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ニワトリはハダシだ

製作=シマフィルム=ビーワールド=衛星劇場 配給=ザナドゥー
2004.11.13 シアターイメージフォーラム
カラー ワイド(1:1.85)
製作総指揮 志摩敏樹
企画・製作 若杉正明
プロデューサー 榎望
製作統括 榎戸耕史
協力プロデューサー 吉村誠
ラインプロデューサー 氏家英樹
監督 森崎東
助監督 武正晴  中村有孝
小林聖太郎 梅本竜也
脚本 近藤昭二  森崎東
撮影 浜田毅
撮影助手 江崎朋生  大島良教
川野由加里
音楽 宇崎竜童  太田恵資
吉見征樹
音楽プロデューサー 佐々木次彦
美術 磯見俊裕
装飾 龍田哲児
特機 平山茂
美術助手 三ツ松けいこ  露木恵美子
美術応援 北岡康宏
美術・装飾助手見習 五十嵐友行
小道具 松葉明子
装飾 平子吉文  兼子達也
録音 武進
録音助手 日下部雅也  川本七平
音響効果 佐々木英世
照明 長田達也
照明助手 鈴木康介  金子康博
江川敏則  土井本由里
根本伸一
編集 川瀬功
編集助手
スクリプター 櫻木光子
ヘアメイク 青木映子
スタイリスト 鳥野圭子
製作担当 田中盛広
キャスティング協力 石垣光代
スチール 中原一彦
製作主任 大利和利
製作進行 大石圭吾
メイキング 菅剛史
 
配役  
桜井直子(見習保母) 肘井美佳
桜井直道(警部) 石橋蓮司
桜井貴美 余貴美子
大浜守 原田芳雄
金子澄子(チンジャ) 倍賞美津子
大浜勇(サム) 浜上竜也
金子千春(チャル) 守山玲愛
金順礼(澄子の母親) 李麗仙
立花薫 加瀬亮
丹波二郎 塩見三省
重山登(政経同志会組長) 笑福亭松之助
染川隆二 河原さぶ
島崎一枝 中川梨絵
相田愛子 上原由絵
亀岡正平 不破万作
浜村珠子  
ターニャ ニキータ
牛田権太郎 浦田賢一
灰原喜重郎(貴美の兄) 岸部一徳
朽木泰三 柄本明
藤井政雄 加島潤
灰原千代 三林京子
中東出身外国人ラーダ アルタハム・ラナ
中東出身外国人A カーン
中東出身外国人B ファクル・ディーン
中東出身外国人C  
外国人D  
外国人E  
池谷栄二郎 露の五郎
梅本淳  
重山組若頭補佐・中やん 中沢清六
重山組組員・信二 信太昌之
通称ヒマ甚 榎戸耕史
灰原の運転手  
みずなき学園の指導員A  
みずなき学園の指導員B  
みずなき学園の指導員C  
女子中学生  
ボーイフレンド  
舞鶴北署の署員たち  
障害者たちと年寄り  
屋台のコロッケ屋さん  


   「ニワトリはハダシだ」を見る   池田博明  2006年3月26日記 

 森崎東監督の2004年度公開作品。3月25日にDVDで発売されました。脚本は近藤昭ニ・森崎東。製作は志摩敏樹で、『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』のような映画を作りたいと森崎さんに話したのがきっかけだと言います。『党宣言』は志摩氏が学生時代に見て感激した映画だとか。
 「ニワトリはハダシだ」という言葉は『黒木太郎の愛と冒険』(森崎作品)でも財津一郎がよく言っていた言葉ですが、いまさら言うまでも無い当たり前のことを意味しているようです。日本映画監督協会のウェブ・ページ「私のデビューした頃」によると、森崎さん京都撮影所時代の自己激励の言葉だとか。
 知的障害をもつサム(浜上竜一)は一度見たものを記憶する能力があり、偶然目撃したベンツと、その車内に残された検察の汚職資料を記憶していたことから、ベンツ盗難事件の犯人という疑いをかけられます。養護学校の直子先生(肘井美佳)やチチ(原田芳雄)やハハ(倍賞美津子)は、警察と暴力団から彼を守ろうとします。舞台は舞鶴で、戦後の引揚や朝鮮へ帰る船の沈没の歴史や、町の風景もドラマの重要な要素となります。
 「なぜ知的障害者を主人公に?」の質問に対して、森崎さんは「知的障害を持った子供の親がみな、その子供をいとおしく思って見て欲しいといっている、そんな思いを伝えたかった」と答えています。
 主人公のサムは、言葉にならない思いを体で表現します。森崎さんは現代に対して言葉にならない思いをたくさん持っていて、言葉が不自由な障害者の表現でなければ、形に表せないと考えたのではないでしょうか。『街の灯』(森崎作品)で堺正章が、具体的に指摘できないにもかかわらず、「どっか変だぞ」と繰り返すしかなかったように。
 最初のほうでチチとサムが船に乗り込むときに歌う浦島太郎の替え歌「月日のたつのも“ヘソの下”」や、ウンコをし忘れたサムが船べりから尻を突き出してウンコをする場面(ウンコはメイキングフィルムによると美術部の作ったものだが映画ではまるで本物に見えた)など、森崎ワールドへの導入場面があり、この品の無さについてこられる観客だけを選抜してしまうなあと心配になりました。
 4月29日に春の叙勲が発表され、森崎監督は旭日小綬章を受けることになった。森崎さんに勲章というのは似合わない。

  ニワトリはハダシだ     ブログ「もっきぃの映画館で見よう」より
   2007年9月17日   (とても素敵な文章なので引用させていただきました:池田)

 【序】本作は今回7回目の鑑賞。私が今までに見た約千本のうちのベスト5 ということで、今までにも何回か書いていますが、公開から2年半再び映画館で鑑賞できるというのは嬉しいことです。

※全体の感想は、以下のブログ参照。

 【大スクリーン】 過去の5回は全て、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、 64席/108席のミニシアター。私が見た64席の劇場は、その席数としては 大きいスクリーン(幅444cm)だそうです。でも今回135席のスクリーンは それより大きかったようで、最初の自衛艦がうつったときから迫力倍増。 「うわっ、おおきい」とつぶやきました。

 【冒頭】 巨大な灰色の自衛艦。カメラが引くと手前を小さな、といっても30人は 乗れそうな汽船が進んでゆく。サイレン音とともに、アナウンス。
 『進路妨害につきすみやかにあけられたい』
 港には、北朝鮮籍の船。中古自転車がテンコ盛り。
 地面に線を引いただけで、柵もない駐車場。数人の白人が、赤毛の男を 中心になにやら話をしている。
 『ポリス』の声に、ベンツに乗り込む赤毛の男。走りさったあとに、京都府警のパトカーがゆっくりと巡回してくる。
 声『♪オッハヨ、オッハヨ、雀がチュンチュン、オッハヨ』
 輪のなかで、若い女性がコサックダンスを踊りながら歌っている。
 みずなぎ学園と書いたバスの前。女性がころぶと、ワーッと歓声を あげる養護学園の生徒たち。 
 生徒のひとりから受け取ったヘッドギアをつけてさらに歌って踊るが2度3度とこけて、歓声があがる。
 その間、画角にアイボリーのスーツを着たやせた男が入ってきて様子をながめている。
 男『ようやるわ』、女『ほっといてんか!ハイ、バスでるよ、はよしいや』
 生徒たちがバスに乗ってゆく。女、ヘッドギアを返して最後にバスに乗り込み、ステップのところで振り返ってあたりを見渡す。
 女『遅いなあ、サム』
 部屋のなか。少年(15ぐらい)のアップ。茶碗と箸をもって、おおきなアクションで、モグモグ噛んでいる。後ろの壁には、小学生が書いたような絵。車が いくつも並んでいる。

 【肘井美佳(新人) VS 加瀬亮】  冒頭の若い女性が、この物語のヒロイン桜井直子役の肘井美佳。養護学園 の保母。あとからでてきた男が、府警本部から特命派遣されてきた刑事役 の加瀬亮。この映画は、いろんなことが一杯詰め込んであるのですが、 この二人が恋愛感情をもつところも、すこしだけでてきます。
 (ネタバレ) 後半の知的障害をもつサムに容疑がかけられ探しつづける二人に、中休み的に ちょっとゆったりした場面がある。運搬用の箱型の船やクレーンがある人気のない港で、サムの超人的な記憶力の話から、こどもの頃にできた特技の話に なる。
 肘井『ちっちゃい時からコレやると必ずおかあちゃんの声がきこえるんよ、 ごはん食べた?とか』
 加瀬『ふーん。やってみて。』
 肘井はすわったまま首を突き出し、加瀬は立った姿勢から覗き込む。 肘井が、両目を寄せる。
ニワトリはハダシだ 写真のシーン
 加瀬『お母さん、なんかいうた?』
 肘井答えず、話題を事件の話にうつして、何度も目を寄せる。
  <中略>
 沖から、小船が一艘。サムの家族が乗っていて、サムと妹のチャルが叫ぶ。
 『直子先生、ゴハン食べた?』
 肘井振り返って、手をふる。サムとチャルも手を振っている。
 と、母(余貴美子)の声。
 『あんた救うてくれはるんは菩薩そっくりのあの子らだけやで』
 肘井のアップ。感激した表情の目になみだが浮かぶ。夕陽。 このシーン、最初のうちは、目が大きく美人女優の肘井が何度も目を寄せる 表情のおもしろさと、突然サムが現れて安心するのと、さらにお母さんの 声もきこえてきてよかったなあと思ってみてました。
 でも、本当は悲しいシーンなんですね。
 目を寄せても声が聞こえなかったのは、すでにお母さんは息をひきとる ところで、肘井は不安を感じて目を寄せる。サムが現れて再びお母さんの 声が聞こえたときには、すでにお母さんの声は、天の声になっていて 遺言として受け取った肘井は、悲しみのなか、事件に巻き込まれながらも 状況をはっきりわからず無邪気に手をふるサムたちを見て、 自分の生きる道はこれだと確信する。ということじゃないかと思うんです。
 そう思ってみるとますます感激の場面です。
 加瀬亮というと私の見た映画では、容疑者か犯罪者役ですが、ここでは いわゆるいじめられ役の刑事。先輩に投げ飛ばされたり蹴られたりの よわよわしい刑事だけど、いままでになく好青年にみえました。
 肘井美佳は、元気で明るくハイテンションで映画をひっぱってました。何度もでてくる転びのシーンも、お手のもの?(絶対大変だったと思います。)
 加瀬の先輩刑事にかなり乱暴に扱われますが、キックを見舞ったところは ユーモアとともにスーッとしました。舞台やTVで活躍中のようですが、 是非映画でブレイクしほしい人です。
 余談ながら、来年公開の少林少女(少林サッカーのラクロス版)で、 チャウ・シンチーが日本人女性を捜しているという話があったときに、肘井美佳に演じてもらいたいと思いました。(柴崎コウ主演に決まって ちと残念。チルソクの桂亜佐美もラクロス部員19名のひとりとして参加。)
 肘井美佳さんのブログ[りんご☆ライフ]は以下のとおり。
 映画年間百本見るのが目標とかでその感想もアップされています。
      http://ameblo.jp/mikaringojuice/  
 最後にもうひとり。上の二人をいじめる刑事役は、塩見三省。177cm72kg。 特技フットボール。加瀬亮との体重差は15kgで、初対面の柔道場のシーンでは 体重差も有効につかってそれこそバッタバッタと投げ飛ばしたうえ、 壁に激突させたり、袈裟固めの体勢から首をしめるなど大活躍!?
 京都府綾部市出身ですからロケ地の舞鶴市の隣市です。

 7回目の鑑賞ですが、何回みても感動します。
 私の住んでいる福知山市は ロケ地の舞鶴市と同じく京都北部ということもあり、田舎の風景も親しみを 感じながら楽しめました。
 一緒に行った会社の同僚は、どうもいまいち だったようですが、これは私が千本のうちベスト5などと期待させすぎたからかもしれません。
 ストーリーの詳細部分では、私も?の部分はあるのですが、全編をとおして人それぞれやの生きるエネルギーが感じられ、 人と人とのつながり大切さや素晴らしさに満ちた作品だと思います。
 是非多くの方にみていただければと思います。

    100%満足   ブログ「もっきぃの映画館で見よう」より 2004年11月27日

映画館:イメージフォーラム2(108席)
鑑賞日時:11月21日(日)16:00から、約45人
私の満足度:100% 

 こんな作品がみれて嬉しい。 オススメ度:80% また見に行く予定。
 支離滅裂になる一歩手前で勝負するような あとひとつつめこまれると見ている私も破綻しそうな 展開であったが、文句なしに感動できた。
 こまかいところは、 映画を見たあとに、シナリオを読んでも、時系列や位置関係で、よくわからないところがあるが、そういうところでも 結構泣かされました。
 なにがそんなによかったといわれても理詰めでなかなか説明できないのですが、ひとことで言えば 主人公である知的障害者勇(サムと呼ばれる)を取り巻く人々とその生活空間が発するエネルギーに心を奪われたということでしょうか?
 私は情報集中なんていわれてる東京に住んでいますが、電気といえば、スイッチとか請求書自衛隊といえば、ニュース映像しか思い浮かびません。
 でも、冒頭のシーンで通学汽船の横を通る巨大な自衛艦をみたり、サムがはじめて潜水夫として海にもぐるとき、チチが「あそこは発電所の取水口ゆうて、どえらい水が吸いこまれとるオトロシイとこや、絶対近寄ったら あかん」というのを聞くと、電気も自衛隊も、さぞかしリアルなものとして生活しているんだろうなあというのが伝わって来たのです。
 そして、その人間の生活のリアルな頂点として、主人公のサムがいるわけで、監督がサム的存在に対して言っておられる「不可逆的に終末へと向う滅亡期への地球への、最後の抑止力ではないか」 という言葉に説得力を感じたのでありました。
 主人公サム(浜上竜也)は、とても重度の知的障害者にはみえませんでしたが、その無垢な表情と笑い顔は、それだけで幸せな気分にしてくれます。別居してハハとくらす妹役 (守山玲愛)も、がんばって演じてるのが見えてしまいますが このふたりが向き合ったり、おでこをあわせたりするしぐさと 表情は、最高でした。
ニワトリはハダシだ でも、もっと最高だったのはチチ(原田芳雄)とハハ(倍賞美津子)。
 サムのことを思い、一生懸命だけど空回りする、無骨で哀しくカッコよくちょっと下品なチチ。教育方針があわんとかで別れてくらしてるという設定だけと、「なんでわかれるか」というくらいいい女で、強い女性でもあるハハ。(映画をみていて、アントニオ猪木はどうして別れちゃったんだろうと思いました。映画には 関係ありませんが。)

 ストーリーも、場面も、人間関係も、スパゲティのように からまった映画ですが、それぞれの登場人物の気持ちはストレートに伝わってきました。
 これで今年の私の超満足作品は チルソクの夏、ドッグウィル、オアシス、HAZAN、 ニワトリはハダシだの5本になりました。 また見に言って、感想書く予定です。


  ニワトリはハダシだ シナリオ   ブログ「もっきぃの映画館で見よう」より 2004年11月21日

 もっきぃです。
 いよいよ今月の期待度No1作品、「ニワトリはハダシだ」を明日というか、もう今日見に行くことにした。最初は先週の封切にあわせるつもりが遅れて、まちきれずにシナリオ(月刊シナリオ 12月号)を読んでしまった。
 前半は、3ヶ所ぐらい泣きそうになるだろう。後半は、いろいろな ことがはいりすぎてかなり複雑。
 これが映像がはいって わかりやすくなることを期待したい。全体をとおして動きが多く、 いきなり核心にはいるような場面が多い。3ヶ所の泣き所も いきなり来た感じ、しかも単なる感動の涙ではなく、ただ単に かなしくなる涙になるかもしれない。かなり感情の起伏を 激しくされそうな映画である。
 ところで、この映画PG12に指定されている。露出度が多そうな ところも、暴力も、からみもないのだが。。。。ひょっとしたらと 思うのが、替え歌。主人公の勇(サムと呼ばれている)と、 親父の守(チチと呼ばれている)が大声で歌う。「昔昔浦島は」 とはじまるのだが、「乙姫様のヘソの下」などどかなり「ヘソの下」 が繰り返される。これを親子(2人暮らし)が怒鳴るように歌う。
 下品ではあるが、結構わらえそうなところもありそうだ。
 役柄として、チチ(原田芳雄)と、ハハ(倍賞美津子)は、ぴったり おおきな期待をもって行ってきます。
 ではまた。


  12/23鑑賞会へむけて なぜ「ニワトリはハダシだ」か? 2004年12月13日

 今日3回目、見てきました。へたすると次は早くもリハーサル?
 やばいなあと思いつつ、メモ取る手はうごかず見入ってしまいます。 まだまだ新しい発見が多く、ますます楽しめました。
 さてどこがそんなにいいかですが、これがなかなか言い表せないんです。
 でも、監督の言葉のなかにそのヒントがあるように思いますので、それを紹介させていただきます。
  ひとつめは、タイトル「ニワトリはハダシだ」。ヒットする映画の タイトルではないなあという気もしますが、「わかりきったことのたとえ」を意味するそうです。監督は「それだけの意味ではなくて、使う人によっていろいろな解釈ができる。つまり誰もが自分の人生哲学を もって生きているということ。当たり前のことが当たり前でなくなってきた世の中への違和感も込めている」そうです。「当たり前のことが当たり前で なくなってきた」という部分は、うなずけますし、そこに監督の怒りが感じられます。また、「人生哲学」の部分は、登場人物ひとりひとりに 監督が注入しているということかと思いました。
 もうひとつは、この映画の共同脚本(近藤昭二)の方が、月刊シナリオに 書かれていたのですが、監督は知的障害児を記録したドキュメンタリー「まひるのほし」にでてくる、とてつもなく明るく率直さをもっているシゲちゃんに衝撃をうけ、「シゲちゃん的存在は、不可逆的に終末へと急ぐ滅亡期の地球への、最後の抑止力ではないか」と考えられたそうです。 だとすると、この映画の主人公サムには、「最後の抑止力」との思いが込められているわけで、その思いがサムの周囲の様々な人に対して生活者としての生きることへのエネルギーを与え、全編満ち満ちているのではないかと思いました。とてもわかりにくい文で申し訳ございませんが、映画を見たときには わかってもらえるのではないかと期待しております。
 ではまた。


 ニワトリはハダシだ と 浮島丸訴訟   ブログ「もっきぃの映画館で見よう」より 2004年12月5日

  11月30日のニュースで、「韓国人側の逆転敗訴が確定浮島丸訴訟で 上告退ける」という見出しを見た。どこかできいたような気がして、よみすすめると「終戦直後に帰国する朝鮮人らを乗せた輸送船「浮島丸」が 京都府の舞鶴湾で爆発、沈没した事故・・・」
 なんと「ニワトリはハダシだ」にもでてくる事件でした。 主人公のサムのおばあちゃんハルメは、この事件の船に乗っていたが 沈没して、漁師のおばさんたちに助けられたという話を、 ハハ(倍賞美津子)がチチ(原田芳雄)に語るシーンがあるんです。
 関連記事をみますと、乗船者数3735人、死亡者数549人(政府発表)。 韓国人遺族や生存者ら計80人が国に公式謝罪と賠償を求めて訴訟。1審では、国の安全配慮義務違反を初めて認め、乗船が立証された 生存者15人のみとはいえ、国に総額4500万円の支払いを命じる。
 ところが2審判決が逆転敗訴を言い渡し、最高裁では上告を退けたというのが 前述の記事のようです。
 まさか、終戦9日目に沈んだ船の裁判がいままで おこなわれていたとは。 「ニワトリはハダシだ」を見てなかったら、読み飛ばしていたことでしょう。 それにしても報道の扱いがちいさいきがします。
  ではまた

    エイジアン・ブルー 浮島丸サコン  ブログ「もっきぃの映画館で見よう」より

シネマ・ワーク ジャンル:平安建都1200年映画をつくる会/1995年/111分
映画館:シルク・ホール(760席)
鑑賞日時:2005年11月12日(土),18:00〜 350人
私の満足度:60%  オススメ度:60%

 <冒頭> テロップ「1985年京都」 坂を駆け降りる若い女性。スカートの裾をゆらし、ハダシで石畳を蹴りながら進む。前方に黒塗りの車。背広の男が、ちらりと振り返り車に乗り込む。音を立ててドアがしまり発車。呆然とする女性のアップ。
 「私が初めて愛した人は朝鮮人でした」
 清水の舞台、深い谷底
 「どうしてあんなに思いつめてしまったのか」
 (男の声)「こざかしいことを言うな」
 テロップ「10年後」
 再び清水の舞台
 「あなたのせいですよ。おとうさん。平気で家族を捨てていって」 大文字。
 炎。海底に沈む大きな船。
 メインタイトル「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」

  <浮島丸事件について(当日宣伝ビラより引用)>
 日本の敗戦から間もない1945年8月24日、京都・舞鶴湾で海軍特設輸送艦が爆沈した。 4千人とも6千人ともいわれる乗船者のほとんどは、青森県下北での厳しい労働から解放された、 帰国途中の朝鮮人だった。
 この爆沈で549人(政府発表)の死亡が確認されているが、 犠牲の痛みや重さを、どれだけに人々が知り感じ取っているだろうか。
 映画「エイジアン・ブルー」は、この事件で犠牲となった一人ひとりに、人生があり、 家族があり、未来があったのだということを、現代を絡み合わせながら描いた作品である。 痛みと重さを戦後60年に生きる私たちに語りかけるために・・・。

 <前置き> 浮島丸事件について私がはじめて知ったのは、昨年、森崎東監督の「ニワトリはハダシだ」。
 主人公家族のおばあさんハルメ(李麗仙)について娘のチンジャ(倍賞美津子)が、海をみながら話すシーンがある。
 「運よう助かってういとるもんは、漁師のオバサン達が総出で船出して助けてくれた、女子供が先やぞう!と叫びもってな。そん時オモニが 助けられなんだらうちは生まれとらへん」
 「そやからうちは韓国人でも朝鮮人でも、日本人でもない、この左波賀の海で生まれた左波賀人や」
 このセリフにかぶせての島の映像が、同じ位置に島があり手前の海から船がマストだけをつきだしているモノクロ写真をみて、本当にあった事件なんだと、さらに爆沈の原因はいまだになぞで、 アメリカの落とした機雷に触れたという説と、内部爆破(自爆)説があるということで 関心をもちました。
 そのことをブログに書いていたら、浮島丸事件を題材にした映画があるよと コメントいただき、今回の上映会企画をみつけて行ってきたのでありました。

  <感想> かなりの期待をもって見に行ったのですが。。。 浮島丸のドキュメンタリー的なものを期待していただけにはずしてしまいました。
  (ドキュメンタリーといえばこの事件のことをNHKが「爆沈」というタイトルで放送したことが あるそうで、みたことはないのですが是非再度放送していただきたいものです。)
 映画で中心に描かれているのは、浮島丸に乗っていた戦時中の朝鮮人労働者の下北半島での 過酷な労働と、父の足跡をたどる冒頭の女性の恋物語。
 うーんなんと言ってよいやら。 事件のシーンの再現を期待された方も期待はずれだったことでしょう。
 でも、このような映画が「平安建都1200年映画を作る会」で企画され この事件を広める役割をしたという意味では大きな意義があるといえるでしょう。
 私の場合は、この映画でさらにこの事件について知りたくなりました。
 例えば、浮島丸が青森を出発する場面で、必死に船に乗らないでくれと呼びかけている人がいるんですね。冒頭のお父さんの若かりし頃なんですが、「朝鮮人を無理やり返そうとしているとしか思えないんだよ」 「みなさん!この船の安全は保証されていません。乗らないでください!!」
 これっていったいどんな情報が飛び交っていたんだろうとか考え出すと疑問が次々でてきました。
 そもそもなんで青森から釜山にいくのに途中舞鶴によったんだろう?
 他の朝鮮人労働者もこんなに早くに帰国の便が用意されていたんだろうか?
 受け入れ側の釜山とは話が通じていたのだろうか?
 機雷と内部爆破の違いは 船体を調べればすぐにわかることではないのか?
 あるいは、目撃者の証言から わかることではないか?
 いま船はどうなっているのか?などなど。
 映画をみるまでは、そら戦後の混乱期ですから、いろいろあったでしょう ぐらいに思っていたのですが、なんだか映画が消化不良だったので後日本を買いました。

  <本:「浮島丸釜山港へ向かわず」金賛汀著2243円かもがわ出版>
 この本、なかなか情報満載で、事件をとりまくかなりのことは分かりました。
 例えば、船に乗っていた多くの人は、朝鮮人労働者とその家族で、この船のあとは いつ次の船がでるかわからないとか、今後は配給がもらえないといわれたこと。
 また、日本側は彼らが暴動をおこすのではないかと恐れていたこと。
 乗組員は日本人で、釜山まで行けばソ連がきているかもしれず、生きて帰れるか どうか不安におもっていたこと。
  「8月24日18時以降の船舶の航行禁止命令」というのがあり、それを21日夜 出港前に知っている乗組員がいたこと。などなど。。。
 ということは、勝手な推測かもしれませんが、朝鮮人帰国者は、戦争が終わって お祭りムードのなか早く祖国へ帰りたいと思ううえに、追い出された形で船に乗り、 日本人乗組員側はできることならいきたくないと思っていたことでしょう。さらには 釜山湾の海図もなく、青森(大湊)と釜山の航海経験者もなし。それで、 青森から直接釜山へは向かわずに、日本海近海を南下して船舶の航行禁止命令が 降りるのをまって、うまくその時期になったので舞鶴港へ入ろうとした、そして爆沈 ということなのでしょう。

  <原因は?>
  でも、沈没の原因の肝心なところになると、前述の本でもほとんど触れられて いませんでした。単純に、爆発が船の内側で起こったのか?外側でおこったのか? さえ判断するのに十分な情報はありませんでした。
 まず、外部で爆発したのなら、水しぶきがドバーッとあがりそうなものですが、 それをみたという証言は、前述の本でもひとりだけで、みていないという人が多数。
 そして、浮島丸は数年後に引揚げられているのですが、そのときの証言としては 前述の本など多数に、穴が外側にむかっていたとの指摘があるものの、写真や 穴の大きさ、船体での穴の位置などの情報はみつけられませんでした。
 さらに、いろいろなHPを見ていると、以下のように全く逆の証言もあるんですね。
 日本戦略研究フォーラムHPより 私は、二十年ほどまえに「浮島丸事件」を調査したことがある。 浮島丸の船底にある穴は、鉄板が外から船の内側に向かって開いているの だから内部爆破ではない。だとすれば機雷以外には考えられない。 http://www.jfss.gr.jp/jp/zuisou_7j.html
 こうなると、やはり謎なんでしょうが、政府発表でも戦後の日本海難史上2番目に多い、 死亡者数549名という大事件又は大事故(実際には二千名以上との説もあり、 だとするとタイタニックより多い)にもかかわらず、日本政府は?
  ・事件は8月24日なのに、10月8日まで発表せず。
  ・船体引揚げ時にも、沈没の原因究明をせず。
 この二つだけでも罪ではないかという気がします。 いまからでも、謎に迫る方法はないものか?
 以下は関連のHPです。
 アジア・ワイド・コミュニケーションHP(予告編あり) http://www.awc-jp.com/lineup/asianblue/main.htm
 シネマワークのHP http://www.cinemawork.co.jp/cwhp/list/asianblue.htm
 ニワトリはハダシだのHP

 疑問リストのなかで浮島丸事件についても書いていますが 残念ながら途中で途切れています。
  http://hadasi.jp/newfilm/whats/list/list.html