第64回「あれれの蓮沼千鳥町」(2001.2.1)



 前回の続き、サイクリングで池上の本門寺を訪れた後のお話です。
 本門寺にお参りした後、自転車に跨がった僕は池上線に沿って走り出した。世田谷の家まで帰るついでに、途中にある千鳥町駅も取材していこうかと思ったのである。
 このコラムは東急の全駅制覇を目指して各駅を回ってるんだけど、池上線の消化率があんまり良くないのだ。池上に続いて千鳥町も書いておこうと思ってたのだが……何をどう間違ったのか、池上駅から千鳥町を駅を目指していた僕は、蓮沼駅についてしまったのである。
 五反田方面に向かったはずなのに、蒲田方面に着いたってんだから驚いてしまう。僕はそれほど方向音痴ってほどじゃないので、なんでこんなことになったんだろうと思わずにはいられない。自転車を止めて持参の地図を開き、うむむと考え込んでしまった。
 千鳥町・池上・蓮沼の三駅の間で、池上線は東西方向から南北方向に変わる微妙なカーブを描いている。自転車で線路沿いに走ろうとした僕は、道の角度を九十度間違えた勢いで池上線の上りと下りを間違えちゃったのだ。まあ間抜けなだけっていやあそれまでなんだけど、この際だから蓮沼駅と千鳥町駅の両方を取材していくことにした。転んでも只では起きない貧乏性、せっかくここまで来たんだからついでに両駅とも書いちゃえってわけである。
 蓮沼駅は、街角にひょこっと改札口がある。上りと下りで改札口が違うんだけど、五反田方面乗り場のこぢんまりとした雰囲気は街角の売店みたいでちょっといい感じなのだ。すぐそばのクリーニング屋さんがかわいいアイロン型の看板を出していて、そこから上がる湯気の向こうに改札が見えたりするのにも実に味があるのだった。
 で、今度は引き返して千鳥町駅を目指した。千鳥町は改札口は一つで、蒲田方面乗り場へはホームを越える階段で渡るようになっている。道路から改札までも短い階段があって、高低差のある設計がちょっと格好いい。蓮沼駅みたいな街角売店型にも、千鳥町駅みたいな階段型にも、それぞれの魅力があるもんだね。
 そうして二駅を回ってちょっと疲れた僕は、千鳥町駅前の美珈茶という喫茶店で休憩することにした。店の奥にカラオケボックスがあったり、レジに「みえはる」と書かれたサインが飾ってあったりして、なかなか面白いお店であった。
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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp