日本に棲んでいる主なクワガタの図鑑
  クワガタは頭から大きく前に突き出した顎(あご)があるのが特徴で、♂はその顎も大きく立
  派です。またその内側には小さなトゲやギザギザしたものがついていますが、これが歯で
  す。ちなみにカブトムシの角は皮膚(外皮)の一部が変化したもので顎ではありません。

  オオクワガタ (Dorcus curvidens binodulus)
  ヒラタクワガタ (Dorcus titanus pilifer)
  ノコギリクワガタ (Prosopocoilus inclinatus)
  ミヤマクワガタ (Lucanus maculifemoratus)
  コクワガタ (Dorcus rectus rectus)
  ネブトクワガタ (Aegus laevicollis laevicollis)
  クワガタ幼虫のオスとメスの見分け方

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オオクワガタ (Dorcus curvidens binodulus)

   
●分布
北海道から九州に生息していると言われていますが、北海道での生息はまだはっきり
と確認されていません。ただ一部で採集できたという報告があります。
大きさ
♂30〜76mm、♀25〜46mmぐらいです。しかし、最近はオオクワガタの飼育が盛
んとなり、♂で最高80mm、♀で55mmのものが飼育報告されています。
一般にオオクワガタのオスは大きさによって下記のように呼ばれることがあります。

サイズ呼び方
コメント
〜39mm特小型自然界にも飼育してもなかなかいません。別な意味で貴重。
40〜49mm 小型マット飼育で失敗するとたまにこんなサイズが羽化します。
50〜59mm 中型自然界で採集される平均サイズ。マット飼育でも平均サイズ。
60〜69mm 大型マット飼育でがんばるとこのサイズが羽化。一番多いサイズ。
70〜77mm特大型菌床飼育でこのサイズを羽化可。自然界にはほとんどいない。
78mm〜ギネス級飼育して育てるのもかなり困難。現在は82mmがギネス?。

   
64mmの♂と52mmの♂    これでもオオクワガタです

生態
5〜9月頃活動し、冬は朽ち木の中などで越冬します。大きな個体は3〜4年も生きま
す。日当たりが良く太くて樹胴のあるクヌギなどに棲んでいて、夜行性で大変臆病なた
め人がいると滅多に姿を現しません。そのため樹液採集は超難しい。
顎と歯の特徴
歯の数は1本だけです。大きな個体のものは歯が顎の真ん中よりも先端側にあり(大
歯型:上写真左)、小さな個体のものは顎の真ん中より頭側にあります(中歯型:上写
真右・小歯型)。
産地について
オオクワガタは北海道から九州に生息していますが、その中でも特に山梨県韮崎市
周辺、大阪北部の能勢周辺、北部九州の筑後川周辺はオオクワガタの3大産地とさ
れ、数年前まではよく採集できたそうです。しかし今でも3大産地以外の青森県・岩手
県・秋田県・福島県・新潟県・千葉県・東京都・神奈川県・長野県・愛知県・岐阜県・滋
賀県・奈良県・兵庫県・岡山県・山口県・福岡県・長崎県・大分県・熊本県・宮崎県など
でも採集できたという報告がインターネットなどでされていて、結局日本のどこにでも
生息しているみたいです。特に福島県の桧枝岐での夜間採集はよく知られるようにな
りました。
オオクワガタの世界では、どこで採集されたものなのか、種親がどこで取れたものな
のか、またどこで取れたものの子孫なのかが話題となります。例えば山梨で取れた
ものは山梨産、能勢で取れたものは能勢産などと呼び、同じ産地どうしの親(♂と♀)
から産まれたものも(純血)○○産と呼びます。逆に、産地が違う親(♂と♀)から産ま
れたものは○○産とは呼びません(佐賀産と福岡産の子供を九州産と呼んだり、大阪
産と兵庫産の子供を阪神オオクワと呼ぶ人もいますが...)。
クワガタショップなどでは、純血○○産のものは高かったり買うほうも○○産にこだわ
る人もいますが、日本全国のオオクワガタはヒラタクワガタのように産地でその形態が
変わることはないので、そのオオクワガタをもとに将来商売でも始める人以外は別に
○○産のものにこだわる必要はないと思います。 

 
ヒラタクワガタ (Dorcus titanus pilifer)

   
分布
本州から九州に生息していて、比較的温暖な地を好むため北海道には生息していません。
大きさ
♂25〜76mm、♀25〜36mmぐらいですが、地域による形態の変異が激しく、南西諸
島や対馬、壱岐などのヒラタクワガタは本州や九州のヒラタクワガタよりも大きく、また顎の
形態などが違い別種です。南に行くほど相対的に大きいようで九州では70mm前後もよく
採集されます。関東地方では50〜60mm前後が一般的なサイズです。
生態
6〜9月頃活動し、冬は朽ち木の中などで越冬します。温暖な平地の雑木林などにおり
また比較的湿気を好むため川縁の柳の木などにも生息しています。夜行性です。大変気
性が荒く、大きな顎を振りかざす姿は勇敢でとてもかっこいいです。
顎と歯の特徴
顎は先端の方で強く内側に曲がっています。頭側の方に大きな歯があり、この歯から顎
の先端まで細かい歯が並んでいます。小さい個体のものはこの細かい歯が小さかったり
あるいは消えています。
  
上の2頭のヒラタクワガタはどちらも九州は福岡県の宗像郡で採集した個体です。どちら
もほぼ同じ58mmの個体ですが、顎の形状が違います。この地域は対馬や朝鮮半島と
非常に近いため、顎が長い対馬ヒラタの特徴をもった個体も生息しているようです。

 
ノコギリクワガタ (Prosopocoilus inclinatus)

   
分布
北海道から九州に生息しており、比較的どこにでも生息しているので見つけやすいです。
大きさ
♂30〜75mm、♀23〜35mmぐらいですが、大きさによって顎の形態が違い大きいも
のほど人気があります。
生態
6〜9月頃活動し、昼間でも活発に活動するときがあります。どちらかというと赤褐色です。
昼間でも枝の先などにいたり、樹液を吸っていることも多く、簡単に採集できます。基本的
に越冬はしませんが、家庭で飼育した場合冬まで飼育できたという報告もあります。
顎と歯の特徴
大きな個体のものは約6本の歯があり、真ん中の歯が一番大きいです。小さな個体のも
のは歯のすべてが小さくノコギリの歯のように細かく並んでいます。
  
幼虫時の環境や親の遺伝により♂の顎は長歯(先歯)型・両歯型・原歯型の3型に大別され
ますが、顎が大きく湾曲した長歯型はまるで水牛の角のようでかっこよく人気があります。

 
ミヤマクワガタ (Lucanus maculifemoratus)

   
分布
北海道から九州に生息しています。環境庁により指標昆虫に指定されています。
大きさ
♂40〜78mm、♀25〜40mmぐらいです。
生態
6〜9月頃活動し、他のクワガタが夜行性であるのに対しミヤマクワガタは昼間でも活動
しているので採集しやすいです。比較的暑さに弱く、そのため西日本や九州では標高の
高いところでしか採集できないこともあります。オオクワガタの次に人気の高いクワガタで
すが、飼育は少し難しいです。
特徴
羽化して間もない♂の成虫には金色の毛が生えて覆われていますが、次第に毛は脱落
していきます。♀には毛はありません。
また頭の上には耳のような突起があり、まるで鎧をつけているような姿をしています。
   
顎と歯の特徴
日本産ミヤマクワガタは生息地の周年気温によって3つの発現型 「サト型(別名フジ型)」
「ヤマ型(基本型)」 「エゾ型」があり、一般に暖かい平野に「サト型」、低山地に「ヤマ型」、
もっとも寒い地方に「エゾ型」が棲んでいて、各型で顎の特徴も変わってきます。一般的
に顎の内側には4〜5本の歯があり、九州や低山地に多い「サト型」や「ヤマ型」では頭
の方にある歯が一番大きいです。逆に東北・北海道や高山地に多い「エゾ型」では顎の
先端が二又に大きく開き、その二又を形成する歯(先端側の1番目の歯)が長くなります。

コクワガタ (Dorcus rectus rectus)

   
分布
北海道から九州に生息しています。どこにでもいるクワガタで採集に行くと必ずゲットでき
るとてもポピュラーなクワガタです。そのため人気もほとんどありません。
大きさ
♂18〜52mm、♀15〜30mmぐらいです。

  
生態
5〜10月頃まで活動し、朽ち木の中などで越冬します。採集にいくと必ずといっていいほ
ど採集でき、初心者の方でも簡単に採集できます。飼育も簡単・長生きもするということで
クワガタを初めて飼育する人にはもってこいのクワガタです。
顎と歯の特徴
    
                         コクワとヒラタの違い
顎はやや細く、ヒラタクワガタのように先端で強く内側に曲がっています。しかし、ヒラタク
ワガタと違い、歯は真ん中に1本あるだけです。ただし、大きな個体のものは先端にもう1
本小さな歯があります。逆に小さな個体のものでは真ん中の歯がありません。

 
ネブトクワガタ (Aegus laevicollis laevicollis)
 

分布
本州から与那国島辺りに生息しています。
大きさ
♂12〜35mm、♀12〜17mmぐらいです。
生態
6〜9月頃活動し、冬は朽ち木の中などで越冬します。
顎と歯の特徴
顎の先が真ん中辺りから急に細くなっていて、歯が1本顎の根本の方にはえています。
大きな個体ではこの歯より先端側にもう1本歯がはえています。前羽に縦のはっきりと
したスジがあるのが特徴です。

 
クワガタ幼虫のオスとメスの見分け方
飼育しているクワガタの幼虫が♂であるか♀であるかを見分ける方法は、幼虫が2齢幼虫ぐ
らいになると卵巣の有無(肛門から3つ目の節に左右1対の白いものが見えたら♀)や頭幅の
大きさで区別ができます。下の写真を見て下さい。
これはヒラタクワガタの3齢幼虫ですが左側が♂の幼虫で、右側が♀の幼虫です。♀の幼虫
には肛門から3つ目の節に白い卵巣が見えますが、♂にはないのがわかると思います。
私は幼虫が2齢(亜終齢)幼虫に成長すると、ほぼこの卵巣の有無と頭幅とで♂♀の判別をし
ますが、3齢幼虫になると♂幼虫は♀幼虫に比べ大きくなりますから、初心者の方は大きさ
で判断することも可能です。一般に、菌床ビン飼育をした♂の3齢幼虫の体重は17〜28g、
♀は8〜13gになりますから、その差は明らかです。

  
      オスの幼虫               メスの幼虫(白い卵巣が見えます)

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