第40回「戸越銀座の縦断ツアー」(1999.2.1)



 聞いたところによると、日本で最初に「銀座」という名前のついた駅は池上線の戸越銀座なのだそうだ。銀座の本家とも言うべき地下鉄銀座線の銀座駅より六年も早く、昭和二年に命名されたというのである。本家より早いってこたあ元祖かなってなもんで、それだけでも凄いなあと思ってしまう。
 偉いのは駅の歴史だけじゃなく、戸越銀座商店街の長さも物凄い。駅から東西に伸びている商店街の全長は実に一・六キロ。駅前に立って左右を見ても、真っ直ぐ伸びた商店街の端が見えないってんだから大したもんである。
全長一・六キロってことは、駅からスタートしてぐるっと全部を回るとなると三・二キロだ。わざわざそんな道のりを歩くってのも物好きな話だが、もちろん僕はそういうことが大好きなのである。
 そんなわけで先日、戸越銀座商店街縦断ツアーというのを敢行した。──ツアーといっても読者の方と一緒に商店街をぶらぶらと散歩するだけのことなんだけど、何しろ相手が戸越銀座である。やはりかなり歩き応えがあって、ちょっとした小旅行気分を満喫してしまった。
 まず駅の西側に出て思ったのは、やけに餃子の店を見かけるなあということ。駅前では餃子の王将の店員さんがチラシを配っていたし、その斜向かいの中華屋さんも店先にワゴンを出して餃子を売っている。その後もそこかしこで餃子の二文字を見かけ、「名物なんですかねー」「そんな話も聞かないけどなー」なんて言いながら歩いていく僕達であった。
 東側に進んでいくと、今度は様々な専門店が目につくようになってくる。「おお、鰹節のお店だ」なんて言ってたら、やがて甘栗専門店が現れた。あれれと見回せば、卵のお店に貝類のお店なんてのもある。さすがは歴史の古い商店街、スーパーやコンビニに慣れた世代にとっては逆に新鮮ですらある。今風の百円ショップや回転寿司と昔ながらのお店が並んでるのはなかなか素敵な光景だった。
 そろそろ歩き疲れてきたなーと思ってたら、イタリア風の喫茶店を見つけた。アンジェロというそのお店で休憩、温かいカフェラッテが美味しい。店員さんが周りのお店に出前に行ったり、洗った皿を返しに来る人がいたりってのも商店街ならではの和やかな雰囲気である。
 休んだおかげで商店街縦断も完了。駅まで戻った僕らは打ち上げ代わりに近くのカラオケ屋に入った。──さんざん歌って代金はたった二百円。安いよなー。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp