今週のコラム                                 大西赤人/小説と評論

見ないフリをするか。許容範囲を拡げてしまうか。
――5月・6月のツイッターまとめ(上)

大西 赤人
 


“人の噂も七十五日”という使い古された言い回しもあるけれど、既に東日本大震災及び福島第一原発事故発生から百日以上。特に原発に関しては、どこまで収束への工程が消化されているものなのか曖昧なまま、少なくとも表面的には、大きな話題にさえならなくなってきた。しかし、環境に放出された放射性物質は間違いなく莫大であり、派生的な現象としては、餌の稲わらを食べた牛の肉からセシウムが検出され、出荷停止だ、全頭検査だと混乱を呼んでいる。牛も生き物である以上、肉に放射性物質が蓄積されるのであれば牛乳に出てくるのは当たり前。新潟県が行なっている独自調査(牛乳・乳製品については、週に5検体を抜き打ち検査)において、79日、店頭の紙パック入り製品から13.5ベクレル/kgの放射性セシウムが検出と公表されている。ただし、この数値は、飲料水や牛乳に関する日本の暫定規制値200ベクレル/kgよりも遙かに低いので問題ないということになるわけだが、WHOの基準10ベクレル/kgに照らせば完全に上回る。

 数年来、狂牛病(BSE)対策として個体識別番号が付されてきたことが幸いし、牛肉の場合、一頭の枝肉が想像を超えた広範囲に流通しても追跡が可能だが、牛乳に関しては個々の特定は難しい。酪農家で生産された生乳は、地域の農協にあるクーラーステーションに集められ、保存される。ここで限定的に放射能検査が行なわれるものの、先の200ベクレル/kgを超えていなければ、大手製造メーカーに買われ、各社の製造工場で加工をされて製品となる。

 僕は、418日のツイッターに以下のように記した。 

福島県内の原乳調査。「対象を近隣市町村から原乳を集めるクーラー・ステーション(CS)や、乳製品を作る乳業工場とし」「県内10の乳業メーカーなどが、他の市町村産と混ぜた後の原乳で測定」「【3週連続で暫定基準値以下、政府は】出荷停止を、新たに(略)25市町村で解除した」(産経)⇒

国の事故直後の独自検査で1町のみが上回り、「『消費者が摂取する乳製品と近い状態で安全性を調べるため』【厚労省食品安全部安全監視課】」「県としては『他の原乳が安全であることを示すには、全市町村の生産者を対象にするべきだと判断した』(幹部)」というが、混ぜてしまえば薄まりもしよう。

 要するに、個別に計測したら容易に引っかかってしまいかねないので、大量に集めた原乳――事実上、放射性物質が存在しているとしても薄められたもの――の段階でチェックしようという相当に姑息な方向性だった。それから約三ヵ月、製造過程を経由した製品からセシウムが検出されているのだから、事態の着実な進行(悪化)は否みがたい。

「農林水産省は26日、牛の排せつ物や落ち葉を原料にして、関東や東北地方の17都県で作られた堆肥や腐葉土などの肥料について、利用自粛を全都道府県に通知したと発表した。
 稲わらから放射性セシウムが検出された問題を受け、排せつ物などにも同セシウムが含まれている恐れがあると判断した。同省は『汚染された排せつ物や落ち葉が土壌や農作物を汚染する可能性がある』として、使用可能な肥料の基準づくりを急ぐ」(26日付『読売オンライン』)

 戸外に置かれていた稲わら、自然のままの腐葉土が高度に汚染されているのだから、田畑自体の“土”は大丈夫なのか、そこで作られる農産物は大丈夫なのか、と疑問を抱くほうがフツーだろうし、その“土”には問題ないな どと予想するとしたらおめでた過ぎる。いや、だからこそ、あまりの現実の厳しさに眼を背けて見ないフリをするか。“これまでの基準は実は必要以上に厳正なものだったから、超えていても実は健康に影響はないのだ”という論理に縋《すが》り、安全と危険を隔てるそもそもの線引きを大きく緩和し、許容範囲を拡げてしまうか。もう日本は、そういう悲劇的な状況に避けがたくさらされている のだ。そして、当然ながら、稲わらや腐葉土や牛肉や牛乳よりも、本来考慮されるべきは人間のはずである。

「東京電力福島第一原発事故を受け福島県は二十四日、全県民健康調査の一環として、原発事故発生時ゼロ〜十八歳の子ども全員を対象に甲状腺超音波検査を二年ごとに実施、二十歳に達してからは五年ごとにチェックしていく仕組みを決めた。対象は約三十六万人に上る見通し。(略)
 同日、福島市で開かれた検討委員会で合意。座長の山下俊一福島県立医大副学長は『世界でも類を見ない甲状腺検査だ』と述べた。県は『生涯にわたって県民の健康を見守る』としている。(略)
 今年十月から開始。放射線による影響が表れるまでに時間がかかるとみられるため、二〇一四年三月までにいったん完了し、同四月からは二年ごとに検査。二十歳に達してからは五年ごとに健康診断を行う」(
25日付『東京新聞』)。

「全県民200万人を対象に調査記録を保存する手帳「健康管理ファイル(仮称)」も作る。(略)
 福島の甲状腺検査では、
10月から20143月までに超音波(エコー)検査で現時点でのがんの有無を調べる。それ以降は全員に2年に1度、エコー検査を受けてもらう。20歳以上は5年に1度にするが、生涯、無料で検診をする」(同前『アサヒ・コム』)。

 36万人の追跡調査……。将来、仮にも異常が発見されたら、事の深刻さは現在の比ではなくなる。山下氏は、5月に延期・実施された福島県立医大の入学式において「この大学で学ぶ君たちは、放射線について世界一の学識を身につけ、医療の現場で実践してほしい」(56日付『NHK』)と新入生を激励するスピーチをしたと伝えられているが(当時は長崎大学大学院教授。7月、同大を休職、福島医大副学長に出向・就任)、無礼を承知で言うならば、専門家諸氏にとって、これほど将来に向けて安定的な研究対象は滅多にないというものであろう。そして、福島県以外の人々は……?

  今回は、5月、6月二ヵ月分のツイッターをまとめた(二回に分戴。リンクの一部は便宜上削除しています)。

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8日に経産省は、今夏の使用電力削減目標として大口事業者25%、小口事業者20%、家庭15~20%を打ち出しながら、供給力の上積みが見込めることになったとして、28日、一律に昨夏のピーク時に較べ15%とする方針を発表した。どうしてせっかくの節電目標を緩和してしまうのだろう?⇒ 

厳しめの設定で試せばいいのに。猛暑が危惧されているが、ヒートアイランド現象は「ヒートアイランドが進めば進むほど、冷房需要が増加し、それが排熱の増加を招いてヒートアイランドをさらに促進するという悪循環も指摘されている」(ウィキペディア)とも言われ、実は節電で涼しくなる可能性もある。 

2
たとえ国際テロ組織の首謀者であったとしても一個人に過ぎないビン・ラディン「容疑者」への、民主主義を標榜する国の元首による(逮捕ではなく)計画的・意図的に殺害遂行との明言に対して、菅首相が「テロ対策の顕著な前進を歓迎」「関係者の努力に敬意」と述べる様子には強い違和感を覚える。⇒ 

「今後とも引き続きテロ対策に万全を期し、国際社会の取り組みに国際社会の責任ある一員として積極的かつ主体的に貢献してまいりたい」(朝日)と談話を結んでいるが、それならば、同様の殺害についても「積極的かつ主体的に貢献」しなければなるまい。 

「米メディアによると、遺体はDNA鑑定などで『本人』と確認された後、海へ投棄された。イスラム過激派が遺体回収を目的とした作戦に着手する事態を警戒した措置という」(読売)「アメリカメディアは、容疑者の遺体は水葬に付され、すでに海に沈められたと報じている」(日テレ)。印象違い過ぎる。 

東大病院放射線治療チームの今日のブログ「福島訪問──その1」から。「致死性の発がんの危険は、100ミリシーベルトで、最大1.05倍と見積もられますが、これは野菜不足によってがんになりやすくなるリスクとほぼ同程度です。塩分とりすぎは、約200ミリシーベルトの被ばくに相当しますし、⇒ 

運動不足や肥満は、400ミリシーベルト程度の被ばくと同じレベルの発がんリスクです。毎日3合お酒を飲んだり、タバコを吸ったりすれば、発がんのリスクは一気に1.6倍となりますが、放射線被ばくで言えば、2,000ミリシーベルト!に相当します」 ならば、従来の被曝基準には何の意味が? 

3
「米政府高官は米空母上でイスラム教にのっとった葬儀を行った後、水葬したことを明らかにした」「遺体の扱いについて『イスラム教の習慣と伝統にのっとっていることを保証する。われわれは非常に真剣に捉えている』と強調した」が「イスラム教では、死者は土葬されることが一般的」(共同)とのこと。
 

渋谷駅構内通路にある岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」に対する”いたずら”が話題。両面テープで控えめに付け足された絵 http://bit.ly/hXkEiC は、見事に融合している。展示・管理するNPO担当者の発言「とんでもないいたずらで迷惑している」(東京)は”言わされた”感。 

あえて逆説的な言い方だが…。米国は自由を代表して対テロ「戦争」を続けている以上、その過程で”敵”の首魁を倒し大成果との理屈になるのだろう。仮に1945年に米(連合)軍がヒトラーを襲い殺害したとして、何が異なるか、自分が同様に「理」で批判し得るかを想像すると、厄介な想いに駆られる。 

福島原発被害の賠償に関する政府内の試算によれば、「今年度から1兆円ずつ、4年で完了すると仮定」し、「東電は自己資金で足りない分について、電力各社で新たにつくる『機構』から支援」(朝日)を受ける。「機構」には国も公的資金を拠出、電力各社は毎年4千億円を10年間「機構」に返済する。⇒ 

「東電は毎年1千億円を特別負担金として拠出。残る3千億円は原発を保有する電力9社」が「電力量に応じて負担し、全国の電力量の約3分の1を占める東電は、約1千億円の負担となる」。この資金確保のため「東電管内は電気料金が約16%上がる前提」というが、それでは”賠償”主は国民ではないか。 

4
元々健康至上主義の人間ではないが、添加物は避けるほうだし、浄水器なども使っていた。でも、最近は、”どうせ水にも空気にも放射性物質入ってるんだし”と思ってしまう。斬首前に水を求め、代わりに干し柿を勧められ”柿は痰の毒(実は勘違いらしいが)”と断わったという石田三成には遠い(苦笑)。
 

419日来日、東電要請で原発内に汚染水処理施設を設置と記者会見した仏「AREVA」アンヌ・ロベルジョン社長の場違いなほど嬉しそうな顔に少々ムカついたが、通常価格は1トンで2億円とか。既に6万、7万トンというから、一括割引はあるとしても、そりゃあ、押さえがたく笑いが漏れるわなあ。 
「政府・民主党が
3日、東京電力が負担する賠償金に充てるため、電気料金の値上げを容認する新たな仕組みを設ける方向で調整に」「東電だけでなく、他の電力会社も含めて徹底したリストラを求め」(読売)結局、 皺寄せは一般社員。加えて国民総負担が不可避なら、その趣旨・現実を明確に提示すべき。 

「忍従や規律、団結と互助、献身、自己犠牲…。東日本大震災後、被災地から伝えられる光景には、戦後の教育の中で軽んじられてきた日本人の美徳が宿っていた」(3日付『産経』)と殊更に教育の復興が唱えられるが、まさにその「戦後の教育」を受けた多くの日本人が”美徳”をも発揮したのではないか? 

「元西ドイツ首相のヘルムート・シュミット氏はドイツのテレビ局の取材で、『国際法に違反していることは明らかだ』と強調」(ロイター)。「【報道官によると】作戦を実行した際、ビンラディン容疑者は武器を持っていなかったが、激しく抵抗したために射殺」(日テレ)噛みつきでもしたのだろうか。 

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「土下座しろ!」と清水社長に求める気持ちは判るけれど、それで何も解決はしない。しかし、不祥事を起こしながら「寝ていないんだよ!!」とキレた社長、「知らん言え…」と囁いた社長、今般、死者が出て「大変失礼いたしました!」と叫ぶ社長、そんな人物「だから」社長になれたとは言いたくないが… 

食中毒発生直前に日本テレビのバラエティー番組が「焼肉酒家えびす」を絶賛していたと話題だが、http://bit.ly/k7VUBP もすごい(削除されそうだ)。「和牛ユッケ294円」を注文した客が万が一価格に味が見合わないと判断したら代金返金。 ”絶対的自信の「証明」”とのこと。 

312日朝着手の「ベント」が難航。安全・保安院は午後1時の時点で「1号機で『ベントができない場合に想定される事象』」を検討、午後11時に格納容器が破損、「気象条件次第によっては、発電所から35キロメートルの範囲において著しい公衆被ばくの恐れがある」(共同)と推定したという。⇒ 

12日早朝の枝野長官(首相官邸HP)。「先程、1号機の原子炉格納容器内の圧力を降下させる措置を行いました。このため、放射性物質を含む空気の一部外部への放出が行われますが、管理された中での放出でございます」結果的にベント実行は午後2時半、なお1時間後水素爆発発生、その間に会見なし。 

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東電顧問(元副社長)・元自民党参院議員の加納時男氏(
5日・朝日)。「原子力を選択したことは間違っていなかった。地元の強い要望で原発ができ、地域の雇用や所得が上がったのも事実だ」今や職も家も土地も喪われつつあるわけだが。「福島第一原発第56号機も捨てずに生かす選択肢はある」⇒ 

「低線量の放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。説得力があると思う」「過剰反応になっているのでは。むしろ低線量は体にいい、ということすら世の中では言えない。これだけでも申し上げたくて取材に応じた」ならば、前々から放出すれば良かったし、御自身原発近くに越してはいかが? 

菅総理が浜岡原発の停止を中電に要請。前に、どうせ評判ガタ落ちなんだから思いきって原発停止を断行したらどうかと提案したが、廃止ではないし、命令でもないとはいえ、とば口になるのか? “なぜ今停める?”“夏に向かって電力どうする?”とまずはネガティブな質問をぶつける記者には苦笑。 

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菅総理の浜岡停止要請会見後の質問第一声は
NHK政治部・山口太一記者。「安全性の観点から止めると言うことだが、中部電力はこれまで、東海地震並みの揺れが起きても安全性に問題はないとしてきて、国も容認してきたわけだが、なぜこの期にいたって突然、この浜岡原発だけなのかが解せないことと、⇒ 

もうひとつ、この夏場を迎えて、全部止めると言うことになると夏場の電力量よりも供給量が下回ってしまうと思うがその対策は具体的には?」(NHK科学文化部ブログ)。”解せない””この期にいたって”と言葉使いから否定的。山口記者は「ニュースウオッチ9」でも異例なくらい主観で批判していた。 

三月の『朝まで生テレビ!』で”放射性物質が多分実際よりもかなり恐いと思われていることに問題があるのではないか””今回の原子力の問題についても、じゃあ死者が出ましたかということについて、津波の死者に較べて全然、報道のされ具合と死者の多さとバランスが悪い”などと発言した勝間和代が⇒ 

「反省」していると聞き、公式ブログを確認。たしかに415日付で「原発事故に関する宣伝責任へのお詫びと、東京電力及び国への公開提案の開示」があるが、「電力会社及び政府のエネルギー政策上のコンプライアンス課題を正しく認識できていなかったこと」への反省で、原発自体は否定していない。 

菅総理の浜岡停止要請は万全には遠いにせよ、今回の震災という現実を踏まえたからこそ、”30年以内にM8の地震発生可能性が87%”と危険性の根拠を示した。これに対する「今まで実施してきた政策と矛盾する。(首相は運転停止の)根拠と考え方を示すべきだ」(日本原子力学会・沢田隆副会長)、⇒ 

「すべての原発を止めるなら筋が通るが、なぜ浜岡原発だけなのか」(エネルギー総合工学研究所・原子力工学センター内藤正則部長)、「これまでの日本の原子力行政への信頼が失われ、誤ったメッセージを世界に送りかねない」(経産省幹部)等の声【以上、産経】は、危険の無視・軽視を勧めているのか? 

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TBS系列JNNによる福島第一原子力発電所ライブ配信の映像が異様なものになっている。http://bit.ly/ivAl6c 放送用高感度HDカメラとはいえ、この真夜中に皓々と照らし出された各号機から煙が噴き出している。何か新たな事態が起きているのか? 

ケーブルTVで小出裕章助教が“学者の中にも金や地位や名誉が欲しい人は居るので”みたいに話していたが、現実にはむしろ遥か人並み以上だったりして判断が歪むのだろう。以前、某ノーベル賞受賞者に第一報時の心境を聞いた際の“やった!と思いました”という無茶苦茶生臭い顔と口調が思い出される。

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「中部経済連合会の川口文夫会長(中部電力相談役)は10日の会見で、法律上の権限がないのに菅直人首相が中部電の浜岡原発の全炉停止を『要請』した点について『法整備を急きょした上で、命令という手もあったはずだ』と批判した」(朝日)。よく判らないのだが、強権的に「命令」しろというのかな?

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『季刊
メタポゾン』第二号は四月発行を目して編集を進めていましたが、諸般の事情により、ようやく印刷所に入りました。大変遅れたことを謹んでお詫びします。ただし、今号も320ページのボリュームとなり、盛り沢山の内容が詰まっています。5月23日発売の予定です。今しばらくお待ち下さい。 

池田信夫氏「浜岡原発の『停止要請』は非科学的だ」(6日)より。「地震によって原子炉は緊急停止し、核燃料の連鎖反応は止まった」「浜岡が危険だといわれたのは、東海地震の震源の真上にあって、原子炉が地震で破壊される(あるいは制御できなくなって暴走する)のではないかということだったが、⇒ 

これについては東海地震で想定されているよりはるかに大きな今回の地震で、福島第一の原子炉は無事に止まった」「問題は、予備電源が津波で浸水したことである」。未だに”止める、冷やす、閉じ込める”安全幻想に基づいた論理。ブレーキを踏む⇒ギアをPに入れる⇒キーを抜く。それでやっと真の停車。

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「【防衛省は】航空自衛隊の戦闘機部隊などを7月に米国アラスカ州での日米共同訓練に派遣する方針を固めた」「航空戦力を急速に近代化させる中国をにらみ、震災対応中でも抑止力の強化を両立させるためには、広大な空域で米空軍との共同対処能力を高める訓練は不可欠と判断した」(産経)強引な脈絡。

今更に1号機は「長さ4メートルの燃料が完全に露出して溶け落ち、圧力容器底の水で冷やされているとみられる」との東電発表(産経)。麻痺して驚かないがエラい話。でも保安院は「機器が正常な状態にない可能性もあり」「(他の)データの動きを見ながら対応することが必要」(読売)とか言っている。 

「燃料棒がむき出しになり、空だき状態になるとさらに高温となりますが、圧力容器の温度は100度程度と低いことから燃料がほとんど溶けて圧力容器の底にたまり、かろうじて水で冷やされている可能性」「水を入れる作業は続いていますが、水は格納容器の外に漏れている可能性が高い」(MBS)惨澹。 

福島での異常事態発生から丸二ヵ月。当初は、燃料棒の溶融は絶対回避すべき最悪の事態と言われていて、”全体が露出・溶融”などと報じられたら大騒ぎになっていたことだろう。今や、”ふぅーん、でも、冷えてるんでしょ? 別に爆発するわけじゃないんでしょ?”という程度だろうか。慣れ、鈍麻……。 

「圧力容器は高さ20メートルで容積360立方メートル。現在は毎時8トンのペースで、これまで1万立方メートル以上注水したが、容器の1割程度以下しかたまっていない計算」(朝日)。1万以上入れて3601割=36以下ならば、 ほぼダダ漏れ。その僅かな水が、塊になった燃料を冷やしている⇒

前々から「メルトダウン」が危惧されたが、これは確実な学術的用語ではないらしい。燃料棒の一部でも溶融すれば、狭義のメルトダウン。圧力容器の下部で塊になった燃料が底を抜ける、なお格納容器の底を抜けるという事態に到れば、より広義の(深刻な)メルトダウン。今や、後者を回避できるか否かだ。 

13
朝日「文部科学省は12日、校庭利用を制限する基準値を超えたことのある福島県内の13の小中学校などについて、年間の積算放射線量を試算した。子どもの生活パターンや最近の放射線量をもとにすると、平均6.6ミリシーベルトで、最大でも10.1ミリシーベルトにとどまることが分かった。⇒

基準値の20ミリシーベルトには届かないとしている」「今回、13校ごとに子どもの平日や休日の地域の生活パターンを細かく推定。5月初めまでの校庭の放射線量や土壌の放射性物質の濃度を反映した」「周辺の街中などの線量は校庭の6割といった実測値に基づく条件も加えた。⇒ 

その結果、推定被曝量は年5.3ミリ〜10.1ミリシーベルトだった」これは、本当に凄まじい。”最大でも10.1mSvにとどまる”って何だ? ICRP2007年勧告”一般人が1年間に浴びて問題ない放射線量は平常時は1mSv未満”の最低5倍、最高10倍に確実に達するということだ。 

「【圧力容器の底には】制御棒を駆動させるための装置が貫通しており、溶けた燃料の熱で溶接部に穴が開いた可能性」(毎日)「制御棒の隙間から水がジャージャー漏れているんです。そこの溶接っていうのは、厚さが二センチくらい。そこは最弱ですね、メルトに対しては」(季刊メタポゾン・田中三彦氏)

「原子力安全委員会の班目春樹委員長は12日の記者会見で『早い時点から燃料が溶融していると考えていたので驚きはない』と述べた」(日経)。それなら、「一貫して『燃料が溶けて下に落ちていることはない』とし、本来の形状を維持していると説明してきた」(産経)東電に対して、文句を言ったのか? 

13日午前の枝野長官=「【東電が1号機メルトダウンを認めたことについて】周辺住民への安全対策で問題になることは生じない」「【工程表への影響について】1カ月ごとに進行状況を踏まえて見直しをしながら進めていくが、その範囲だ」(産経)。事ここに到り未だこの弥縫を続けるとは、犯罪的虚言。 

商売繁盛。http://bit.ly/lbr0tq 「原発プラント各社はむしろ『フクシマ』を奇貨とし、安全性を掲げて新型原子炉の売り込みを加速させている」(ロイター)アレバ社のEPR一基が一年間に炉心溶融を起こす確率は百万分の一未満だそうな。「一基一年間に」ね。でもゼロじゃない。 

一般的な物事についてならば、危険確率百万分の一は十分な安全性だろう。原発の場合――現に福島で進行しているわけだが――万一の、”百万分の一の”事故の影響は、半永久的に続く。即ち、∞(無限大)×百万分の一=∞になってしまう。ゼロでない限り、幾ら危険確率が下がっても本当は意味がない。 

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「【東電は】
8月末時点の電力供給について、従来の見通しから550万キロワット上積みし、5620万キロワットに上方修正した。想定する最大需要の5500万キロワットを上回り、計画停電の回避にめどを付けた」(時事)最初から回す気なら回るのだ。ただ、緻密な計画停電なら全否定はしないけど。 

「『(全炉心溶融は)想定しなかった。認識が甘かった』細野豪志首相補佐官は13日(略)見通しの甘さを認めた」「炉心溶融は関係者に大きな衝撃を与えた」(読売)でも、原子力安全委の班目サンは12日「早い時点から燃料が溶融していると考えていたので驚きはない」(日経)と言っていましたけど? 

「想定外のトラブルが発覚した」「注水された1万トンのうち、少なくとも4000トン以上の水が『消えた』」(読売)「下から毎時一トン漏れている時に、毎時二トン入れてやれば水位は少し上がる。それでも一トンは下から漏れる。そして残りの一トンはすぐ蒸発する」(季刊メタポゾン・田中三彦氏)。 

AKBやモー娘やスマイレージやももクロや℃-uteやアイドリング!!!Berryz工房のファンは、原発なんて関係ないよとスルーしているのかな。我々同様、彼女達も静かに確実に放射性物質にさらされ、その影響は、若い彼女達の方が本当は一層大きいわけだ。ファンならば、見過ごせないよね? 

15
作業員一名(元請・東芝)が二日目に急死。原因は別に、会見で管理状況を訊かれた松本純一原子力・立地本部長代理は「私どもと、当社と直接の雇用契約がございませんので、どういった経緯で福島第一原子力発電所に来られたかどうかにつきましては、判っておりません」
"決死の作業"が、そんなもの。

産経の14日付【主張】=「1号機の燃料の大半がメルトダウン(炉心溶融)を起こしていたことがわかったが、動揺してはならない」「炉心損傷は予想されたことでもある。落ち着いて冷静に受け止めることが必要だ」「1号機の燃料の損傷が最も激しいことは、3月中から分かっていたことだ」⇒

「形としては厳しい現実の再確認だが、修理に欠かせない貴重な情報の把握として受け止めたい」「事態は悪化しておらず、落胆する必要もない。困難に遭遇しつつ、そのつど問題を克服して粘り強く前進するのが、長期戦に勝ち抜くための要諦である」「長期戦に短慮や焦りは禁物だ」 ”神風”でも待つか。 

1号機の原子炉建屋内で(略)311日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出」「東電関係者は『地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない』と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた」(産経) 300mSv…やはり、津波以前に地震でダメージ。 

先の記事の続き(産経というより共同)「311日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避」当初から地震で圧力容器等に損傷、冷却水が漏れつづけているとすれば辻褄が合う。 

http://bit.ly/kz8uvu 日本医師会が12日付で「文部科学省『福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方』に対する日本医師会の見解」を発表。「【ICRP基準】120 ミリシーベルトを最大値の20 ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。⇒ 

また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべきと考える」「国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである」 この極めて当たり前な判断が一種”英断”とさえ映る現状がむしろ異様。 

http://bit.ly/e4rCnV 420日に文科省は、「放射能を正しく理解するために 教育現場の皆様へ」と題した45ページに及ぶ資料を出した。「【放射線への】過剰な対策は、生活に支障をきたしたり、偏見を産み出したりすることにもつながります。何事もバランスが大事です」⇒ 

「放射能のことを必要以上に心配しすぎてしまうとかえって心身の不調を起こします」「いつもいつも考えていると、その考えがストレスとなって、不安症状や心身の不調を起こします」「もし保護者が過剰に心配すると、子どもにも不安が伝わって、子どもの心身が不安定になります」「だから【強調】」⇒ 

「不確かな情報や、人の噂などの風評に惑わされず、学校から正しい知識と情報をもらって、毎日、明るく、楽しく、仲良く、安心した生活を送ることが心身の病気を防ぐ一番よい方法です」「放射能について過剰に心配しない、させないことが大切です」 日本小児心身医学会の「ご指導・ご協力」を得た由。 

現在進行中の東電会見(ニコ生)。問:”亡くなった作業員に取締役はお悔みを表わさないのか?” 答:松本純一原子力・立地本部長代理”御冥福はお祈りするが、作業内容に問題があったとは考えていない(従って、取締役は出てこない)” 勝手に心筋梗塞を起こしたんですよ、ということなのだろうね。 

16
3
号機の温度が上昇。再臨界が懸念され、「核反応を抑えるホウ酸を水に混ぜて注入した。12号機でも準備している。(略)事故発生直後にも入れたが、炉心を冷やすための注水でホウ酸の濃度が薄まっていると考えられ、念のために足すという」(朝日) ウーム、工程表どころか当面の危険が消えない。 

ガス漏れの時、人は「ガスくさい」と騒ぐけれど、都市ガスは元々無臭であり、わざとチオールなる物質で臭いをつけているという。放射線や放射性物質は見えも嗅げもしないわけだが、もしもこれに人工的に色や臭いがついていて感知可能だったなら、日本中は今頃とんでもない騒ぎになっていただろうなあ。 

たまには違う話。フジ系のドラマ『名前をなくした女神』(脚本=渡辺千穂)をズッと観ている。お受験を縦糸に幼稚園の”ママ友”達を描く陰険な物語。どの夫婦も壊れていて、彼らに翻弄される侑子(杏)が主人公。彼女の無邪気というよりも無神経さと、超善良げ?な夫(つるの剛士)にイライラ(笑)。 

17
仮に広島や長崎の頃に現代の検査機能があれば、大変な広範囲が長年に及ぶ避難区域とされただろう。今、長崎大・山下教授など、日本は「戦時」だから「平時」の基準は適用し(得)ないという人達が居る。大きな分岐点はそこだ。そして問題は、参戦の意識さえない人々も「戦時」体制に組み込まれること。
 

戦争をしたい人間も、したくない人間も居ただろう。でも、現実に戦争が起きてしまえば、皆が抗いがたく戦時(緊急時)の基準を強いられる。例えば“トリアージ”のような平時と異なる概念。既に日本は、放射能に関するそういう合意――せめても開かれた合意を形成せざるを得ない段階なのかもしれない。 

2002年の「東京電力原発トラブル隠し事件」で引責辞任した同社・荒木浩社長、南直哉社長、榎本聡明副社長(当時)は皆「顧問」に。引責して辞めて「顧問」ってどうなの?と感じるのだが、ググると、そんな例は三井住友海上、NHK等幾らもあるようだ。反省を糧に意見を述べるということか(笑)。 

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辞書によれば"維新"の意味は「物事が改まって新しくなること。政治の体制が一新され改まること」(広辞苑)、「すべてのことが改められて、すっかり新しくなること」(大辞林)、「すべてが改まって新しくなること。特に、政治や社会の革新」(大辞泉) 「大阪”復古”の会」の方が合っていそうだ。 

『東京新聞』16日付【私説・論説室から】の一部。”家で節電に心掛けたら四月分の電気料金が六割ほどに減った”として「列島各地の原発の安全性に疑問符がつき、夏の電力供給が危ぶまれているみたいだが、大いに結構だ。いっそすべての原発を止めて、国を挙げて計画停電や節電をやったらいい。⇒ 

放射能にさいなまれ、故郷を追われた福島県民が大勢いる。その苦難を共有しつつ、問題意識を欠いたまま恩恵にあずかってきた原発のことを考えたい。経済成長は頭打ち。人口は減る。省エネ技術は最先端を誇る。それなのに電力需要は増え続けている。⇒ 

脱原発へ、そして地球温暖化防止へ、まず“電気依存症”を治す努力が要る。アサガオ、スズムシ、風鈴、簾(すだれ)…。電気文明が追いやった風物を引き戻し、扇風機の手を借りて納涼を工夫しよう」(大西隆) 文句をつける向きもあるだろうけれど、これも当然の感覚だと思う。【同姓は偶然。念の為】 

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315日(2号機で水素爆発)時点、原子力安全委はSPEEDIに基づく一定の拡散試算(実測値と近似)を入手したが、班目委員長は「こんなことを発表するとかえって社会的混乱を引き起こすのでは」(西日本)と公開しなかった。あの日、我が家は雨戸を閉め切り、仕事に行かざるを得ない家人は⇒

帽子やマスクのフル装備で動いた。二、三日後、用あって車で外出した時は、小雨に濡れつつ自転車で走り回る子供を見て、複雑な気分になった。もっとも、東京の放射性物質は高が知れていただろう。でも、より高値が予想された地域の人には、実際の影響の有無に係らず避け得る余地・権利があったはずだ。

韓国で“汚染水海洋放出は「米国からの要請」”と発言、物議を醸す平田オリザ内閣官房参与が「他の事柄と混同したもので、事実ではない」「311日以来、官邸に出入りしたこともなく、事実関係を知る立場になかった」とコメント。なお圧力を勘繰られてしまうし、本当に失言ならエラく不恰好だなあ。

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http://bit.ly/jdLqx0 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のL・フォン・トリアーが、カンヌ映画祭の会見でヒトラーに共感などと発言。彼流のジョークだったようで謝罪も、「好ましからぬ人物」として追放に。http://bit.ly/l85SIG 隣席のK・ダンストが傑作。

原子力安全委・班目委員長は「原発の安全設計審査指針など各種指針を見直す方針を示した。安全設計審査指針は『長期間にわたる全電源喪失を考慮する必要はない』と規定(略)『明らかに間違い』」「『(安全対策に)穴があいていたことが分かってしまった』」(産経) 起きた後なら素人でも言えます。

児玉清といえば「アタックチャーンス!」やブックレビューだったが、人気絶頂期の吉永小百合と噂があったかと(1971年頃? ドラマ共演の半ばPR?)。その際、新聞の芸能欄で“児玉と話題になっている間は、まだまだ安心”的な記事を見かけ、子供心に“そんなものか”と納得した記憶が鮮明(笑)。

佐々木譲さんの特集をはじめとする『季刊 メタポゾン』第二号は本日納本、直接購読分を発送しました。早ければ、明日にも到着すると思います。田中三彦さんへのインタヴュー『生きる境を見直すとき』(四月一日実施)は、日々露呈する福島の実状と多々合致しており、“想定外”の欺瞞を物語ります。                                                                       【つづく】
(2011.7.27)