今週のコラム                                 大西赤人/小説と評論

『朝まで生テレビ!恒例元旦スペシャル』──終了間際のハプニング的な一幕での宮崎哲弥と勝谷誠彦の粗雑な物言い

大西 赤人       



前稿より続く)
 1日放送の『朝まで生テレビ!』の副題は、「激論!“北朝鮮”“激変する世界”日本外交はナニができるのか?」。世間的には進歩派論客の貴重な砦(?)とも目されているであろう姜尚中(東京大学教授)が、森本敏(拓殖大学海外事情研究所所長)に向かって“僕は左翼じゃないですよ”と言わでもがなの表明――あるいは弁明――を口にするという滑稽なシーンなどもあったのだが、最大の盛り上がりは、番組のまとめが始まったところだった。当夜の憲法論議に関して、司会の田原総一朗がキャスターの二人(渡辺宣嗣アナ、長野智子)に感想を求め、長野が“ドンドン解釈憲法で変わって行く不安を味わいたくないので、キッチリと日本という国がこれを基盤にやるという改憲をしてほしいと思います”と述べると、勝谷誠彦(コラムニスト)が“去年は「偽装」ばやりだったけどね、「偽装」の最たるものは日本国憲法なんですよ。解釈改憲は、要するに言いわけして、言い換えてるだけでしょ、強姦をイタズラと言ってるようなもんなんだよ”と茶々を入れる。すぐに社民党党首・福島瑞穂が“ただ、【政府側が】解釈改憲をやり尽してきたんじゃないですか”と反論を試みるのだが、例によって甲高《かんだか》く繰り返すだけで迫力に乏しく、流されてしまう。

 次いで渡辺が「【今ある】姿に憲法を合わせて行くのか、憲法に国を合わせて行くのかっていう、ここが全然考え方としては、大きく変わる分岐点じゃないかと思うんですよね」と真っ当な見解を示す(これは極めて本質的なポイントで、たしかに現行憲法が完全無欠のはずとてないに決まっているが、しかし、そこに一定の理想が掲げられていることは確実であり、せめて憲法ぐらいは――幾らか浮世離れしていようとも――理想を掲げないでどうするのかという話。もちろん、法律が現実生活と適合していない場合に法律のほうを改めることはあり得るけれども、じゃあ、どんなに取り締まっても殺人事件が続発しているからといって、現実に合わせて、“殺人を罪に問うことはもう止めよう”と刑法改正を主張することなど考えられるだろうか?)。

 渡辺の発言を受けて村田晃嗣(同志社大学教授)が“単に憲法があるからというのじゃ理由にならない、憲法の理念がなぜ普遍的に正しいのかってことを考え抜かないといけない”とそれなりの見解を述べた後で、問題の場面が訪れる。これも動画サイトのYouTubeで実況を見直すことが出来るけれども、2ちゃんねるでは奇特な誰かによって応酬が文字に起こされているので、それを基に僕の修正を加えると、勝谷が“憲法残って国滅ぶだったんですよ、今までは”と村田にかぶせた直後、宮崎哲弥(評論家)が突然に喚《わめ》きはじめる。

宮崎「戦後の憲法体制なんてごまかしですよ。嘘話だよ、こんなものは!!」
福島「いや、違うよ。解釈改憲をやり尽してきたわけじゃないですかぁ。」

 すると、穀田恵二(共産党衆議院議員)が宮崎に向かい「よくそういう事でさあ……」と言葉を挿《はさ》みかけるけれども、勝谷が「憲法を祀《まつ》って拝んでたのは、お前の政党だろう!」と福島を指差し、宮崎も「あんたらの政党だよ。嘘を許してきたのは」と言い募る。そこでカメラは田原たちに戻り、長野がフリップを手に視聴者のアンケート結果を紹介しはじめるのだが、それと並行して、声のやり取りはマイクに拾われつづける。

穀田「“あんたら”って、どういう意味よ?」
宮崎「二つだよ。共産党と社民党」
穀田「××××(巻き舌のタンカ。聞き取れない)」
宮崎「何だよ、お前。何だよ、この野郎!!」
長野「あれ、大丈夫ですか?」
宮崎「(ドンと机を叩き)何だ、コラァ!! 『表出ろ』って言ったな、今!?」
田原「ちょっと、そんな下らない事、止めろ」
穀田「“(あんた)ら”って、“ら”って、何だよ(宮崎を睨む)」
宮崎「『表出ろ』って、何だ!? 共産党が××××(興奮で口が回らない)……」
田原「ちょっと、つまんない事、言ってんナ!」

 田原が割って入り、長野が声を高めてフリップを読み上げる中、なお嵩《かさ》にかかって勝谷と宮崎の捨て台詞が続く。

宮崎「ばぁか」
勝谷「まだ“銃口から革命”とかばっか考えてんだろ」
宮崎「そうそうそう、“銃口から革命”考えてんだろ。暴力政党!!!」
田原「ねぇ、インテリ×××(ジェンス)の無さを晒け出してるぞ、おい。ねぇ! (机を何度も両拳で叩いて)下品さを晒け出してるぞ」

 ついに田原が、笑みを浮かべながらもたまりかねたように――画面に写った顔は穀田のほうへ向けつつ――警告を発し、勝谷は一応矛《ほこ》を収めるが、それでも宮崎は小児病的な執着を発揮しつづける。

勝谷「はい」
宮崎「そうだ、共産党」
福島「そ……(苦笑)」

 穀田がアンケート結果に眼を向け、「あー、そんなもんなんだね、やっぱりね」と平静を装いはじめても、宮崎はまだつぶやく。

宮崎「人殺し政党のくせに……殺しただろう……本性が出たな」

 いやあ、これが、とにもかくにも日本の論壇を代表するとされる人間たちが国を論じる年の初めの番組なのですから……。2ちゃんねるなどでは、さすがに宮崎及び勝谷の粗雑な――公党の党首を「お前」呼ばわりした勝谷もひどい――物言いに対する冷ややかな見方が少なくないとはいえ、左翼叩きの風潮がいよいよ進む昨今なので、穀田への“議員たるものが「表へ出ろ」とは何事か”という種類の批判も同じように見受けられる。穀田自身は、この一件に関して、自らのサイトの「活動日誌」コメント欄で次のように記していた。

「『あんたら』といったので、『「ら」とは何や』から始まったのです。いい加減な言い方にカチンと来たもので。私も言い過ぎたし、パフォーマンスと分かっているのに彼の挑発に乗った私が未熟だった反省しています【原文のまま】」

 ここでは、彼が「表へ出ろ」と口にしたかどうかは明確になっていない。音声を聞く限り、穀田の言葉は「表へ出ろ」ではなかったように感じられるが、いずれにせよ、それに近い喧嘩腰の類《たぐい》だったことは間違いなく、その点では、たしかに穀田の態度も品位に欠けていたし、結果的には、挑発に応じたがためにイメージ・ダウンにつながったことも否めない。しかし、売り言葉に買い言葉という決まり文句もあるけれど、これほどまで“声の大きい人間の言ったもん勝ち”とばかりに無責任な罵倒を浴びせかけられれば、共産党ならずとも一言二言返したくなって当然ではないか?

 時流に乗った勝谷が繰り出す一見辛口めいた言説のいかがわしさに関しては、先に触れたことがある(colum315.htm)けれども、それに負けず劣らず、宮崎のゴロツキめいた態度は――それが多分に視聴者へのエンタテインメントを意識した「演技」としても――顰蹙《ひんしゅく》ものであろう。以前の彼は、部分部分では共感し得る発言をしていたが、最近は、『生テレビ』でも――ひところの大島渚の役どころを買って出ているのか――今回同様急に怒鳴り出したり、一方では、田原に代わって司会を務めたりと、専らタレント評論家として居心地が良さげに見える。いつだったか、やはりこの番組の中で、辻元清美(社民党衆議院議員)から“宮崎さんも内閣府経済財政諮問会議の委員などになって、舌鋒《ぜっぽう》が鈍っているのではないか”的な趣旨の問いかけをされ、彼が“個人的には迷惑以外のなにものでもない”“委員の椅子には何の執着もない”というように少々面映《おもはゆ》そうに応じていたことがあった。自らの清廉を主張するその言葉の真偽はさておき、こんな手合いが、日本を代表する「有識者」の一員に遇され、発言して愧《は》じないのだから、何とも結構な話である。
(2007.1.16)


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