第39回「宮前平の八幡神社」(1999.1.1)



 いい歳こいて漢字を読み間違えるってのはちょっと恥ずかしいことかもしれないけど、僕は「八幡」という単語を読むのがどうも苦手である。「はちまん」と読むべきなのか「やわた」と読むべきなのか、いつも迷ってしまうのだ。
 それというのも、三歳の頃まで住んでいた町に、山名八幡宮と南八幡小学校があったせいだ。──前者は「やまなハチマンぐう」、後者は「みなみヤワタしょがっこう」なのである。おかげで僕の頭の中には、幼い頃から「八幡」というのは「はちまん」か「やわた」か知れたもんじゃない二字熟語だという認識がインプットされてしまっている。
 そんなわけで、田園都市線の宮前平のそばにある八幡神社の前でもやっぱり混乱してしまった。読み方の問題ももちろんだし、参道の入口にあった二本の石柱には二つの神社の名前が記されてたのである。「八幡神社」と「小台稲荷神社」となっていて、はてこの先にあるのは一体どっちの神社なのだろうと考えてしまった。
 すぐ隣には「八幡神社建設の碑」というのもあるのだけれど、その八幡神社と稲荷神社との関係は謎のままである。よく神社の敷地の中でお稲荷さんを見かけることはあるけれど、考えてみると何故二つあるのかよく分からない。自慢じゃないが、僕は神道の知識も全く持ってないのである。
 で、早速鳥居をくぐり、石段を上がってみることにした。──この石段、駅のホームからもよく見える。駅舎の北側、坂に沿ってすうっと伸びた石段はなかなかきれいなので、ご存じない方は電車待ちの間にでも見てみて下さい。
 さて、石段を上りきったところにあったのは、無人のきれいな本殿とお稲荷さんのお堂であった。賽銭箱は本殿の中に入っていて、ガラスの小窓を開けてお賽銭を入れる方式になってるのが何だかかわいらしい。──相変わらずお稲荷さんとの関係は分からないままだったけど、高台から見下ろす眺めが気持ちいいのであった。
 当たり前と言えば当たり前だけど、坂を下から見上げるのと上から見下ろすのでは随分と景色が違う。上から駅前の人の流れを眺めたり、駅を出ていく電車の動きを目で追いかけたりというのも楽しい時間の過ごし方である。
 ちょうど初詣の季節だし、いつも通り過ぎてる駅の近くの神社に足を運んでみるというのも一興ではないでしょうか。

  • 一覧に戻る

    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp