読者の方からの声です。


 大西巨人著『深淵』上下巻の刊行を機に募集した読者の方からの声を掲載します。お答えくださった方、ありがとうございました。読者の方からの意見の募集はこれからも続けますので、機会があればまたお送りください。
 →次のページからどうぞ。


──1月20日/コイザ
【意見・質問・感想】
 大西巨人氏には、雑誌掲載のまま単行本化されてない作品、あるいは単行本の形にしずらい対談、鼎談などを公開していただけると有り難いです。
 また大西赤人氏には、個人的には、ぜひ自叙伝を書いていただきたいです。
 お二人の新作を楽しみにしております。

【インターネット連載の印象】
 やはり、紙に印刷され製本されていないと読みづらいです。
 ずらっと目を通すにはむいていますが、じっくり読むにはいわゆる本の形のほうが優れていると思いました。
 未購入ですが、読み返すために購入予定です。

【好きな作家、よく読む作家】
 V.S.ナイポール(初期作品)、トーマス・マン、E.サイード、里見

【最近読んで面白かった本】
 矢代梓『啓蒙のアイロニー』未来社、田中康夫『一炊の夢』扶桑社、
 堀川弘道『評伝黒沢明』ちくま文庫、福田和也『奇妙な廃墟』ちくま文芸文庫、
 すが秀美『革命的な、あまりに革命的な』作品社、矢作俊彦『あ・じゃぱん』角川書店、
 Eric Hobsbaum "The Age of Extreme."Vintage、
 E.Said "Power, Politics and Culture."Vintage

【大西巨人の既読作品】
 刊行されているものは、ほぼすべて。

──1月27日/三木駿助
【意見・質問・感想】
 大西さんの作品は、『神聖喜劇』をはじめとして、ほとんどの作品を、随筆も含めて、読んでいます。どれを読んでも、頭の中がすっきりと整理整頓されるような気がします。新しい本が出版されるのを、いつも待っています。もちろん『深淵』購入します。

【インターネット連載の印象】
 やはり活字でしょう。

【大西巨人の既読作品】
 『神聖喜劇』他

──2月3日/藤井凖二
【意見・質問・感想】
 次作を心待ちにしております。

【インターネット連載の印象】
 (毎週の掲載分を)首を長くして待っておりました。また、無料で(深淵インターネット版を)読むことになんとも心持ちが悪く感ぜられていましたが、この度の(深淵、上下巻の)購入で胸の閊えがとれました。

【好きな作家、よく読む作家】
 大西巨人

【最近読んで面白かった本】
 「神聖喜劇」(何回目か不明)何度読んでも新発見があります。

【大西巨人の既読作品】
 ほとんどすべて

──2月4日/吉田秀徳
【意見・質問・感想】
 まだ未読の為、感想は書けません。

【インターネット連載の印象】
 当初は意外に感じたが、よい試みであると感じた。

【好きな作家、よく読む作家】
 大西巨人、石川淳、澁澤龍彦、平野啓一郎、町田康、ナボコフ、ユルスナール
泉鏡花、

【最近読んで面白かった本】
 ユルスナール「ハドリアヌス帝の回想」

【大西巨人の既読作品】
 神聖喜劇、精神の氷点、

──2月7日/関 稔
【意見・質問・感想】
 『神聖喜劇』に衝撃を受けて以来の(といっても十数年来の、ですが)大西巨人愛読者です。小説が同時に倫理的探求の書でもあるところに魅力を感じてきました。同時に、筆者その人の過去のエッセイの引用や古今東西の文学からの引用も楽しんできました。今回も同様です。
 筆者の厳密な思考と、登場人物を通じて表明される「恃衆の否定」に、共感するとともに、勇気づけられます。
 「老いてますますさかん」なるクリエイティブ・パワーに驚嘆します。次の作品を待ち望みます。
 いつか多少なりともちゃんとした大西巨人論(またその作品論)を書きたく思いますが、今回は感銘を受けたことのみ報告します。

【インターネット連載の印象】
 新しい試みとしておもしろいと思いますし、更新されるのが待ち遠しく思いましたが、やはりある程度まとめて、一気に読みたく思いました。

【好きな作家、よく読む作家】
 加藤周一 松本清張

【最近読んで面白かった本】
 『現代の貧困』『普遍の再生』(ともに井上達夫) 『イスラーム誤認』(板垣雄三)

【大西巨人の既読作品】
 『天路の奈落』『地獄変奏奏鳴曲』『三位一体の神話』『迷宮』『精神の氷点』その他『大西巨人文選』所収のエッセイ、『春秋の花』など。

──2月8日/盛 嘉之
【意見・質問・感想】
 私の読解力では、十分に読みこなせていないところもありますので、たぶん作者の意図がよくわかっててないための感想と思いますが…。
 主人公は、どのようになるのかという興味がありました。二人の女性とどのように決着をつけるのか、どちらの女性を選ぶのか、などという興味を持って読んでいましたが、三度目の失踪で終わるとは思いませんでした。なんとなく拍子抜けしたような気がします。でも、この感想は私が作品をきちんと読んでいないせいだろうと考えています。
 こんな感想を記入するのは気恥ずかしいのですが、とりあえず、今読んだ感想です。

【インターネット連載の印象】
 こういうインターネットの連載が他にもあるのかどうか知らないのですが、最初は本になった時、買う人がいるのかなと思いました。しかし、本当に読みたい人はインターネットで読んだ後、本でも買うだろうなと思いました。

【好きな作家、よく読む作家】
 山本周五郎 司馬遼太郎 宮本輝

【最近読んで面白かった本】
 山本周五郎「裏の木戸は開いている」

【大西巨人の既読作品】
 「神聖喜劇」「二十一世紀前夜祭」「精神の氷点」「運命の賭け」「大西巨人文選4巻」

──2月14日/堀田幸三
【意見・質問・感想】
 動画で大西氏の肉声が聞けるのは、まったく喜ばしいことです。インターネットの利点の最たるものと思います。映画の話、楽しみにしています。

【インターネット連載の印象】
 読みかけたが続かず、本になってから読もうと思いました。
 ドイツ語名の喫茶店の名前が、一度目と二度目で食い違っている箇所があったような(もちろんはじまりのほう)気がしますがどうだったでしょうか。

【好きな作家、よく読む作家】
 井伏鱒二、大岡昇平、安岡章太郎、島尾敏雄、山口瞳、河野多恵子など。
 最近の人では保坂和志。

【最近読んで面白かった本】
 「『おじさん』的思考」、「ためらいの倫理学」など一連の内田樹の本

【大西巨人の既読作品】
「神聖喜劇」、「三位一体の神話」、「二十一世紀前夜祭」、「精神の氷点」など。

──2月18日/田中 洌
【意見・質問・感想】
 これはなんだ?
 やたら大袈裟な措辞によって、衒学趣味の同義反復によって、拾い集めたこけおどしの引用によって一見人目を引く装いを凝らし、麗々しい羊頭を掲げるだけは掲げたが、売るべき狗肉はさっぱり見当たらない。
 生存の根源的問題だって?
 虚空の彼方の城だって?
 生存の、現に今あるがままの問題はどこに消えたのか。
 まるで、事実の集積に微妙な嘘を事実のように紛れ込ませて記述された犯罪調書を読まされているみたいだ。真実は最初から想定されているが、真実味はどこにもない。ただし、ここでは嘘のかわりに使い古された観念が、真実のかわりに濡れ衣の謎解きが提起される。
なぜそんなことに?
 おおかた、作者は何か書かなくてはならなかったので権力を向こうにまわして観念のゲームを組み立てることにしたのだ。
 その結果が権力を忌み嫌うものたちの、牧歌と真摯、正しさのもっともなコンミューンだ。
 誠意と学識の披瀝、伸びきったゴム紐のごとき知的パズルだ。
 記憶喪失との熾烈な戦いが権力の暴虐を見事に駆逐した、というわけか。
 かててくわえて闇が薄らぐはるかな未来を予感させるとでも?
 それが「面白くもあり値打ちもある作品」というわけか。
 そこにはくりごとを語るしか行動様式をもたない僕たちの悲哀の表現すらない。
 思考停止を蒙った僕たちの絶滅の表現すらない。あるのは、回れ右をした人間の叱責と趣向、正しさをまとった鎧のごとき空白の、どこか嫌味が漂う床の間のアリバイ調書だ。

──3月16日/笠原敦彦
【意見・質問・感想】
 「メールの内容は、大西巨人・大西赤人それぞれに転送」の記載を拝見し、畏怖により思考がまとまりません。赤人氏のメールマガジンを受信したく、とりあえず登録させていただきます。

【インターネット連載の印象】
 ネットで連載されていたということ、いま知りました
 そういうことを求める人もいるのでしょうから、よいことなのでしょう。
 わたしは頭が古いのか、紙が好きですので、本を買いますが。

【好きな作家、よく読む作家】
 敬称略にて失礼します
 大西巨人、花田清輝、坂口安吾、ジョージ・オーウェル

【最近読んで面白かった本】
 小説ではありませんが、言語学者である田中克彦氏の著作(『ことばと国家』等)を読み返しています。田中氏の言語観に対する東堂太郎氏の感想を想像して楽しんでいます。

【大西巨人の既読作品】
 本になったものは、すべて読んでいると思います。

──3月16日/伊藤英範
【意見・質問・感想】
 大西先生のいつもながらの正確かつ平易に書かれた文章は一読するだけでも勉強になりました。
 麻田布満がドイツ文学の専門家であったので、気分的にトーマス・ベルンハルトの小説『消去』を買いました。
 それこそ杉森社長兼主筆などより余程残学な自分としては、麻田布満の周囲に博学かつ篤実、道徳的でまっとうな人々が多い環境はいささか小説のリアリティーを損ねているような感想をもちました。実際の生活・仕事の上では多くの俗情に結託した人々・それに押し流されていることすら意識しない・できない人々があまりに多いゆえに・・・

【インターネット連載の印象】
 古いタイプかも知れませんが、決定稿を単行本で読めばよいと考えています。

【好きな作家、よく読む作家】
 大西巨人・大岡昇平・大江健三郎・梅崎春生・椎名麟三・後藤明生・古井由吉・江戸川乱歩・セリーヌ・フォークナー・ドストエフスキー・カフカ、等々
 『深淵』(下)の奥書きに『神聖喜劇』が戦後文学ベスト3アンケートで2位、1位は『死霊』とありましたが、『死霊』が1位とは意外でした、そのときの「群像」を見ていない自分はてっきり大岡昇平の作『堺港攘夷始末』なり『レイテ戦記』が1位だと思い込んでいました。

【最近読んで面白かった本】
 『深淵』、『大江健三郎往復書簡集』とそれに教えられて読んだアモス・オズやエドワード・サィードの諸作、『緑衣の鬼』、『杳子・妻隠』

【大西巨人の既読作品】
 『天路の奈落』以外、手に入れ損なってます。なんとか読みたいですね。

──3月18日/足立妙子
【意見・質問・感想】
 とても面白い小説でした。面白いというのは、個人的に文学の醍醐味,驚嘆、感動が深いものをいいます。丹念で、一点のごまかしもない論理、箇条書きでの分析、知識人たちの知性、俗情を徹底的に退けた、しかし、逆に、この小説は感情のあふれた、たとえば愛情や友情、または、優しさといった情の深く濃いものでもあり、かえって、物語の理解や納得とともに爽快でした。
 記憶喪失という障害に翻弄される主人公や周囲の人々。けれど、決して自己の生き方を、それによって揺るがせずに、生き方や知性で克服し回復していこうとする姿勢に感動します。それぞれの人々の懸命さを美しく思いました。
 最後の再発という事態は衝撃でした。しかし、作者は問題に対して、渾身の力で、彼の苦悩を解決し決着を見せて頂きたかったとも思います。もちろん、読者もまた、考察や探求を求められます。どうすべきなのか、どれだけの知識や感情を集めても決着などないのかも知れません。
 チェーホフの主人公もまた同様ですが、この主人公たちの生きることの困難に向き合って、もう一度自己の生き方や精神の核といったものを、あらたに認識したいと思います。その意味でも素晴らしい文学でした。そして、新鮮な、新しい文学の誕生でした。ありがとうございました。今後にも期待をいたします。どうか、ご壮健であられますよう、ご自愛下さいますように。

【インターネット連載の印象】
 無料で読めるのはありがたいことですが、ちぎれてしまいますので、私はやはりまとめ読みをしたいと思います。

【好きな作家、よく読む作家】
 古井由吉 ドストエフスキー などなど。

【最近読んで面白かった本】
 最近は文学書よりも論説的、エッセイ類が多く、今福龍太、港千尋、辺見庸、サィードなどです。

【大西巨人の既読作品】
 「神聖喜劇」「精神の氷点」「俗情との結託」

──4月1日/沼田欣二
【意見・質問・感想】
 「映画四方山話」が、3回で終わるのかと、心配していましたが、まだ続くことがわかり安心しました。
 この企画は、とても楽しく聞いております。

──4月4日/久冨廣二
【意見・質問・感想】
 年来の大西巨人ファンの一人です。学生時代に私の周辺でよく読まれていた「戦争と性と革命」に接し従来からの文芸評論との隔絶に驚き感嘆して以来、ほとんどの公刊物を読んできました。今回も、ネット上での連載は承知していましたが、連載物は日々の仕事に追われているせいか、少々苦手なもので公刊を待って拝読しました。
 ミステリー仕立てとはいえ、中身は、基本的に一種の思想小説・哲学小説で、大西氏の生きざまとそれに裏打ちされた現代社会への痛烈な警鐘・メッセージが随所にちりばめられた力作でした。ただいつもながら、私などのような浅学の者には、漢語・引用の多用や括弧書きの多さは、少々わかりにくい、私より若い読者にはなおさらなどとの感想をもちました。また、連載のせいか下巻前半部当たりでやや間延びした感も抱きました。大西氏の制作意図などは「社会評論」誌インタビューを本書読了後読むことでさらに納得したりもしました。
 私は大西氏と同じ北九州の出身で作品を読むたびに鏡山県は福岡県などとことさらあて推量したり、方言「おらぶ」に苦笑したりと、邪道の読み方も楽しんだりしています。今後は「晩期前半」の仕事になる新作や中野重治論集の公刊を大いに期待しています。ご自愛ください。

【好きな作家、よく読む作家】
 宮部みゆき 高村薫 中野重治

【最近読んで面白かった本】
 「拉致異論」 「敗北を抱きしめて」

【大西巨人の既読作品】
 公刊されたものはほとんど。

──6月20日/菅井 良
【意見・質問・感想】
 菅井と申します。
 1980年代に大西さんの本を熱心に読んでいましたが、その後ブランクがありまして、インターネットで赤人さんのサイトに大西巨人氏のサイトがあって、「深淵」が連載中なのを発見して、「二十一世紀前夜祭」からゆっくり読み始めました。
 ボクが知った時には、もうすでに掲示板は閉じていて、その膨大な過去ログを読んだ時には残念な気持ちになりました。なかなかいそがしくて書けなかったのですが、これが掲示板に準ずるものになるとのことで、うれしく思っています

【インターネット連載の印象】
 新作の長編連載小説としては、「深淵」が最初のサイト上での読書でしたので、わくわくしました。縦書きのブラウザーで読むか、外出時には、PHS上から読んでました。本の時と違って、自分がどのあたりを読んでいるか感覚的に把握しにくい(真ん中辺か、終わり近くか)ので、もうラストなのか、と思いました。
 後から本でも読ませてもらいましたが、ホームページで読むのになれていないためや,二度目の読みだからということもあるでしょうが、本で読んだ時のほうが全体がつかみやすいように思いました。
 大西巨人氏が「深淵」などの作品をインターネット上で公開し、誰の手にも入るようにされたことはとてもありがたい。インターネットという技術の本性にそったことと思います。

【好きな作家、よく読む作家】
 大西巨人 岡野弘彦 村上春樹 酒見賢一 大塚英志 上遠野浩平 北野勇作 時雨沢恵一

【最近読んで面白かった本】
 松岡正剛 「おもかげの国 うつろいの国」 NHK人間講座テキスト 2004/6〜7月

【大西巨人の既読作品】
 神聖喜劇(文春文庫版)、日本掌編小説秀作選、大西巨人文藝論叢(上巻)俗情との結託、(下巻)観念的発想の陥穽、天路の奈落、巨人の未来風考察、地獄変相奏鳴曲、二十一世紀前夜祭、迷宮

──9月25日/大井幸次郎
【インターネット連載の印象】
 読みやすい適度な区切りの無いことと横書きであることとにより、非常に読み辛い感じが残る。
 縦書きで、実際に本を開いたような形式にすべきだと思う。

【好きな作家、よく読む作家】
 中島敦/五味川純平/大岡昇平/藤沢周平/城山三郎

【最近読んで面白かった本】
 「天声人語」の天皇と戦争/山崎豊子問題小説の研究/追及・北海道警察「裏金」疑惑

──10月2日/大竹徹之
【意見・質問・感想】
 わたしにとって、巨人(以下敬称略)を読むことは、ほとんど生きがいといっていい。「生きがい」などという、自分にこなれない言葉を使ったことは生涯で一度もなかったけれども、あらたまってこうして「恋文(?)」のようなメールをかきはじめるとき、こう書くほかはない。わたしは無知無学のため、作中引用の古典をあらかた解し得ないけれども、匂ってくる芳香のみは金木犀のように明らかに強いということだけは闇のなかでも解る。
 「深淵」において麻田布満は、自ら自由になし得ない「記憶」の喪失と回復によって、二人の愛する人、その双方に対して背信のゆるされない絶体絶命の中へ、呑み込まれていく。この主人公は「オイディプス王」を思わせる。スフィンクスの謎をも解いてしまう聡明にして勇敢な王、すべてを父、母、民人、他者のためによかれと思ってなしてきた誠実無比の男、その彼が追及した「真実」は自己をついに後戻りできないところまで追い詰めることにほかならなかった。それらのすべての努力が、運命の神のはからいをなぞるものであり、神によってしかけられた、おそるべき悲劇を準備するものであった。

【インターネット連載の印象】
 インターネットで小説を読むのは初めてでした。なにしろわたしは、巨人を読めるならなにがなんでも厭わないものですから。それでも本を買って読まないことには落ち着かないというのはなぜなのか。わかりません。敬愛する人の謦咳に接するというような感触をインターネットでは得られてありがたいのにかかわらずです。しかしそれは自ずから書物の不思議さとは別の興趣、生き生きした作者の息吹きを伝えてくるもので、大歓迎です。

【好きな作家、よく読む作家】
 夏目漱石・石川淳・中野重治・中勘助・車谷長吉

【最近読んで面白かった本】
 柄谷行人「日本精神分析」吉本隆明「最後の親鸞」落合東朗「石原吉郎のシベリア」

【大西巨人の既読作品】
 精神の氷点・神聖悲劇・迷宮・三位一体の神話・春秋の花・大西巨人文選

 大西赤人のサイトへのご意見・ご希望も紹介します。


──1月21日/沼田欣二
【意見・質問・感想】
赤人様
 (ヤンキースの昨期のニューヨークでの最終試合? での)クレメンスの、監督ぶりを見ましたか?
 とても格好良かったです。そのことに触れて欲しかったです。
 日本的感覚では(日本のスポーツシーンでは)決してお目にかかれない、楽しい場面でしたので。
 トーリ監督は一言も口を出さないし、ウェルズ投手の200勝? が懸かっているにもかかわらず、クレメンスは何の遠慮もなく堂々と8回途中で交代させたシーンなど、ファンも嬉しがってて、ぼくも楽しかった試合でした。
 “アメリカ(人)の良さ”を、久しぶりに感じた(思い出した)時でした。

──4月16日/田中 洌
イラク・アメリカ・日本

 三人の邦人が解放されるのは当然だけれども、ぼくは、イラクの民衆が蜂起したことに遠い国から熱い支持を送りたい。
 モスクを爆破するという禁を犯した占領軍に情念と怒りをむきだし、抵抗がのろしのように燃えあがる。民主主義の配給も、ドルと円の大量解熱剤も、今や風前の灯火だ。今さら撤退もためらわれ、皆殺しの核投下も不可能だし、次々に惹起してはもぐり込む武装窮民がおのずと疲弊するまで待つしかない。時の解決にゆだねるというもっともコストのかかるやりで、さらなる国債、さらなる物品税、さらなる武器弾薬兵士の増強で、基幹軍需産業の担い手たちを小躍りさせた後、ぼくたちやあなた方の喉からそっと手を突っ込み、胃袋を引っ張り出す。
 いったい、だれが、何のために?
 どういう理由で?
 いわずと知れたことだ。
 あまたいる逃げ切り根性のろくでなしどもが、その雇い主に見放されることを死ぬほど恐れるあまり、だ。
 用心するがいい。
 対岸の火事がやがてぼくたちの心の内奥に飛び火するとき、歴史は、さらなる憤怒と矜持の根深さを、まざまざと、見せつけられるだろう。
 十三万の米軍兵士は、砂漠を砂漠のなすがままにゆだね、がれきを片づけて直ちにお家へ帰られたい。
 片づけるのはがれきだけではない。
 願わくば、無差別にばらまかれたおびただしい放射性廃棄物を、詭弁の残骸を、偽造された嘘の正義を、脅迫めいたおためごかしを、すべてかき集め、空母を連ねてお国に持ち帰り、自国の産業廃棄物処理工場で処分されたい。
 ぼくも、ジェイムス・エルロイやヘミングウェイを生んだあなた方の大陸を愛しているもののひとりだ。
 ロッキー山脈やコロラド渓谷の壮絶な美しさのなかから生まれてきたあなた方の、生命に関する凶暴きわまりない賛辞を、すさまじい暴力と苦悩の露呈を、多数の民族が混在してはぐくんだ、底抜けの明るさと労働に対する鬼気迫る執着を、こころから愛しているもののひとりだ。
 もし、立場がちがって、あなた方が他国に蹂躙されるときがあれば、あなた方だとて、きっと、押しつけられたむごたらしい沈黙を破り、あちこちで、凶暴に蜂起するだろう。
 ぼくたちだとて同じだ。
 ぼくたちだとて、政治権力以上の何者か、なのだ。
 だから、この戦争にもあの戦争にも否を突きつけ、この生命にもあの生命にも、生きとし生けるものすべてに対して、ひとしなみに、こころからなる賛辞を送らないか。

田中 洌、個人メッセージ。乱文深謝。

──4月21日/匿名希望
拝啓

 いつもメール・マガジンを拝読しております。

 本日付の例の人質事件とその後の日本の状況に関するコラムは貴重な意見だと思いました。
 前回のメルマガにあった讀賣を始め、週刊新潮、週刊文春などはほとんど「2ちゃんねる」と同レベル、何かと言えば、奴らのせいで株価が下がったの身代金は何億かかったのと金の話しかしません。ジャーナリズムを自ら放棄しているのではないかとさえ思えます。行動しない者が行動した者を嘲ってそれでジャーナルといえるのだろうか、自らはアルジャジーラや他者からの伝聞、官の公式発表のみを伝えて報道だというつもりなのだろうかと首をかしげます。

 論理学に対偶というのがありますが(これは今読んでいる橋本治氏の著作の影響かもしれません)、仮に高遠氏が解放直後のインタビューで「嫌なことをされて、イラク人が好きだったが大嫌いになった。二度とこんな国になんかくるものか」と叫んでいたとしたら、その後のイラク情勢、イラク人の(好意的とされる)対日本人感情にどう影響を及ぼしたかを想像してみれば、彼女の咄嗟の発言はどこか冷笑的な小泉首相や福田官房長官、死者に鞭打つがごとき(彼らは死んではいませんが)中川大臣の発言などより、よほど「国際貢献」であることは間違いないところです。「苦言」を呈する小泉首相の口ぶりは、市役所の窓口で「こういうのめんどくさいんだよねぇ」と嘯く職務怠慢の公務員のそれでしかありません。自国民の保護という国民国家の基本ともいえることをこれだけ嫌がるのですから。何にせよ、海外で、否、今後国内テロでもこの手の事件が起こったときに、国は、かつての太平洋戦争時の満州の残留孤児のごとく、いまだに被爆者認定を認めない広島・長崎の多くの非認定被爆者のごとく、公害裁判やHMV訴訟、ハンセン病患者のごとく平気で「棄民」するものだということが冷静に、自分の身の上におこったと想像すればわかることでしょう。しかし、一般的にはこれで小泉氏の評価が上がり、「小泉ガンバレ」的声の方が大きいというのが現状のようです。

 どうも、今回の論調の背景には「お墨付き」をもらった自衛隊(あるいは先に犠牲になった外交官の方々)と官製のお許しや大マスコミの後ろ盾のないものとをことさらに区別し、誰がどこに行くか、そして同じ人質となっても誰を助け、誰を持ち上げ、誰を貶めるのかは、官やお上が決めるものだという発想や流れがあるように思えてなりません。

 これは、たとえば、戦死者をお上への貢献度で祀る靖国の発想でもあるでしょうし、あるいは、すべては神御一人の大御心という戦前の日本、サダムのためには命も辞さないというサダムフセイン独裁体制のイラクと根本においては変わらない。つまり、主権在民の民主主義国家などではないという気がしてなりません。難しいことはお上が決めて下さるという、自己判断を放棄して考えないことの安楽さに身を委ねているような。

他方、私的な感情においては、主体である「われ」と客体である「われ」とが埋まりようもなく隔てられている、そういった意味ですぐれて近代的な心性がひとり歩きしている気もしています。

 いずれにせよ、この公私の前近代と近代との宙吊り状況の中のイライラは、何かのきっかけで一気に扇動され、「次の獲物」にむかって「奴らを高く吊るせ」と手薬煉ひいているというような不気味さと鬱陶しさを感じています。

 彼ら元人質たちは、はたして日本に帰国したことが幸福だったのか、ひょっとしたらイラクの拘束犯人よりも、お茶の間で茶飲み話ついでに一民間人にすぎない彼らを人騒がせな迷惑野郎(自分にどんな「迷惑」が掛かったかなどとは考えもせず)と罵る、多数派の快楽に身を任す日本人の方がよほど恐いんじゃなかろうか、と思わざるをえません。

 乱文ご容赦。今後もご活躍を祈念いたします。

                               敬具

──4月24日/匿名希望
 はじめまして。
 ときどきこちらに伺っていろいろと拝読させていただいております。

 今日こちらに書き込みさせていただきましたのはイラク人質事件についてのコラムを読ませていただき安心出来ましたので一言お礼を書かせていただこうと思ったためです。

 今回の事件でネット、政府、世論が非常におかしな風潮になっていて
掲示板などは自己責任という言葉や自作自演という訳の分からない匿名
の誹謗中傷の場となっていました。
 私は納得がいかずどうにもやりきれない思いでおりましたが。
本日こちらのコラムで胸のすくご意見を読ませていただきまして
ああ、良識は生きているなぁ。と安心できました。
 どうもどこからか情報が操作されているような?  というか世論が動かされているような? いやな気配がしておりますね。
 うちの家内も最近の世論は子供の意見だよ、といっておりますが。
なにかを隠すために彼らがスケープゴートにされたのかもしれない
のではないかとも思えるほどですね。

 日々おかしな報道を見ております。
 なんとかこちらのコラムのようなまともな意見が世間の常識と
なって欲しいものです。
 ありがとうございました、本当にほっとできました。

──9月23日/中村浩志
 「高見盛が嫌い」で検索して大西さんのページにたどり着きました!
 高見盛と朝青龍に関してはまったく同感です。
 ああいうボンクラ・でくのぼう礼賛のような日本人の百姓的精神構造はほんとに馬鹿馬鹿しく思います。
 弱い者に同情する余り強いものを逆恨みする不健全な精神のありかただと思う。
 これからもおもしろい記事を楽しみにしています。


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