125には、sはサ行音でも、シャ行音でも発音されるようですね。
 同一文献では、シャ行音で統一するのなら問題はないのですが、この文献では、サ行音と、シャ行音が混じっていて、これが問題ですね。



リイ・シリ

佐藤和美 (2001/09/10 12:27)

>>利尻島
>>「アイヌ語でリイ・シリ。高い島の意味」
>>「リイ・シリ」ではなく「リ・シリ ri-sir」である。
>知里真志保「アイヌ語入門」p.123に、単母音と長母音についての記載があります。これからは、どちらでもいいように思えるのですが。他に、なにか根拠があって記載しているのでしょうか。

「リー」(長母音)だったらいいけど、「リイ」(重母音)ではダメだと言うことです。



「kus-ru」の仮名表記

佐藤和美 (2001/09/10 12:32)

「s」には母音がついてないので、「kus-ru」を「クシュル」と表記したら間違い。



RE:リイ・シリ

nupkes (2001/09/10 13:10)

>「リー」(長母音)だったらいいけど、「リイ」(重母音)ではダメだと言うことです。

そのとおりですね。でも、以下の記載があったものですから。

>「カムイ・トー」ではなく「カムイ・トkamuy-to」である。



千歳

poronup (2001/09/11 20:41)

佐藤和美さん:
>千歳
>「かつては、谷間を流れる千歳川からアイヌ語でシコツ(大きな窪地)と呼ばれていたという
>が、「死骨」に通じて縁起が悪いので江戸時代に改めた。」
>「大きな窪地」では川の名称にならない。
>知里真志保『地名アイヌ語小辞典』(北海道出版企画センター)
>kot
>凹み;凹地;凹んだ跡;沢;谷;谷間
>この場合の「コツ kot」は「沢、谷、谷間」などの訳語を使うべきだろう。

nupkesさん:
> 【「コツ kot」は「沢、谷、谷間」などの訳語を使うべきだろう。】と記載なさっていますが、
>どのような根拠で、つまり、どのような現地調査結果なのでしょうか。
>
>resaknay氏の調査結果と異なるようですが。

ご本人にお聞きするの一番でしょうが、ここにはいらっしゃらないようなので、よろしければ、resaknayさんの調査結果がどのようなものなのか教えていただけませんか?

なお、佐藤さんは、知里真志保の『地名アイヌ語小辞典』を引用されているだけので、現地調査に基づいて書かれているわけではないと思いますが。
この地名小辞典の訳語が間違っているとおっしゃるのでしたら、ぜひその理由を聞きたいと思います。

私も、kotの解釈については、佐藤さんの記述に近い見解を持っていましたが、それと異なる見解があるならぜひお聞きしたいです。よろしくお願いします。

それにしても「シコッ」のアクセントが、「コ」にあるのが不思議です。「シ」が「大きい」・「本当の」の意味であるならば、通常「シ」にアクセントが来るはずだと思うのです。もしかしてこのことと関係あるのでしょうか。



RE:千歳

nupkes (2001/09/11 23:26)

>地名小辞典の訳語が間違っているとおっしゃるのでしたら、ぜひその理由を
聞きたいと思います。

「地名小辞典の訳語が間違っている」と言っているわけではありません。
 kotの訳「凹み;凹地;凹んだ跡;沢;谷;谷間」の「凹み;凹地;凹んだ跡」を否定するのに、単に河川名ではおかしいからとの理由だけで「沢;谷;谷間」とすることに、疑問を持ったからです。

>resaknayさんの調査結果がどのようなものなのか教えていただけませんか?

アイヌ語地名研究会における、第1回目の現地巡検において、一般の方も公募してのバスにての千歳でのresaknay氏の説明では、高速道路が上を走る、巨大な窪地がそれであるとのことでした。
 ただ、その時に聞いたことのあいまいな記憶ですから、正確とはいえないと思います。やはり、resaknay氏の直接の説明があればと思いますが、氏は書き込みをしてくださるのかは不明です。

 その時に、某教授はその崖の上にチャシがあると言っていたように記憶していますが、何か関係があるのかは不明です。



シコッ

佐藤和美 (2001/09/13 11:59)

山田秀三『北海道の地名』(北海道新聞社)
千歳市
千歳川
「シコツはシ・コッ(shi-kot 大・沢)の意。千歳川の旧名。今の市街地から少し上にかけてが大河谷の姿であり、また鮭の大産地であったのでこの称で呼ばれたのであろう。今ではその名が消えたが、水源の湖の名だけは今でもそれを残して支笏湖である。」

更科源蔵『アイヌ語地名解』(みやま書房)
支笏湖
「昔アイヌは(千歳付近の湖沼に対して)キムント(山の湖)といったところである。シ・コツは千歳付近のくぼ地に対して名付けたものを、発音が死骨に通ずるといって嫌われたもの。」

「シコッ」がもともと川の名だったら、「コッ」を「窪地」と訳すのは不適切。
「シコッ」がもともと窪地の名だったら、「コッ」を「沢;谷;谷間」などと訳すのは不適切。
『日本地名さんぽ』には「かつては、谷間を流れる千歳川からアイヌ語でシコツ(大きな窪地)と呼ばれていたというが、」と書いてある。つまり川の名としているのだから、「窪地」と訳しているのは不適切。



『北海道』はアイヌ語では?

工藤 (2001/09/13 12:40)

はじめまして。
飛び入りで恐縮ですが、アイヌの人々がこの土地を彼らなりにどういう言葉を使って表現していたかを知りたいと思います。
彼らは現在私たちが『北海道』と呼んでいる土地を、彼らの言葉ではどのように呼んでいたのでしょうか?
『蝦夷』という言葉も『北海道』という言葉も、所詮内地の人たち、北海道の外側に住む人たちが彼らの感性で付けた名前だと思うのですけれど。
私たちが現在、ここを北海道と親しみを込めて呼ぶように、何百年もこの北の地で生を営んできたひとたちは、この地をどう表現していたのでしょう。
本などでは「カイ」という言葉が一番近いようなのですが….
それとも、アイヌの人たちは、北海道を全体として把握していなかったということはあるのでしょうか?
アイヌの人々の視線から見た北海道をあらわす言葉を知りたいです。

専門的な掲示板に、素人がすみません。
よろしければ、教えてください。



アイヌ語の短母音・長母音

佐藤和美 (2001/09/14 12:11)

>知里真志保「アイヌ語入門」p.123に、単母音と長母音についての記載があります。これからは、どちらでもいいように思えるのですが。他に、なにか根拠があって記載しているのでしょうか。

知里真志保『アイヌ語入門』(北海道出版企画センター)の該当の部分
「母音は、原則として、短かく発音されるが、アクセントある語頭の開音節は、長めに発音される傾向がある。しかし、それを短かく発音したからとて、なんの不都合も起こらない。」

>>「リー」(長母音)だったらいいけど、「リイ」(重母音)ではダメだと言うことです。
>そのとおりですね。でも、以下の記載があったものですから。
>>「カムイ・トー」ではなく「カムイ・トkamuy-to」である。

知里真志保流に記述すれば(アクセントのある位置を平仮名で書けば)、
「kamuy」は「カむィ」、
「to」は「と」だが、
「kamuy-to」は「カむィト」である。
「kamuy-to」の「to」は語頭でもなければ,アクセントもない。



RE:『北海道』はアイヌ語では?

佐藤和美 (2001/09/15 14:09)

ま、普通は「アイヌモシリ aynu mosir」(アイヌの国、人間の国)でしょう。

なお、「カイ」はわけのわからない単語です。
1999年伝言板アイヌ語関係集
この12月下旬の書き込みを読んでみてください。



北海道

永瀬研二 (2001/09/15 23:27)

 「北海道」をあらわすアイヌ語,多分日常的には用いられてはいなかった(雅語的な言い回しかな?)とは思いますが,「ヤウンクルモシリ yaunkur-mosir 内陸人の国」ってのもありましたよね.ユカラとかの中では,アイヌモシリって言葉も,たとえばカムイモシリ(神の国),カントモシリ(天の国),シサムモシリ(隣の国=本州)なんかと対になって使われることがあるし,アイヌが北海道を全体として把握してなかった,って事は無いはずですよね(ロシアや中国とも昔から交易してたわけだし).

 「アイヌモシリ」だと,狭義では北海道,広義では地球上すべてにもあてることができて(そういう意味での使い方がユカラとか昔話にある訳ではないですけどね),個人的に好きな言葉です.

 以前,NHKでアイヌのウパシクマ(言い伝え)のことを,語り部の中本ムツ子さんに取材した番組を放送しましたが,そのウパシクマのなかに「人間の国に下ろされたものに,何一つ無駄な物は無い,たとえ人間に害をなすものであっても,何かの理由があって存在している」というような意味の物がありました.これは原文では,「アイヌモシッタ,・・・」というような語りだしでしたが(よく聞こえなかった),これも「地球上」って意味でも充分通じますよね.アイヌ民族に限ったことではありませんが,こういうエコロジー的な思想を持って開発事業とかすれば,今更温暖化だの砂漠化だの騒がなくても住んだだろうにな,と思います.・・・ていうか全然関係ない話に・・・佐藤様,削除して下さって結構です(^^;



アイヌ語は1種類ですか

モーセンゴケ (2001/09/22 16:25)

はじめまして、以前のこの伝言版にはアイヌ語を研究した方がいらしたので教えていただきたい
のですが、千島列島経由で北海道に入ってきた道東アイヌ、樺太経由で北海道に入ってきた道北
アイヌ、本州から渡った民族である道南アイヌの3系統があると読んだことがあります。(本は
忘れてしまいました。) これが本当ならアイヌの言葉も地方によって、ほとんどお互いに会話が
成立しないくらい著しく異なっていても不思議ではないのですが、アイヌ語って1種類なのでし
ょうか?



アイヌ語の地方差

poronup (2001/09/23 22:45)

>モーセンゴケさん

はじめまして。
私の知っている範囲で書きます。

まず、結論から言いますと、アイヌ語も日本語同様、地方差(方言)があります。 北海道内部で言うと、胆振や日高、十勝、釧路、道央など、いくつもの地方によって異なるようですが、まったく通じないほど違うわけではないと思います。

ただし、昔、帯広のアイヌが。根室に行って地元のアイヌと話したところ、まったく通じず、かえって日本語で話した方が通じた、という話を読んだことあります。
やはり、隣り合っている地方の方が言葉通じやすいと思います。

また、アイヌ語には、日常会話の言葉とは別に、雅語ともいうべき言葉があって、節をつけて歌うように語る、ユカラなどの物語や挨拶の言葉などで使われます。これらはより通じやすかったそうです。

有名なアイヌの古老・山本多助翁が樺太に行ったところ、まったく言葉が通じなかったが、ユーカラの言葉で語ったところ通じた、ということを本に書いてます。

あと、千島のアイヌ語も断片的な記録は残ってますが、北海道アイヌ語とはやはり違いがあったようです。ロシア語の影響も大きかったようです。

あと、アイヌ民族の起源についてはいろいろな説がありますが、少なくとも言語の面から見ますと、樺太や千島のアイヌは北海道アイヌの分かれ目であることは確実だと思われます。

北海道には少なくとも10万年前から人が住んでいますが、それが現在のアイヌ民族の祖先だったと思われます。

道東や道北のアイヌが、それぞれ千島や樺太から来たという根拠は何なのか疑問です。
ただし、いわゆる「オホーツク人」も現在のアイヌ民族の先祖の一部であったと思われますので、その人たちが千島もしくは樺太方面から渡ってきたとするならば、アイヌの先祖の一部が樺太もしくは千島から渡ってきたとも言えます。
とはいえ、オホーツク人の起源や民族系統についてもいろいろな説があるので決着がついてないようです。
※ オホーツク人については、下のURLをご覧ください。

いずれにせよ、道東アイヌが千島起源、道北アイヌが樺太起源、というのは無理があると思います。

http://www.ohotuku26.or.jp/fantasy/moyoro/moyoro.html



『地名の世界地図』のアイヌ語

佐藤和美 (2001/10/21 10:04)

「北海道のアイヌ語地名」に「『地名の世界地図』のアイヌ語」を追加しました。

「『○○○○』のアイヌ語」シリーズ第3弾です。
6/20の書き込みを中心にして、若干手直ししたものです。
伝言板でだいたい書いてたことですが、ケジメのつもりでこのようにまとめてみました。

「『○○○○』のアイヌ語」シリーズ第4弾は、
「『広辞苑』のアイヌ語」を予定してます。
今までで最大の大物ですね。
こう、ご期待。



(無題)

永瀬研二 (2001/10/27 21:02)

妖怪の本を読んでいたところ,「コロポックル」には「蕗の下の人々」のほかに「竪穴に住む人々」という意味もあると書いてありました.本当にそんな意味があるのでしょうか?その本の著者はアイヌ語に関してはまったくの門外漢なのでいまいち信用できかねるのです.



コロポックル

佐藤和美 (2001/10/28 12:56)

永瀬さん
>妖怪の本を読んでいたところ,「コロポックル」には「蕗の下の人々」のほかに「竪穴に住む人々」という意味もあると書いてありました.本当にそんな意味があるのでしょうか?

「コロポックル」の意味に関しては「1998年伝言板アイヌ語関係集」の最初に出てます。「フキの葉の下の人」の意味ですね。

「竪穴に住む人々」?

「ポル poru」は「ほらあな、洞穴」の意味だけど、これが「竪穴」?
「?」+「ポル」+「クル」で「コロポックル」になると思った?

でも『萱野茂のアイヌ語辞典』で「住む」を調べると、
「アン」
「ウン」
「オカ(イ)」
で、「コ」で始まる単語は出てこないですね。

もっとも「住む」+「ほらあな」+「人」じゃ、文法的に疑問ですけど。



(無題)

永瀬研二 (2001/11/17 18:21)

佐藤和美さま
だいぶ遅くなりましたが,コロポックルについての考察,ありがとうございました.
「トイチセウンクル」などの呼び方もあるようですが,その本にはあくまで「コロポックル」に「竪穴に住む人々」という意味があると書いてあったので,ずっと疑問に思っていたのです(トイチセウンクルでも竪穴の人々にはならないとは思いますが).アイヌ語って一般に知られてない言語だけに,地名以外でもいろいろあるみたいですね・・・.



教えて下さい!

ななえ (2001/11/21 17:00)

初めまして。ななえといいます!
質問があるので、どなたか教えて下さい。

「アイヌ語は、日本語と作りが似ている。」

と聞いたことがあるのですが、本当なのでしょうか。
英語の授業で聞いたような気がするのですが、あまり自信がなくて・・・。
もし良かったら、教えて下さい。
よろしくお願いします。



アイヌ語と日本語

佐藤和美 (2001/11/22 12:03)

ななえさん、はじめまして。

>「アイヌ語は、日本語と作りが似ている。」

アイヌ語と日本語の語順、子音・母音などはけっこう似ているところがあります。
以下のHPが参考になるでしょう。
http://www.ainu-museum.or.jp/nyumon/nm09_ktb0.html
アイヌ民族博物館編『アイヌ文化の基礎知識』(草風館)の中川裕さんの執筆している部分です。
これの「アイヌ語はどんな言葉か」を読んでみてください。

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トアン レタラ チャペ チェプ エ  コロ アン ナ
あの  白い  ねこ  魚を  食べ て  いる よ
上がアイヌ語で下はその単語を逐語訳しただけですが、立派に日本語の文になっていますね。

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ありがとうございます

ななえ (2001/12/12 22:14)

以前、アイヌ語について質問させていただいたななえです。
佐藤和美さん、丁寧でわかりやすいレスを下さって
ありがとうございました。
おかげさまで、問題はすっきり解決!!しました。
もしまた何かあったその時は、よろしくお願いします。
本当にありがとうございました!!





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