日本映画データベースより増補 森崎東アーカイブズ
製作総指揮 | 津滝嘉夫 | |
企画プロデュース | 佐谷秀美 | |
プロデューサー | 溝上潔 真木太郎 | |
監督 | 鶴巻日出雄 | |
脚色 | 森崎東 | |
原作 | 小川竜生 | |
撮影 | 東原三郎 | |
音楽 | 岡本大介 | |
美術 | 田中政一 | |
録音 | 土屋和之 | |
照明 | 吉村光巧 | |
編集 | 渡辺行雄 | |
出演 | 大仁田厚 小嶋亜由美 森香名子 遠山景織子 長門勇 南原宏治 小倉一郎 奥村公延 徳井優 |
映画『ソクラテス』の紹介 池田博明 大阪の浪速界隈にフリーの極道、菊地ソクラテス竹男(大仁田厚)がいた。罪を憎んで人を憎まず。ソクラテスを慕う少女、良子を組織がシャブのターゲットにした。怒るソクラテスが立ち上がる。鶴巻日出雄第一回監督作品。 脚本が森崎さん一人とくれば、原作ものとはいえ、そうとう変な話を期待するのが森崎フリークの心意気。 ビデオショップでもVシネマの棚に埋もれた状態のこの作品。期待にたがわぬ「変な」力作であった。 そこでタイトルが出て、「二年後」になる。ソクラテスは往来で朝、縄跳びをしている。ダンボール回収業のおばちゃん(石井富子)の引くリヤカーが通る。引ったくりにあった会社員が不良少年を取り押さえる。竹男は会社員の暴力を制止し、「罪を憎んで人を憎まずや」と諭す。ソクラテスは一匹狼の極道で、弱い者の味方をする。不良少年は竹男を兄貴分と慕うようになる。 竹男の後見人は町医者(長門勇)で娘の梨花(遠山景織子)は看護婦をしている。今日も中絶手術が入った。半年に一度は妊娠してしまうという中年女(水木薫)を家に送っていった竹男は女の中学生の娘(山本ゆめ)とその友だち良子(小嶋)に会う。 医者のところに黒松組の組長(南原宏治)が来て、小学校以来の旧交を温める。組長は、前立腺ガンであと一年と宣告されているという。 手形を買い取られて困っている老人(奥村公延)が白タクの運転手を介して、竹男に助けを求めて来るが、竹男は字が読めないし、複雑なことは理解できないと断る。白タクの運転手がソクラテスは「おかんの話に弱い」と知恵をつけて、金貸し業者のところへ出かけてみると、黒松組の関連会社だった。竹男が組に乗り込むと、どうやら組長直系の仕事ではなく、配下の会社のはねっかえりがしたことらしい。若頭と竹男はその会社に出向くが、相手にされないどころか、かえって馬鹿にされ、恐喝される始末。すきを狙って竹男が大暴れ。手形を取り返すが遺恨が残る。 もらった謝礼を「気に入らない仕事だったから」と組長に返す竹男。組長は任侠道をわきまえた竹男に惚れて、娘を貰って二代目をついでくれと話をもちかける。ネクタイをして黒皮のベストに雪駄ばきの竹男は和服の娘とデートをしてみる。竹男の額の刺青は女郎蜘蛛、「女郎」だった母親の直伝の刺青とか。 一方、良子の家庭では夫(小倉一郎)の留守に妻(水原ゆう紀)は夫の会社の部下と不倫、争いが絶えない。少女は友人と二人でテレクラ売春、援助交際に関わってみる。電話で遊ぶ少女たちを狙っている男がいた。 竹男のもとに少女の父(小倉)が相談に来る。娘を返して欲しかったら、二百万円を持って来いという連絡だったという。件のゲームセンターに乗り込んでみると、少女たちは先輩女性たちから結構やさしくしてもらっていた・・・。これって、『黒木太郎の愛と冒険』と同じ構図である。「ニワトリはハダシよ」という決めゼリフも何度か出てくるし。 竹男たちの心配をよそに、暴力団がらみの組織に利用されていく少女たち。良子は自分が昔助けた少女だったことが自分の歌うのと同じ讃美歌を良子が歌っていることをきっかけに分かって、組長の娘の誘惑も断って、少女を助けに乗り込んでいく竹男。一度はヌード撮影会に利用され、あやうくシャブをうたれそうになったところで良子を救出した竹男だったが・・・。良子に「キスして」と迫られ、困惑する竹男。 黒松組の組長は誰かに刺されて危篤。若頭が組長刺殺の下手人と目した組織は配下の者たちだった。この組のチンピラたちが少女たちも利用していたのだ。再びシャブをうたれて犯されそうになったところで、竹男が救出。若頭も刺されながらも大暴れ。撃たれて一瞬気が遠くなる竹男。 背負って良子を家庭へ連れ帰る竹男。撃たれたのは太ももだった。自分の出生の経緯も少し分かってきて(母親は朝鮮戦争時、米兵相手の女郎。父親は牧師だったと言っていたが、実際は組員)、元気の出ない竹男を回収業のおばちゃんや不良少年が元気づける。往来から見えるマンションにすむ良子の歌う賛美歌で少し元気を取り戻すソクラテスだった。幕。 ソクラテスの救出を期待して、何度も悪い組織に関係していくという少女の気持ちがどうしても理解できないので、後半は納得のいかない物語になってしまっている。単純に白黒を割り切る話になっていないので、カタルシスがない。 良子の友人で男狂いの母親(水木薫)を持っている山本ゆめが勢いのある大阪弁で好演している。組長の娘役の女優さんは素人同然で興をそぐ。遠山景織子は気の強い浪速娘を演じている、ちょっと無理している感じだが。 鶴巻監督は浪速でのロケ中心に大変丁寧に撮っているが、エピソード毎に中休みするようなリズムなので展開に勢いがない。台詞にかかれていない仕草や演出で,物語を引っ張って、もっとテンポよく進めるべきだったかもしれない。 (ビデオで視聴。2001年12月28日) |