浦安図書館を支える人びと
──図書館のアイデンティティを求めて


鈴木康之・坪井賢一著
A5判 301ページ 定価2,835円(税込)
日本図書館協会


──トップランナー「浦安」、20年の真実!

浦安市立図書館がスタートして20年を記念して、その歩みを利用者、職員、市長など、さまざまな関係者への綿密なインタビューと取材で構成しました。ご存知『図書館をしゃぶりつくせ』のライターが放つ渾身の力作です。


2004年12月24日発売!


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 第1章 浦安図書館の司書はこんな仕事をしてきた
   ……浦安図書館の歩んだ道と仕事を、丹念な取材で構成。

 第2章 浦安図書館の実績・課題・展望をこの10人が語る
   ……竹内紀吉、小宮朗、押樋良樹、寺田芳朗、松島義一、常世田良、津野海太郎ほか。

 第3章 浦安図書館の秘密をデータで明かそう
   ……さまざまな統計データと利用者の声、年表を収録。


本文第1章の冒頭を紹介します……


品質を維持し続ける「秘密」と「理由」

初めて入館したとき
 図書館をよく利用する人──自分の家の近くの図書館に二週間に一度くらいは返却と貸出しに出かけていて(たいていの公共図書館は貸出期間が二週間だ)、出張や旅行に出かけたときに時間があれば、図書館か博物館、美術館でも行ってみようかと思う人──つまり、公共図書館についてある程度の知識を持っている人なら、浦安市立中央図書館の透明なガラスのドアを開けて中に入ると「あれ、ここの図書館は何だか違うぞ」と思うはずだ。
 柔らかい外光を取り入れる広いガラス窓、視線を遮らない低い書棚、各所に用意された座って読書するための椅子、全体に木の持つ暖かい雰囲気が強調されたインテリア──そうした建築的な特徴は、浦安中央図書館ができた二〇年前には珍しかったが、今ではたいていの新設の公共図書館には当たり前なものになっている。
 しかし、ここで「何か違う」と感じるのは図書館の造りではない。一番のポイントは書棚の本が誰も手を触れていないようにきれいに揃っていることだ。「揃っている」といっても同じサイズの本がきれいに並んでいるわけではない。図書館の書棚だから文庫本を揃えた棚を除けば本の高さはさまざまだ。しかしそうした不揃いの本がすっきりと並べられている。
 たいていの公共図書館でも、開館と同時に飛び込めばこの中央図書館と同じ整然とした書棚を眺めることができるだろう。しかし、書棚の本は利用者が取り出しては戻していくから時間が経つにつれて書棚は次第に乱れてくる。
 ところが中央館の場合は、午後でも閉館間際でも整然とした感じは変わらない。なぜだろうと疑問に思ってしばらく館員の動きを観察していると、時折、動き回って書棚の本を直しているのに気づいた。聞いてみるとこれは別に業務として指示があるのではなく、どの館員も自然にそうした動きをしているらしい。
 これが、浦安図書館が二〇年前に画期的な公共図書館としてオープンし、貸出冊数日本一を達成し、日本で一番の公共図書館という評判を獲得し、それを二〇年間維持し続けた「秘密」と「理由」のひとつだ。
 本書ではそうした「秘密」と「理由」のいくつかを明らかにしていきたい。
(「第1章 浦安図書館の司書はこんな仕事をしてきた」より)


最後の章(あとがき)の冒頭を紹介します……


市民の知的交流の場へ
 本書は二〇〇三年に開館二〇周年を迎えた浦安図書館について内側から徹底的に取材し、多くの「支える人びと」の声を集めた記録である。
 浦安図書館は比較的小規模な都市の公共図書館として誕生したが、行政と利用者の、つまりサービスの供給側と需要側の相互作用の力によって二〇年間で日本を代表する大規模で高品質な公共図書館に成長した。その利用率の高さ、司書の質と量、改善を繰り返すマネジメントの熱意など、これを凌駕する公共図書館にはなかなかお目にかかれない。
 本書によって今日の浦安図書館を支える人びとの問題意識、ビジョン、課題など、あらゆる論点が明らかになったと思う。日本のすべての公共図書館、そして利用者の参考になるに違いない。利用者、司書、元館長、前館長、現館長、そして市長に至るまで、浦安図書館のステークホルダー(利害関係者)全員が率直に実情と課題を語ってくれたことに、まず敬意を表したい。
(「最後の章 この本を支えた人びと」より)



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