第58回「荏原中延のカレー王」(2000.8.1)



 ちょいと前の話になるけれど、TVチャンピオンという番組に出演した。第三回カレー王選手権って企画で、僕がインターネットのホームページにカレーの食べ歩き情報をのっけてることから出演依頼がきたのだ。予選もないというし僕の本の宣伝もさせてもらえるというので、テレビの裏側を覗いてみようかと出させてもらったのである。
 他の出演者の人達は有名店を回ったり雑誌のカレー特集をチェックしたり市販のカレーを食べまくったりして本番に備えたそうなのだが、怠け者の僕は何一つ予習はしなかった。で、結果は見事に一回戦敗退である。──ま、一回戦は有名店めぐりで二回戦はレトルトカレー早食いなんてなことを聞いてたんで、一回戦だけ出られりゃいいやと思ってたんだけど……今さらこういうことを言っても負け惜しみにしかならんとこが寂しいね。
 まあしかし、いろんなカレー屋さんを回れた上に店の人やカレー通の人達と知り合えたのは収穫だった。中でも優勝者の金子載さんは、第一回のカレー王選手権で優勝・第二回で準優勝・そして第三回で再び優勝してカレー王に返り咲きという物凄い人であった。何しろ、彼が選手権対策に作ったというノートには東京中のカレー屋のデータが網羅され、それぞれの店のカレーを一滴垂らしたサンプルまでとってあるのだ。こういう人と戦って勝てるわけがない。
聞けば、金子さんは東急沿線育ちで現在は武蔵小山商店街でFK2というゲームショップを経営しているという。そんじゃあ是非東急沿いで美味しいカレー屋さんを教えて下さいってことで、カレー王のお勧め店に連れてっていただいた。
 意外なことに、カレー王の一押し店はカレー専門店じゃあなかった。池上線の荏原中延の駅前にある亀鶴(キカクと読む)というお店で、気楽に寛げる感じの定食屋さんだったのである。
 僕は早速カツカレーを注文してみた。値段が安いわりにボリュームもあって、家庭風のポークカレーが懐かしい風味のカツともよく合っている。オーソドックスでいながら奥深い味で、まろやかさの奥にあるコクは何かと思ったら、ラーメン用にダシをとったスープを利用して作っているんだそうだ。
 食事の最中の話題も当然カレー談義である。お互いあちこち食べ歩いてる身だが、二人して「家庭風の懐かしいカレーが一番だよね」などと言いつつ盛り上がったのであった。

  • 一覧に戻る

    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp