第17回「洋食屋さんの西小山」(1997.2.1)



 突然ながら、僕は西小山という町が大好きである。──理由は簡単。大好きな洋食屋さんがあるからだ。
 駅を下りてすぐの商店街も活気があって気持ちいいし、いろんなおかずが並んでいるの惣菜屋さんを眺めて散歩するのも楽しい。野菜や雑貨、ジーンズなんかもやけに安いのでちょっとした買い物には最高なのだ。隣の武蔵小山ほど大きくはないけれど、アーケードもあるので雨の日でもOKである。
 だけど僕の場合、お腹がすいてても惣菜を買うのはぐっとこらえることにしている。西小山に行く場合、僕の目的はいつも洋食屋さんなのだ。
 この洋食屋さん、ご主人の意向で店名は明かせないんだけど(マスコミで人が群がるのが苦手なんだそうだ)、お暇な方は西小山をあちこち散歩してみて下さい。素敵な外見のお店だし、きっと見つかると思うから。
 で、お店のドアをくぐるとご主人がにっこりと笑って出迎えてくれる。十人もれば超満員という店内は、レンガの壁で暖かな雰囲気が漂っている。釣り好きのご主人の獲物の魚拓や海中写真が飾ってあったり、息子さんが描いた油絵が飾ってあったり、初めての人はしばらくお店の中を見回しているだけでも退屈しないんじゃないかと思う。
 メニューは大きなアルバムにずらりと貼られているので、それをめくりつつ今日の料理を選ぶ。だいたい相性のいい料理同士が二品ほどのセットになっているので目移りしちゃうけど、それも楽しいもんなのである。
 僕はこのお店に友人を連れていくのが好きで、今までに何だかんだと三十人くらいは連れていってるんじゃないかと思う。初心者にはオムライスとエビフライのセットを勧めたりするんだけど、そのボリューム感とおいしさにみんな感動してくれるのだ。この店の数多いメニューを全て制覇した僕としては、他にはコロッケや豚の天プラ、シチューやハンバーグなんかもお勧めである。
 世の中にはおいしいと評判の店がいっぱいあるけれど、僕はいわゆる高級店や格調高い老舗っていうのはどうも苦手である。それよりも、こういう家庭的でゆっくりとくつろげる感じの店で気楽においしく食事をしたいと思う。
 そんなわけで、見知らぬ町をぶらぶら歩いていても、それっぽいムードのお店を見つけるとついふらふらと中に入ってしまう僕なのだった。

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    竹内真 Mail: HI3M-TKUC@asahi-net.or.jp