第33回「大倉山のかぼちゃステージ」(1998.7.1)



 東横線の大倉山の改札を出ると、目の前には道路とバス停がある。高架線路の下をバス通りがくぐってる格好で、ガード下では道路を挟んで改札口と東急系のスーパーが向かい合っているのだ。スーパーの方から駅前の人の流れを眺めるってのも、なかなか面白いもんである。
 今春の横浜市長選挙の投票を呼びかけるキャンペーンでは、チンドン屋さんバンドのかぼちゃ商会がここをステージにして演奏した。──改札前のちょこっとした空間も、路上演奏のプロにかかるとあっという間にライブの舞台に変わっちゃうのである。
 改札前から演奏を始めたかぼちゃ商会は、派手な衣装と軽快なメロディで駅前商店街を練り歩いていく。昔懐かし「月光値千金」からジャズナンバーの「テキーラ」、ビートルズにSMAPにドラえもんと、独特のチンドンサウンドを聞いてると心が弾んでくる。すれ違う人々がみんな笑顔に変わっていく光景に、僕はちょっとした感動さえ覚えてしまった──街角に微笑みが広がっていく様は、何だか魔法みたいに鮮やかなのだ。
 サックスの丸山さんが古今東西の名曲を軽やかに吹き鳴らす。リーダーの新名さんがバンジョーを奏でながら声を上げる。チンドンの純さんと大太鼓の牧さんの陽気なリズムが重なり、ベースの岩原さんとアコーディオンの田ノ岡さんの音がしっかりと曲をまとめ上げるのだ。コミカルでメロウでノスタルジックな音楽は、春の風に乗って響いていった。
 同行していたマネージャーさんは道行く車に注意を払いつつ放置自転車をどかして道を開け、スタッフの方は彼らのデビューアルバム「チキチキドンドン」のチラシを配っている。──何しろ選挙関係のキャンペーンなのでそっちの配付物がメインなのだが、CDのチラシの人気も大したものなのであった。
 駅前では、かぼちゃ商会の新曲「こころはハレルヤ」も演奏された。リーダーが明るい歌声を響かせ、バス待ちの人達や買い物帰りのおばさん達が面白そうに見物している。通りかかった子供達は飛び跳ねてはしゃぎ、学生風のカップルは手を繋いだまま演奏に聴き入っている。──音楽が空気さえも変えちゃったようで、大倉山の駅前には優しく幸せな雰囲気が漂ったのであった。
 この「こころはハレルヤ」、シングルCDがキングレコードから発売されたばかり。NHKの「みんなの歌」でも流れてるらしいから是非聞いてみて下さい。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp