第22回「休憩タイムのあざみの駅前」(1997.8.11)



 僕は今、世田谷の端っこの方に住んでいるのだが、気が向くと川崎や横浜の辺りまでサイクリングに出掛ける。多摩川を渡って丘陵地帯を走るコースは緑が多くて気持ちいいし、田園都市線の駅の辺りを走るついでにこの連載のネタを見つけようかともくろんでいるのだ。毎回コラムのネタを探すのも結構大変なのである。──読者の皆様、東急沿線で何かいい情報がありましたらお便り下さい。
 で、世田谷通りを走って多摩水道橋を渡った僕は専修大学や明治大学の生田キャンパスのあたりから坂を登り、長沢浄水場や川崎北部市場などを眺めながら横浜生田線という道路を突っ走る。さすがに川崎と横浜の市境の辺りにくると少し疲れてくるので、ここらで休憩しようかなという気分になってくる。
 この辺りには美しが丘という地名があるのだが、その名の通りにきれいな丘が多い。草木が多い上に花畑なんかもあって、きれいなグラデーションを描いている丘まであるのだ。下り坂の向こうにそんな丘を見てしまうと、ついついあの丘まで走ろうかなんて気分になってくる。
 で、ラルプ・デュエズを登るパンターニの気分で(ツール・ド・フランスという自転車レースの話です)坂を行き、のどかな農地を眺めながら丘を登っていったりする。──先日などは、頂上で一息ついて眺めた先にランドマークタワーが見えて驚いてしまった。いつの間にやらこんなに遠くに、こんなに高い所に来ていたのだ。
 そうなるとさすがに疲労と空腹を意識する。そこで田園都市線のあざみの駅まで平地を走り、どこかのお店に入ってゆっくり休もうということにした。
 あざみの駅のそばってのは、自転車で行くのにはなかなか便利なのである。大きな量販店の駐車場に自転車を停めておけるし、自転車用品の品揃えもいいので故障やパンクの時も安心なのだ。
 ついでに駅前のお店でお昼ごはんをとり、ゆっくり寛いで体力を回復する。帰りは同じ道を戻ったり田園都市線沿いにのんびり走ったりするのだが、どちらにしても来たのと同じくらいの距離を走るのだ。休憩タイムは重要なのである。
 しかし、駅の周りをぶらぶら散歩していてゲームセンターを見つけると、そこでサイクリングゲームのペダルを踏んじゃう僕なのであった。──調子に乗って全面クリアなんぞをして妙に汗をかき、かえって疲れてたりするんだから、我ながら間抜けというか何というか。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp