海抜4000m超の稜線散歩(第1話)



 7月6日〜7月12日の7日間、中国四川省アバチベット族自治区の四姑娘(スークーニャン)山麓で、海抜4000m超の稜線散歩を楽しんできましたので、今月から何回かに分けて紹介します。


 四姑娘山6250mは、世界百名山のひとつで「西南中国の女神」との異名を持ち、ヒマラヤ山脈東端を南北に走る横断山脈(盟主はミニヤコンカ7556m)の中にあります。周辺は氷河地形で海抜4000m前後では、エーデルワイスやサクラソウの仲間など、数え切れない高山植物が雑草のごとく見渡す限り咲き広がり、まだ種名の確定していないものや和名のないものも少なくない。
 野鳥もハゲワシの仲間など、どんなものが出てくるのか興味はつきない。使用する図鑑は、「中国の野鳥図鑑では、使えるのはこれしかない…」と言われる英国オックスフォード大学のものをネット通販で取り寄せた。サイズはフィールドガイドサイズだが、厚さは4cmほどあり簡単にはポケットに入らない。鳥の並びが日本のものと異なるので、ちょっと見づらいのも難点だし、翼開長の記載がないのも困るが、「これしかない…」というのでいたしかたない。


 今回は「観光で荒れないうちにぜひ見ておいたほうが良い…」という植物写真家の永田芳男さんの呼びかけにより、土佐植物研究会主体で高知発着のオリジナルツアーが企画されることになった。
 参加者は高知から土佐植物研究会の会員を中心に7名。それにツアーリーダーを務める永田さんを加えて合計8名となった。今回のツアーは通常のパックツアーとは異なり、15年間に渡る永田さんの四姑娘での観察経験にもとづき、日程やルートが決められた。
 高知から観察のベースとなる四姑娘山麓の日隆(リーロン)という村に入るまで、ほぼ2日間を要するため、7日間とはいえ実際に現地に滞在する期間は長く見積もって3日半というところだ。


 初日は高知から福岡空港経由で四川省の省都・成都(チョンドゥ)市へ向かう。まずは、高知龍馬空港でメンバーとの初顔合わせ。半分は初対面の方々だが、自然好きの皆さんなので全く問題なし。
 福岡空港で永田さんと合流し、上海経由成都行きのエアチャイナに乗り込む。上海で一度飛行機から降ろされ、入国手続きをして再度同じ飛行機で成都まで飛ぶ。福岡上海間の飛行時間より、上海成都間の飛行時間のほうが倍くらい長い。中国の広さを実感する一瞬だ。

 ここで成都市の概要を少し紹介すると、人口は行政区内で約450万人、周辺地域を合わせると約1050万人。中国の三国時代から2300余年の歴史を持つ歴史文化都市で、地域の標高は約600m。気候は亜熱帯湿潤モンスーン気候で、年間の平均晴天日数が25日。平均降雨日数が190日余りなので、いつも曇っているか雨が降っているか…という、どんよりとした空模様が続く。この街では、「お日様が出ると、飼われている犬がお日様に向かって吠える…」と言われているくらい、お日様にお目にかかることが少ないらしい。
 市内を走る路線バス(なんと2階建てバスもある)の運賃は、1路線1元(約14円)。エアコン付きの路線バスは「空調」と車体に明記されていて1路線2元(約28円)だ。チャリタクと呼ばれる三輪車のような自転車タクシーは初乗り5元(ただし、これは交渉可能)。
 料理は四川料理が有名。日本人向けに辛さをおさえた…といわれた麻婆豆腐。辛くてもおいしいと思ったが、さすがにお代りはできなかった。また中国の娯楽といえば麻雀だが、ここ成都でも道端のあちこちでテーブルと椅子を並べて、麻雀に興じる人々がたくさん見られる。


 さて成都双流国際空港から、途中のチャイニーズレストランで夕食を済ませ宿のホテルに向かう。英語はもちろん日本語の話せるスタッフもいるという5つ星のホテルだ。
 ここで、明日から予想される「高度障害(いわゆる高山病)」について少し説明を受ける。明日はベースとなる日隆(リーロン)という村に専用車で入るが、途中、海抜4487mという富士山より遥かに高い巴朗山(バーロンシャン)峠を越えるし、日隆滞在中は毎日海抜3200〜4600mほどの場所で行動するからだ。説明によると、高度障害にならないためには、@滞在中はダイヤモックスという高度障害予防薬を毎日服用すること。Aとにかく多めに水分を取ること。B滞在中はアルコールの類を飲まないこと。@、Aは問題ない。Bは私個人的に厳しい条件だが、その夜はとりあえずビールを飲む。日本のビールほどホップが効いていないが、ちゃんと冷えていてなかなかおいしい。ビールは冷えていて1本・10元(約140円)、これでは飲み放題と同じだ…。


さて次回は、バーロンシャン峠越え、高度障害も登場…。