第57回「多摩川園の園の字は」(2000.7.1)



 東急線が変わるんだそうである。
 営団地下鉄南北線と都営地下鉄三田線が目蒲線の目黒駅に乗り入れ、東横線の武蔵小杉駅まで直通で運行するというんだから凄い話だ。
 それにともなって目蒲線という呼び方も無くなるらしい。二つの路線に分かれて「目黒線」と「東急多摩川線」という名称になるのだ。目黒線は目黒駅から田園調布を経て東横線の武蔵小杉駅まで乗り入れる形になり、多摩川線は蒲田駅から多摩川園駅までということになる。さらに多摩川園駅の名前も変わり、園の字がとれて多摩川駅という名称になるし、今後は急行も停まるようになるということである。
 なんで園の字がとれるのかというと、駅名の由来になった遊園地が既に無くなっているからというのが理由らしい。そういや確かに、駅を出ても多摩川園という場所はないのである。川べりの高台にある公園がそうかと思ってしまうけど、あれは多摩川台公園という名前なのだ。駅の近くにあった多摩川園という遊園地は既に閉園し、ただ駅名だけにその名残りをとどめていたというわけなのだ。
 その園の字がとれちゃう前に取材しておこうと思い、先日カメラを持って繰り出してみた。別に多摩川園という名称に愛着があるわけでもないのだが、こういうことを記録できるのも連載コラムの面白みじゃないかと思ったのだ。何年もたってこのコラムが本になったら(なるといいなあ)、それを読み返して東急線の変遷を振り返るというのも風流なんじゃなかろうか。
 で、駅のホームをぶらぶらしながらあちこちを撮影してみた。長いことやってた駅の改築工事もかなり進んだようで、駅名表示も真新しくなっている。せっかく新品を掲げても駅名が変わったら取り換えてしまうのだろうし(まさか園の字だけガムテープで隠したりはしないよなあ)、数カ月しか使われないまま処分されてしまうのだとしたらもったいない話である。──鉄道マニアの人は、そういう逸品を狙ってコレクションしたりするのだろうか。
 ちなみに名前が変わるところは他にもあって、二子玉川園駅も園の字がとれて二子玉川駅となり、新玉川線と田園都市線の名称も統一されて渋谷から中央林間までが田園都市線になるんだそうだ。
 利用者に分かりやすいようにとの名称変更だが、慣れるまでは変更自体がややこしくて大変そうだよなあ。
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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp