第44回「池上線と新幹線」(1999.6.1)



 池上線の御嶽山駅のホームは、交差する東海道新幹線の線路の上にひょいっとせりだしている。東急線や乗客の下を新幹線がくぐっていく格好で、こういのって東急が偉くなったようでちょっと気分がいい。──この連載を始めてそろそろ四年近いので、僕はすっかり東急線びいきになっているのだ。僕が応援したって電車が速くなるわけでもないけど、そういう心理ってのも悪くないもんである。
 新幹線の線路は掘割式で低いところを走っているので、その脇の道を歩くと眼下にひかり号やこだま号を見下ろすこともできる。静かな住宅地の中、下の方に新幹線が走ってくのはなかなか不思議な光景で、僕は先日その道沿いにぶらぶらと歩いていってみた。
西に行けば目蒲線を越えて多摩川に出るのだけれど、その日は東に向かうことにした。地図を見たら東調布公園という大きな公園があったので、駅前で昼食を買ってそこで食べようかと思ったのだ。──あちこち寄り道しながら歩いていくこと十五分、やがて家々の向こうに公園らしき木立が見えてきた。
 最初に目についたのは野球場の大きな照明である。ナイター設備が整っている上、選手のベンチの上にはちょっとした観客席まである球場なのだ。その手前にある建物は室内プールらしく、夏季には屋外プールも開放されるようだ。子供達の遊び場としてSLや消防車まで置いてあり、どうやら交通学習みたいなこともできるらしい。いろいろ凝ったデザインの遊具もあって、何だか実にバラエティ豊かな公園なのであった。
 ちょうど休日ということもあり、公園の中はたくさんの家族連れで賑わっていた。カップルでお弁当を広げてたり、パン屋さんの移動販売車が来てたりっていうのも心和む光景である。
 ちょっと面白かったのが、いかにもヘビメタやってるぜーっていうルックスの三十代くらいのお父さん。さあボール投げだぜーって感じで男の子を遊ばせてる姿が不思議なくらい様になっていて、ヘビメタに子育てというのは案外よく合うんだなあなんて思ってしまった。
 そして僕は野球場の客席のベンチに座り、草野球チームの練習を眺めながら昼食をとった。──駅前のミスタードーナツで買ってきた新製品のTOFUドーナツ、もちもちした食感でなかなか美味しい。豆腐とドーナツなんて合うのかなあと思ってたんだけど、こういう意外な取り合わせってのは楽しいもんである。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp