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製作 | 杉崎重美 | ![]() |
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プロデューサー | 中川滋弘 | |||
監督 | 森崎東 | |||
助監督 | 梶浦政男 | |||
脚本 | 梶浦政男 森崎東 | |||
原作 | 結城昌治 | |||
撮影 | 坂本典隆 | |||
音楽 | 佐藤勝 | |||
美術 | 森田郷平 | |||
録音 | 原田真一 | |||
調音 | 小尾幸魚 | |||
照明 | 八亀実 | |||
編集 | 太田和夫 | |||
出演 | 松坂慶子 役所広司 平田満 川谷拓三 田中邦衛 |
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▲2013年11月、オーディトリウム渋谷にてポスター展示 |
女咲かせます 略筋 池田博明記 原作は結城昌治の『白昼堂々』で野村芳太郎監督により、渥美清主演ですでに映画化されており、佳作です。 飛行機が長崎に着きます。長崎港のデパートで女子高校生がネックレスを万引き、すぐに店の人に見つかってしまいますが、そこへ通りかかった県警の取締官の女性、女子高校生をひったててタクシーに乗せます。警察官とは真っ赤なウソ、この映画のヒロイン、とよよ(松坂慶子)でした。故郷・高島に帰って来たのは亡くなった父親の骨を墓に納めることと、もうひとつ、かつての仲間たちに最後の大仕事への協力を依頼することでした。炭鉱が閉山されて以来、暇をかこつ仲間たちに言い目をみせてやろうというのです。棟梁はワタカツ(田中邦衛)のおいちゃん。幼馴染のタケさん(平田満)は炭鉱のガス爆発で記憶喪失になってしまいました。女性を見ると自分の女房だと思い込む性向があります。 ワタカツは女が三十過ぎて足を洗うつもりになるのは、男ができたからだと見抜きます。誘いを断られて、とよよは東京へ帰ります。1階のトミさん(清川虹子)は盗品をさばく係り。二階に間借りしているのはチェロ弾きの青年・三枝高志(役所公司)。宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」のイメージです。 泥棒仲間は梅津栄、草野大悟などなど。とよよに惚れている刑事・大耳清十郎(川谷拓三)は、とよよに足を洗えと勧めます。中華飯店の主人(柄本明)は毛沢東のシュプレヒコールを口にします。高志の部屋に若い女性が訪ねて来たのを知って、買って来たケーキを床にたたきつけるとよよ。しかし、その女性は高志の妹でした。 九州からワタカツらが上京して来ました。仕事に協力しようというのです。さっそく、宴会が始まります。ジャンジャラスッポンッポーンと囃しが入り、年に一度の暗闇まつりと歌う歌はかつての炭坑節。 下水道にデパートまでのルートを築く工法は炭鉱時代の仕事の応用です。とよよは高志の母(佐々木すみ江)に紹介されます。 銀造は刑事の言葉からクリスマスあけの26日決行の予定がバレていることに気づきます。その事を伝えると即座にワタカツは計画の中止を宣言、密かに聞いていた刑事はホっとします。しかし、これはワタカツのミスリードでした。彼はすぐに行動開始。予定を早めて盗難計画の実行です。 輸送される現金を横取りする計画は困難にぶつかりながらもなんとか成功。清掃車で金を運び出した一同はすぐに故郷へ戻る段取り。逃げる前にとよよは高志のためにイタリア製のチェロを540万円で購入します。新幹線のホームで乗り込もうとしたとき、刑事が既にはりこんでいました。折悪しく高志が妹と母を見送っていました。とよよは覚悟を決めて、刑事の前に身をさらし、他の仲間を助けます。高志を誘って購入していた弁当を食べますが、筍を見ると小学校4年のころ、はしかで寝ていた妹に食べさせたい一心で取った筍のために泥棒呼ばわりされた思い出が蘇って来て、涙が止まらないのでした。とよよは高志に刑事を大耳清十郎さん、年が明けたら結婚するのと紹介し、警察に同行します。丸の内警察署の前で足がすくんでしまったのは刑事の方でした。 刑務所に入ったとよよの元へ面会に来た高志、僕にチェロを贈ってくれた人がいるんです、その人に結婚を申し込みたいと思うんです、その人はニ、三年外国へ行ってるんです、待ちます、と話しますが、とよよは、勝手にすればいいじゃない、待てないわよ、周りが待たせないわと答えます。女性看守は「他人の話ばっかりだ」とあきれます。 三年後に出所したとよよが故郷に帰ると、仲間が出迎えてくれました。お金の入ったケースを隠し場から掘り出して真昼間から宴会を始めようというとき、チェロの音が聞こえてきます。ボタ山のてっぺんでチェロを弾く高志がいました。とよよは一歩一歩、ボタ山を登り、彼のほうへ近づいていくのでした。 【寸評 池田による】 松坂慶子の過剰演技にちょっと引いてしまいます。下水道での活動は暗くて、その仕事がはっきりせず、感興をそぎ、成功ていません(見直してみると、デパートのエレベーターにつながる横穴を掘っているだけでした)。閉山してしまった炭鉱への無念の思いが色濃く出ています。 |