高校生物  感 覚 器  by 池田博明

神経系 感覚器 神経と興奮 脳の構造と機能 

▼高木雅行『感覚の生理学』(1989.裳華房)
▼山内昭雄・鮎川武ニ『感覚の地図帳』(2001.講談社)
▼山口創『皮膚感覚の不思議』(2006,講談社)
▼佐野豊『神経科学形態学的基礎 間脳(2)』(医学書院,2007)
▼図の一部は『標準 生物TB』(啓林館)に掲載または掲載予定だったもの

第0節  感覚の分類
感覚 特殊感覚 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 視覚・聴覚・味覚・嗅覚・平衡感覚
体性感覚 皮膚感覚(表面感覚) 触覚・圧覚・痛覚・温度感覚
固有感覚(深部感覚) 位置感覚・筋肉/運動感覚
内臓感覚 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 空腹/満腹感・尿/便意・内臓感覚


第1節 光の受容=視覚器

●第1項 ヒトの目

  目は表情を作る
  例.目の周囲に白目が出るのは非人間的で奇妙.
  (ヒトの黒目は目の上か下に接しているのが普通) 

【コメント】SF映画で人間に化けた異星人が正体を表すときには目が変化する. マンガなどには奇妙な例がある.

  ヒトの目は顔の前面に付いている → 立体視できる範囲が広い。ヒトの両眼視野は120度で,視野は190度。【図:ヒトの顔と目の位置】

  ▲▼湖崎克『目のはたらきと子どもの成長』(築地書館)
  (他にもサル・ネコなど)

  ウマは側面に目が付くので真ん前の一部しか立体視できない.
  しかし,眼球は大きく,真後ろを除く350度を見ることができる。

 【図:ウマの顔と目の位置.立体視は前65度】
   (競馬では騎手の手綱さばきが馬を安心して走らせるのに重要)

【参考】視野
イヌは視野240度,立体視は前60度.ネコは視野180度,立体視は前70度(湖崎の本では,視野280度,立体視は前120度)。
ウサギは視野360度,立体視は前10度・後9度で,真後ろも見える。
▲『馬の科学』(1986,ブルーバックス)


(1)ヒトの目の構造

構造 機能 特徴や異常
角膜 光を集める 表面が凸凹になる異常(乱視)
レンズ  遠近調節 タンパク質(クリスタリン)が栄養不良で
レンズ硬化になると,
      →焦点が決まったところにのみ合う=老視
レンズ白濁 →白内障
こう(虹)彩 光量調節  
ガラス体 (透明なコロイド状)
網膜 像を結ぶ 黄斑(黄点)や盲斑(盲点)がある


【参考】角膜移植
 移植によって多くの人が視覚を取り戻している。2万人の必要者数に対して,10%が提供を受けている。 「アイ・バンク」に登録すると,死後すぐに目の摘出に来る。摘出後は精巧な義眼を入れるので表情には問題がない。
 角膜には血液や血管がないので透明さが保持でき,200年は生きる。 角膜の上皮細胞は涙を介して栄養や,空気からの酸素を受け取るし,内皮細胞は眼房水 (レンズと角膜の間の前眼房を満たす液体)から酸素と栄養を受け取る。
 (NHK新日本探訪「光ふたたび・千葉アイバンクの日々」1998年10月18日放送)

【参考】レンズの遠近調節
  ド−ナツ状の毛様体が収縮する → チン小帯がゆるむ→
   水晶体がふくらむ (近くにピントが合う)
 注記;馬や牛はレンズ自体を前後へくり出して調節している。

(2)網膜…視細胞からできた膜
  視細胞=光を感ずる細胞
     かん体(桿体)細胞(=棒細胞) rod
       …明暗覚(白黒写真に相当,高感度)
        網膜の周辺部に多い
     錐体細胞(=円すい細胞)  cone
       …色覚(カラー写真に相当)
        網膜の中心部に多い。
        特に黄班(黄点)に多い。


▲棒細胞と円錐細胞の形態

▲カハルが描いた
イヌの網膜の神経細胞図(1904)

 ニューロン説にもとづき、カハルは
 網膜の神経細胞層を10層に分類
している。現在も基本的にこれを
踏襲している。
【コメント】棒細胞はかん体(桿体)細胞,円錐細胞は錐体細胞と表記される (生物教育用語事典)。
 しかし,このかん体(桿体)という用語は漢字が特殊で良くない。 rodやconeは棒細胞や円錐細胞という訳語で良かったと思う。
【参考】棒細胞網膜
 多くの哺乳類の網膜は棒細胞のみなので,色覚がない(全色盲)。 哺乳類の祖先は夜行性動物であったためと思われる。 少ない光量を効果的に利用するため,タペータム(輝板)がある動物の目は夜光る。 夜間にストロボ撮影するとイヌやネコの目が反射しているのはこの反射層のためである

【参考】オプシン遺伝子の進化(宮田隆,1996)
 ロドプシンや色覚オプシンのアミノ酸配列を比較すると, 脊椎動物と昆虫の色覚は独立に進化したことや,脊椎動物の系統では, 赤緑色オプシン遺伝子と青色オプシン遺伝子が分岐し, 後者からロドプシン遺伝子が分岐したことが推定される。つまり,ほ乳類はいったん色覚を無くしたのだ。
短波長(青) ヒト ロドプシン
トリ ロドプシン
ヤツメウナギ ロドプシン
トリ 緑
トリ 青
ヒト 青
長波長(赤・緑) ヒト 緑
ヒト 赤
無脊椎動物 ロドプシン

【実習】ブタの眼の解剖。ブタも色盲。黄斑がない。レンズは決して硬くない。
 視細胞は眼球の後方を向いている。網膜は3種の神経細胞で構成されていて(視細胞・連絡の神経細胞・視神経の細胞),最外層は色素細胞層。脈絡膜には血管や神経が通る。
 視神経は盲点を通り,眼球の外へ出て,大脳の視覚野へ入る。
 盲点(盲斑。視神経の出口)には視細胞なし。像を感じない。

【実習】盲点(盲斑)検査1。左眼で●印を見てから,顔を動かさずに数字を見ていくと●印が消失する。そのときの数字は黄点上に,●印は盲点上に結像している。
    ● 1 2 3 4 5 6 7
  盲点検査2.右目で●印を見て図を目から離していくと右の+が見えなくなる。このとき,●印は黄点上に,+印は盲点上に結像している。

    ●        

【参考】なぜ網膜の視細胞は後方を向いているのか。
 発生学的な制約である。
 動物が脳の周囲を被う表皮の前方向から光を受けていたときは脳の網膜の視細胞は前を向いていた。 例えばイカやタコの網膜の視細胞は前を向いている。しかし、次第に表皮は側方向が盛り上がり、 神経管を取り巻くようになった。眼も頭の横に付くようになった。すると、 神経管の裏側から光が入ってくるようになってしまったのである(良い図がタイムライフ社の本『光と視覚』にある)。 盲点がないと視神経が目の外へ出ていけなくなってしまったのである。

  物を見る…大脳の視覚野が感ずる(目を開かなくとも,夢を見る)
  ネコの片目をふさぐと,脳の一部に萎縮が起こり,弱視になる(ウイーゼルとヒューベルの研究→ノーベル賞)

(3)明順応と暗順応
  棒細胞のなかにロドプシン(視紅。紫色の色素タンパク質 490nmにピーク)
      rhodo+opsine 赤いオプシンの意
    明順応:
    光↓
視紅 →→ 視黄 →→ 視白(ビタミンA+オプシン) →→ 視紅に戻る 
      ↓                          ↑
     エネルギー → 神経を興奮させる   暗順応:栄養やATPを補給

  脈絡膜からビタミンAを供給される 
  ビタミンA欠乏症 → 鳥目(夜盲症)

(4)色覚の仕組み

  円錐細胞に3種あり。
  赤色細胞(赤錐体.ピーク波長565nm=黄緑色)
  緑色細胞(緑錐体.ピーク波長530nm=緑色)
  紫色(または青色)細胞(紫錐体.ピーク波長450nm=紫色)

【参考】ヒトの視覚機構に関する説。 

 ヤング−ヘルムホルツの三原色説:あらゆる色(色調と飽和度)は,スペクトル光の3要素で生ずるという説。 3要素の興奮の度合が等しければ白の感覚を生じる。 ヒト・サル・キンギョ・コイは3要素,ニワトリやウグイでは4種とされる。

 ヘリングの反対色説:黄‐青,赤‐緑,白‐黒の3組の反対色を基本感覚と仮定する説。 
 段階説:視細胞のレベルでは三原色説,その後の神経回路における情報処理で反対色説に変換されるとする。

 赤色オプシン遺伝子と緑色オプシン遺伝子はX染色体上にある。(両遺伝子は遺伝子重複によって進化した)。青色オプシン遺伝子は起源が古い。

【コラム】幼児の安全服の色彩
 赤い色は目立つと思われているが,それは昼光下である。 薄暮時はかん体が働くので,むしろ青色が目立つ。 青地に赤いパッチが入っている洋服の方が目立つことになる。
【コラム】補色残像
 赤色の形を長く見つめていて,急に白地に目を転じると,補色の緑色に見える。 手術服が白衣でなく,緑色の理由は血液の赤色を長く見ると,白衣上に補色の緑色が見えて, 手術の邪魔になるからである。緑衣は緑色の残像を消す。


(5)脳との連携  視交差

▼左眼に入った情報は右脳に入り、右眼に入った情報は左脳に入るという解説が
専門家の書いたものにも見られるが,それは間違っています。
 正しくは左右に関わらず眼の網膜の左側に入った情報は右脳に行き,網膜の右側
に入った情報は左脳に行くというのが正しい。
 ただし下等脊椎動物では違っている。




●第2項 他の動物の視覚器 = 光受容体の進化

 ミドリムシは眼点を持つ。
 腔腸動物クラゲの中には膜の周辺に眼をもつ種がある。
 第3の眼=トカゲの頭頂眼,カエルでは頭皮に隠されている。ヒトでは脳内の松果体となって光を感じている。
 ホタテガイの眼(レンズがある)は外套膜に百個以上ある。
 イカの眼では直径37cmという大きさが知られている。
 昆虫の複眼
 クモの8個の単眼(ハエトリグモの大きな前中眼は形態視可能)


  目の進化を学習する=進化を見る(2) 関東理科研究発表大会・茨城大会(2001年)より


  動物の生きるしくみ事典(日本比較生理学会)  色が見えるしくみ

第2節 音の受容=聴覚器,重力の受容=平衡感覚器

●第1項 音の受容=聴覚器

(1)ヒトの耳の構造
  内耳            中耳        外耳
  半規管(回転覚)   耳小骨   鼓膜  外耳道  耳殻
  前庭(平衡覚)     耳管
  うずまき管(聴覚)


 音波の経路
  音波の特性  振動数が小さい=低い音  
                 大きい=高い音
             振幅が 大きい =強い音
                  小さい =弱い音
           波形 → 音色

【参考】耳小骨
 耳小骨は鼓膜の振動を内耳に伝える役割である。 振動の大きさはテコの原理で1.7倍になり,振動エネルギーの約60%を伝えることができる。
 耳小骨はつち骨・きぬた骨・あぶみ骨と3種の骨から構成されている。 つちは槌でものを叩く道具である。砧は堅い布を打って柔らかくする道具。 あぶみ(足踏み)は乗馬の道具である。
 ヒトの耳小骨は魚の顎の骨(接続骨・方形骨・舌顎骨)が進化したものである。 あぶみ骨が舌顎骨に相当する。

 聴覚=【うずまき管の断面図】 ヒトの可聴範囲 20Hzから2000Hzまで

   リンパ液で満たされる。
   前庭階に音が入る(卵円窓に)
      基底膜の振動 → おおい膜の振動 → 有毛の聴細胞と接触して興奮
   鼓室階から音が出る(正円窓から)

    (高音はうずまき管の太い部分で,低音は細い部分で感ずる)



 回転覚=半規管
   有毛細胞の上にクプラがある。リンパ液に満たされている。

 平衡覚=前庭(器)
   有毛細胞がゼリー状の膜におおわれ,その上に平衡石(耳石)が載る。
   リンパ液に満たされている。

(2)他の動物の聴覚器
 
 コウモリの可聴範囲
 
第3節 化学物質の受容=味覚器と臭覚器

▼栗原堅三『味と香りの話』(岩波新書,1998年)
▼高木雅行『味と匂いよもやま話』(裳華房,1994年)

●第1項 ヒトの舌

(1)味覚芽(味蕾)
   3分の2は舌に,他は軟口蓋・咽頭部・喉頭部にある。10日ごとに新しい味蕾に更新されている。
  → 味細胞の新生にはタンパク質合成酵素が関係
      → この酵素に関係する亜鉛が不足すると味覚障害が起こる 
  → 加工食品には亜鉛と結合しやすい添加物(ポリリン酸)が含まれている

(2)基本味 (かつては四味と考えられたが,現在は五味に)

 甘味 sweet 糖のシグナル=呼吸基質としてエネルギー源
            甘味物質には構造関連性がない
 塩味 salty  ミネラルのシグナル=調節物質など。神経興奮にはNaが重要。 
 酸味 sour  腐敗物のシグナル= 酸。未熟な果実に多い
 苦味 bitter 毒物のシグナル= 多種多様な物質がある
 うま味 umami taste タンパク質や核酸のシグナル=アミノ酸(特にグルタミン酸やイノシン酸)
 (英語には「うま味」を表す言葉が無い)

【参考】うま味物質の発見(「家庭」科(食物)でも学習する)
 1908年 池田菊苗はコンブのだしから,うま味成分として

グルタミン酸 塩を発見(タンパク質分解産物から)。
 チーズ,お茶,ノリ,イカ,トマト,ジャガイモ,白菜などに含まれる。
  スペインのスープ、ガスパッチョの主成分はトマトである。
  トマトにはうまみ成分のグルタミン酸が多量に含まれている。

 1913年 小玉新太郎はかつおぶしから,うま味成分として

 イノシン酸 塩を発見(ATP分解産物から)。
    魚介類に多く含まれる。

 1957年 シイタケのうま味成分として,

 グアニル酸 塩を発見(RNA分解産物から)。
   キノコ類に多く含まれる。
【参考】人工的にカニ味を作る 100ml中のmg数
 Gly (甘い) 600, Ala (甘い) 200, Arg (苦い) 600,
 Glu-Na (うまい) 30,イノシン酸Na 20, 食塩 500,
 第2リン酸カリ 400
 うま味物質の相乗効果がある。
例えば湯豆腐ではコンブだし(グルタミン酸)で,カツオブシをかけて (イノシン酸)食べる。→うま味倍増

【参考】刺身のうま味とイノシン酸の量
 イノシン酸含量がピークになるのはと殺後,冷蔵してから何時間後か?
 ハマチは8-10時間後,トリ肉 4-8時間後,豚肉 3日後, 牛肉 7-10日後
【参考】鶏肉のうま味
 (1999年3月3日放映,NHKためしてガッテン”鶏肉うま味100%活用術”)
 トリ肉や鶏卵を食べるようになったのは江戸時代。それ以前は時を知るために飼育されていた。焼き鳥の「砂肝」は胃の一部。世界での消費量は香港,アメリカと続く。
 焼き肉で牛肉と鶏肉を比較すると,焼きたての匂いをカットしてブラインドテストをすると鶏肉の勝ち。旨味成分も鳥肉に多い。
 水炊きでは昆布との相乗効果が大きい。熱湯から入れるとイノシン酸分解酵素が変性してイノシン酸は減らない。水炊きでは四角い肉が丸くなったときが食べ頃(筋繊維が収縮してスキマに肉汁が満ちる)。
 ダシ作り(昆布+コンソメまたは鶏がら)とつけ汁(煮立ち酢+オレンジしぼり汁+こぶ茶)作りもコツ。
【参考】究極の豚汁
 (2005年11月2日放映,NHKためしてガッテン”豚汁”)
 ガッテン流豚汁のコツ。(1)野菜は切って湯通ししてから水からゆでる、 水からゆでるほうがうまみ成分が残る、 (2)みそを半量入れる=みそにはグルタミン酸がある、 (3)バラ肉(霜降り肉)を95℃で15秒湯がいてから(脂身から出る香り成分を生かす方法)入れる、 ブタ肉はイノシン酸を含む、 (4)残りのみそを少しずつ味見しながら入れる。必ずしも全部入れる必要はない。 うま味成分が多いと、うま味レセプターが飽和してしまい、苦味レセプターにうま味成分がはまり込んでしまい、 かえって、うま味を阻害してしまう。
【参考】グルタミン酸ナトリウムには害があるか?
 味の素をたくさん取ると記憶形成にグルタミン酸が関与しているので頭が良くなるという説を 林嵩(慶応大学.推理小説作家・木々高太郎)が唱えた。 1968年に中華料理中のグルタミン酸ナトリウムで顔がほてる・頭痛がするという人があった(アメリカの研究), 1969年に生まれたてのマウスに注射する(0.05-0.4g/100g重.60kgのヒトに換算すると 30-240gのグルタミン酸ナトリウム量)と視床下部の一部の神経に障害が起こるというアメリカの研究が出た。 実際には血液・脳関門を通過しないため,経口投与したグルタミン酸は脳に移行しない。 大量のグルタミン酸ナトリウムをマウスに食物と一緒に与えても,異常は無かった。
【参考】若い女性ほど味に敏感?
 佐賀大学・栄養学教室の調査によると基本四味の閾値のいづれでも、 20代の若い女性がもっとも感度が高いという結果を得たという。 甘味はショ糖、塩味は塩化ナトリウム、酸味は酒石酸、苦味は硫酸キニーネを用いて それぞれの水溶液の薄い濃度からテストした。調査対象者の中では男性より女性、 年齢層では20代女性の感度が高かった。(2005年5月14日のニュース)
 中高生からおばあちゃんまで、女性の甘いもの好きは周知の事実。 恐ろしく甘いお菓子を美味しそうに平らげる姿に、感心させられる御仁も多いのではないだろうか。 ところがこの「甘さの感覚」、加齢とともに少しずつ低下してゆくことが明らかになった。 年をとるほど強烈に甘いお菓子を平気で食べられるようになるのは、一種の加齢変化であったのだ。
 佐賀大学の水沼俊美先生らは、20〜70歳代までの成人女性363名を対象に、 濾紙(ろし)ディスク法で味覚感度を研究した。直径6ミリの穴をあけた濾紙を舌の先に置き、 色々な濃度の溶液をのせ、味質を認知できる最小濃度を測定する方法である。 それによると、味覚感度は加齢とともに低下し、甘味と酸味に対する感度は20歳〜30歳代と、 60歳から70歳代にかけて急激に低下することがわかった。 すなわち、被検者の50%が蔗糖の甘味を検知するには、30代で20代の3倍、 70歳代では24倍の濃度が必要であった。同じように20代にくらべると70代で塩味は12倍、 酸味は42倍、苦味は37倍の濃度が要求され、格段の差が明らかとなった。 味付けをめぐる「嫁姑の争い」は、味覚感度の差が一因となっているようだ。
 また水沼俊美先生らは、肥満と味覚の関係にも注目、体脂肪率からみた味覚感度の差も検討した。 その結果、20〜30代では体脂肪の多寡はあまり影響を及ぼさないが、 40歳以上で肥満者に酸味の低下がみられた。体脂肪率30%以上の場合、 25%未満の人にくらべ酸味を感じる最小濃度に7.6倍もの開きがあった。  この論文で「チョーあまっ(>.<)/」と言ってた高校生が、 大人になるに従い甘さに慣らされて行く過程が証明された事になる。 ここをわきまえた上で、医療従事者は食事指導を行うべきであろう。 もっともお菓子メーカーの方々には、すでに常識かもしれないが。 「女性の味覚感度は加齢で低下し、肥満では酸味が低下する」
水沼俊美、ほか: 肥満研究 4:297-301、1998 (三菱化学ビーシーエルより)
【参考】 「究極の味」を求めて   NHK クローズアップ現代 2012年2月2日
 例えば「みそ、酢、からし」の和え物があるとする。みそは甘み、酢は酸味、からしは辛味の感覚を刺激する。この感覚受容に時間差をつけるにはどうすればよいか。料理人はみそはそのまま、酢はゼラチンでくるむ、からしは寒天でくるむことを考えた。
 ゼラチンは30℃で溶け、寒天は90℃で溶ける。温度差が作用して異なる食感になった。
 スペインの料理人フェラードリアが始めた料理と科学のコラボレーションが始まった。


【参考】ミラクルフルーツとギムネマ酸

 甘味を抑制する物質としてギムネマ酸、すっぱいものを甘味に替えてしまうミラクルフルーツなどが研究されている。
 これらはともに甘味受容体に作用すると考察されている。
【参考】ネコには甘味を感ずる感覚が無い

 ネコは肉食に特化したため、甘味の感覚が無い。
 甘いものをあげても食欲を高めるということがなく、かえって肥満などの病気になりやすくなる。
 ネコを飼育しているひとでも知らない人がいる。ネコは嗅覚で食物を判断しているため、どんなに好物でも匂いがしないと食べない。
 冷蔵庫から出したばかりで冷え切っている食物を食べなかったりするのは匂いがしないせいだと考えられる。
 


●第2項 ヒトの鼻

  嗅細胞
   

【コメント】


第4節 皮膚感覚

●第1項 圧覚・触覚・痛覚

  圧覚  パチニ小体
  触覚  ルフィニ小体
  痛覚  神経終末

●第2項 温覚・冷覚   温覚  マイスナー小体   冷覚  クラウゼ小体





【コメント】

【参考】健康と入浴
(1999年2月24日放映ためしてガッテン”血液サラサラ入浴法”)
42℃以上の湯に入るとエンドルフィン(脳内麻薬)が上昇するため,熱い湯に入ると快感を感じる。
血圧が大きく変動するため熱い湯は健康によくない。
体温が2℃上昇すると血液の粘性が高まる。これは血小板が管壁に付着しやすくなるため。
ではどのような入浴法で体温は2℃上昇するのだろうか。若者に限界まで入浴してもらった。
 40℃ 40分 2.1℃ (25分入浴すると体温は2.0℃上がる)
 42℃ 13分 1.2℃
 44℃ 9.5分 2.1℃
熱い湯では長湯ができないのであまり体温は上昇しなかった。 ただし ,これは若者のデータ。老人は熱さを感じにくくなっている。
(背面から電球を接近させ熱くなったら答えてもらう実験で若者は56cm, 老人は44cmだった。若者被験者は平均19.5歳,老人被験者は平均63.5歳)
健康入浴時間(目安):40度で 10分以内,42℃で 7分以内,44℃で 5分以内。
入浴の前後で水分を補給することも大切である。  

 

 


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