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愛の讃歌

製作=松竹(大船撮影所) 
1967.04.29 
7巻 2,576m カラー ワイド
製作. 脇田茂
監督.山田洋次
脚本.山田洋次 森崎東
撮影.高羽哲夫
音楽.山本直純
美術.梅田千代夫
録音.小尾幸魚
照明.青木好文
出演.中山仁 倍賞千恵子 伴淳三郎 有島一郎 千秋実 太宰久雄

 山田洋次によると、この作品はパニョルの『ファニー』を換骨奪胎したもの。

 山田洋次が森崎東と脚本で組んだ最初の作品。ただし、オープニング・タイトルでは山田洋次に比べて、森崎東の文字は小さい。貢献度は小さいのだろう。原作はマルセル・パニョルの『ファニー』。ジョシュア・ローガン監督によって1961年にレスリー・キャロン主演で映画化されている。jyosyua
 瀬戸内海に浮かぶ日永島。恋人の小さな妹たちを連れている春子(倍賞千恵子)がいる。一方、中年のあわてものの医者・伊作(有島一郎)と世話をするおりん(北林谷栄)がいる。
 春子は桟橋にある食堂兼切符売り場の「待帆亭」で働いていた。春子の恋人の竜太(中山仁)は待帆亭の主人・仙造(資料の千造は間違い、墓標に仙造とある。伴淳三郎)の息子だが、なにかと口やかましい父親にすっかり愛想をつかしていた。
愛の賛歌 待帆亭には床屋・備後屋の主人(太宰久雄)、連絡船の船長(千秋実)、あん摩(渡辺篤)、老人(左卜全)、郵便職員(小沢昭一)たちが集まって世間話に花を咲かせている。
 大阪から帰ってきた竜太はブラジル移住を決意したという。春子を思っていったんはブラジル行きをやめようとした竜太だったが、突然春子は竜太にブラジルへ行けと話す。自分のために夢をあきらめたといつまでも後悔するような人生ではいけないというのが春子の判断だった。竜太はこっそり港から出る。
 竜太からは1通手紙が来たが、その後は何も来ない。桟橋から落ちる春子、すぐに助けられたが、妊娠5ケ月であることが分かる。クリシチャンの伊作は日記に、罪の許しを与えたまえと記す。
 伊作のもとを訪ねる春子。泣き伏す春子、眠り薬を処方して戻ってみると、春子は寝入ってしまっていた。
 朝、帰っていく春子を見たおりんは驚く。おりんは伊作と春子の関係を誤解する。伊作は仙造に春子を引き取る提案をする。そして春子の妊娠を伝え、竜太の子供だと明かす。
 10月4日、春子は伊作宅へ移転する。そして出産、男の子である。竜介と命名される。1月1日、誕生祝い。
 2月14日、竜太が帰って来た。郵便屋は電報で呼び寄せたと思われるといけないとオーバーな演技で病気の仙造に帰省を伝える。伊作宅で竜太は言葉が通じない苦労と、春子や父親のことが忘れられずにでブラジルから帰って来た、おりんから子供を抱かせてもらい、竜太は子供が自分の子供だと知る。なぜ知らせなかった?春子は言うたらいけんと思ったと。桟橋で春子と竜太は話す。
 竜太は大阪へ行って3人で暮らそうと言う。伊作「この子をわしにくれんか。可愛いんじゃ」。竜太「先生にはそれを言う権利はないよ。おれが親なんだから」。しかし、仙造が「タネをつけただけが親なら馬も犬も一緒じゃ。親もオナゴもほっぽり出して地球の裏側へ行ってしもて、親の気持ちが分かる?そんなことが言えるか」。2月15日の朝、竜太は去っていった。2月16日、仙造が前日飲酒で大荒れ、朝に死亡しているのが発見される。竜太の手紙をにぎって倒れていた。18日、仙造を火葬。
 手紙で竜太の大阪での居所が判明、伊作は工務店に電話をかけ、春子に竜太と一緒に暮すよう提案する。伊作は、仙造の本当の気持ちは息子とその嫁、そして孫が一緒に暮らすことだったと思うと春子を説得する。
 3月10日、港で、みんなが春子を見送る。涙が止まらない春子。
 森崎さんが書いた部分は仙造のつく悪態だろうか。また、仙造は竜太の手紙を風呂の焚きつけだと言いながら、みんなの前では読まない。しかし、読もうとしても目が悪くなっている。手紙を春子に“声を出して”読んでもらう。また、竜太に返事を書こうとする仙造は春子に口立てする。仙造は春子は最近顔色が悪く、肺病になって死んでしまいます等と書かせようとする。
 倍賞千恵子、伴淳三郎、有島一郎の演技が光る佳作。 (池田博明記 2008年10月10日)