| セイラン様: | ちょっといいかい。君に伝えたい言葉が頭から離れなくて、どうにも寝付けないんだ。話を聞いてもらえると、ありがたいんだけどな。 いい夜だね。・・・風も悪くない。 こんな夜は思い出すな。騒がしくも懐かしい、女王試験の日々を・・・。 風に歌う木々の声も、優しく微笑う月の光も・・・ 変わらないね。 時の流れを忘れるよ。 真に美しいものは、どんな状況でも変わりはしない。 「真実」は「普遍」と同義なのさ。 ・・・って、アンジェリーク、聞いてるかい? そんなに憂鬱な顔をして聞く話じゃないんだけどな。 今の君を見ていると、何だか心配になってしまうよ。 ちょっと聞かせてもらってもいいかい? 困難な状況に陥ると、周りのすべてを灰色に塗り替えてしまう人がいる。 心の色すら、ね。 まさかと思うけど、君もその一員なんじゃないだろうね。 この景色を灰色だ、なんて思ってはいないかい? |
| アンジェリーク: | まさか! |
| セイラン様: | そう。 安心したよ。 君の瞳はまだ、真実を映しているみたいだね。 それなら、僕と同じ観点で見られるだろう。 この景色も・・・旅の行方も。 共に結末を迎える瞬間を、楽しみに待たせてもらうよ。 ・・・君の隣で、ね。 さて、と。 そろそろ帰ろうか。 しつこい視線は、月も嫌がるだろうから。 送るよ、アンジェリーク。 |
| アンジェリーク: | セイラン様・・・ゥ |
| セイラン様: | 君は星の並びを見て、何を考える? 偶然の生んだ配置の妙? ・・・僕の考えは、違うな。 気まぐれに撒かれたように見える星たちだけど、本当は見えない糸でつながれているんだ。 夜空はいわば、美しいネックレスなのさ。 壮大なスケールのね。 この考え方は意外かい? でも、これは何も、夜空に限ったことじゃない。 たとえば・・・「時間」を糸でつなぎ、生と死という両端を結ぶと、輪になるものがある。 何だか、わかるね? ・・・そう、僕らの一生だよ。 飾りが違うだけで、作り方は同じなのさ。 夜空のネックレスの飾りは、星々またたき。 僕らのは・・・そうだな、与えられた日々てことか。 君の日々は宝石? 石ころ? けっこうつらい毎日だけど、君のネックレスは、ちゃんと輝いているかい? つらく厳しい時間も、美しい宝石だと断言できる? |
| アンジェリーク: | はい! |
| セイラン様: | 君と僕の共通点を、またひとつ見つけたね。 ・・・そう、僕もこの時間を、貴重な宝石だと思ってる。 滅多に出来ない体験だし・・・なにより、隣にいる君がいつも、新鮮な驚きを与えてくれるからね。 そんな毎日を、石ころなんて言えないよ。 君を含めた輝かしい日々・・・素敵な宝石を与えてくれた運命に、感謝したいよ。 もちろん、君にもね。 話が長くなっちゃったな。 本当はもう少し、こうして語っていたいけど・・・ もう、遅いようだね。 足りない言葉は、またいつか伝えることにしよう。 ・・・部屋まで送るよ。 |
| アンジェリーク: | セイラン様・・・ゥ |
| セイラン様: | 一大悲劇の最終幕を演じる、オペラ歌手みたいだね。何がって? ・・・今の君の表情さ。怖い? 悲しい? つらい? ・・・そう思ってるなら、今すぐ言葉に出すことをお勧めするよ。さあ、言ってみなよ。愛が震えて止まらない? 僕になぐさめてもらいたい? 今すぐ逃げ出しだい? ・・・くだらないね、どれも。宇宙の女王が、こんなに弱い心の持ち主だなんて知りたくなかったな。軽蔑するよ。あきれてものも言えない。君は弱虫で、自分勝手な利己主義者だ。ついでに言わせてもらえば、人に頼るだばかりの、僕のもっとも苦手とする「女性」そのものだね。 |
| アンジェリーク: | ・・・そんな・・・。 |
| セイラン様: | ・・・やっと、怒ってくれたね。ずっと虚ろな顔をしているから、怒りの感情を忘れたのかと思ったよ。さあ、もっと、君の心を言葉にしてくれよ。・・・僕がそれをすべて否定してあげるからさ。心の揺らぎも、足の震えも、くだらないねと一蹴して、腹立ちに変えてあげよう。憎んでもいい、無神経だと軽蔑してくれても構わない。・・・アンジェリーク、僕の心がわかるかい? 君を守ってあげる。・・・そういう甘い言葉を紡ぐのは、簡単なことさ。だけど、甘えが君の弱点になってしまったら・・・君を失うことにつながってしまったら・・・。・・・後悔はしたくない。だから、怒ってほしいんだ。君が強く闘えるように。屈折してると、・・・自分でも思うよ。 明日は早い。そろそろ夜空に別れを告げる時間だね、アンジェリーク、部屋まで送るよ。・・・と、その前に。悪いけど、拭いてくれないかな。君の涙は・・・胸に痛いからさ。 |
| アンジェリーク | セイラン様・・・ゥ |
| セイラン様: | ・・・アンジェリーク。 |
| アンジェリーク: | え・・・? |
| セイラン様: | 最後の時間を同じ色に染めたい。 ・・・来てくれるかい? 旅の間、君とこうして何度か夜空を見上げたね。 ・・・覚えているかい? 思い返すと、夢の記憶だ。 遠く霞がかった、懐かしい色をしている。 ・・・それにしても、本当に君は大した人だな。 宇宙の危機をクリアしてしまうなんてさ。 挫けず、諦めず・・・ さすがは宇宙の女王だね。 だからこそ、僕は・・・ 好きだったんだ。 敵と闘うことも、知らない街を歩くことも、 ・・・君と微笑うことも。 君の創る、波瀾万丈な物語の登場人物でいたかった。 これから先も、ずっとね。 だけど、君の創る物語は、僕の知らない紙の上に綴られていく。 明日から、未来に向かって。 退場する詩人より、せめて言葉を贈らせてくれ。 飾った言葉ではなく、 ・・・真実の言葉を。 君が・・・好きだよ。 過去も、現在も、未来も二人で過ごしたかった。 同じ時間を生きたかった。 君の歩く姿を、この目で見ていたかった。 ・・・僕の人生を確かめてもらいたかった。 参ったね、この僕が一人の女性に、こんなに心を奪われるなんてさ。 だけど、本当に・・・生涯、君以上に興味深い女性には出会えないと思うよ。 これからは、君への想いを詩に変えていこう。 共に旅した冒険から、曲を生み出していこう。 君と見た想い出の風景を、絵に起こしていこう。 ・・・・・・だけど・・・ |
| (アニメーション) | |
| セイラン: | 僕は、もう肖像画は描かない。 今の君の姿を心に描いたものが最後の肖像画だ。 だから、今は動かないでくれ・・・ 君の姿を記憶の中に描き留めるから・・・。 さよなら・・・は言わないよ。 生涯ただ一人の相手に別れの言葉を叩き付けるほど、僕は運命に従順じゃないよ。 わかるよね? |
| (セイラン様独白) | |
| 打ち返す波のように、時は記憶を連れ去るけど・・・ 僕の心は流れゆくことを知らない。 旅の始まりは、僕の瞳が君の姿をとらえたあの日。 驚きに満ちた、突然の再会だったね。 あれから僕たちは、見知らぬ街をさまよい、様々な風景に出会って、・・・たくさんの話をした。 風のささやきを音楽に、流れる雲を背景に。 君と僕との接点をつなげて、線にして・・・ そして知ったんだ。 君への想いを。 言葉では伝えきれない、愛の重さを。 ・・・アンジェリーク。 これから先、君がどれほどたくさんの人に囲まれても、幾多の星に包まれても・・・ 僕はきっと、いつかまた君を見つけだすだろう。 この想いにはそれだけの力がある。 強い想いはときとして、奇跡の原動力に変わる。 真実を生む卵になる。 だから・・・ 待っていてほしい。 終わらない未来を信じて。 僕が君を見つけるその日まで・・・ずっと。 | |