ポートランド日記                                     スズキメディア

11月24日(水)──116日目

Sake One の醸造所。壁面は、江戸時代の日本の酒造りのイラストで飾られている。
 9時半に車で出発。今日は、ウィラメットバレーのワイナリー(ワイン醸造所、味見をして購入ができる。市価より安い)に行き、そのあと、セーラムに寄って帰る予定。
 PCCのカンバセーションパートナー(会話友だち)のアンディさんが、先週ワイナリーガイドのパンフレットを持ってきてくれた。アンディさんによると、一軒だけ日本酒の醸造所があるという、面白そうなので、そこへ行ってみて、もう一軒、ワイナリーに行ってみることにした。車で行くから、たくさん行ってたくさん飲んだら運転できなくなってしまう。
 ウィラメットバレーはポートランドの西の方にある。車でおよそ一時間弱。「Sake One(サケワン)」という日本酒の醸造所はすぐに見つかった。10時半に着いたが、11時からというので、少し戻って、ちょうどあったサブウェイで朝食にした。サブウェイは日本にあるのと、店内のインテリアが同じなので、日本に戻ったような不思議な感じがする。

 「Sake One(サケワン)」は青森の桃山酒造がやっている醸造所だ。11時に行ってみると、醸造所の隅のテーブルで、お酒の試飲と販売をやっていた。テーブルのアメリカ人の女性に話を聞いてみると、純米大吟醸、濁り酒など各種あるという。
お店の人に話を聞いて試飲する。手前は普通のお酒、奥は果物味のお酒。 まず、大吟醸を試飲してみた。まずくはないが、やはり日本のにはかなわない。そこそこという感じだ。次に飲んだ濁り酒の純米大吟醸は、それなりにおいしかった。試飲のお酒は、その都度冷えたのを冷蔵庫から出してきて、いでくれる。
 面白いのは、ラズベリー、ヘイゼルナッツ、ユズなどの味を付けた日本酒があること。日本なら眉をひそめる人が多いだろうが、アメリカなら受けるかもしれない。試しにラズベリーを飲んでみたが、決して場違いなものではなく、レストランの食前酒ならかなりいけると思った。甘めのお酒が好きな女性にもよさそうだ。

 もうひとりの、男性に「果物の味の日本酒を飲むのは初めてだけど、なかなかおいしい」と英語で話しかけようとしたら、逆に日本語で話しかけられた。かなり流暢な日本語だ。おそらく、青森の桃山酒造にいて仕事をしていたことがあるのだろう。
 その男性と日本語で少し話をしたが、果物味の日本酒は全体の25%くらい出ているそうだ。おそらく日本なら、それほど受け入れられないだろう。その男性は、「ウォッカは、いろんな味を付けた物を出したりしています。日本酒もそうしたことをするべきです。でも、もちろん、普通の純米大吟醸が一番おいしいのですが」というような話をした。
 帰りに、ラズベリーの日本酒と、濁り酒の純米大吟醸を買った。

 しばらく行って、次は、「Beaux Freres(ボーフレール)」というワイナリーに行く。途中の道には牧場や農家が点在している。のんびりした眺めだ。アメリカのイメージとしてよくある、ひらすら広くて平らで、どこまでも同じ畑が続いているというのではなく、遠くには山が見え、大地も起伏に富んでいて、道も適度にカーブしている。
 どちらかというと北海道の景色に近いかもしれない。こういう風景は心が和む。どんな人たちがここには暮らしているのだろう。北海道ならだいたい想像はつくけれど、ポートランドでは全くわからない。

 「Beaux Freres(ボーフレール)」は、カリフォルニアのオンラインワインショップ「wine.com(ワインコム)」で、今月のおすすめとして紹介されていたワイナリーだ。
 今、インターネットの英語サイトを活用するための本を書いている。インターネットが始まった頃は、日本語の面白いサイトは少なくて、誰も英語に苦労しながら、英語のサイトにアクセスしたものだった。
 時代は変わって、日本語のサイトでたいていの用が足りるようになってきた。アメリカの通販サイトでも、日本人のために日本語のサイトを提供している。最近では(特に英語のあまり得意でない人は)、英語のサイトは敬遠して、日本語のサイトだけアクセスしていることが多い。
 しかし、英語のサイトにもアクセスしないと、インターネットの本当の面白さはわからない。そういう趣旨で、英語が苦手な人でも英語サイトにアクセスできるような解説書を書いている。その中で、「wine.com(ワインコム)」を紹介しているが、この間アクセスしてみたら、「Beaux Freres(ボーフレール)」が載っていた。読んでみると、オレゴン州のワイナリーだという。ポートランドからも近いので、今日はそこに行ってみることにした。

 「Beaux Freres(ボーフレール)」は、ほんの小さなワイナリーだった。ワイナリーと言えば、アメリカで何度か行ったことがあるだけだが、どれも観光目的のところだから、それなりの大きさがあって、「企業」という感じだった。しかし、ここは、コンクリートの床の大きな建物の中にテーブルが置かれていて、ワインが並べられているだけ。個人経営という感じのワイナリーだ。
 入り口でワイングラスを買って、それでテイスティング(味見)をするようになっている。小さいのが10ドル、大きいのが20ドル。ワイングラスは持って帰ることができる。10ドルないし20ドルはワイングラス代というわけで、お金を払わないと、テイスティングはできない仕組みになっている。

ワイナリーで試飲中 ここのワインは、ピノノワール(というブドウの品種)のみで、赤ワインだ。ポートランドでは、このピノノワールと白ワインのピノグリが有名。
 二種類飲んでみたが、すっきりしておいしかった。脇には、パンとチーズも用意されている。六種類ほどのワイン(同じピノノワールでも産地が違う。ワインは原料のブドウの植えられている土壌や日当たりで、味が変わってくる)だが、半分は、今日は注文だけで、一か月後くらいに届けてもらうことになる。
 日本まで、届けてもらうのは無理なので、今日は、その場に今ある二種類のワインを買って帰った。日本に帰って飲むのが楽しみだ。

 田舎道を南下して、マクミンビルへ。思ったより大きな街だ。こっちで買ったガイドブックに安くておいしいという店が五軒ほど載っていたが、車を駐車したところから遠そうなので、ちょうどあったピザ店で昼食にした。
 ピザはそれほどまずくなかったが、温めてくれなかったので、熱々というわけにいかず、ちょっとマイナス。でも、地元の人がどんどん入ってくるから、人気のある店のようだ。大人数で、一枚頼むと、その場で作って焼いてくれて熱々が来る。そっちを食べたかった。

 昼食のあと、さっき見かけたショーウィンドウにサンタクロースがたくさん飾ってある小物の店を覗いた。かなり広くて、店を入ったすぐのところで、女性歌手が生ギターで歌を歌っていたりして、面白い店だ。扱っている商品も今まで見たことのないものが多い。中二階はレストランになっていて、クラムチャウダーなんかの、メニューがあるようだ。「ここで食べれば良かったね」とCと話した。
 マクミンビルは、他にもいろんな店がありそうだし、レストランもいくつかあるので、機会があればまた来てみたい。

 帰りがけに、セーラムによる。州都で、州議会場の建物が古くて、見学もできるようだが、大分遅くなったので、ちょうとあった、ノードストロームとその隣りのショッピングモールをちらっと見るだけにした。高速道路(I−5)で一時間くらいで寮に戻る。


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