We Love Internet People from INTERNET magazine
あの人に会いたい!

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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.8

1,000店以上のラーメン屋さんを紹介する「東京のラーメン屋さん」の

大崎裕史さん

http://www.hiryu.co.jp/ramen/index.html

「東京のラーメン屋さん」(略してとらさん)は、大崎裕史さんがひたすらラーメンを食べ歩いて作り続けているデータを元にしたホームページだ。ラーメンのページは他にもいろいろあるが、紹介されている店の数1,000軒以上というのは、ダントツの規模と迫力。僕もラーメンは大好きで、新しい店開拓の参考にしているが、都内で1,000軒のラーメンを食べ歩いた人というのはいったいどんな人なのだろう。大崎さんの勤める目黒区・大鳥神社近くの広告代理店・飛竜企画を訪ねてお話をうかがった。

Q:ホームページはどんなきっかけで始めたんです?

大崎:ラーメンは子どもの頃から好きなんです。食べ歩きは東京に出てきてからすぐに始めました。今38歳だから20年くらい前ですか、「アングル」という雑誌がうまいラーメン屋の情報を載せていて、それを見てよく食べ歩いてました。それが始まりです。 30歳くらいになって、メモでもしようかなと思ったんです。そのころ雑誌でもラーメンがひんぱんに特集されるようになって、その気になったというのもありますね。そのあと、3年くらい前に、別にホームページにというわけでもなくて、エクセルでデータを作り始めました。そうしたら、うちの会社(飛竜企画=広告代理店)でホームページを開くことになって、「何か遊びの要素を盛り込んだのはないか」といので、「それなら、私のラーメンを載せてください」というのがスタートです。

Q:今は1,000軒を越えているそうですが、スタートは何軒でしたか?

大崎:最初は250軒くらいだったと思います。「ドラゴン拉麺会」とあるように、最初はうちの会社のラーメン好きな社員にも書いてもらおうと思っていたんですが、なかなか協力してもらえなくて。しようがないから自分でやるしかないということで、今の1,000軒は全部私が食べ歩いたものです。ホームページを始める前は、年間250杯くらいでしたけど、去年は550杯、今年(97年)は今のところ250軒くらいですが、700杯を目指しています。

Q:700杯というと、1日2杯の計算になりますけど……。

大崎:大食いというか、そこそこ食えるほうで、昼を普通に食べた後でも、いつでも食える状態になっていて、おやつみたいな感覚で食べています。1回食べに出かけると、3杯は食べるようにしています。やはりラーメンのホームページを開いている大村(ジャンボ)さんは、1日9杯食べたことがあるそうですが、私は最高7杯ですね。まあ、抜こうとは思いませんけど(笑)。雑誌で見つけてねらっていくこともありますが、昔は、営業で歩いていて、ここは知らないなといって入ることが多かったです。

Q:ホームページを開いてからは、仕事で食べに行くこともあるんですか?

大崎:いや、仕事に影響がないようにというのは気をつけています。管理職(部長)ですし、ラーメンを食べるために勤務時間中に外出することはありません。仕事が忙しくて、そんなことしている暇はないんです(笑)。食べるとメモ程度は書いておくんですけど、今非常に忙しくてメモがたまってしまって、どうしようかと思っています。

Q:ホームページを作るのも、勤務時間以外なんですか?

大崎:もちろんそうです。夜書くことが多いですね。ページのレイアウトは会社のコンピュータに詳しい人にやってもらっているので、僕はコンテンツを作るだけです。フォーマットができていて、それに書き込めば、アップロードできるようになっています。私の役割は、プロデューサーというとおこがましいですが、「こんな検索ができないか」とか、「地図があるからうまく使えないか」とか相談したり、向こうから「こんな技術があるけど何か使えないか」とか、いろいろやりとりをしながら作っています。

Q:製麺所の名前が書いてありますが、取材はどんなふうに?

大崎:話はなるべく聞くようにしてますけど、どこ製の麺かとかは聞かないで、のぞいて調べます。そういうのを聞くと、「お宅なに?」って、けげんな顔をされるんですよ。あくまで一般客ですと言うことで、基本的には営業時間や休みを聞いて、あとは、この店はあの店と似ているなと思ったときに、「どちらで働いていたんですか?」というような質問はできるだけするようにしています。私自身としては、そういうラーメン屋さんの系統に一番興味があるんです。実は、その人が好きな他のお店なんかも聞きたいんですが、あまり教えてくれないですね。

Q:単行本にすると売れそうな感じですけど?

大崎:考えています。ただ、どういうふうにするか難しいところですね。とりあえず、CD-ROMとして出そうという予定はあります。HTMLをブラウザでそのまま見てもらうのが一番手っ取り早いんですが、それだとホームページと同じだから、売れるのかなというのがあって、どうしようかなというところですね。私としては、お金も時間もつぎ込んで苦労しているので、会社の仕事としてCD-ROMを出して、実績を上げて昇給してもらおうとか、できれば印税ももらいたいというのがあります(笑)。

Q:700杯というと食費だけでもかなりかかりますけど、自腹ですか?

大崎:そうなんです。平均700円として、1年で50万円。それと、私は車の運転ができないので、タクシー代もけっこうかかります。勤務時間中は時間を無駄にしてはいけないということで、タクシーをけっこう使いますし、夜遅くなると、タクシーしかなくなることもよくあります。特に、東京の西のほうは駅から遠いラーメン屋さんが多いので、お金がかかりますね。

Q:最終的には何軒を目指していますか?

大崎:もうすぐ私も40歳ですし、高血圧気味で医者にはラーメン食べるのを止めるようにも言われているので、700杯も食べるのは今年か来年までにしたいですね。でも、それで1,200軒くらいになりますから、あとは、3年に1回くらいのペースで回って、新しいところができたら行ってみるくらいにしたいですね。それなら、年間400軒くらいでよくなりますから。 ホームページを始めたときに、ラーメンのページでは一番になりたい、まず軒数では一番になろうというのがひとつの目標だったんです。それにプラスして、情報を充実させるのはどういうことかなというのをいろいろ考えて、やっぱり極めたい、東京だけでまずある程度のところまで極めてしまおうというので、東京に限って増やしていったんです。

Q:ひとことで1,000軒と言っても、なかなかできないことですよね。

大崎:そうですね。400軒くらいがひとつの壁で、500軒くらいまでが非常に辛かったですね。ホームページで200軒くらいを紹介している人に、「あなたはまだ幸せにラーメンを食べれると思うけど、その先、400軒がひとつの目安です」という話をしたことがあります。 400軒くらいまでは、雑誌に載っている店を純に回っていけば増やせるけど、そこからが辛いんです。そのときは、ホームページで、「うまい店があったら紹介してください」と呼びかけたりしました。今は、雑誌に載っている店はほとんど行っちゃてるんです。ぴあランキングの100店の中で、98軒行ってますから(笑)。 1,000軒まで行けたのは、ホームページの読者からの情報と励ましのメールが大きいですね。ホームページやってなかったら、1,000軒なんて絶対に行けなかったと思います。

Q:それだけ回っていても、新しいうまい店というのは見つかるんですか?

大崎:ええ。400軒を越える頃は、20軒くらい続けてまずい店にぶつかると、「いくら何でも、もううまい店はないよ」と思っちゃうんですけど、「こんなうまい店は知らなかった、どうして雑誌にも載っていないんだろう」といのがあるんです。そうすると、「よし、もっと探そう」と意欲が湧いてきて、600軒、700軒くらいははずれも多かったですけど、がんばれました。 最近でも、中野の「青葉」とか「香門」とか、新しい店でうまいところがあって、私もいろんな人にすすめています。「香門」の人に話を聞いたら、「私もラーメン大好きで」ということで、そういう喜んで話をしてくれる人の店は、できるだけすいているときに行って話をするようにします。そういうお店を発見できたときには、まだまだ続けようと思いますね。

Q:僕も、ラーメン好きだと思っていましたが、そんなこととてもおこがましく言えないという感じがしてきました。お身体を大切にして、これからおいしい店を紹介してください。


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.9

動物好きのスタッフが作るオンラインマガジン「ペット大好き!」の編集長

岡見圭さん

http://www.petoffice.co.jp/daisuki/

オンラインマガジンの「ペット大好き!」が、97年7月1日で創刊1周年を迎えた。ペット関係のホームページは個人のものも入れるとかなりの数があるが、オンラインマガジンはおそらくこれひとつ。紙媒体と連携せずに、オンラインマガジンだけで続けているのも、他にはあまりない。最近は、紙のペット雑誌でも紹介されて、「ペット大好き!」が見たくてインターネットを始める人もいるそうだ。そんな人気オンラインマガジンの編集長・岡見圭さんにお話を聞いた。

Q:「ペット大好き!」創刊1周年おめでとうございます。以前は、紙のペット雑誌を編集していて、1年前からオンラインにしたのだそうですね。

岡見:不定期刊ですが、『イヌが好き!』『ネコが好き!』という毎日グラフ別冊のムックをやっていました。そのあと、『毎日グラフ』が『アミューズ』にリニューアルしたときから、連載も始まりました。ムックのほうは、出版社の方針で休止になったんですが、それまで4年間くらい、ペットのことを継続的にやっているうちに、ペット業界や獣医師の人たちとかいろんな人脈ができたんです。編集部員は全員動物を飼っていて、動物好きで、ムックは終わっちゃったけど、せっかくだからもっと続けたいという話になったんですね。
 ちょうどその頃インターネットが非常に使いやすくなってきまそた。ウェッブの世界が注目されてきたんで、いっそのことペーパレスでやってみようということになったのが、1年半くらい前です。それから準備をして、96年5月1日にプレ創刊号を出して、6月1日にそれを更新して、7月1日が正式創刊。ですから、創刊1周年の号はvol.13ですけど、そこまでのバックナンバーは14号分あることになります。

Q:インターネットはどういうふうにして始めたんですか?

岡見:今から3年くらい前、たぶんブラウザがMozaicからNetscapeに切り替わる頃です。某インターネット雑誌の創刊時に僕らに声がかかって、創刊準備号を作ったんです。結局、編集部と喧嘩して辞めちゃったんですけど、インターネット自体はすごく面白いなと思って、それから本格的に始めたんです。第一世代のゴリゴリの人に比べると遅れて始めましたけど、わりと早いほうじゃないですか。
 やっているうちに、HTMLってすごく面白いなと思うようになりました。自分でも書きたいなと思って、当時いいエディターはなかったですから、タグをいろいろいじっていました。そのうちにAdobeのPageMillが出てきて、僕はマックだったので、それでやっているうちにHTMLをマスターしちゃったんです。今の「ペット大好き!」はデザイナーがHTMLを書いていますが、実は僕も書けるんですよ。

Q:そうすると、ご自身の「千成コンプレックス」のページ(http://www.asahi-net.or.jp/~ic6k-okm/)は、自分でHTMLを書いているんですね。

岡見:ええ、あれで腕ならしをして、「ペット大好き!」のページを作ったという感じです。やはり自分で作らないと、こういうページだと見やすいとか、技術的にどうすればいいかとか、読む人の立場になって考えられないじゃないですか。
 今は僕が「ペット大好き!」のページのHTMLを書くことはありませんが、個人ページのほうは今でも自分で作っています。今使っているのは、PageMillのVer.2.0J。最近Windowsも始めたので、FrontPage97も使っています。でも、PageMillはよくできているソフトだと思いますよ。

Q:ムックの編集は、出版社からお金が出ると思いますが、オンラインマガジンでかかるお金はどうしているんですか。見たところバナー広告などはないようですが。

岡見:最初は全部持ち出しでした(笑)。今は、徐々に実績が出来てきたので、スポンサーが付いているんです。雑誌全体ではなくて、一部の記事について、スポンサーになってくれる企業がいくつかああって、それでやりくりしています。
 たとえば、ペットフードのメーカーが新しい商品の商品手応えをマーケティングリサーチするのに、協力するようなこと。紙の雑誌のタイアップ広告のようなものです。広告代理店からも話が来ますし、企業から直に来る場合もあります。僕らといしてもあまりはっきりした広告は入れたくないので、そういう目立たない形でやっています。
 むしろ、企業のほうが僕らの趣旨に賛同してくれて、露骨に企業色を出すことなくやってくれますね。ただし、ビジネスとしては小さなものです。オンラインマガジンを維持管理していけるお金が出て、それでちょっと黒字くらいです。儲かって仕方がないということは金輪際ないです(笑)。

Q:なるほど、オンラインですから、印刷費はかからないわけですね。

岡見:紙の雑誌は、造本費・編集費で、数千万円はかかります。でも、ホームページは、コンテンツを作るのにはお金がかかりますが、それ以外はサーバーの維持管理費だけ。月に数千円の世界ですか。でも、当初はもっと簡単にタイアップ広告が決まると考えていたんですが、そんなに甘くはなかったですね。
 「ペット大好き!」のアクセス件数は月に6000件〜1万件の間なので、大企業の1日1万件というのに比べたら、大したことはない。そうすると、大手企業はメディアとしてあまり大きなメディアとは思ってくれないし、実際大きなメディアじゃないんです。媒体価値としてはまだまだ低いかもしれません。ただ、うちの読者は女性が40パーセントくらいで、インターネットの平均よりずっと高いんです。

Q:ペット好きの人だけが見ているわけですし、読者が絞られていることでも、媒体の価値としては高いですよね。今、スタッフは何名ですか?

岡見:常時動いているのはHTMLを記述するデザイナーが1名と、編集部が4名。その5名に加えて、カメラマンやイラストレータの人たちや、ボランティアの獣医師の人たちが関わっています。ですから、ボランティアも含めるとけっこうたくさんの方に協力してもらっています。 
 「ペット大好き!」へのメールで一番多いのは、「ペットなんでも相談室」のコーナーですが、ここに来た相談のメールのうち、病気に関するものとか僕らでは調べられないものは、獣医師の方に送ってメールで返してもらっています。それを僕らがまとめてアップして、別に質問をくれた方にメールも出します。ペットを飼っている人は、本当に病気だったら獣医さんのところに連れて行くけど、健康相談みたいなのはお金もかかるから聞くところがないでしょう。
 それぞれの獣医師の方はホームページを持っていますから、回答の最後にそこへのリンクを張っておいて、先生たちのページに行けるようになっています。獣医師の方も楽しんでくださっているようですし、読者の方にも喜ばれていますね。

Q:今後は、どんなオンラインマガジンにしていこうと考えていますか?

岡見:続けたいと思っていたのが、たまたまインターネットに活路が見いだせましたし、今は少しですが黒字にもなっていますから、この調子で続けていきたいですね。それと、獣医師のネットワークとか、個人でペットのホームページを持っている人のネットワークとか、いろんなつながりができていますから、これを何か他の仕事に結びつけていけないかなと考えています。そのためにも、もっとネットワークを広げていきたいですね。 
 それから、97年7月号で告知していますが、バックナンバー14号分をCD-ROMにして、読者の方に有料ですがお分けしています。1号分が10MB以上ありますし、データベースとしても、けっこう価値があると思います。


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.10

インターネットで供養するお墓「サイバーストーン」を始めた

高野山真言宗・龍源山功徳院・住職の松島龍戒さん

http://www.haka.co.jp/

お寺がインターネットで紹介や宣伝をするというのは、最近よく見かけるが、東京・巣鴨の功徳院が試みている「サイバーストーン」のは、インターネット上にお墓を作ってしまおうというものだ。ホームページにアクセスすれば、3D画面で霊苑を散策したり、お花やお線香をそなえたり、お経を聞いたりできる。そのうち「お墓はインターネット」が普通になるのだろうか。「サイバーストーン」を運営する住職・松島龍戒さんにお話をうかがった。

Q:インターネットにお墓を作るというのを思いついたのはお父様だそうですね。

松島:うちの親父は59歳ですが、パソコンやインターネットについては素人なんです。素人だから、思いついたのかもしれませんね。ただ、先見の明はあるみたいで、バブルの前で数百万円のお墓が売れていたときに、1人11万2000円の共同のお墓を売り出そうと言い出した。そのときは周りに反対されたんだけど、結局、今はその共同のお墓が一番売れているんです。親父がインターネットのお墓というのを言い出したときも、最初は、「また始まった」と思っていました(笑)。
 でも、今考えてもすごいなと思うのは、ホームページは情報を発信する場所なのに、それを個人の生前の記録を収めるとか、情報をしまっておく場所として考えたことですね。もちろん、アクセスすれば故人の経歴が読めるわけですから、情報発信でもあるんですけど、ホームページをお墓という情報をしまっておく場所として使おうという発想はすごいなと思いました。
 コンピュータやインターネットがちょっとできる人は、そういうことは思いつかない。データーベースとかワープロとか、そういうふうに使うものだという先入観があって、自分の知識の中でしか発想が出てこない。でも、使えないヤツは始末が悪くて(笑)、コンピュータは何でもできると思っている。父がそれですね。お寺がインターネット使うとしたら、普通は、お寺の紹介をするとか、お墓の広告を出すという程度じゃないですか。

Q:インターネットのお墓に手を合わせるというのに、違和感はありませんか。

松島:正直言って違和感はあります、でも、信仰の対象物というのはそれぞれ違うわけで、礼拝をするのは、仏壇の中の位牌なのか、インターネットの画面の中のお墓なのかというのは、人それぞれだと思います。私は、それを、インターネットのお墓でいいんだとは言いません。いろんな選択肢があったほうがいいと思います。
 コンピュータの画面だけでは味気ないという方のために、ノートパソコンをはめ込める仏壇組も試験的に作っています。インターネットのおかげでいつでもお参りができるとか、故人の膨大な記録が残せるというメリットを優先する方には、インターネットのお墓でいいのではないかと思います。

Q:功徳院のページは松島さんが作られたそうですね。

松島:いや、作ることは作りましたけど、全然更新していないし、作り方が下手だから重いし、もうちょっと何とかしないといけないんです。ホームページ作成ソフトを買ってきてやっただけで、HTMLのこともあまりわかってないんですよ。
 パソコンを始めたのは、7、8年前からで、お寺の会員管理とか必要に迫られてDOSベースのデータベースを作ったり、ワープロを使ったりしていました。仕事以外でも、音楽をやったりニフティサーブを使ったりしていました。
 「サイバーストーン」のほうは、3Dで霊苑の中を散策したり、クリックすると般若心経が流れたり、ショックウェーブでお花やお線香を供えるというのがあるのですが、これはちょうど縁のあったNHKテクニカルサービスさんにお願いしたものです。

Q:今は、お墓は見本のものだけだそうですが、実際にインターネットのお墓に入ろうという方はいらっしゃいますか。

松島:おひとりですが、申し込みをいただいている方がいます。その方から、お嫁に行って実家の先祖を祀る方が誰もいなくなる。今は過去帳だけが残っているだけで、ご先祖はお寺でも見てもらえないし、どうなるんでしょうというご相談を受けたんです。
 お骨も何も残っていないけど、過去帳は残しておきたいというので、それなら、インターネットに過去帳をそのまま記録することができますよというお話をしました。その方のおっしゃるのには、今の自分があるのはご先祖のお陰だから、そのことを何かの形で残して起きたいというんですね。

Q:「サイバーストーン」にアクセスしてくるのはどんな方ですか?

松島:4月からスタートして、7月でアクセス数4000というのは、そう多くはないと思いますが、興味や関心を持って見てくださっている方は多いようですね。実際にお墓に入ろうという人はそれほど多くありませんが、反応はものすごく大きいようです。
 まあ、でもそれは仕方のないことで、実際にお墓のことを考える60代、70代の人たちは、インターネットがなんたるかもわからないでしょうし、インターネットを主に利用する若い人たちは、お墓についてまだ考えることはないでしょう。
 雑誌で紹介された3Dで霊苑の中を探索するというのに興味があって、たまっごっちのお墓と同じくらいの感覚で見に来るんでしょうね。でも、これから10年、20年たつと、そうした人たちが興味を示してくれるようになると思います。

Q:「サイバーストーン」には、お骨ではなくて、髪の毛を納めるんですね。

松島:お墓にはふたつの側面があります。ひとつは、お骨を納めておくという側面、もうひとつは、記録を納めておくという側面です。記録のほうは、これまでの墓誌に書かれているのは、せいぜい名前と戒名と没年月日と享年くらいですが、インターネットという現代の媒体を利用して、その方の声や写真や経歴を残すことができます。
 今は、お墓がなくて困るという方のほかに、あって困るという方もいらっしゃいます。郊外に大きなお墓を作ったのはいいけれど、のちのち管理する方がいなくなってしまう。それでは、いくら大きなお墓を作っても無駄ですね。
 それよりも、ネットワークの中にお墓を作って、縁者はどこにいたってインターネットにつなぎさえすればお参りができる。それなら、お骨ではなくて、灰にして自然還元することで、「お骨レス」にする、身体的なものが何も残らないのは淋しいというのなら、髪の毛を残したらどうだろう。
 焼いたお骨には遺伝子情報は残っていませんが、髪の毛には個人を識別するDNAの情報があります。今はDNAというと、クローン羊だなんだという議論になりますが、個人を識別するものを後世にわたって残すのは意味があるんじゃないでしょうか。もちろん、セキュリティの面では、髪の毛を納めた場所は公表しないとか、慎重に進めることが必要だと思います。

Q:将来は、「サイバーストーン」のようなお墓が普通になるのでしょうか。

松島:お墓に対する価値観というのは、どんどん変わっています。ここで霊苑を初めた10年には大きくて立派なお墓を建てたいという方が多かったのですが、今は景気が悪くなっていることもありますし、お墓の面倒を見てくれる子供がいないからというので、共同のお墓でいいという方が増えています。
 共同では淋しいというのではなくて、死んだら親類縁者はひとりもいないという人でも、共同のお墓なら誰かがお参りに来てくれる。そういう安心感に支えられている部分はあるんですね。
 それと同じように、インターネットのお墓なら、全然知らない人がアクセスしてお参りしてくれるかもしれない。そういう安心感が持てるんじゃないかと思います。


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.11

日本で一番人気のある警察のホームページ

島根県警察・総務課広報係・恩田繁男さん

http://www2.pref.shimane.jp/police/

お役所のホームページというと、「お知らせや統計データが載っているだけの事務的なページ」という印象を持っている人は多いだろう。しかし、島根県警察と松江警察署のホームページは、そうしたイメージをくつがえすものだ。運転免許の情報や、神戸の男児殺人事件に関するコーナーなどのほか、銅鐸の発見された岩倉遺跡の紹介など地元に関する情報も怠りない。そのうえ、警察官や婦警さんの顔が見えてくるような個人的なページまである。このページを担当している島根県警察の恩田繁男さんにお話をうかがった。

Q:あれだけのページを、少ない人数で手作りするのは大変ですね。

恩田:私も今は総務課に移って、ある程度ホームページの専任になりましたけど、1年半前に松江警察署のページを立ち上げたときは、昼は自分の仕事をして、夜と土日にホームページ作りをやりました。きつかったですけど、好きでやっているので、苦にはならなかったですね。今は専任になった分、新しい企画もどんどん出して行かなくてはいけないし、仕事として成果を出さなければいけないというプレッシャーもあります。

Q:ホームページを作るとき、基本として考えているのはどんなことですか?

恩田:うちの売りというか基本的にいいところは、最新技術を使うのを避けていることだと思います。テキストベースで読ませるというのが基本で、VRMLとかJAVAとかショックウェーブにしても、本当は使ってみたいというのはあるんですが、あえてやらない。
 インターネットにはいつも必ず初心者がいますよね。ブラウザを新しいバージョンにアップグレードしていくことすら知らない人も見ているわけですから、最低でも、ネットスケープ2.0で動作するようなページにしてあげたいと思っています。
 小学生からお年寄りまで、すべての人に見てもらうためには、技術的には低くてもテキストの内容は豊富だというところに持っていく必要があります。去年日経アワードを受賞したときに、「あんたのところは技術はないけど、テキストで読ませる力はある」と言われました。企業のページなんかに比べると無味乾燥なところがあるかもしれませんが、内容だけはこまめに作っていきたいと思っています。

Q:県内だけでなく、全国からアクセスがあるそうですね。

恩田:本当は、島根県や松江市の人にもっと広報活動したり、生活情報を流さないといけないのかもしれませんが、県の人口が77万人、松江市が14万人ちょっとですから、その中ではたしてインターネットにつないでホームページを見る人がどれだけいるのかということがあります。
 警察からの情報は、例えば覚醒剤やピストルに関するものは、島根県でも東京でもどこでも一緒ですから、他県の人が、地元の警察にはホームページがないから、島根県警ににメールを出して相談するということも多いんです。
 「インターネットの警視庁」と言われたこともありますし、管轄外のことでも必要があれば、その県の所轄の警察に連絡します。

Q:今は、他の警察でもホームページを持つところが増えてきましたね。

恩田:「島根県がやったから同じことをやれ」と上から言われて作ると、作る側としては最初は困惑しますよね。カメラの勉強したりライターの勉強をしたりすれば、ある程度は撮れたり書けたりするでしょうけど、上から強制的にやれと言われても、面白いものはなかなかできません。
 うちは始めた頃は半分どころじゃなくて、7、8割方が遊び心で、「ダメだったら止めてしまえばいい」という気持ちでやっていました。それが、仕事になるとそうはいかないから、大変じゃないかと思います。
 うちにすると、最初にホームページを公開して、とにかく他を引き離したという感じですから、これからはもう少し内容をダイエットして行けば、当分はよそに追いつかれるようなことはないと思います。

Q:
新しくページを作る警察から相談されることもありますか?

恩田:98年2月にいよいよ警視庁がホームページを立ち上げるんですけど、電話がかかってきました。いろんな警察から相談されますが、相談で一番多いのはメールアドレスを公開するかどうかということですね。うちの場合は公開しているんですが、「対応が大変だから、よく考えたほうがいいですよ」と答えています。
 メールについては、私の場合は、9割方はその場で自分の考えで回答して、それ以上問題がある場合は、主管課に電話もしますが、これを書類にして回して返事をもらっていたりすると、1週間かかっても決着がつかないことになる。
 たとえば、駐車違反に頭に来てメールをくれた人がいたとしたら、いちいち交通課に回すのではなくて、「おっしゃることはわかります。この前、交通課と世間話をしてみたら、こういう理由で難しいみたいですよ」と、1時間か2時間でポンとメールを返してあげると、必ず感謝されますね。お役所的な言葉ではなくて、生きた言葉で返してあげると、向こうはびっくりするようです。そうすると、警察に対して文句でも言ってやろうと思ってメールを出したのが、かえって共感持ってもらって、だんだん考え方が変わってくるんだと思います。

Q:今後はどんな企画を考えていますか?

恩田:今、子供のページを作ろうということで、作業を進めています。小学校でホームページを持っているところが何千校かあるんですけれど、そのうち900校に向けて、「こんなページを作りますけど、要望はありませんかというメールを出しました。
 結局、30校くらいの熱心な先生から返事が返ってきて、その意見を取り入れて、いろいろな企画を考えています。たとえば、バーチャル警察署といって、建物の絵をクリックすると、それぞれの部署の部屋が出てきて、2人のバーチャルなキャラクターと一緒に探検したり、Q&Aやクイズのコーナーがあったり、そういう形で、子どもたちが遊びながら、警察の仕組みとか、社会の善悪について知ってもらえばいいですね。
 文部省のホームページはそういうことをやっていないので、うちは「ネット界の文部省」を目指して、学校のネットワークを作って、警察以外にも、ポケモンやキューティハニーの話なんかの情報交換ができるようする。「島根県警にアクセスすれば、小学生でも楽しめるんだよ」と言われるページにしたいですね。
 文部省や教育委員会や学校がネットワークを作ろうとすると、いろいろ難しいことがあるようですが、逆に警察というのは、そういうことはやりやすいんです。


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.12

シンガポールの情報を満載した人気ページ「シンガポールうまいもの探訪」

都竹淳也さん・薫子さんご夫妻

http://www.asahi-net.or.jp/~pp7j-tzk/welcome.html

シンガポールのグルメだけでなく、観光情報や競馬の情報まで満載した人気ページ「シンガポールうまいもの探訪」が、作者夫妻の日本帰国に伴い9月10日で終了した。継続を望む声に答えて、日本で復活する予定だそうだが、新鮮で詳しい情報を提供してきた人気ページは、これからどうなるのだろう。帰国間もない都竹(つづく)さんご夫妻に、シンガポールでの仕事の合間を縫ってのフードセンター巡りや、ホームページ作りの苦労についてお話をうかがった。(「シンガポールうまいもの探訪」は、ページの保存を求める多くの声に応え、日本で再公開、URLは、http://www.asahi-net.or.jp/pp7j-tzk/)

Q:「シンガポールうまいもの探訪」はどんなきっかけで作ったんですか?

都竹:僕は岐阜県の職員なんですけど、自治省の外郭団体に出向して、2年間シンガポールに行っていたんです。この団体は海外6か所に事務所があって、各県の職員が派遣されています。行政施策の調査や、日本から来るお客さんの案内や国際会議などが仕事です。 シンガポールの前は東京に勤務していたんですが、そこで初めてMacintoshにさわったくらいで、それまではパソコンのことは全然わかりませんでした。シンガポールの事務所でインターネット導入を担当して、シンガポールにも日本語のページがいろいろとあることがわかったんです。
 その中に、「B級グルメパラダイス」というホーカーズ(シンガポーリアンの食卓とも言える屋台の集合体)をテーマにしたページがあったんですけど、それが終わっちゃったんですよ。そのことがきっかけで、自分でも何かやれないかなと思って、最初はモデムだけ買ってオフィスのパソコンでインターネットをしていました。
 その後、96年8月にパソコンを買ったんですけど、9月は国際会議があって、夜中まで仕事で、なかなかできなくて、それが終わってからHTMLを勉強して、1か月くらいでページをオープンしました。

Q:パソコンの経験がないと、最初はインターネットに接続するのも大変だったでしょうね。

都竹:最初はモデムをどうつないだらいいかもわからないし、ダイヤルアップはどうやるのかもわからない。シンガポールのプロバイダーから送ってきた解説書を見てやるんですけど、英語なのでなかなかうまくいかない。ブラウザーというものが必要だというのも知らなかったんです。
 シンガポールにはプロバイダーが3社あって、僕が使っていたところはホームページは2MBまで無料で、そのあと、1MBごとに1600円と高かったんですが、2、3か月前に値下げになって少し助かりました。

Q:シンガポールのグルメ情報としては、十分すぎるくらい充実していると思いますが、食べ歩きというのは以前からお好きだったんですか。

都竹:高級なグルメというより、B級グルメですね。仕事で行くまでは、シンガポールどこにあるのかも知らないくらいだったんだけど、行ってみたら食べ物がおいしくて、すっかり気に入っちゃったんです。近くにあるホーカーセンターのメニューを、帰るまでに全部食べてやろうと思って、毎週行っていたという感じです。
 今は日本に帰ってきましたけど、すぐでも食べに行きたいですよ。料理だけじゃなくて、生フルーツのジュースなんかもおいしいですし。今年はドリアンが豊作だったので、たくさん食べましたよ。

Q:グルメの他にも、観光スポットの解説とか、競馬の話とか、いろいろなページがあって、情報もかなり詳しいですね。

都竹:僕たちってけっこうお節介なんですよ。たとえば、シンガポールで競馬に行きたいという人に、「このことも言っておかないとまずいかな」と、やっているうちにどんどん長くなってしまうし、それがページの目的でもあるんです。
 そのほかにも、日本人観光客の90%は行っている「ナイトサファリ」というアトラクション。ガイドブックにも概要は紹介されているけど、7時半の開演時間に行くと日本人のツアー客で満杯。時間をずらそうとすると、「帰りはもうタクシーがつかまらないよ」と脅されて、ツアーに参加させられそうになるけど、実はそんなこと全然ない。そういうことはガンガン書くんです。二人とも大学時代新聞部にいたので、書くのはそんなに苦にならないんですよ。

Q:でも、それだけ情報を集めるのは大変でしょうね。

都竹:幸い、お客さんとか友人や親戚がシンガポールに来るたびに、いろんなところに一緒に行けるんです。ナイトサファリも10回とか15回行っています。このアトラクションは前から7番目くらいの席に座るといいとか、繰り返し行かないこっとわからないことがあるじゃないですか。せっかく情報をいっぱい持っているのだから、他の人に役に立ててもらわないともったいないですから。

Q:まだ知られていない「おいしいお店」はどうやって見つけるんですか?

都竹:ローカルのタウン誌を参考にするという方法もあるのですが、僕らの場合は、行き当たりばったりのほうが多くて、地図を見ててフードセンターのマークがあると行ってみるという方法です。
 たいていは週末に食べに行くんですけど、すべておいしい店というわけじゃなくて、土曜と日曜の昼と夜、4打席連続三振で愕然とすることもあります。逆に、いい店に当たると感動します。観光客の行かない、それどころかシンガポール在住の日本人ですら行かないようなところにもかなり行っています。

Q:日本に戻られてから、ページはどうするんですか? 続けてほしいという希望も多いそうですが。

都竹:僕らのポリシーとして、「新鮮な情報の載っている、現地在住の人じゃないと書けないページにしよう」というのがあるので、本当は日本では維持していけないんです。ただ、あまりに「続けてくれ」、「残しておいてくれるだけでもいい」という声が多いので、更新はできないんですが、とりあえず日本でも公開します。
 ある程度の期間は使えると思いますけど、シンガポールは変化が激しくて、僕等が帰る前の1週間くらいでも、閉じちゃった店があるくらいです。今後は、様子を見ながら、読者でシンガポールに旅行した人の情報を載せるような投稿型のページにできないかなとも考えていますが、まだどうなるかはっきりとしたことはわからないですね。


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1998.1

カナダ・バンクーバーの観光、留学、ワーキングホリデーなどの情報を
現地から発信するオンラインマガジン「ちゃうだぁ

カトゥーザ社の田中章雄さん、栗原葉子さん、須賀正明さん

http://www.chowder.net/

カトゥーザ社のスタッフ
左上から、Trevor, Nori, Gus, Cameron, Akio,
左下から、Kane, Steven, Yoko, Hisashi

カトゥーザ社のみなさん

97年11月、「ただマガジン」から誌名変更して、さらにパワーアップしたオンラインマガジン「ちゃうだぁ」は、カナダのバンクーバーの観光、留学、ワーキングホリデーなどの情報を現地から発信しているユニークな存在。バンクーバーに行く機会を得た今回、発行のきっかけとなったカトゥーザ社の田中章雄さん、栗原葉子さん、須賀正明さんをはじめ、スタッフのみなさんにお話をうかがった。

 田中章雄さん

Q:「ちゃうだぁ」はどんなきっかけで始めたんですか?

田中:カトゥーザはインターネット上の業務アプリケーションなどのソフト開発会社なんですが、その「堅い」仕事のすきま部分で、メインの部分とは正反対の「楽しいこと」として、バンクーバーに密着したオンラインマガジンをやろうかという話が96年6月くらいに出たんです。
 うちの関連会社にインターネットのホスト業をやっているところがあるんですが、そこにスポンサーになってもらいました。コンテンツは、普段はプログラミングやっているうちのスタッフが昼休みに作りました。 第1号の発行は96年9月ですが、最初は息抜きで始めたようなもので、こんなに続くとは思っていませんでした。そのうちに、ワーキングホリデイでバンクーバーに来ている日本人に取材スタッフに加わってもらって、いつの間にか大きくなって、今は月に20万ヒットくらいあります。

Q:最初の頃はどんな感じだったんですか。

栗原:最初は1日数十件のアクセスで、スタッフ3人の友達が見てくれているだけという状態でした。「Yahoo! JAPAN」に登録したらだんだん増えてきて、そのあとは、月刊誌に紹介されたり、日本のFM局にインタビューされたりして、また突然増えたりという感じです。
 今は、日本からのアクセスが半分、カナダ国内からのアクセスが4分の1。それ以外は、海外のいろんな国の日本人からという比率です。英語学校でインターネットを引いているところから、アクセスしてくれる人もいます。

Q:メインの仕事の暇を見つけて編集しているそうですが、大変ではないですか?

田中:メインの業務で作っている出版システムがあるんです。元々は企業の社内用ニューズレターの製作・管理を簡単にするためのツールなんですが、それの「ちゃうだぁ」版を開発して、近々導入する予定です。
 そうすると、記者の人は、オンラインでつないで、自分が好きなときに記事を書いておけば、それが自動的に送られて、編集者はチェックするだけで、自動的にページが作れるようになります。HTMLは全然意識しないでいいですし、リンクもシステムが自動的にやってくれますから、ミスも少なくなります。
 記事はデータベースに入っていて、読者がアクセスすると、そのときにデータが新たに読み込まれて作成される仕組みです。ユーザーから見ると、そういうHTMLのページがあるようにしか見えないんですが、後ろでは全部ダイナミックに作られている。データ部分と表示する部分が分かれているので、更新しやすくなります。このソフトは近々製品としても発売する予定で、「ちゃうだぁ」でベータテストをするという感じですね。

Q:カトゥーザという会社はスタッフの半分が日本人だそうですね。

田中:カトゥーザの設立は95年秋で、僕がブリティッシュ・コロンビア大学の大学院のときに、インターネットも含めた情報システムに関わる人たちで設立した会社です。大学でインターネット関係のコンサルティング業務をやっていたんですが、仕事量が増えてきたので、どうせならきちんと会社を作って対応しようというので作ったんです。

Q:バンクーバーは留学やワーキングホリデーで来ている日本人は多いんですか?

栗原:カナダでは、日本人は年間3500人ワーキングホリデイのビザが取れるんです。でも、希望者が多いので、来年の受付から厳しくなって、3人に1人くらいが当選という形になるらしいですね。ワーキングホリデーでは、オーストラリアやニュージーランドも行けますし、今年からカナダが韓国についても受け入れを始めました。
 須賀(正明)さんもワーキングホリデイで来て、ここに勤めています。バンクーバーだと、コンピューター関係とか設計関係の仕事が多いので、人気があるみたいですね。

須賀:僕はカナダに来る3か月くらい前に「ただマガジン」を見て、カナダってこんなところなんだなと思って来たんですけど、全然仕事が見つからなくて、「ただマガジン」でも見ようかと思ってここの会社に来たんですが、まさか自分が作ることになるとは思ってもみませんでした。


 栗原葉子さん

Q:バンクーバーはインターネットのアクセス環境は非常にいいそうですね。

田中:カナダ全体で、人口当たりのドメイン登録数が一番多いのバンクーバーです。バンクーバーは、アメリカのシアトルやポートランドと共にシリコンバレーノースの一部で、昔からインターネットは普及しています。個人向けのプロバイダーもたくさんあって、月20〜25ドル(1カナダドル=約90円)で、ほとんど無制限に使えます。日本と違って、電話料金が固定制ですから、一日中つなぎっぱなしにもできます。
 今度、自宅に引いているケーブルテレビがインターネット接続サービスを始めるんですが、それだと、ダウンリンク512kbps、アップリンクがISDNくらいで、月50ドル〜60ドルくらい。もちろん一日中つなぎっぱなしにできます。バンクーバーの場合、ほとんどの家庭にケーブルテレビが普及していますから、インターネットが使えるようになるとさらに便利になりますね。

栗原:バンクーバーでは、図書館でも、インターネットが無料で使えます。1回30分までで、7階まで各階に4台くらいありますが、それでも混んでいて予約を入れないといけません。私がこの会社に入ったときも、求人広告を見てから、図書館に行って、インターネットでチェックしました。一般の人や観光客でも使えますよ。

Q:「ただマガジン」から「ちゃうだぁ」へ、どんなところが変わるんでしょう?

栗原:まず組織的には、今までの日本人スタッフに、カナダ人のスタッフが加わり、総勢13名になりました。現地で育ったカナダ人からの地元に根づいた情報もお届けていきたいと思っています。
 内容的には、ただマガジンよりもっと自由に、その時その時のホットな情報をアップデートしていきます。今までは、一部のコーナー以外は月1回の更新でしたが、これからは最新の情報をどんどんお届けできると思います。
 バンクーバーってきれいでとっても気持ちのいいところなので、「ちゃうだぁ」を通してバンクーバーに興味を持ってもらえるようなマガジンにしていきたいですね。最新情報を随時アップデートしていくつもりなので、ちょこちょこ訪ねてきてもらえるようなサイトになるとうれしいです。(97年10月取材)


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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1998.2

メールサービス「CSJプレゼント新着情報」にユニークなコメントを毎日つけている

河口宣子(かわぐちのぶこ)さん

http://csj3.csj.co.jp/Present/

「CSJインデックス」(http://www.csj.co.jp/csjindex/)という検索サービスでお馴染みの、サイバースペース・ジャパン株式会社の懸賞情報サービス「CSJプレゼント」をご存じだろうか。このサイトでは、ホームページのほかに、休日をのぞく毎日、新着情報のメール配信サービスをしているが、担当の河口宣子さんが冒頭に付けている毎日のメッセージが面白い。聞いてみると、宣子さんはこの間まで女子高校生だったという。どんな女の子だろう? 代表取締役の細江治己さんと一緒にお話をうかがった。

Q:河口宣子さんは、どんなきっかけで、プレゼントの新着情報の仕事をするようになったんですか?

細江:彼女は、去年、高校2年の秋に家庭の事情で学校を辞めて、知り合いの紹介で当社で働くようになりました。最初は高校生で大丈夫かなと思ったんだけど、数学が得意だというから、手伝いということで会社に来てもらったんです。でも春になって、やはり勉強を続けたいというので、家が鎌倉のほうで通勤に1時間半くらいかかってしまうので、4月からは、仕事の一部のプレゼント情報を自宅で担当してもらっています。学校のほうは、通信制の高校で、夏には大学検定も受かって、今は受験生なんです。

Q:受験生なのに、毎日新着情報のそれぞれのプレゼントのコメントや冒頭のメッセージを書くのは大変じゃないですか?

河口:今は、掲載を申し込んできた人が締切日とかも登録してくれるので、とっても楽になりました。そのページに行ってプレゼントが実施されているかどうかと、コメントが付けやすいようにどんなページなのか確認する程度です。朝起きてすぐじゃないほうが、コメント書きやすいので、昼前から始めて昼過ぎまで、だいたい2時間くらいしかかかりません。

細江:前は、メールだけじゃなくて、ページ全体の管理もやっていたから、〆切を過ぎた情報を手動で消さなければならなかったんです。今は、締切日を越えるとサーバーが自動的に消しますから、そういう作業はしなくていい。コメント書きに専念できるようになったから、そういう意味で楽になったんでしょうね。

Q:朝起きてすぐじゃないのは、どうしてですか?

河口:新着メールでも暴露していますが、私は本当に寝起きが悪いんです。

友達と昼寝していると、その子の名前呼んでいて、その子が「何?」って聞き返した声で、私は目を覚ましたり。
寝起きに電話していたこと、全然覚えていなかったり。
昨日なんて「私ね、今怖い夢みたの〜」ってその内容を細かく説明して、しまいにゃ半べそかいて、抱きついて、また、くぅ・・・と寝てしまったそうで。
私は何も覚えてない!(1月6日のコメント)

 だからあまり起きてすぐは頭がまわってない、というのが第一の理由です。それに、自分ではあまり意識していませんが、文章の案が浮かぶのには、案外時間がかかっているようです。「考えよう考えよう!」というのはあまり好きではなくて、どちらかというと、「何か、ポっと頭に浮かぶまで待ってよう」と文を書いているタイプの人間なので、起きて、しばらくしてからの方がお気に入りのメッセージを送れるんです。

Q:インターネットを始めたのは、CSJで仕事をするようになってからですか?

河口:はい。それまで、パソコンにはさわったことなかったんです。前に通ってた学校にも置いてありましたけど、パソコン嫌いだったからゲームすらやらなかった。だから、最初はパソコンの仕事だって聞いて、「できないだろうな」と思いました(笑)。インターネット自体も知らなかったので、細江さんにインターネットは何かというところから話ししていただいて、それなら面白いかなと思って。

Q:初めてインターネットを見て、どう思いましたか?

河口:文明は発達したなと思いました(笑)。最初は、通信以外の簡単なソフトの使い方も全然知らなくて、初心者向けの本を買ったり借りしたりして読んでばかりしていました。インターネットを楽しめるようになったのは、だいぶたってからです。ほんとうに何もわからなくて、「このボタン押すとどこに行っちゃうのかな」という感じでしたから。それと、一年前のことなので、あまり覚えていないのですが、「もっとはやくインターネットを知っていれば良かった!!」と思ったのは覚えています。

細江:最初は会社でお手伝いが多かったんです。ワープロ打ちとか、エクセルで計算するとか、お姉さんたちの下請けをやってもらっていました。数学が得意だとロジカルな考え方ができるから、スタートはゼロでも、教えれば覚えるのはすごく早いですね。とてもしっかりしているし、優秀な子ですよ(笑)。

Q:数学だけじゃなくて、文章もうまいですよね。

河口:外で遊ぶのも好きだけど、小さいときから詩を書くのが好きだったし、本とか読むのも全然イヤじゃなかったので、たぶんその延長じゃないでしょうか。日記は続かなくて、学校の宿題もためてしまうタイプだったけど、気が向いたら、詩とか書いたりするのはすごく好きです。手紙も書くときは書くし、文章書くのはあんまり抵抗ないですね。

Q:ファンレターもメールで届くそうですね。

河口:最近来るようになりました。その日のコメントについて、その人によって感じとることが違うみたいで、「これにはひとこと言わせてもらうわ」、みたいなのとか、そういうのが多いです。でも、一度メールが来て、私も時間があるときに返して、それきりになっちゃう方が多いですね。たぶん相手も、一回出して返ってきて満足しちゃうんでしょうね。でも、人数は少ないですけど、ずっとやりとりが続いている方もいらっしゃいます。

Q:コメントを書くのはワープロだと思いますが、自分の日記もワープロでつけるんですか?

河口:まさか(笑)、ノートですよ。鉛筆で書くのが好きなんです。今は、家計簿とか日程表とかパソコンで処理している方が多いとか聞くんですけど、私には一生できないだろうなと思います。『インターネットマガジン』の取材でこんなこと言うのはよくないと思うんだけど(笑)、デジタルの情報って自分でも慣れていない部分があって、「消えちゃうもの」、「残らないもの」としてしか、捉えられないんです。自分のそういうところ、これから、思いっきり世の中渡っていけなそうだと思うんですけど。

Q:自分が書いたメッセージは読み返したりしますか?

河口:1週間分くらいは戻って見ますけど、それ以前のは見ないですね。でも、ノートに書いている日記は何度も見たい。「2か月前はこんなこと考えてたの?」とか、「1年前は全く同じこんなことやってたの?」とか、思い出せるでしょう。

Q:毎日コメントするのに、いろんな人のホームページを見ると思いますが、どうですか?

河口:見てて触発されるというか、すごいっ、と思わせるメールが多いんです。私は意外と小さなページが好きで、果樹園を家でやっている方とか、「うちはパン職人です」とか、そういう職人系というわけではないけど、「でも俺は命かけてる」とか書いている人を見ると、すごい!、と思って。こだわりがあるのが、すごく好きだから、そういうページに惹かれます。今はコメントを書くこと自体楽しんでやらせていただいてます。これからも会社がやらせてくれれば、時間が許す限りこの仕事を続けたいですね。


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