We Love Internet People from INTERNET magazine
あの人に会いたい!

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We Love Internet People あの人に会いたい!…………INTERNET magazine 1997.6

1.5ボックスワゴンとMacintoshで1年間。日本一周を達成

バガボンドマンこと竹村純二さん

http://www.root.or.jp/vagabond-man/

 Vagabond-manこと竹村純二さんは、現在、トヨタの1.5ボックスワゴン・グランビアにMacintosh Powerbook 5300cを積んで、365日日本一周の旅の真っ最中。北海道から沖縄まで、名所旧跡を訪ね、おいしい物を食べるだけではんく、北陸の重油流出事故の時には、ボランティアとして駆けつけるなど、その模様はインターネットのホームページで詳細にレポートされてきた。96年5月20日にスタートして、ゴールを間近にしたバガボンドマンに会いに、3月27日、大分空港に飛んだ。


10か月走ったが、ボディにURLを書いたクルマは1台も見なかった


Q:そもそもこの旅を始めたきっかけは?


竹村:もともと、1年間かけて、日本を一周したいというのは何年か前からあったんです。一昨年会社を作らないかって誘われて、気軽に返事をして、(株)バガボンドというデジタルとかマルチメディアの会社を作りました。インターネットカフェの立ち上げとか、コンピュータ使ったアートワークとか、ファーストクラスを使ったパソコン通信・VAGABOND23とか、CD-ROM作ったりとか、テレビ番組の企画とか、1年くらいそういう仕事に翻弄されていたんです。

 でも、やっぱりデスクワークは苦手で、ストレスがたまるんですね。そろそろ潮時かなと思って、会社を辞めさせてもらえないかと社長と話しているうちに、日本一周をやってみようかなと思い出したんです。それが96年の初めくらいです。


Q:そのあと、5月の出発までどんな準備をしたんですか?


竹村:だったらそれを仕事にしたらいいと言われて、モバイルもインターネットも知ってましたから、日本一周に「モバイルコンピューティングで仕事を実践する」というキーワードを1個付けて、「Vagabond-man」プロジェクトを作ったんです。けっこう経費がかかるので、いろんな企業に企画書を持って行って、クルマはトヨタさんにグランビアというワゴンを、アップルさんにパワーブックを提供していただいて。

 見返りではないんですけど、インターネットのホームページで毎日旅日記をアップします、パソコン雑誌やクルマ雑誌にも連載をします、ということにしたんです。これで、一番お金のかかりそうなところはクリアできたので、最初はエイプリルフールだし4月1日出発しようと思っていたんですが、準備で少し遅れて、5月20日に東京を出ました。


Q:モバイルの実験とか、ホームページの準備は、どのくらい前からしましたか?


竹村:モバイルの実験は全くしなかったし、ホームページを立ち上げたのも、スタートの日です。最初の2か月くらいは携帯電話での通信ができなくて、モジュラージャックの使えるISDN公衆電話を探し回っていました。PCカードもうまくいかなくて、外付けのモデムでやっていました。

 今は、ほとんど携帯電話で通信して、時々重たいデータを整理するときに、街角のISDNにつないでやっています。一応14400bpsで使える音響カプラーも持っていますが、不安定で、調子のいいときに1回だけつなげただけでした。


Q:ISDN電話を探すのは大変じゃないですか?


竹村:今は、どんな田舎に行っても町に1か所くらいはISDNの電話ボックスがありますね。最初はNIFTY-ServeのISDNフォーラムから設置リストをダウンロードして検索して、几帳面に翌日の場所を探していましたが、だんだんどこにあるか動物的な勘でわかるようになってくるんです。だいたいある場所は決まっていて、一番確実なのはNTTの営業所。小さな町だと、走っているとNTTの鉄塔が見える。そこを目指して走っていけばいい。後は駅ですね。


Q:毎日ホームページを更新したり、原稿を書いたりけっこう時間がかかると思いますが。


竹村:雑誌の連載原稿は月3本。あと、週1回テレビをやっています。CS(Communication Satellite)のパーフェクTVに「旅チャンネル」というステーションがあるんですけど、そこにデジカメで撮った画像をインターネットで送って、10分くらいの旅先からの生レポートをやっています。それとホームページ作成で、1日3時間から5時間はとられます。

 夕方過ぎに泊まるポイントを決めて、夜中まではその作業。フォーマットを決めているので、ホームページ作成は時間がかからないんですけど、テキストを書くのが大変です。旅をしているといっても、毎日そんなにいろいろなことがあるわけではないですし。みなさんからメールをいただいて、毎日読んでいただいているんだなと思うと、何とか読める文章をと思うんですけど。


最近はくじけて、週に1回くらい宿に泊まるが、それ以外は後部座席で眠る


Q:メールは毎日どのくらい来ますか?


竹村:1日平均10通くらいです。女性が半分くらいで、定期的にくれる人も何十人かいます。リアルタイムでずっと読んでくれている人がいるのはうれしいですね。読んだ感想を書いてきてくれたりして、返事を書きたいなと思った人には、メールを出します。全員に返事を出したいんだけど、それはちょっと追いつかないですね。メールを読んで返事を出すのもけっこう時間がかかるんです。定期的にメールをくれる人や、情報をくれる人には、うまく都合がつけば会うこともあります。ただ、向こうも仕事持っていたりするので、そう簡単には会えませんけど。


Q:行く先々のテレビ局や新聞や雑誌にも取り上げられているそうですね。


竹村:一番すごかったのは、徳島県庁で記者会見を開いてしまったことですね。たまたま、県庁の広報に、「そちらに行くんだけど、面白そうな話題があったら教えてください」と電話をしたんです。それが、話の流れで、「どんな旅をしているんですか」と聞かれて、向こうが「じゃあ」ということでセッティングされたんです。県庁の記者会見場みたいなところで、テレビ局がカメラ抱えてきたりして、「テレビで見ましたよ」というメールがあとから来ました。

 ただ、そういう話題性のために旅をしているわけではないので、あんまりやると、違っちゃうような気がするんです。そうじゃないものが何かあるんじゃないかと今も模索し続けているんです。何が結果として出るかはいまだに自分でもわからないんですけど。ただ、来るものは拒まずですから、これからあと少し、いろんなメディアが取り上げてくれるといいですね。終わってからも、どこかで、クルマとか一式の展示とかできると面白いし。



Q:5月20日にひとまず終わりだそうですが、最後に何かイベントは考えているんですか?


竹村:猿岩石みたいなことはないですよ(笑)。最初は、高いところで終わるのもばかばかしいから、漠然と富士山に登って終わろうかとも思っていたんですけど。5月だとまだ登れないでしょう。そのまま海外に行って、返還前の香港で終わるというのもあるけど、パスポート切らしていますし。でも、そろそろ何か考えないといけないなと思っています。


Q:日本一周の次は、アメリカ一周とかどうですか?


竹村:それは考えているんです。一番最初に書いた企画書には、「僕の旅は5か年計画だ」と書きました。最初の1年が日本一周で、次がアメリカ一周で、その次がヨーロッパ、それからアジア。ただ、精神的にそこまで持つかどうかわかりませんね。スポンサードしてくれる人がいたらありがたいですけど、結局持ち出しになりますから、辛いですね。かといって、テレビの企画だと、シナリオが決まっていて、演じるだけの役者になってしまいますから。


Q:5月20日以降の予定は?


竹村:今やりたいことが山のようにあるんです。日本中で見てきたことを、何か違った形で形にしていきたいですね。地域活動やっている人とか魅力的な人にたくさん出会ったんですけど、そういう人たちと、インターネットみたいなメディアを使って面白いプロジェクトができないかなとか考えています。

 ずっと旅を続けていると、環境とか自然とか、いろいろ身につまされることがあって、まだ具体的ではないけど、やりたいことは山のようにあります。よく、旅で自分を見つめ直すってあるじゃないですか。いろなところでいろんな人と出会って刺激を受けましたし、協力してくださった方へのお礼や報告もありますし、単行本とか何かの形でまとめたいとも思うし、けっこう忙しそうです。


Q:あと少しですけど、最後まで元気で頑張ってください。


竹村:そうですね。インターネットやっているから、ここまで続けてこれたというのが、ありますね。単純に何もしないで旅を続けていたら、精神的に1年も持たなかったと思います。毎日ホームページを作らなくちゃいけないという枷(かせ)があって、読んでくれた人からメールが来て、つながりが生まれたり、すごい助かっています。ホームページを作っていてよかったですね。時間的・体力的にはきついですけど、それがなかったら、これまでやってこれなかったと思うし、もっと旅の形も変わったんじゃないでしょうか。


3月までの走行距離は、3万3000キロを超えた


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